ある意味あたり前ですが各話の状況を簡単に表しています。
夢じゃ無い。
それは分かっていた。だが、あまりにも非現実的な出来事だった。
いや、彼の知っている事が現実とかけ離れていただけなのだろうか。
考えようにも頭がうまく働かない。
その内、なぜここにいるんだろう、自分は誰なんだろうなどといった事まで考え始めた。
いずれにせよまともに考えられなくなっていたのは確かだ。
しばらく走ると、車が見えた。
夢から覚めたような衝撃で社長の事を思い出す。
急いで駆け寄りまずは車内を見渡す。
(いない…。社長はまだ戻って来てないのか…。もしも、俺よりも前にあの化け物に会っていたとしたら…。)
「まさか、社長…………チッ…。」
嫌な予感が彼の中を巡る。
それと同時に、さっさと電話で連絡を取らなかった自分に舌打ちをする。
とりあえず電話連絡だけはと思い、アタフタと携帯電話を取り出し電話を掛ける。
(つながらない…。)
電話がつながらない事に呆然としつつも、彼はある事に気付く。
(あれ?約束の時間はかなり過ぎているのに…着信が一度も無いなんて…。おいおい…冗談にならないぞ…。)
せっかく落ち着いた脳内が一気にかき混ざる。
探しに行こうとするも、先程の出来事のせいか体が上手く動かない。
彼は再び恐怖が心身に染み渡るのを感じた。
しかし、そんな彼の心配とはよそにその男は姿を現した。
肩で息をしていて、随分と疲れているようだ。
「ふぅ…。遅いし連絡も無かったからどうしてしまったのかと思ったよキミィ…。」
(ごもっともである…。)
「しゃ、社長…!無事だったんですね!」
「ん…?それはこっちのセリフだと思うがねぇ…。まあ、途中から携帯の電池が切れてしまって連絡出来なかった私も私だがね。……もしや、何かあったのかね?」
(うーん…やっぱり鋭いお人だ…。だが、なんて言えば良い?信じて貰えるわけが無いな…。)
「いえ、特に…何もありませんでした…。」
「ふむ…それにしてはスーツが汚れているようだが…。」
「ちょっと派手に転んでしまいまして…。」
我ながらウソが下手だと思った。
「ほおー…そりゃまた随分と派手に転んだようだねぇ。ふぅ、怪我とかは無いのかい?」
しげしげとスーツを見つめられる。
「あ、はい。派手に、とは言っても見た目ほどひどくは無いです。社長こそ息が上がってますが大丈夫ですか?」
「いやはや、まだそんな年じゃ無いと思ってたんだがねぇ…。」
(確かに、社長はお年の割にはバイタリティに溢れているが…。…なんにせよごまかせたか…?)
きっと自分を探すのに苦労していたであろう目の前の男に密かな申し訳無さを覚える。
だが、そこで彼はある事を思い出した。
山よりも大きな体躯を持った、文字通りの巨人が化け物と山肌を穿った時に鳴り響いていた轟音の事を。
(おかしいな…社長は見ていないのか…。)
さらに言えば赤き輝きを放つ胸部と、月より白く輝く目が有ったのだ。
社長がその事を一つも知らないとは考えにくい。
しかし、一向にそれらのことに触れられる気配が無い。
「ところで、こんな時間までどうしたんだい?普段の君を考えるとただ遅れた訳では無さそうだが…。本当は何かあったんじゃ無いのかね?」
何気ない言葉だったが、彼には大きなチャンスとなった。
「…実は…散策の最中に化け物と遭遇したのです…。」
「…化け物…?野生動物か何かの間違いじゃ無いのかね?」
「はっきり言ってよく分かりません。まるで、アメーバと生肉を合わせたような…加えてそれに蔓のような触手が生えた感じです。……思い出すのも嫌になるような出で立ちでした……。」
信じてもらえるとは思わない。
だが、少しでも社長に危険性を理解して貰わなければならない。
危険に晒されているのは自分達だけでは無い。
絶対あの子達をこの場所を訪れさせる訳にはいかない。
「……私は君がどういう人間かは知っているつもりだ。だから…むやみに否定するつもりは無い…無いが…ね。」
(そりゃそうだよなあ…)
自分が同じことを聞いたら信じない自信がある。
「仮に…それが本当だとして、よく無事に帰ってこれたねぇ…。」
「ええ…実際襲われて、死にかけましたよ…。ただ……。」
「ただ……?」
「もう駄目だって思った時に、巨人が助けてくれたんです。胸と目が赤く光っていて…全体的に鈍い銀色でした…。」
「……どうしたものかねぇ……突拍子も無い話だが…君が嘘を付いているようにも見えないしねぇ…。」
微妙な反応だが仕方ないと思う。
「…この際、私の話は信じて下さらなくても構いません…。ですが、来週の収録でここを使うのだけはやめて貰えないでしょうか?」
(これだけは譲れない…。彼女達を危険に晒すのだけは…絶対に駄目だ!)
「………………」
「社長?」
「どうしても…かね?」
「ええ…信じられ無いのも分かりますが 、どうしてもです…。」
「……………………………………」
随分と長い沈黙だった。
社長はしばらく神妙な顔をしていたかと思うと、突然大声で笑い出した。
(!?…なんだって言うんだ…どこに…笑う要素なんて有ったんだ……?)
困惑する彼の顔を見て、ようやく社長は笑いを抑えようとした。
「いやいや、すまないねぇ…。気分を害したのなら謝るがね…私は嬉しかったのだよ。やはり、君は私の見込んだ通りの男だ!」
肩をプルプルと震わせながら、社長は上機嫌でそう答える。
「それは、どういう事でしょうか…?」
訳がわからない、と言うように質問を返す。
社長の口から飛び出したのは驚くべく事実だった。
「ふむ…どこから話そうか…?……そうだ、単刀直入に言わせて貰おう!何を隠そう、君の言う銀色の巨人とは私の事だ!!」
「………へ?」
力強く語る社長とは違い、彼の口からは随分と素っ頓狂な返事しか出なかった。
「おや、君らしくもない。随分と素っ頓狂な返事じゃないか。」
(俺もそう思います。)
相変わらず頭の中はのん気なようだ。
「まあいい。最初は私も何が何だかさっぱりだった。」
「はぁ…?」
どうにも間抜けな返事しか出来ない彼をよそに、社長はスーツの懐をごそごそと探る。
そこから取り出されたのは二つの何かだった。
(…?銃と…こっちは何だ…?)
一つは拳銃のような形状をして、もう一つは細長い何かとしか言えなかった。だが、中心部に輝く宝石のような物には引き込まれそうな何かを彼は感じて思わず凝視した。
二つともよく見れば、白をベースとした色合いや、全体の雰囲気が似ている。
社長はその不思議な何かを、無理矢理彼に手渡した。
「これは…?さっきからいったいなんなんですか…?」
受け答えはある程度まともになったが、顔は依然としてキョトンとしたままの彼を見て社長は少し顔をしかめた。
「う〜ん、気持ちは分からないでも無いが…もう少ししっかりして貰わないと困るよキミィ…。」
少し呆れ気味に言われる。
「す、すみません。」
(そう言われても…。正直訳わからんしなぁ…。)
内心で愚痴を零していると、社長はまたもやとんでもない事を口に出す。
「私はさっきの君の言葉で確信したのだよ。次の巨人は君に決まりだとね!!」
「はぁ…そうなんですか…って!ええ!?なに?どういう…えっ?」
やっぱり素っ頓狂で間抜けな返事しか出来ない彼だった。
前回と比べると文章が増えセリフも増えました。
が、…が多過ぎたと思いました。