目が覚めたら、どうしようも無いくらいレガ様だった 作:ACS
風邪を引き十日以上微熱が続くACSです、英雄伝シリーズの話を作る気だったのですが、働かない脳味噌が何故か思い付いたので投下。
最近はふがいなぁ。
#6 雨の中の出会い
僕と彼女の出会いは息も凍るような真冬の雨の中の路地裏だった。
毎日繰り返される地獄すら生温い殺しの訓練、感情を徹底的に殺す為の自我否定、人外のスペックを引き出す為の改造手術と投薬、死んで行く仲間は後を絶たなかったし、僕等は人工的に生み出された所謂デザインチャイルドだったから、彼らにとっては死んでも使い潰しの効く人形、とてもじゃないが人間扱いなどされ無い、故にあの機関に居た頃の僕は本当に唯の殺戮マシーンだった。
『聖王のクローンの護衛』
その為に生み出された僕等は、その少女へ向けられる悪意に対して暴力的な手段でそれを排除する事だけが使命だと教え込まれた。
顔も知らない創始者の命令、それだけの為に生み出された僕等は誰一人それに対して疑問を懐いては居なかった、弱虫で気の弱い僕を除いて。
––––––だからだろうか、あの三梃の銃を手にした時、僕の中に小さく生まれた自由への渇望、それがミカエルの眼を潰したきっかけだった。
コレは、そんな僕の昔話。
土砂降りの雨が僕の体を打ち付けている、流石に誰一人殺さずにあの機関を再起不能にするのは、無茶だったかなぁ。
あのまま施設を完全に破壊して研究員や被験者全員を殺害してしまった方が何倍も楽で確実ではあるだろう、けど僕はそれをしなかった。
それをしてしまったらきっと僕はずっと引き金を引いて、誰かの命を奪い続ける事になる、それが僕は死ぬほど嫌だった、弱虫な僕には人の死が恐ろしく、そしてとても悲しい物だったから。
だから僕は死ぬ気で訓練を受けた、人を殺す外道の技を学ぶ事は苦痛だったけど、それを知れば逆説的に人を殺さない方法も知ることができるからだ。
最終的に彼らの求める水準までに完成したのは僕を除いて九人、その全員が僕と同じくらいの実力だったから、殺さずに無力化するために超再生薬も殆ど使ってしまった、お陰様で傷も癒せない。
機関を壊した僕は、当てもなく人気の無い道を歩いていたんだけど、真冬の豪雨だ体力を容赦無く奪って行くし、身体中の傷から流れ出る血が止まらない。
どれだけ歩いたのか、どこまで歩いたのか、意識が混濁し始めた僕には分からない、けど足が縺れて倒れた時、冷たい地面を味わいながら思ったんだ。
––––––ああ、僕はこのまま誰にも気付かれずに死ぬんだな。
そう思い、その運命を受け入れようとした時だ、ヴィヴィオと、あの優しい少女と出会ったのは。
––––––だ、大丈夫ですか!? 私の声が分かりますか!?
僕らが生み出された元凶、思う所が無いと言えば嘘になる、事実僕は思わずダブルファングの銃口を彼女に向けていたし、引き金も引いた。
––––––僕に…近寄るな…僕は
血が足りずに髪の毛を掠めただけだったけど、殺意も敵意も分かる筈だ、だから彼女の次の行動が僕には理解出来なかった。
––––––そんな事関係無い!! どうしてそう簡単に諦めるんですか!! 簡単に死ぬなんて言えるんですか!!
––––––僕は、普通の人じゃ無い、人を殺す為に生み出された人形なんだ、だから、死んだ、方が……。
––––––でもッ!! それでも貴方は生きて良いんです!! どんな人にも生きる権利はあります!! だって、未来への切符は白紙なんだから!!
後で聞いた話だと、彼女の周りにも色んな人がいたんだって、管理局にその生涯を左右されたマッドサイエンティスト、その人が作った戦闘機人、闇の書と呼ばれるロストロギアから抜き出されたマテリアルズ、普通の生まれでは無い彼らはそれぞれ充実した人生を送っている、だから僕のような人間モドキにも幸せになる権利があると言うのが彼女の主張だった。
そして、目が覚めたら見知らぬ研究所の様な場所で、返り血塗れのよれよれの白衣を着た男性がパイプ椅子にもたれ掛かりながら爆睡していた。
周りには治療器具が散乱していて、僕の身体には治療の跡が残っている、彼が治療してくれたのだろうということは分かるけど、ミカエルの眼で弄くり回された僕の身体を治療できる程の科学力を持っている人が居るとは思わなかった。
僕が起き上がった瞬間、丁度計算された様に目覚まし時計が鳴り響き、白衣の男が起き上がった。
––––––ん? ああ、起きたのかね?
––––––あ、はい。
––––––君は運が良いな、偶々私がこのラボの後始末にミッドに帰って来ていたから治療が間に合った、君の身体を調べれば調べるほど私のトラウマが掘り起こされるようで、何度メスを投げようと思った事か……。けど彼女の頼みを断ったとあの男に知られたら私のスローライフは崩壊するからなぁ……。
ため息をこぼした白衣の男はジェイル・スカリエッティと名乗り、遠い目をし始めていたのが印象的だった。 彼って誰だろう……?
「んで、その後僕はしばらくの間博士の元でお世話になりながら、ヴィヴィオと文通しながらリハビリに励んで、今に至るって感じかなぁ」
ヴィヴィオが飲み物とお菓子持ってくると言って席を外した時に、リオちゃんが僕とヴィヴィオとの出会いについて聞きたいって言ったから話したんだけど、気が付いたら重い空気が横たわってしまった。
少し考えれば二人のような子供達に聞かせる内容の話じゃ無かったや、まだまぁ僕も世間ズレしてるなぁ……。
「えっと、あの、結構気楽に二人の出会いを聞いたんだけど、かなり内容がハードすぎたから聞いた事を若干後悔してるんだけど……」
「あ、あの、ごめんなさい……」
「えっと、リオちゃんとコロナちゃん、僕は大丈夫だよ––––––だって、未来への切符は白紙なんだから」
それは何処へでも行ける、何にでもなれるまっさらな切符、彼女が僕にくれた大切なモノ。
–––––