刀剣乱『腐』に万事屋がログインしたようです   作:空飛ぶ鶏゜

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 虫も眠る丑三つ時。国広は三人が眠る寝所の戸をそっと開ける。

 神楽の足が銀時の腹に乗り、腕が新八の頬に突き刺さり、それでもすやすやと、川の字で眠る三人を確認した国広は、本当、仲がいいんですねと笑い呟くと、また戸を閉めた。

 廊下の先、隠し持っていた靴を縁側の沓脱石(くつぬぎいし)に置くと、暗い帳が降りた闇の中へスッスッと歩いて行く。

 朱色の橋は色を落とし、月の光が青白く庭を染める。

 

「こんのすけ」

 

 静かに呼ぶ声に応えるように、ふわりと宙から舞い降りたこんのすけは、「お呼びでございましょうか?」と首を傾けた。

 

函館(はこだて)へお願い」

「堀川様お一人で行かれるつもりですか」

 

 心配そうな声に、笑いながら国広は首を振る。

 

「一人じゃないよ。ほら、この子たちもいるし、函館なら遡行軍(そこうぐん)の手も緩いから」

 

 そう言って差し出す手の平には金色の玉乗せられていた。

 刀装――刀剣男子を護るための武装。金色はその中でも最高位を示す色だった。

 しかし、それでもこんのすけは難色を示す。

 

「主様が帰られるまでは手入れもままならないんですぞ! せめて和泉守様にも!」

「お願い! 兼さんには黙ってて! 勝手に霊力使ったのバレたらまた『だから、お前は刀剣失格なんだ』って言われちゃう」

「そう言われるだけの事をしたのですから甘んじてお叱りを受けて下さい。和泉守様は情に厚い方。きちんと話せば最後は分かって下さいます」

 

 こんのすけの反論に、国広は眉を寄せ口を噤む。

 その姿に、「わかったのでしたら」とこんのすけは言葉を続けようとした。

 しかし、それは先手を打った国広に制される。

 

「……これ以上失望されたくないんだ。ねぇ、こんのすけ。僕は兼さん……和泉守兼定に劣らない、自慢できるような相棒でいたいよ。それにね、闇討ち、暗殺お手の物って。夜は脇差しである僕の得意とする場だから、大丈夫、心配しないで」

 

 しゃがみこみ、国広はこんのすけの毛を梳くように撫で、宥める。

 

「心配なぞしてませぬ。私は式神。この本丸を護ることこそが役目。国広様を行かせてはそれが果たせなくなるだけです。国広様におかれましても自身の役目、よもやお忘れになられましたか!」

「忘れてはいないよ。ちゃんと覚えている」

 

 それでも強い言葉で反対するこんのすけの背をもう一無でする。やがて、国広の迷うような瞳が何かを決心するかの様に結ばれた。

 国広の纏っていた空気が変わる。

 

「この城の主、――審神者(さにわ)の代理人、堀川国広よりこんのすけに命ず。函館への道を開け」

「……承知しました」

 

 調子を変えた国広を恨めしげに見上げ、一歩引いたこんのすけは、空に向かい一声――高々と鳴く。無音にけれど朗々と。

 時空がゆらめき、水に油を流したような歪みが開く。

 

「大丈夫、すぐ戻るよ。それまで城を、皆をお願いね?」

 

 歪みの中に消えて行った国広を見ながら、こんのすけはまた、一声高々と鳴く。

 閉じられる歪み。

 ぽっかりと浮かぶ白い月だけがそれを見ていた。

 

 

 

 

 チチチッと雀が鳴く。明けた夜。障子を透かして朝日が差し込む。

 それはいつもの平和な本丸の朝であった――その障子戸が和泉守によりスパンッと激しい音を立てて開かれるまでは。

 

「――チッ、ここにもいやがらねぇ」

 

 その激しい音に、銀時等三人は寝ぼけ(まなこ)をこすりながら目を覚ます。

 

「なんだァ? 朝っぱらからうっせーぞ」

「安眠妨害してんじゃねーアル」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら起き上がった銀時と神楽は、和泉守を見上げ(いぶか)しげに眉をひそめる。

