アイドルマスター×ウルトラマンネクサス   作:栽培もやし

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忙しくなりましたが、更新はしていきたいです。


急流

「さてと…持ち物はこれで良いかな?」

(一人暮らしが長いと、思わず口から独り言が漏れてしまう。俺でこれなら音無さんは酷そうだな…。)

朝から失礼な事を考えながら身支度をする。

 

玄関から外に出て陽の光を浴びると、体に光が満ちるような気がした。

いや、気のせいではないようだ。昨日の体験の事や寝不足もあって疲労困憊していたはずだが、気付けば事務所まで走って行けそうなくらいな気力が湧いていた。

「うぅん…光合成…?何にせよ便利だなぁ。」

家の外だというのにまた独り言が漏れる。

 

「おはようございます!」

いつものように出社する。まあ、普段は彼が一番なせいで返事がくる事はない。

「これはこれは、プロデューサー殿おはようございます。」

「えっ!新堂さん!?」

「車の用意は出来てございます。ささ、こちらへどうぞ。」

いつものようでは無かった。伊織の執事の新堂さんが俺を出迎えてくれた。

 

車へと案内され、促されるまま乗車する。

いつの間に来たのだろうと不思議がる彼に新堂さんは微笑む。

 

「高木社長からお話は伺っております。もちろん、プロデューサー殿の事もです。」

「は、はぁ…新堂さんも、もしかしてご存知で…?」

話が早くて助かるとは思ったが、新堂さん自身がどこまで関わっているのかを知りたかった。

「ええ。旦那様より巨人の情報収集チームの責任者に任命され早30年が経ちました。」

「と、いうことは…社長が遭遇してからですか…?」

新堂さんは底の見えない方だと常に思っている彼だが、今日は一段とそれを感じた

「ええ、旦那様としても高木社長のお役に立てるならと張り切っておられました。ただ一つ承知して頂きたいのが、成果は無きに等しいということです。」

「そういえば…社長もそんな事を言っていたような…」

「世界中に巨人の伝承はありますが…その中から件の巨人に関連していそうなものを厳選してみても、正体、目的等といったものは何一つ判明しませんでした。」

「ええ、社長から伺いました。」

「左様で御座いますか。御承知頂き、ありがたく思います。

天下の水瀬グループ。

その水瀬が30年の歳月を掛けても何も分からないらしい。

だが、これからはどうだろうか。手掛かりとなる物を2つも持っているのだ。いや自分も含めて3つか、そう考えた彼は懐を探りはじめる。

「その、新堂さん…これをご覧になって頂けませんか?」

巨人の力の源。それを解明出来ればかなり研究が進展するはずだと信じ、それらを手渡した。

「これは…一体?一つは銃のように見えますが…。こちらは…?」

新堂さんは素直に受け取った。

「それは、巨人へ変身する為に必要な道具です。もう一つは仰る通り銃です。」

銃のような気がしていた昨日とは違いはっきりと断言する。

得体の知れない情報がいつの間にか身体に染み渡っているのを実感する。ただ不快には感じないのも確かだ。

「おおっ…!これは……。」

しげしげとそれらを見つめる新堂さんの顔には、驚きと喜びが入り混じったような色が浮かんでいた。

「実はですね…調査チーム拡大の為、これまでにいくつかの財閥や名士に協力を仰いできたのです。ただ、事が事ですからまともに取り合って貰えませんでした。」

確かに、いきなりそんな話をされても信じる人なんてそうそういないだろう。

律子や音無さんだって本当はどう思っているかは分からない。

「しかし、これがあれば別です。確固たる証拠があれば…!」

静かに力強く新堂さんは語る。

 

 

 

 

「さあ、到着致しました。」

着いた場所は、ヨーロッパの宮殿のような水瀬家の大豪邸、では無く…

「……酵素研究所…?」

山中の開けた場所に建てられた、古い一軒家であった。そう、一軒家なのだ。

表札があるべきところには木の板が貼り付けられている。そこには剥げかけた字で酵素研究所とだけあった。

「ささ、中へどうぞ。」

「あ、どうも…。」

新堂さんに促されるまま建物の中へ入った。

「お邪魔します!!」

 

「こ…れは…?」

彼の予想では古ぼけた外観とは裏腹に、中には最新の研究設備があったり何人ものスタッフが常駐して忙しそうにしているものだと思っていた。

だが、そこにあったのは本の山と本の壁。そこにいたのは社長と同じくらいの中年男性と数人のスタッフだった。

その中の一人が俺を見つけるなり近づいてきた。

(伊織のお父さん…水瀬グループの会長だろうか?)

