恋愛脳ではありませんが、赤羽根Pのスペックを考えると皆惚れてるor告白したらOKしてくれそうです。
「ほほぅ…。君ならばそう言ってくれると信じていたよ。」
社長は満足気な顔で頷き俺を車の中へと促した。
「君に紹介したい人がいる。急で悪いとは思うが明日は1日仕事は無しだ。」
「はぁ…状況が状況なだけに反対ではありませんが、大丈夫でしょうか…?」
「まあその辺りの事は私に任せたまえ」
車の中は冷たかった。だが、得体の知れない何かがいない事で不思議と寒さを感じる事は無かった。
山道を一刻も早く抜け出さんと、車を飛ばす。
何度か社長に窘められたが、無事に街の灯りまで辿り着いた時であった。
冷たい予感が彼を貫く。
「あっ!!そういえば地主の山田さんはっ!?」
二人の間にしばらく沈黙が訪れる。
「……私の気のせいであって欲しいのだがね、あの怪物を潰した時に怪物以外の何かがいたような感じがしたんだよ……。」
社長は苦い顔で呟いた。
「そ…んな…。」
「君を助ける為には、こうするしかなかった……。」
「分かって…います…いますけども……。」
弱々しい声が消えると、再び沈黙が二人を包む。
(こんな事、二度と起こらせはしない…!)
決意を固めた彼の目には、見えざる炎が揺らめいているようであった。
ようやく事務所に到着する頃には深夜0時を越えていた。
空調が作動している所を見るに、まだ人はいるみたいだ。
階段を登るカツカツとした音と女性の話し声が聞こえる。
「あ、ちょうど帰ってきたみたいですよ!」
ドアに手を掛けガチャリと開ける
「ただいま戻りました。」
「いやぁすまない。だいぶ遅くなってしまったよ」
「あ、二人ともおかえりなさい!!」
事務所で律子と音無さんが迎えてくれた。
机の上を見るに、俺が帰ってからやるはずだった仕事を二人で分担してやっているようだった。
「遅かったですねぇ。なんだかプロデューサーさんも社長も疲れきっているように見えます…。」
音無さんが心配そうにこちらを覗き込む。
「本当ですよ…。何かあったんですか?」
同じく心配そうに律子が質問する。
「その、本当は私が行くはずだったのに…」
まだ何も言ってないのに申し訳なさそうに目を伏せる。
「…!いや、俺たちが行って正解だったよ。…その、下見の事だけどさ…最後まで俺と社長に任せて貰えないかな…?もともと響は俺がプロデュースしてる訳だしさ!」
「へ…?それは…構いませんが社長もですか?」
「そうそう、ちょーっと彼と相談をしなければならなくてね〜」
(助かった…俺だけじゃボロが出そうだな…。)
二人とも心から心配してくれているのが分かる。だからこそ、真相を今話せない事に一抹の罪悪感を感じるのだ。
「その…本当に何があったのか教えて下さいよ!」
音無さんが俺に向かう。
「それについて社長と話し合うんです、ちょっとだけ待っていてくれませんか?」
「…教えてくださらないんですか。」
見るからに意気消沈した様子で音無さんはお盆を抱えた。
いつの間にかお茶が用意されていた。
感謝と謝罪が入り混じっているのが自分でもよく分かっていた。
社長と二人揃ってソファーに腰掛け、お茶を一口頂く。
(さっきまで社長と二人きりだったから良かったものの、何をどう話せば良いのだろうか)
少しだけ落ち着いたようだ。
「すみません。今すぐはちょっと無理です…。ただ収録に関して、結論から言うとNG…ですね。」
落ち着いたついでに謝罪をする。そんなに変な事は言ってないはずだ。
「はぁ、NG…ですか…」
律子も音無さんも察しの良い方だ。
ここまでの話で何か危ない目に遭った事くらいは分かるだろう。
「地主さんと一緒に見回りをしたんですよね?確か山田さんでしたっけ?」
「ええ、そうですね。小鳥さん、こっちの書類見てください…。あ、そうだ!その事は山田さんにはもう話を付けてあるんですか?」
ドキリとした。
心臓が獣のように暴れ回っているのを感じる。
「……………。」
「どうしたんですプロデューサー?何で急に黙ったんです…?まさか、お話してないんじゃ…。」
確かにその通りだ、キャンセルの話なんてしている訳がない。
「まあまあ律子君、その、何だ…少しだけ時間をくれないか…?」
社長にしては珍しく歯切れが悪い。律子も音無さんもきっとそう思ってるはずだ。
「こんな時間まで待たせて申し訳ないと思うが、まだ待っていて欲しい。場合によっては事務所で朝を迎える事になるが、それでも…だ。頼む!」
頭を下げる社長。それだけ大事な事なのだ。俺も頭を下げる。