 身だしなみに気を使う和泉守にしては珍しく、肩に掛けた羽織は裏返り、うっすらと汗すら浮かべていた。

 

「一体全体どうしたんですか?」

 

 その姿に、新八は枕元に置いたメガネをかけながら問う。

 

「なんでも――ああくそっ、お前等も国広探すの手伝え」

 

 「なんでもない」と、言い切ろうとしたが、自身の意地を曲げ、和泉守は助力を求める――不遜な態度は高いプライドとの境界線――平時では見られない、焦りが見られた。

 その姿を欠伸を噛み殺しながら見上げた三人は、申し合わせる事もなく、揃ってのそりと布団から起き上がる。

 

「ったく、それが人に頼み事をする態度か?」

「そうアル。人に頼み事をするときは、這いつくばってワンと鳴けって習わなかったアルか?」

 

 銀時と神楽は立ち上がり、並んでバリバリと頭を掻く。曲げられた言葉の意味は了承だった。

 

「万事屋銀ちゃんの依頼料は高いんですからね」

 

 万事屋の勘定方らしい、新八の念を押すような言葉に、和泉守は国広の『悪い人たちじゃない』という言葉を思い出していた。

 

「……てめえらのぶっ壊した襖の修繕費用も高いって事を忘れんじゃねーぞ」

 

 いつもの余裕を僅かばかり取り戻した和泉守はニヤリと笑う。

 

 

 

 

 本丸に「国広さーん」「くにや~ん」「堀カマ~」という声が響き渡る。

 

「オイだれだ! 今、堀カマつったやつ」

 

 一緒に探しても効率が悪いと、別れて探していたのだが、和泉守は目的を放棄し、声の主――銀時に突っかかる。

 10畳程の和室。床の間に飾られたツボの中を覗きこんでいた銀時は、掴まれた肩に振り向いた。

 

「あー、悪い悪い。お前が掘られる方だったか、いやぁー体格的にアイツじゃなんつーか高さが合わないと思ってよォ」

 

 奥面もない態度。悪いと口にはするものの全くもって悪いと思っていないことは明白だった。

 手を水平にし、腰の高さを測るように上下させる。

 

「その手の動きやめろ! つか想像すんな!」

「え? 何? 俺が悪いの? そんな事を匂わせるアンタ等が悪いんだろ? 掘ったり掘られたりは年末の道路工事だけで十分だっつーの。汚えケツ掘り起こしちまって、道路工事のおっさんも今頃嘆いてるよ」

「てんめぇえええ、言うに事欠いて……ふざけんなよ」

 

 そんな銀時の襟首を掴み、和泉守は今直ぐ想像した事を忘れろとばかりに揺すぶる。

 そうやって二人がやいのやいのと騒いでいると、その声につられ、神楽がやってくる。

 神楽が見たのは絡み合って乱闘寸前となる二人。和泉守が銀時の上にまたがり、襟首を地面に押し付けているところだった。興奮のあまり近くなりすぎた顔の距離。

 

「……私、銀ちゃんがそんなんだとは思わなかったヨ」

 

 立ち去ろうとする神楽に、和泉守の手を払いのけ、銀時が慌てて追いすがる。

 

「ちょっとまって神楽ちゃん!! 違うからね!? 銀さん違うから! 銀さんが掘るのはアワビだけだから!!」

 

 弁解にすらならない最低な言葉。

 四つん這いで、ずりずりと膝を擦りながら手をのばす銀時に、絶対零度を湛えたままの神楽視線が突き刺さる。

 

「不潔なのは代わりないネ。同じ穴の兄弟ヨ!」

「それを言うならムジナぁあああ! ピンポイントで誤作動してんじゃねーよ!」

「まさかお前、国広になにかしたんじゃねーだろうな!? だから国広が隠れて……」

「お前は脳に初期不良でも抱えてんのか!」

 

 叫びを上げる銀時に、和泉守は国広のケツは何が何でもオレが護り通すと変な覚悟を決める。

 

「アンタ等、僕一人に任せてなに遊んでるんですか!」

 