 

「遠い所をよくおいでくださいました。先ずは研究所にようこそ。私は水瀬と申します。」

「お、お初にお目にかかります…。私はこういう者です。」

意外とフランクな態度にすこし安心を覚えつつ名刺を渡す。

「ああ、これは丁寧にどうも。では私のも受け取ってください。」

相手の名刺を受取り、会長の文字を確認する。

(やっぱりこの人が伊織の…。)

「伊織がいつも世話になっています。」

「あ、いえ、とんでもありません。とてもしっかりされたお嬢さんで…私が助けられる時もあります。」

「いやいや謙遜なさらず。新堂や高木社長を通じてご活躍は伺っておりますよ。これからもよろしくお願い致します。」

 

 

色々と話をしてみた。この案件に関わる事、伊織の様子や俺自身の事。

終始笑顔な所を見ると、そこまで悪い印象を抱かれていない事がわかった。

「もしかしたら娘が近い内にまたわがままを言うかも知れませんが、どうか子供の言う事だと思って聞き流して頂ければ幸いです。」

「えっ!?…いえ、どんな事であれアイドル一人一人としっかり向き合うと決めているので…。」

意外な言葉に、おかしな言葉が出てしまう。

ここのところ伊織と接する事が少なくなっていた。

仕事への不満を口にする事の多かった昔と違い、普段は真面目なくせにそういう時に限って何かしらのわがままを言うのだ。

しかも律子では無く俺に。残業や疲れが溜まっている時は遠慮してくれているが…。

数多の産業でトップクラスの品質、シェアを誇るグループの会長ではあれど、やはり父親という事だろうか。直接話さず新堂さんからの話だとしても、娘の事が手に取るように分かるのだろう。しかもそれが一回や二回では無いことも知っているらしい。

 

「さてと、では詳しい話に移らせて頂きますが…。」

「?」

水瀬さんは突然苦々しい顔になって呟いた。

「申し訳ない、ここに来るまでに聞いたでしょうが、巨人に関して分かっている事はほとんどないのです。関連性が認められたのは…この資料に載っている事だけで…。」

10枚の紙を手渡しバツが悪そうに目を伏せる

一枚目は社長の証言。

二枚目以降はその証言に当てはまる巨人の伝承のまとめだ。

「この研究所にある書物は、世界中の巨人伝説や神話を集めたものです。本棚のものが解読済みのもので、それ以外は未だに解読が出来ていません。」

「未解読…?」

「ええ。きちんと処理をされたものばかりではないので保存状態に大きな差があるのです。中には翻訳すら出来ていない言語も有ります」

建物内のほとんどの壁は本棚に改装されている。膨大な数の書物だが、その中であの巨人と少しでも関連があるものは手元の9枚きりだ。

そして、その9枚の資料の内容も神話や伝説などといったものである。

「出来れば、グループの総力を挙げて調査したかったのですが…動かす組織が大きければ大きいほど一つ一つの決定に確固たる理由が欲しくなりましてね…。」

どんなにトップが立派でも、それを支える下の者達も同様に立派だとは限らない。

目先の利益、自分たちの常識の範囲でしか考えられない者が多数だろう。巨大な組織の最大の弱点とも言える。

 

「安心して下さい。新堂さん、あれを水瀬さんに…。」

だが、物的証拠のある今ならどうだろうか。ちょっと調べれば下手な作り物じゃない事くらいは簡単に確かめられる。

「かしこまりました。旦那様、これをご覧ください。」

「ん?なんだね……これは!!」

 

 

