Scribed a bullet hole   作:byとろ

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byとろ名義でツイッター始めました。

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そして弾君のパワーインフレがすごい。ギャグみたいになっちゃった。



四月三日、加筆修正しました。


Meaning of violence

弾はかつてある少女に『自分の為の暴力以外には使わない』と言っている。

 

しかし、同時に一夏と鈴には『暴力に染まるな』とも言っている。

 

自分は暴力しか使わないと言っておきながら、他人には暴力を使うなという。矛盾しているが、それも仕方のないことなのだ。

 

大陸を持ち上げることができる人間を味方につけるということがどういうことか。

 

その人間が誰かのために動くということはどういうことか。

 

それは、恐怖による支配と何ら変わりなくなる。

 

例えば、ISの生みの親である篠ノ之束。もし彼女がどこかの国に所属したらどうだろう?

 

行き過ぎた科学力と兵力。

 

各国のパワーバランスが瞬く間に崩れ去る。そして彼女のいた国が頂点として君臨することになるはずだ。

 

かつてヒトラーがそうしたように、自分たちが上位種であると勘違いした支配が始まってしまうだろう。

 

ある一定のラインを超えたところで、『助力』すらも『暴力』に変わる。

 

人間を止めれば、一人でいなくてはならないという義務を背負うことになる。

 

種からの逸脱とは、孤独と同義なのだ。

 

だから、剥いで捨てた人間の皮を被らなければならない。

 

孤独であることを受け止められず、一人で存在したくはないと思うのならば。

 

 

 

>>1

 

 

 

千冬がホームルームを強引に終わらせたので、一夏と弾はシャルルを連れて素早く教室を出た。このまま教室にいれば女子と着替えなければならなくなるからである。

 

さっとシャルルの手を取り更衣室へ向かいながら、一夏はシャルルに大まかな説明をしていく。千冬からめんどうを見るようにと頼まれたのだ。

 

 

「とりあえず、男子は空いてるアリーナ更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから、早く慣れてくれ」

 

「う、うん……」

 

 

シャルルが落ち着かなそうに頷いた。一夏の説明を聞いていたかも怪しい。

 

 

「どうした?トイレか?」

 

「ち、違うよ!」

 

「無駄話はそこまでにしとけ」

 

 

弾が冷たく言い放つ。一夏も真剣な顔になって歩く速度を上げた。

 

シャルルはそれを見て、戸惑うしかなかった。彼らが放つ雰囲気はまるでここが戦場なのではないかと思わせるほどなのだ。ただの授業移動に、どんな危険性が潜んでいるというのか。

 

意を決して、シャルルは一夏に訊いてみた。

 

 

「ね、ねぇ……」

 

「ん?どうした」

 

「いや、なんでこんなに――」

 

 

殺伐としているのか?

 

そこまで言う前に、シャルルの目の前で一夏と弾はそろって身を硬直させた。

 

 

「……弾」

 

「ああ、来たぜ……!」

 

 

一夏がごくりと生唾を飲み込んだ。先程から繋がれている手から、一夏がかなり緊張していることがシャルルにはわかった。

 

自然、シャルルも警戒せずにはいられない。

 

恐る恐る、一夏お弾の前を覗き込んだ。

 

そこにいたのは――

 

 

「ああっ!転校生発見伝!」

 

「しかも織斑くんと五反田さんもいるじゃない!」

 

 

男子三人を見つけてきゃっきゃと騒ぐ他クラスの女子だった。少なくない数の女生徒が通路を埋める。どこのクラスもホームルームが終わったのだ。

 

 

「な、なんだ。ただの生徒じゃないか……」

 

 

物珍しげにこちらを見てくる生徒たちを見て、シャルルは安堵しながらつぶやいた。どんな化け物が出てくるかと思えば、ただ授業に行きにくくなるだけだったのだ。

 

あの『世界最強』織斑千冬は厳格そうだから、おおかた授業に遅れるのが嫌で早く行きたかったのだ。

 

しかし、シャルルのつぶやきを聞き逃さなかった一夏は、露骨に脂汗を流しながら苦々しそうに言った。

 

 

「ただの?それは違うぞ……」

 

「え?」

 

「あいつらは、弾が鍛えたんだ。鍛えてしまったんだ」

 

「え?え?」

 

 

五反田弾に関しての情報はシャルルの耳にも入っている。たしかにかの『魔人』が鍛えたのならば、とんでもなく強い集団になったのかもしれないが、それでも今現在において脅威ではないだろう。