 もう、どこにツッコメばいいのか、アナルか? アヌスか? 肛門か? という事態に新たに加わった声は、怒り心頭といった新八のものだった。

 このままではまたグチグチと煩い説教が始まりかねないと、合図もなく銀時と神楽は先ほどの態度を翻す。

 

「あれ? もしかして、新八君ハブられてんの気付いてない? 空気読めない男って最低よね~。そう思わない神楽ちゃん」

「パー子あんま可哀想な事いってやんなヨ。メガネだから仕方ないアル」

 

 並び立ち、仲良くヒソヒソと取り交わされる会話。銀時に至ってはシナまで作ってキャイキャイと。

 

「全っっ部聞こえてるんですが!?」

 

 ピクピクと新八の米神に青筋が浮かぶ。

 

「アワビも掘れない甲斐性なしは黙ってろヨ」

「んだとコルァ」

「新君が怒っちゃったパー子こーわーい」

「キレるのはツッコミだけにしとけヨ。キレキャラなんて今時はやらないアル」

 

 女子高生のような会話で新八を煽る二人。テメェ等いい加減にしろよと再び新八が怒鳴りつける。

 相変わらずの三人に、ようやく上っていた血が降りてきた和泉守は深い溜息をついた。

 

「もういい……お前等後は適当にしてろ。こんだけ探してもいないんだ、城の中にゃいねーんだろ」

 

 冷静になってみれば分かる事実。無駄にした時間に舌打ちが入る。

 

「そういえばなんで国広さんをそんなに探してるんです? 僕等何も聞いてないんですけど」

「ああ……話すよりは見た方が早いか。どうせテメーら信用しねーだろ」

 

 ついて来いと、先に行く和泉守に、反論の余地もなく三人は後を追うことにした。

 たどり着いたのは、本丸の中の最奥。耳が痛くなる程静まり返った部屋の前。

 

(あらかじ)め言っとくけど、お前等この先のモンに指一本足りとも、触れんじゃねーぞ」

 

 戸の前に立った和泉守は、いつになく真剣な表情を浮かべギシリときしむような目つきでそう言った。

 そのシリアスさとは裏腹に、軽いのは銀時。

 

「え? じゃあ部屋の中に入れなくねぇ? 畳踏んじゃうじゃん」

「……畳はいい」

「畳に縮れ毛落ちてたどうするアルか? 踏んじゃダメアルか?」

「……落ちてねーよ」

 

 空気を読まない銀時と神楽に、表情は崩さぬものの、だんだんと和泉守の語尾が震えてくる。

 

「縮れ毛ってのはなぁ、どんなにコロコロしても落ちてんのが縮れ毛なんだぞォ! 味噌汁に白い縮れ毛浮かんでた時の気持ち悪さがお前に分かるか!」

「分かった、分かった……縮れ毛落ちてたらコロコロしてやっから……」

 

 口元を引き攣らせながら、和泉守はいいから黙れという言葉を辛うじて飲み込む。

 

「約束ダナ」

「約束だ」

「だったら……」

 

 しつこく重ねられる言葉に、とうとう和泉守の少ない受容力(キャパシティ)が溢れた。

 

「何なんだよ! お前等、少しは常識でモノ考えろ!!」

「なら、常識的に考えて、未開封のドッキリマンは食べてやんねーとなぁ。すげーな箱買いされてんぞ」

 

 声がした方向は、部屋の中。

 嫌な予感にあわてて和泉守が振り返ると、バリバリとドッキリマンチョコを貪り食う銀時がそこにはあった。

 「おお、レアラッキー」と言いながら積み上げられるシール。破かれ散らばる包装。

 

「おまっ! それは主が開けるのを楽しみにしていた!!!」

「凄いですねこの部屋……トッシーでもいるんですかここには」

 

 その新八の言葉通り、壁や天上の隙間という隙間を埋め尽くすアニメキャラのポスター。棚や、箪笥の上には隙間なくフィギュアが並べられていた。

 部屋の一角、これまたフィギュアとアニメグッズに塗れた文机の直ぐ横に、ドッキリマンチョコはスーパーで見かけるような箱ごと保管されていた。

 今すぐその手を止めろと、もみくちゃになっている和泉守と、意地汚くドッキリマンチョコを食べつづける銀時。

 