「しかし、本当に良いのかね?」

「ええ、私が近くにいる時でしたらなんの問題もありません。」

快く承諾する。

「せめて、巨人や銃のエネルギーの源が分かれば…。」

解析出来たとしても、それを実際に開発出来るとは限らない。だが、何も分からないよりかは遥かにマシだ。

「あとは、俺の体ももしかしたら貴重なサンプルになるんじゃないかと。」

「本気で言っているのか!?君!!」

水瀬さんは良識を持っている人だ。俺の言葉が何を意味しているのかも即座に理解したらしい。

「ああ、えっと、俺の体調に異変をきたすような事は流石に承諾しかねますが。」

急いで取り繕う。慌てているせいか敬語が抜けてしまった。

(うん、サンプルって言い方が良くなかったんだな…。)

「その、他の人に比べて何が違うのか確かめるだけでも…。」

勝手なイメージだが、大きな組織のトップは目的の為なら手段を問わないようなところがあると思っていた。水瀬さんはどうやら違っていたようだ。

「ふむぅ…。まあいい。では一つ二つここでも出来る事が有るから手伝ってくれないでしょうか?資料はまた時間のある時にお願いします。」

「もちろんです。こちらこそお願いします。」

そうだ、今しているのはビジネスの話ではない。あくまで水瀬さんが高木社長の為にとしている事だったな。

俺を酷使したり、やり込める必要などそもそも全く無いのだ。

 

「さあ会長!新堂さん!さっそくやりましょう!」

突然声が響き驚く。白衣に身を包んだスタッフ達がじっとこちらを見ていた。

そして、会長の頷きと共にゾロゾロと動き始めた。

 

 

 

 

「本日はどうもありがとうございます!」

俺の元気な声が響く。

「あなたのおかげで、長年の問題がようやく片付きそうです。」

水瀬さんも負けず劣らず元気な声だ。

握手と笑顔を交わす。

「また、別の設備での実験にもご協力お願いします。」

「ええ!共に頑張りましょう!」

研究スタッフ達とも握手を交わす。

彼らにとっても色々な意味で意義のある1日だったことは想像に難くない。

「では高木社長にもよろしくお伝えください。さあ、新堂。」

「かしこまりました。事務所まででよろしいでしょうか?」

新堂さんに手招きされ車へ入る。

「お願いします。…それでは皆さん、また近い内にお会いしましょう。」

 

 

「ふぅ…。」

(30年間の努力は無駄では無かった。途中で投げ出していたら、今日みたいにはいかなかっただろう。)

密かに感傷に浸る。

「どうされました?会長?」

スタッフの一人が様子を伺う。

「いや、私が信じる人を信じてこれまで付いて来てくれた君達には本当に感謝しているのだよ。」

(本当に長い30年だった。)

 

 

 

「プロデューサー殿。」

ふと新堂さんに呼ばれた。

「はい、なんでしょうか?」

「これからも伊織お嬢様を、どうかこれからもよろしくお願いします。」

そこにいつもの柔和な微笑みはなかった。ただただ静かな顔だった。

「もちろんです。プロデューサーとしても、一人の人間としても彼女を見守り、導いて行きます。」

こう言う他は無いが俺の本心を素直に語る。

元々俺が伊織のプロデューサーだった訳では無い。だが、だからと言って伊織から目を背けるなんて事は絶対にしない。

「新堂さん。伊織が入った頃や自分が来た時とは違って765プロは大所帯になりました。ここまで成長出来たのは、伊織達自身が互いを磨きあい輝いてきたからです。沢山の宝石達が765プロに集まってくれたのはそうやって輝いて大勢の憧れの的へと上り詰めた彼女達がいたからです。」

ついつい興奮してしまう。だが、それを見ていた新堂さんの目は温かかった。

「これからも彼女達の応援をよろしくお願いします。」

他にも伝えたい事は沢山ある。だが悲しいかな。思ったよりも自分はボキャブラリーが無いようだ。

「ええ、もちろんですとも。お嬢様は、本当に良い人達に囲まれて……私も嬉しい限りです。」

まるで自分のことのように喜んでくれる新堂さん。そんな人がいてくれるから彼女達はより一層の輝き増して俺たちに夢と希望を届けてくれるのだ。

プロデューサーとしても水瀬伊織のファンとしてもこんなに嬉しい事は無い。

俺もまた自分の事のように喜んでいた。

 

 

 

 

「ただいま戻りました!」

事務所の扉を開ける。まだ8時だ!