 

実際は鍛えたというよりも、弾の戦いぶりを見た生徒が彼の師事を仰ぎ、それをめんどうくさがった弾が毎日鍛錬とはとても言えぬ『俺が腕を振って立ってたやつはまぁ、頑張ったね』という超投げやりなものによって勝手に鍛えられていった生徒たちである。

 

 

「そこまでならまだ良かったんだ。問題だったのは――あいつらが馬鹿だったってことなんだ……!」

 

「え?」

 

 

思わずシャルルが聞き返す。だが、聞く意味などもうなかった。

 

なぜなら、すでに彼女らの会話が耳に届いていたからである。

 

 

「うえへへへへ……美男子がが三人……じゅるり」

 

「織斑×デュノア、いやむしろデュノア×織斑……これはいける……」

 

「捕まえて、ひん剥いてしまおう……」

 

「「「ふふふふふふ負腐」」」

 

 

彼女らの笑い声に一夏が戦慄した。彼の中にあるトラウマを呼び起こしたのか、そのまま頭を抱えて体を震わせる。

 

弾がそれをブレーンバスターからの四の地固め、そこから足を掴んで空に放り投げ〆にオープン・ハンド・ブローで吹き飛ばすことによって正気に戻し、再び騒ぐ女子たちを見つめるという構図に戻った。

 

 

「がががががががががががががが……」

 

「あの、五反田君。織斑君が別の意味で帰ってこないんだけど」

 

「俺のことは弾でいい。それと、一夏は殴っとけば治る」

 

「いや、殴ったからこうなったんだよ!?」

 

 

 

※無理だとは思いますが危険ですので、絶対に真似しないでください。

 

 

 

「……それで、ここからどうするんだ弾」

 

「きゃあぁぁぁっ!たちあがったぁっ!?」

 

「うおっ!耳元で叫ばないでくれ」

 

「ででででででも、だ、だだ、だって!だ、大丈夫なの織斑君!?」

 

「……?別に何ともないぞ。それと、名前でいいから。俺も名前で呼ぶし。三人だけの男なんだ」

 

「う、うん……」

 

 

さわやかに話す一夏を見て、シャルルは若干引き気味に頷いた。

 

そんなシャルルの様子を見ていた弾が、意味ありげに笑う。

 

弾の笑みを見て、ぞっとした。

 

総てを見透かされているかのような視線に、シャルルは総毛だつ。

 

まさかまさかまさか――!

 

思考が凍る。一つだけが頭の中で回っている。自分の秘密がばれているのではないか、と確証もないのに恐怖した。

 

 

「一夏、俺は先に行く。そいつを頼む」

 

 

シャルルの不安をよそに、弾は一夏に言った。

 

 

「はぁっ!?ちょっと待て、置いてくのか!?俺らを!?見捨てるのかよ!」

 

「がんば」

 

「サムズアップするなぁぁぁッ!」

 

 

一夏が叫んだ。シャルルの不安もどこへやら、こんなお茶らけた人物が秘密を知っているわけがないと自分に言い聞かせる。

 

さて、と弾がじりじりと迫ってくる女子たちに向き直った。

 

 

「いくら五反田さんだとしても、この人数を突破するのは無理!」

 

「おとなしくひん剥かれてください!」

 

「フラグ立て乙www」

 

 

女子たちが息巻くのを見て、弾はふっと笑う。

 

次の瞬間には、弾は女子たちの壁を抜けたところに立っていた。

 

 

「お前らは今の俺の動きを少しでも見ることができたか?

動作の予兆を感じることができたか?

五感のどれか一つでも捉えることができたか?

できなかったのならば、俺を剥くなんて夢物語にもなりゃしねぇぜ」

 

 

それだけ言い残して、弾は掻き消えた。

 

 

「くっ……さすがは五反田さん。今の私たちでは到底かなわない……!」

 

「さすが弾だなぁ……置いていかれたけど」

 

「一夏なにあれ!?あれが噂の『ジャパニーズNI☆N☆JA』!?」

 

「いや、シャルル。ただの規格外だ」

 

 

シャルルが目をキラキラさせて叫んだ。

 

気持ちは分からなくもない。一夏も昔は興奮して叫んだものだ。

 

弾を取り逃がして沈んでいた女子が、唐突に顔をあげた。

 

 

「しかし!そうしかし!」

 

「私たちには別の目標が存在している!」

 

 

