Scribed a bullet hole   作:byとろ

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遅くなって申し訳ありません。周りの環境が変わったためか、全く筆が進まなかったのです。そんな状況で書き上げたものですから、いつもより雑になってしまっている可能性があります。

誤字・脱字があればご指摘ください。ただちに修正します。


Military and girl

暗い闇の中を、ラウラ・ボーデヴィッヒはさまよっていた。ゆらりゆらりと無秩序に流されながら、その赤い目には何も映さず更なる深みへとはまっていく。

 

ずっとここで過ごしてきた。闇、あるいは影と呼ぶべきこの場所でずっと育ってきた。

 

卵の時点で人の温かさを知らず、情のない他人に産み落とされ、以来ずっとここにいる。光など見たことはない。

 

だけど、あの人は紛れもない光だったはずだ。敬い慕った『世界最強』は、初めて触れて、見て、聞いて感じた光だった。

 

だが、決して光源には届かない。

 

至高の存在。

 

それを盗られてしまう。かの人の顔に泥を塗った『弟』とかいう塵屑に。

 

『家族』?『姉弟』?

 

そんなものは知らない。万人が知らぬものならそれは要らないものだろう。よしんば必要だとしても、価値など極小だろう。

 

それなのに、あいつは私の偶像を簡単に盗んでいく。

 

許せない許せない許せない。

 

それは私のだ。私だけの光だ。

 

認めるものか。盗人め、貴様の全部を奪ってやる。

 

そのための力だ。

 

圧倒的な力で圧し潰す――!

 

心の内に暗い感情が芽吹いた瞬間、無秩序な闇の流れが一気に変わった。爆発のような奔流がラウラ・ボーデヴィッヒを圧し潰さんばかりに襲ってくる。

 

まさしく暴力。悪魔の如き力で弄ばれる。

 

呻きながら思い出すのは、あの悪魔。

 

あれはいったい何なのだろう。私は知らない、見たくもない。

 

だが、悪魔の見せた理不尽は究極的な力だ。私の求めているものだ。

 

吐き気がする。あんなものが求めているものだなんて。しかし欲しい。

 

なあ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。私は力が欲しい(要らない)のか?

 

欲しい(要らない)欲しい(要らない)欲しい(要らない)欲しい(要らない)欲しい(要らない)

 

 

「ああ……」

 

 

明確な答えはそこにあった。

 

それを掴みとる前に、ラウラ・ボーデヴィッヒは流れに意識を飲まれた。

 

 

 

>>1

 

 

 

「やっぱ鷹羽ベーカリーのカレーパンは最高だな」

 

 

鷹をデフォルメしたイラストが描かれた紙袋を抱えカレーパンを咥えながら、弾は廊下を歩いていた。久しくカレーパンを食べていなかったのだが、急に食べたくなって急遽買ってきたのである。

 

ちなみに、今回は弾の分だけだ。一夏の分はない。

 

芳醇な香りを漂わせ、それに負けない美味しさを誇るカレーパンに舌鼓を打ちながら、のんびりと教室に向かう。

 

次の授業はIS格闘技能に関する基礎知識と応用。いつもどおりに弾にしてみればまったく意味をなさないものだ。今回は間合いの感覚や経験で活躍する機会がある、と千冬から言われてはいるが正直やる気が出ない。

 

 

「面白れぇことねぇかな……」

 

 

ため息をついて歩いていると、

 

 

「なぜこんなところで教師など!」

 

「やれやれ……」

 

 

あーらびっくり。曲がり角の先で千冬サンとラウラ・ボーデヴィッヒが話しているぞー?チョーグーゼン。

 

居合わせてしまったものは仕方がない。ちょっと盗み聞きしていこうか。

 

露骨に下衆な思考をして、弾はできるだけ近い所に移動して素早く物陰に隠れた。離れたところで安全に盗聴することもできるのだが、今の弾は先日のことも合わせて消化不良気味である。つまり、スリルを求めていた。