「そ、そんな!?頭を上げて下さい!私はそれでも構いません。」
「ええ、律子さんと同じくです。」
頭が上がらないとは正にこの事だろう。
「本当にありがとう…。」
「ありがたいですね……。」
社長室に入り、しみじみと呟く。
「ああ。まったくだねぇ…。」
感謝を二人に捧げる。
「さて、今日の、いや昨日か。あの事を二人にどこまで話すべきだと思う?」
「それも大事ですが、山田さんについてはどうしましょうか…。」
「ふむぅ、ご家族はいないらしいから警察に行方が分からないと言えば大丈夫だろう。それに、さっきはあんな事を言ったが本当に山田さんかどうかは正直分からない。最悪別の誰かの可能性もある。」
確かにその通りだ。だが、その山田さんの方からの連絡がない以上判断のしようがない。
色々と二人で意見を交わしたが、とりあえず警察への連絡だけは先に済ませることにした。
「………はい…はい、分かりました。昼前にまた伺います。では失礼致します。」
「お、連絡は済んだようだね。」
電話を切り社長に向き直る。
「そういえば、紹介したい人がいると仰っていましたよね…?それはどうしましょう?」
「そちらを先に済ませてしまおう。紹介だけしたら私が警察の方へ出向くとしよう。」
「分かりました。そちらはお願いします。…では次、ですね。」
「怪物と巨人の事だけを話すのはどうでしょう。」
「つまり…君と私の事には触れないという事かね…?」
「ええ。あの二人の事です、頭ごなしに否定的な事は言わないと思いますが…。あまり多くの事を言い過ぎるのも逆効果ではないかと思います。」
昨日の夕方の自分とはかなり違った感性が身に付いているのを感じる。
あるいは、感覚が麻痺しているのかもしれない。
いつの間にか巨人や怪物の事なら言っても良いとさえ考えるまでになっていた。
「まあ、何も言わないというのも考え物だねぇ。」
「問題は、残りの子達ですね。活動に支障が出るのも困りますが、危険に巻き込まれるのはもっと困ります…。まずはあの二人と話してから四人でまた話し合った方が良いと考えます。」
「ふう、黒井にもまた連絡しなければならんなぁ。」
「いずれにせよ、覚悟、決めないといけませんね。色々知ってしまった以上は今までと同じ生活なんて出来ませんよ…。」
二人揃ってため息を吐く。
「ところで、俺に紹介したい人というのはどんな方なのでしょうか?」
「ん?ああ!まだ言ってなかったね、失敬失敬。君に紹介したいのは水瀬伊織君の父上だよ。水瀬財閥のトップ…だね。」
驚いた。さっきまでとは全く違う方向性でだが。
「伊織…のお父さん、ですか…。」
何となくだが理由が分かった。
「まあ、安心したまえ。水瀬君から何を聞いているかは分からないが、決して悪い人間ではない。」
漠然とした不安が顔に出ていたのか、諭すように言われる。
「すみません。確かに少し不安でした。」
社長の知り合いには変な人はいても基本的には悪人はいない。
それを思い出し、不安を取り除く。
「では、二人を呼ぼう…」
「ええ…腹を括ります。」
一通り必要な事は決めた。
後は実行するのみ。
「二人とも、お待たせ。とりあえずここにいる四人で話をしたい。社長室に…来てくれないか?」
律子と音無さんに一連の話をする。もちろん自分達の事は秘密にしてだ。
「そんな、話を…信じろって言うんですか…?」
口振りとは裏腹に、俺たちを疑っている訳では無い律子。
「そのぉ…お二人が嘘を言ってるとは思えません…。ですが…。」
音無さんの言っている事も分かる。
「二人の言いたい事は非常に良く分かる。私自身頭がおかしくないか心配だ。しかし、事実山田さんとは一切連絡が付かない。事故に遭った可能性もあるが、危険ヶ所は一ヶ所、きちんと管理され危険な野生動物は殆ど生息していない山だと聞いている…。」
だからこそ、初めは律子一人で下見に向かおうとしていたのだ。
「正直、この話を二人が信じてくれなかったとしても構わない。さっきも言ったけど、あの山の使用をキャンセル出来れば良いからな。もし向こうにごねられたら、手伝いは頼むかもしれないけど…。」
「はあ、それは構いませんが…。」
どこかはっきりとしない返事だが、取り敢えず響に危険が及ぶ事は無いであろう。
(ふぅ…取り敢えず一安心…かな。)
取り敢えず当初の目的を達成し、満足気な顔を浮かべた彼だったが、その様子を見ていた音無さんと律子には怪訝な顔をされてしまった。
(頭から疑っている訳じゃ無さそうだけど…信じきる事も出来ないって感じかな?)