そう言うや否や、目を爛々と輝かせた狩人が一夏とシャルルに飛びかかる

 

 

「おおうっ!?やべぇ、逃げるぞシャルル!」

 

「う、うん!」

 

「「「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」

 

 

 

>>2

 

 

 

狂った女子との逃走劇も終わり、一夏とシャルルはどうにか更衣室までたどり着くことができた。

 

 

「時間ぎりぎりだ。早く着替えちまおう」

 

 

時計を見れば本当にギリギリだったので、さっと制服を脱ぎ、一呼吸でシャツも脱ぎ捨てる。

 

 

「わぁっ!?」

 

「ん?」

 

 

シャルルが一夏を見て硬直する。心なしか顔も赤い。

 

 

「どうしたんだ?早く着替えないのか?」

 

「い、いや、着替えるけど。でも、その、あっち向いてて、ね……?」

 

「???別に着替えをじろじろ見る趣味はないが……」

 

 

なんだかシャルルの様子が変だったが、気にせずISスーツに着替えてしまう。着替え終われば、更衣室にいる意味はない。すぐにグラウンドに向かう。

 

 

「シャルルのスーツ着やすそうだな。どこのやつ?」

 

「デュノア社製のオリジナルだよ。ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー」

 

「デュノア?」

 

「あ、うん。僕の家だよ。父が社長をしているんだ」

 

「へぇ!御曹司、ってやつか?すげぇなぁ」

 

「一夏もすごいと思うよ?あの『世界最強』の弟なんだから」

 

「ハハハ、こやつめ」

 

「何がこやつめ、だ。とっとと列に並べ」

 

「えっ!?千ふ「バシィンッ!」――……織斑先生」

 

 

いつのまに千冬が一夏の後ろに立っていた。出席簿を食らった頭を抱えながら、一夏はシャルルと一緒に一組の列の最後尾に並んだ。

 

 

「ずいぶんゆっくりでしたわね」

 

 

隣はセシリアだった。四月のクラス代表決定戦(セシリアに言わせれば決闘)以降、何かと一夏に構ってくるようになったのだが、一夏はその真意を理解できていない。

 

 

「またあの集団ですの?」

 

「そうなんだよ。さすがにやってられない」

 

「二月続けて女性に叩かれるような方には丁度良いのではないかしら?」

 

 

セシリアが冷たく言い放つ。その視線は氷点下を軽く下回っている気がした。

 

その会話を聞いて、後ろの二組の列に並んでいた鈴が食いついてきた。

 

 

「なになに?アンタ、またなんかやらかしたの?」

 

「いや、鈴。なんでもないんだ」

 

「なんでもないわけないでしょう?こちらの一夏さん、今日来た転校生の女子に叩かれましたの」

 

「はあ?一夏、アンタ本当に馬鹿ね」

 

「……安心しろ。馬鹿は私の目の前にも二人いる」

 

「「お、織斑先生!?」」

 

 

セシリアと鈴の声がハモる。恐怖からか、壊れたおもちゃのように体を震わせていた。

 

バシン!バシィン!

 

青い空の下、今日も出席簿が飛んでいた。

 

 

 

>>3

 

 

 

要約。

 

山田真耶はすごかった。

 

ISのデモンストレーションとしてセシリアと鈴が組み、二対一で真耶と戦ったのだが、結果は真耶の勝ち。急造の、しかもいがみ合ってろくに連携などしていなかったとしても代表候補生二人を相手に手玉に取るとは、それだけで真耶が相当な実欲者であることがわかる。

 

IS学園教師の名は伊達ではなかった。

 

それでも、セシリアと鈴は弾の所為で恐ろしく強くなっている。今回は互いに互いの足を引っ張り合う形になってしまったが、一対一ならこれ以上の成果が見込めただろう。

 

 

「さて、これで諸君にも学園教員の実力がわかっただろう。以後は敬意をもって接するように。

専用機持ちは五反田を除いて八人か。では、八グループになって実習をやってもらう。グループリーダーは各専用機持ちがやること。ではわかれろ」

 

 

千冬が言い終えると、一夏とシャルルのもとへ一気に二クラス分が流れ込んできた。

 

 

「この馬鹿者どもが……。出席番号順にグループに入れ!次にもたついたらISを背負ってグラウンドを百周させるからな!」

 

 

千冬の鶴の一声。一夏とシャルルに群がっていた女子たちは綺麗に八グループに分かれ、規律正しく並んでいた。

 

 