「あ、おかえりなさい!」

ふりむいて挨拶を返すこのみさん。

「ようやく来たわね!遅いじゃない!!」

待ちかねた様子の伊織。

「このみさんお疲れ様です。伊織は…そうか今から帰りか。」

そうだ新堂さんは俺を送ってたんだっけな。

「今日はもう遅いから勘弁してあげるけど、明日はあたしに付き合ってよね…。」

俺と入れ替わるように入口に立つとボソッと呟く。

もう遅いからとは言うものの本当は他の人がいるから恥ずかしいだけだろう。

「ああ、明日は楽しみにしてるよ。」

「あら、何よ。随分素直じゃない?」

まあその通りではある。このみさんの視線が少し気になるが、伊織に返事をする。

「そうだな…。」

微笑みながらそれだけ言うと流石に恥ずかしくなったのか、そそくさと逃げてしまう。

「また明日なー!!」

ちょっと大きな声で呼びかける。

 

「伊織ちゃんと仲良いのねぇ…。」

このみさんが何やら不機嫌そうだが、どうしたのだろうか?

「そうですか?まあ、なんだかんだ言って子供なんです。色々と我慢出来ない事も有るでしょうし、多少は…。」

「大人だって我慢出来ない事はあるのよ?」

(例えば勘違いさせるような事を言ったり、例えばあずさちゃんや風花ちゃんにデレデレしたり、例えば……)

 

「ええ、その時は俺が付いてますから。」

 

(いや、つまらなことは考えないようにしましょ。どうせ伊織ちゃんや私の思いにだって気付いて無いのだろうから。)

 

 

「あら〜プロデューサーさん、おかえりなさい。今お茶を入れてるんです。」

給湯室からひょこっと顔を出したあずささん。手には急須の蓋がある。

「ありがとうございますあずささん。」

とりあえず手洗いとうがいを済ませ、ソファーへ腰掛ける。

「はい、プロデューサーさん。熱い内にどうぞ。ほらこのみちゃんも。…あら、伊織ちゃんは帰っちゃいました?」

湯呑みを持ちながらキョロキョロするあずささん。

「はい。俺が新堂さんに送って貰ったので、その入れ替わりに…。他には誰が残ってますか?」

「ううんと、事務所には社長と小鳥さんがいます。さっきから話し合いをしているみたいで…。」

律子いないのだろうか。ふと気になったが、あずささんがそれを見越してこう言った。

「律子さんは劇場の方にいますよ。他には静香ちゃんと歩ちゃん、それから美也ちゃんと風花ちゃんですね〜。」

「ありがとうございます。律子がいるならとりあえず劇場の方は安心ですね。あ、あずささんも座って下さいよ。」

三人でずずずっとお茶をすすり、ため息を吐く。あまりに見事なタイミングで思わず笑顔がこぼれた。特別な事をしている訳では無いが、それが一番なのだと身に染みる。

(ふぅ、出来ればこのまま何も起こらないで欲しいなぁ…。)

自分を省みたとき、特別になった感じはあまり無い。何も無ければ、このまま普通の人間として自然にやっていける、なんて思ってしまった。

「ふぅ〜。……そういえばプロデューサーくん、水瀬グループの会長さんからの要請で出張したって聞いたけど、何だったの?伊織ちゃんがそんな事、私聞いてない!って言ってたけど…?」

まあ、聞かれるよなぁ…。

「そうですねぇ、私も気になりますね〜。伊織ちゃん新堂さんからも教えて貰えなかったって言ってましたし。」

ずいずいっと二人に迫らせ少し後ずさる。

胸と顔の圧迫感は凄まじかった。

「あ…あのー、ちょっと人には言い難いといいますか…その…社長の判断を仰いでからではいけませんか…?」

勝手に話すべき事では無い…そう思った故の返事だった。

二人は露骨にがっかりしたようだったが仕方あるまい。

「そうですか…残念です。」

しょぼくれるあずささん。

「はあー、まだまだ信頼が足りないのかしら…なんてね…。」

しょぼくれるこのみさん。

本気で凹んでいるように見えた。

ふと思い返してみると音無さんと律子に打ち明けようと言い出したのは自分だという事に気付いた。

(ううむ、どうしようか…。社長はあの時乗り気じゃ無かったよな。許可してくださるだろうか…。)