「だからお前等をここに連れてくるの嫌だったんだ……」

 

 結局は全てを食べられたドッキリマンチョコに、和泉守は泣く泣く散らばったシールを集める。

 

「銀ちゃん、これ何してるアルか?」

 

 どこから取ってきたのか、神楽がペラリと掲げたのは、R18マークの付いた薄い本。表紙には男と男が絡み合う姿が露骨に描かれていた。

 ただし重要な部分はぼかされて。

 

「あー、プロレスだよプロレス。ローションプロレス」

 

 銀時はそれを取り上げ、躊躇なくゴミ箱に押し込む。

 

「おぃいいいい!!」

 

 和泉守が叫び、慌ててゴミ箱から引っ張り出した本の皺を伸ばす。

 大の大人が、地面に這いつくばって薄い本の皺を伸ばす姿は、情けないの一言しかない。

 

「ねぇ、銀さんこの城の主って……」

 

 漫画的表現でいうところの縦線を大量に背負った新八は銀時を見上げる。

 

「言うな、言うんじゃねーぞ新八。それ以上言ったら紙面の外にいる人間の過半数を敵に回すことになるぞ」

 

 銀時も顔を顰めつつ、神楽の頭に手を回し、部屋の隅々に散らばる危険物から強制的に視線を外させる。

 

「……腐海ここに極まるという感じですね」

 

 トッシーとも己とも違うオタク属性に、新八はげんなりとした表情を浮かべていた。

 

「で、和泉守さんよォ、俺等を腐海に連れてきてどうしたかったの? 生憎と、万事屋は廃品回収はやってねぇーんだよ」

「格好付ける前にに口元のチョコ拭え……用事があるのはこっちだ」

 

 神楽の頭を押さえつけながら、銀時はおっといけねぇと口元のチョコを拭う。

 それを見ながら、色々と諦めた和泉守が部屋の奥に造り付けられた神棚を指差す。

 神棚には、青々とした榊と、神酒が備えられ、そこだけは腐海に侵食されることなく、清廉とした空気を守っていた。

 その中でも一際目に付くのが、中央――紫の座布団の上に鎮座に黒水晶だった。

 

「この水晶なんか……濁ってません?」

 

 新八の言うとおり、黒曜石とまごう程の黒さを保った黒水晶には、不自然なモヤが掛かっていた。時折うごめく様はまるで宇宙の中の銀河のようでもあった。

 

「そりゃ、こんな惨状見せ続けられたら水晶だって目ェ濁らせたくもなるさ」

「まるで銀ちゃんみたいアルナ」

「銀さんの目は時々光るからいいんですぅ。中途半端に目ェ閉じて現実見ようとしねぇ引き篭もりとは違うんですぅ。真っ黒マナコ見開けよ。汚ねェモンしか目に入らねェがそれが現実って奴だ」

「そんな事言っていいのか? こいつが真っ黒マナコになったら、お前等もろともあの世行きだぜ?」

 

 不穏な和泉守の言葉に銀時がどういう事だと? 難色を示す。

 そんな三人に説明するのもいい加減飽きてきた和泉守は説明役として相応しい――ナビゲーターを呼ぶ。

 

「こんのすけ! 出てこい」

「お呼びでしょうか?」

 

 いつしかと同じく、どこからともなく、声に呼応してこんのすけがふわりと舞い降りる。

 

「オイ、こんのすけ。国広の奴どこ行った。お前知ってるんだろ」

 

 気づくのに遅れた苛立ちをぶつける。

 朝一番に水晶の()()に気付いた和泉守だったが、原因を調査するよりも先に、対応策をと後手に回ってしまった。

 考えれば分かることだった。原因を作れるのは霊力温存のために他の刀身が眠る今、国広しかいないことを。

 しかし、こんのすけは和泉守の言葉に頑として首を振る。

 

「審神者代理権限にて口止めされている故、言えませぬ」

「この狸がっ!」

「狐でございます」

 