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

「ちひゅさん。俺は?」

 

 

弾が千冬に訊く。弾はこの実習に意味がない。弾が使っているISは普通ではないからだ。しかし、唯一人見学するのも悲しすぎる。

 

 

「ああ、お前は実習に使うISを持ってきてもらう。その後適当なグループに入ってもらいたいんだが……それより、お前今私の名前噛んだろ?」

 

「失礼、噛みました」

 

「違う、わざとだ……」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃない!?」

 

 

そんなこんなで弾は『打鉄』三機、『リヴァイブ』を二機持ってきた。担いで、それも同時に。

 

運んでいる最中に気付いたが、八グループなのにISが五機しかないというのはどうなんだろうか。絶対数的な問題でそろえるのが困難だということはわかるが、残りの三グループは手持無沙汰になるだろうに。

 

競争社会を垣間見ながら、弾はISを各班に配る。その後、適当なグループに入れと言われているのだが、さてどこのグループに入ろうか。

 

各班を見渡していると、一つだけ異様なグループがあった。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒのグループだ。

 

他のグループは和気藹々としているのに、そこだけは通夜のように静かで暗かった。

 

 

「よう、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「!ご、五反田弾!き、貴様何しに来た!」

 

「なにって、俺もここのグループに入ろうかな、と」

 

「んな!?貴様なんぞは要らん!違うところへ行け!」

 

 

ラウラが怒鳴りながら睨みつけてくるが、弾としてはなかなか懐かない小動物を相手にしている気分だ。怖いどころか微笑ましさすら感じる。

 

ラウラを小動物とするなら、千冬は百獣の王であるので、つまりはどんな動物であっても恐怖など感じない、ということだが。

 

 

「なんで貴様は私に構うんだ!」

 

「あん?そりゃあ――」

 

 

ラウラの問いに、弾はさっきまでのふざけた雰囲気を一転させ、悪魔のように笑いながら見下した。その眼差しを見てしまえば、理性も何もかもをかなぐり捨てて襲い掛かってしまいそうになる。

 

ラウラはこみ上げる『暴力』を、何とか押さえつけた。

 

そして、弾は言う。

 

 

「お前が気に食わないからだよ」

 

「……!」

 

 

ラウラは本能で悟った。眼帯で隠された左目が、ひどく疼く。

 

こいつは、人間じゃあない……!

 

 

「ああ、そうだよ。だが、お前はどうなんだろうな?

本当にお前は、胸を張って自分が人間だと言えるのか?なぁ、アドヴァ――」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!」

 

 

弾が言い終える前にラウラが限界を迎えた。瞬時にISを展開、超至近距離で周りのことも考えずにレールカノンをぶっ放す。

 

轟音と共に衝撃がグラウンドを揺らし、レールカノンの着弾点からは土煙が上がっていた。

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

「弱いなぁお前」

 

 

息を切らし、肩を上下させているラウラに弾の声がかかる。発生源は、土煙の中。

 

やがて煙が晴れ、その中から姿を現したのは無傷の五反田弾。ISすら纏っていない。

 

弾がレールカノンを弾き落したということを理解した時には、ラウラはすでにプラズマ手刀を振り下ろしていた。もはや暴力的な衝動のみで動いているラウラのそれは手加減などされておらず、当たれば肉を引き裂きプラズマがそれを焼くだろう。

 

だが、弾はそれを受け止めた。それも、プラズマ部分を。

 

バチバチと紫電が弾を貫こうとしているが、制服は裂けても肉体までを傷つけることはかなわない。

 

 

「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 

ラウラは強引に押し切ろうとするが、弾の体は押しても引いてもびくともしなかった。

 

それならば、とラウラがもう一度レールカノンを使おうとした時、弾が急に手を放した。口元を歪ませているのを見て、ラウラは戦慄する。

 

悪魔が拳を握った。

 

殺される――!