二人の様子からして、社長と話をするまでは帰らないだろう。

だがしかし当の本人は音無さんと話をしている。それが終わるまでこの空気に耐えねばならな。

 

皆しばらく黙ってお茶をすすっていた。

 

社長室から足音が聞こえる。どうやらようやく話し合いが終わったらしい。

ガチャりとドアが開き、二人が出てくる。

 

「お疲れ様です!先ほど戻りました。」

「ああ、その様子を見る限り大丈夫だね。」

社長は明るかったが、

「あ…プロデューサーさん、お疲れ様です。」

音無さんは微妙な表情をしていた。

そしてしきりに俺と社長を見比べている。

「小鳥さん…?どうかしたんです…?」

あずささんも変だと思ったようだ。このみさんも怪訝な顔をしていた。

「その…プロデューサーさん、ちょっと来てもらって良いですか…。」

音無さんが遠慮がちに俺を社長室へと手招きする。

「え?ええ…構いませんけど、どうしたんです?」

「詳しい話は中で…。」

 

さっきまで社長と話をしていたらしいが、それに関係しているのは間違いないだろう。

とりあえず社長と入れ替わるような形で中に入る。

社長とすれ違ったとき、やけに上機嫌な様子だったのが気になったが今はいい。

 

「それで…一体どうしたんですか?」

まずはどんな話か確認をしておこうと思った彼はとりあえず声をかける。

「えっと…その……」

やけに歯切れが悪かった。

何やら悩ましげな顔をしている。しばらく沈黙が続いた。

 

 

 

音無さんが意を決したように息を吸った時だった。

突然大きな、何かが砕けるような音が響き渡り悲鳴と破壊音が交互に耳を裂いた。

急いで窓から外を除く。しかし、音の発生源は反対側だったらしく、特に変なものは見あたらなかった。

「っ!音無さん、話はとりあえず後にして外を見てきます。危険があるようなら避難して下さいよ!」

「わ、分かりました。気を付けてっ!」

 

社長室を飛び出し、声をかける3人には目もくれずに駆け出す。

 

ようやく外に出た時には少し息が上がっていた。

キョロキョロと慌ただしく見回す彼を、逃げまどう人々が追い越す。人の流れを辿り、なんとか原因だけでもわからないかと思っていた彼だった。

「どっちだ…。…?あれは、動いてる…のか?」

彼の目に入ったのは、ビルよりも高く大きな何かだった。暗くてよく見えてはいなかったが、肉の塊のようなものがうねうねと動いているようだった。

その時突然、頭の中で激しい何かが溢れ出したように思えた。

懐のそれが心臓のように脈打っていた。

 

「あっ……いや…そんなはずは、いやしかし…。」

蠢めくそれの正体に気付いた彼は信じられないというように目を見開きその場で柱のように固まった。

「プロデューサーさん!!」

「へぇっ!?あ!音無さん!!」

音無さんの叫び声で我に帰る。よく見れば他の3人もいる。特に社長は彼と同じく信じられないといった顔だった。しかしそれも当然だろう。

 

「と、とにかく逃げましょう?!」

「逃げるって?!どこに!!」

いつになく慌てるあずささんとこのみさんだった。

「とにかくあいつから距離をとりましょう!こんなんじゃ車も進まないから走るしかないです!」

 

女性陣には申し訳ないが、これがベストな選択に違いない

皆が皆我先にと逃げ出し、あちこちで事故が起こっていた。

恐怖が強すぎて、簡単な事も分からなくなっているんだろう。

 

 

走りながらふと後ろを振り返ると、心なしか奴が大きくなったように感じた。

 




今までよりも文字数は多くなりましたが…。
粗が目立ちます。
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