突拍子も無い話をしているという自覚があるだけに、彼の心中は穏やかであった。
それからは詳しく巨人の話をした。
あくまで本当に存在すると仮定してだが。
話にひと段落が着く頃には2時をまわっていた。
「よし、取り敢えずここまでにしよう。まだまだ二人とも納得出来ないところがあるだろうけど、一通り知って欲しい事は話した。遅い時間までありがとう!!」
日を跨いでいるにも関わらず、無駄に元気な声でプロデューサーが礼を言う。
「それじゃ、またお茶入れてきますね。音無さん達も飲みます?」
「えっ、あっ…はい。」
「その、ありがとうございます…。」
二人は(当然だが)疲れていたのか少し弱々しい声で返事をする。
給湯室へとプロデューサーが消えると、社長が話し出す。
「二人とも、本当にありがとう。朝の仕事は私の方で何とかするから昼までは休んでくれたまえ。」
社長も何故か元気だった。
「そんな、私は、その…好きで待っていただけですし…。」
ちらりと給湯室を見ながら律子が答える。
「私も同じです社長。どうかお気になさらず。」
律子に微笑みかけながら音無さんも答える。
若さを滲ませる彼女たちの思わぬ返事に少したじろぐ社長であった。
「あー…そのだね、プロデューサー君の予定を変更させてもらってだな、朝から出張に行ってもらう。それで、元々の仕事は私がする事にしたのだよ。まあ、午前の間の仕事だけならね…私一人でも何とかなる。気にせずに休んでくれると助かる。」
プロデューサーのために夜遅くまで待っていた乙女達の事だ、いつも朝一番に出社するプロデューサーと少しでも一緒にいるために彼女達自身もかなり早い時間に来るだろう。
だが、せっかく早起きして来ても彼は居ないのだ。
「え…そう、なんですか…。」
「えと、出張はどちらまでですか?」
二人とも見るからに元気を無くしている。
「ああ、水瀬君のご実家にね。といっても会長の方に用事があるのだが。」
(全く…音無君はともかくとして、知らぬ間に律子君も…か。やれやれ…罪作りな男だね…)
「伊織、のお父さん…ですか。」
「あえっ!?伊織ちゃんのお父さんに?!」
恐らく彼女達は勘違いをしている。
音無さんはいつもの事だが、律子までもがそういう考えに行き着いた事に驚きを隠せない社長だった。
「いやいや!巨人関連の事を調べて貰った事があってね、彼と話をさせておこうかと…。」
「あ、そうだったんですか…。」
「そういえば、随分と仲が良いみたいですね…?」
「はっはっはっ、そんなに意外だったかね?」
露骨にホッとした様子の二人を見て、思わず微笑んでしまう。
ただ単に疲れているだけなのか、それとも彼の魔力がそうさせるのか。
普段よりもオープンな二人だ。
(まあ、彼が戻って来ればそれも終わってしまうだろうがね。)
「いやぁ〜、彼も隅に置けないねぇ〜。もしかして皆彼にぞっこんなのかい?」
「ふふふ、まあそうですよね。ね?律子さん!」
「え、ええ、まあ…そうです…ね。」
(なるほど…アイドルというのは恋する乙女の事だったのか…。)
目の前の恋する乙女達を見てしまうと、そう思わずにはいられない社長だった。
「お待たせしました〜。時間が時間なのでお茶請けまでは用意しませんでしたがよろしかったでしょうか?」
深夜だというのに事務所の中は少しだけ賑やかになった。
さて、アニマスと映画後のPのイケメンさがほとんど伝わっていない事に気付きました。
赤羽根Pだと思って下さいなんて、自分でハードル上げてどうするんですかねぇ。