 

ラウラが死の恐怖を垣間見たその瞬間、

 

 

「何をしている!五反田ァ!」

 

 

千冬が弾を殴って吹き飛ばした。否、衝撃を逃がすために弾が自ら跳んだのだ。

 

 

「なんなんですかね、千冬さん?」

 

「ふざけるな。お前はもう帰れ。処分は追って知らせる」

 

 

千冬の言葉を聞き、弾は素直にグラウンドから出ていった。

 

千冬の背後ではラウラがISをとき、不安そうな顔で千冬を見ていた。

 

 

「き、教官……」

 

「大丈夫だ、ボーデヴィッヒ。非は明らかに五反田の方にある。罰がないわけではないが、軽いものだ」

 

「は、はい……」

 

 

どことなく安堵した顔でラウラが頷く。

 

そこへ、目撃していた生徒が心配して集まってきた。口々に励ましの言葉をかけている。

 

 

「大丈夫?けがはない?」

 

「災難だったねボーデヴィッヒさん」

 

「五反田さんってたまに変なこと言うんだよ。気にしないで」

 

 

その後、授業が再開されたが、ラウラの班は静かではあるものの、決して無言ではなくなっていた。

 

 

 

>>4

 

 

 

その日の夜、千冬は弾の部屋を訪ねた。

 

先程決まった処分を伝えるためだ。

 

ノックをし、中から声が聞こえたのを確認して部屋に入る。

 

 

「ありゃ、千冬さん。どうしたんスか?」

 

「……お前の処分についてだ。三日間の自宅謹慎。ちゃんと守れよ」

 

「へぇ、思ってたより軽いな。あの嬢ちゃんは?」

 

「ISを起動したとはいえ、所詮お前に対してだ。ボーデヴィッヒの罪は周囲の被害を考えずに行動した点だけ。罰は反省文の提出、それから私の説教」

 

「所詮は俺って、ひでぇな」

 

 

弾は口を尖らして不満そうだ。しかし、すぐにいつものにやけ顔に戻った。

 

 

「……どうして、あんなことした?」

 

 

千冬は、どうしても訊きたかったことを訊いた。今日来たのも、処分の連絡はついでであり、本題はこれだった。

 

だが、千冬の問いに、弾はにやにやと笑うばかり。一向に言おうとはしない。

 

 

「何が目的だった?ラウラに同情させてアイツに友達でも作らせてやろうと思ったのか?自分が悪役まで演じて」

 

「ラウラねぇ……。いいのかよ、名前で。まだ仕事中だろ」

 

「私の問いに答えろ――弾」

 

 

千冬の威圧で部屋の窓ガラスがびりびりと振動した。しかしそれも一瞬、すぐに弾の威圧によって相殺されてしまう。

 

 

「こんな夜更けに物騒だぜ。千冬さん、あんたらしくない」

 

「弾……」

 

 

千冬のすがるような声に、弾は観念したように首をすくめた。

 

 

「千冬さん、あんたは暴力の意味を知っているかい?」

 

「暴力の、意味?」

 

 

予想だにしていなかった言葉に、千冬は呆気にとられる。はぐらかそうとしているのかとも思ったが、弾の顔はとても真剣だった。

 

 

「これは俺の考えだが、暴力というのは何かを求めて発生する。優越、快楽、物欲……何かを求め、それが力に関わったものが暴力なんだ。つまり、暴力の意味とは求道なんだよ」

 

「何かを求める……」

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは強さこそ正義だと思っている。それは別に間違っていない。強ければ自己を通せる。そして己を貫けば、それはもはや一つの正義の形だ。

 

だが、ラウラは強さをはき違えている。あれはただの暴力だ。

 

 

「あいつがはき違えた力、それが暴力。違うな、はき違えたんじゃあない。意識せず、しかし自分ではいたんだ」

 

「ラウラが自分で……?」

 

「そう。さて、あいつは何を望んでいるのか」

 

 

もしかすると――そう言って、弾は自嘲気味に笑ってつづけた。

 

 

「人間になりたいのかもしれないな」

 

「あいつは人間だ!」

 

「知ってるさ。いくら強化素体(アドヴァンスド)だとしても、ただの餓鬼には違いない。俺たちから見ればな」

 

「あいつが、自分を人間だと思っていない?」

 

「さあな。そこまではわからない。だが、あいつは求めている。それは確かだ」

 

 

弾と話したのはそこまでだった。強引に話を打ち切られ、部屋を追い出されてしまった。

 

寮長室へ戻りながら、千冬は考える。一年とはいえ、手塩にかけて育てた家族も同然の少女のことを。

 

少女が迷っているのならば、助けてやりたいと思う。千冬は教師なのだから。

 

考えにふける彼女を、夜空に浮かぶ黄金の月が照らしていた。

 




補足。

話の流れが強引すぎると思われた方へ。

ラウラから弾への印象は最悪です。それを踏まえれば、多少わかりやすくなると思います。

弾への認識のひどさは後の伏線ですので、どうなるのか想像しながら待っていてください。
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