 たたっ斬ってやると刀を構える和泉守に、新八が慌てて止めに入る。

 

「ちょっ、待ってください。何がどうなってるのかちゃんと説明してください」

「――チッ。こんのすけ、なんでこんなに霊力が減っている」

 

 黒水晶に視線をチラリと移した和泉守に、こんのすけは、言えませぬと繰り返す。

 再び刀を構える和泉守を新八が止める。

 

「霊力? そいつとこいつ何か関係あんのか?」

 

 見えぬ会話に業を煮やした銀時が、つんつんと黒水晶をつつきながら代わりに問う。

 

「その水晶はこの本丸に残された霊力を可視化した写身。残されたか細い光は主様がいなくなりその霊力が今まさに尽き果てようとしている証にございます。おお、おいたわしや」

 

 器用に尻尾で涙を拭う姿を見せるこんのすけに、銀時の脳裏に、和泉守が言っていた「あの世行き」という言葉がよぎる。

 

「なあ、その霊力がつきたらどうなるんだ?」

「この本丸全ては主様の霊力によって作られたもの。それが尽きるという事はこの空間そのものの消滅を意味します」

 

 尻尾を顔からズラし見上げるこんのすけの面には、なんの感慨も見られなかった。

 

「オイ、じょーだんってのはそれっぽく言うもんだぜ?」

「冗談だと。そう受け取られるなら結構、このままいけば霊力はもって一日。明日には冗談か真実か結論はでましょう」

 

 一筋の汗を垂らした銀時に対し、それだけ言うと、こんのすけは毛繕いを始める。嘘か真か。

 自然界には存在しないであろう、雲が揺らめく水晶と、眉を寄せ考え込む和泉守に、銀時はゴクリと唾を飲む。

 

「ってことはアレか? このまま行くと銀さんの銀さんが結野アナと◯◯◯(ピー)する事なく、銀さんもろともフィニッシュを向かえちまうってことか?」

「安心しろヨ。お前のチ◯コなんて、とっくの昔にフィニッシュ通り越して腐ってるアル」

「ぼ、ぼぼぼぼく! 来週お通ちゃんのライブを控えてるんですよ!!!」

「安心しろヨ。てめえなんて存在いてもいなくても地球(ライブ)は回んだヨ」

「良いこといったフリして、地味キャラの存在否定すんじゃねーよ!!」

 

 事態の重大さを悟り騒ぎ出した三人に、コイツ等余裕だなと、疲れた溜息をついた和泉守は、気を取り直して毛繕いを続けるこんのすけを睨みつける。

 

「――――オイ、こんのすけ。てめえ国広の行き先知ってんだろ。答えねぇとそのふかふかの毛むしり取ってマフラーに変えんぞ」

「なんとでも、できぬ事はできません。この身はしがない式神。呪に縛られ審神者(さにわ)、おってはその代理人の命に従うしかないのでございます」

 

 相変わらず澄ました調子で宣うこんのすけに、和泉守は「上等じゃねーか」と再び刀を抜く。

 

「さっきから、国広、国広って、国広君がいたらこの状況どうにかできる訳?」

 

 止める訳ではないが、なぜこうも和泉守が国広に拘るのか、見えない状況に銀時が口を挟む。

 

「あ? 国広はなぁ、主から本末の維持管理の全てを司る審神者の代理権、つまりこの本丸に霊力を補給できる権限を譲渡された唯一の刀身。アイツがいりゃあ霊力を補給する事も……おい待てよ、こんのすけ。てめえ国広に何言われたんだ?」

「『兼さんには言わないで』と」

「なら――こいつらにはどうだ?」

 

 和泉守が視線で、銀時等を示す。

 

「ようやくお気づきになられましたか、短気は損気だといつも言われているじゃありませんか。カッとして物事を冷静に判断できないのが和泉守様の悪いところ」

 

 人好きのする笑みを浮かべたこんのすけに、和泉守はギシリと歯噛みする。

 

「この性悪狐め……ことが片付いたら狐鍋にしてやるから首洗って待ってろよ」

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