最近アイドルマスターにはまり始めたのと、色々な妄想が止まらなくなったので思わず書いちゃいました。
Pさんは赤羽根さんだと思ってください。
アイマスファンとウルトラファンから怒られそうな感じはしますが、これから最終話まで走りきりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
日常が壊れる。
多分、その瞬間はみんなが考えるよりも地味であっさりと訪れる。
ただ、自分の信じていた現実や常識を投げ捨てたくなるようなどうしようもなさと、
命をも蝕む恐怖がその心に刻まれるだけで。
月が照らす山道を、俺は死力を尽くして走っていた。
背後に感じる邪悪な気配。
焼け焦げたような鼻を突く悪臭。
俺の足音と同時に響く、肉を打ったような音。
ついでに俺を嘲笑うかのような風のざわめき。
(こいつは一体なんだ…。訳が分からない。)
ただ一つ確実に分かっているのは異形の物としか言えない何かのせいで、
自分が命の危機に瀕している事だけだった。
どのくらい走っただろうか。
不意に足首に何かがまとわりつく。
太さは腕くらいだろうか。
締め付けは決して強いわけではない。しかし逃れられる程弱くはない。
まるで遊ばれてる様な感覚に陥る
(何で、初めから使わなかったんだよ……。こいつ、人をおちょくってるのか…?)
頭の中こそのんきだったが、
自分の口からは情けない悲鳴が出ているのが分かった。
(俺がいなくてもあの子たちはやっていけるだろうか。皆は悲しんでくれるだろうか…。そうだ、俺は来週の収録に使われる山の下見で来たんだっけな…。それで、少し車を降りて散策して、今に至るという訳か。)
何故こんな事になったのか考えても分からなかったが、
彼はあることを思い出す。
(社長が危ない………!)
本来ならばこれは律子の役目だった。
しかし、女性一人では危ないからと社長と彼で行くことにしたのだ。
ある意味で、自らの予想が的中したことに微かな満足感を覚える。
(俺が戻らなければ、当然社長は俺を探しに出るだろう。その時、こいつに出会ったらどうなる…?この化け物が俺一人だけで満足するとは到底思えない。)
そこまで考えると彼の体は恐怖を、化け物をはね除けようともがきだした。
悲鳴が雄叫びに変わる。
「俺は諦めないっ!!」
思わず叫んだ声に化け物が怯むのを感じる。
(よしっ!逃げられる…!)
その瞬間を逃さまいと、力を絞り出す。
だが、現実は非情だった。
今までの締め付けが嘘のような強さで、再び締め上げられた。
(やっぱりさっきのは遊びだったのか…?)
ずるずると引きずられながらそんな事を考える。
死の恐怖を間近に感じ、再び彼の口から悲鳴が漏れる。
しかし、心は何故か穏やかだった。
(やりたい事、やるべき事、ついでに後悔も山ほど残っている。じゃあ、この泉のように湧き上がる安心感は何なんだ…?)
小さな炎のように、闘争心が湧き上がる。
自分の中から恐怖が無くなるのを感じ取る。
その時だった。
凄まじい轟音が耳を貫いた。
山は揺れ、木がなぎ倒れる。
視界に広がるのは巨大な銀色の拳と、グチャグチャに潰れた肉塊。
自分を締め付けていた、よく分からない化け物はさらに何だか分からなくなっていた。
拳が持ち上がる。
上を見上げると、赤く輝く宝石のようなものが彼の目に入る。
宝石のような、と言っても凄まじく大きなものだ。
ただ、彼はそんな事を考えられなかった。
彼の心は赤い輝きのはるか上を向いていた。
(巨人…。)
彼の頭の中をその言葉が支配する。
まさしく巨人。
銀色と灰色の間のような、鈍い輝きを放つ巨人がいた。
白く輝く、太陽を思わせるような目を見つめる。
その胸からは赤い輝きが迸っていた。
巨人が俺を見下ろす。
光り輝く目が、表情の無い顔が、確かに俺を捉えていた。
不思議と安心感を覚えた。
生まれたばかりの闘争心すら、スッと引くのを感じる。
巨人はその内に飛び去った。
輝く流星のような光の筋が、真っ直ぐ空へと伸びていく。
しばらく何も考えられなかった。
実際はどうだったか分からないが、何時間も惚けていたように思えた。
身体にはエネルギーが満ちているのが分かる。
俺はふと我に帰ると、ムチに打たれたようにその場を走り去った。
彼の日常は壊れた。
もう元には戻れないだろう。
だが、そこに残ったのは決して絶望や恐怖では無かった。
短いかもしれませんが、区切りはついたと思うのでこれで1話目とさせて頂きます。