 

 

「何度も言わせるな。私には私のやるべきことがある」

 

「このような極東で、何の役目があるというのですか!」

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒが声を張り上げる。それでもなお、千冬は涼しい顔をしていた。

 

 

「おねがいです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力の半分も生かされません」

 

「ほう」

 

「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません」

 

「なぜだ?」

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間を割かれるなど――」

 

「そこまでにしておけよ、小娘」

 

「っ……!」

 

 

千冬の声色が変わった。鋭く、そして強大な覇気が空間を震わせる。さすがのラウラといえど、『世界最強』の威圧をまともに受けては平然としていられない。たとえそれが、一瞬であったとしてもだ。

 

千冬の迫力に気圧され、ラウラはたじろぎ後ずさった。

 

 

「少し見ない間に偉くなったものだな。その年でもう選ばれた人間気取りとは恐れいる」

 

「わ、私は……」

 

 

ラウラの声からありありと恐怖が伝わってくる。かけがえのないものに嫌われるという恐怖だ。

 

その様子を見て、弾はある事実に至った。

 

――ああ、そうか。おまえの求めているものはそれか。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒの揮う暴力の本質。なるほど、確かにそれなら合点がいく。

 

 

「さて、授業が始まるな。さっさと教室に戻れよ」

 

「…………」

 

 

千冬の雰囲気がいつものそれに変わった。急かされるままに、ラウラは教室に戻っていく。

 

ラウラの姿が見えなくなったところで、突然千冬が弾の隠れている方を向いた。

 

 

「盗み聞きは感心しないぞ、五反田」

 

「気付いてたんスか、千冬さん」

 

「隠れるなら、カレーパンの匂いも隠しておくんだったな。興奮していたせいか、ラウ……ボーデヴィッヒは気付かなかったようだが」

 

 

弾の抱えている芳醇な香りを漂わせているカレーパンを指さしながら、千冬は肩をすくめた。

 

弾はしばし抱えているカレーパンを見下ろし、何を思ったのかその全てを口に詰め込んだ。

 

 

「はにゅうちぇるちゅにあ」

 

「しっかり喋れ」

 

 

千冬に言われた弾は高速で口を動かしてカレーパンを飲み込み、急に真顔になる。

 

まじめな空気を察し、千冬も気を引き締めた。

 

 

「どうした五反田」

 

「……水くれ」

 

「……お前に期待した私が馬鹿だった」

 

 

どうにもならんな、と千冬はため息をつき、持っていたお茶を差し出す。弾はそれをためらわずに受け取り、そして一気に飲み干した。

 

 

「ふぅ……思いがけないところで千冬サンと間接キスをしちまった……」

 

「中学生かおまえは」

 

 

半眼になり、呆れたように千冬は呟く。間接キスなど全く気にしてはいない。まぁ、ペットの犬に顔を舐められたところで何も感じないのと一緒のことだ。

 

弾も弾で「つまんねぇなぁ」と言って笑っているので、なにか反応があれば儲けもの程度のことだったのだろう。

 

 

「まっ、いいさな。でだ、千冬さん」

 

「ん?」

 

「月末にトーナメントがあったよな?」

 

「ああ、学年別で行われるトーナメントだ。おそらく、お前は参加できないだろうがな」

 

「え?マジで?」

 

「ああ、マジだ。強すぎるからな、お前は」

 

「ああ……まぁ、でも実力確認のためにやるんだろ?だったらさ」

 

「それはそうだが……五反田、お前は何が言いたいんだ?」

 

 

そこで悪魔は、五反田弾は静かに嗤った。

 

とびきりのサプライズを仕掛けるように。

 

 

「一つ頼みごとがあるんだよ――」

 

 

 

>>2

 

 

 

「はあああぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 

鈴の叫びがアリーナの静寂を切り裂いた。『甲龍』の近接武器である『双天牙月』が空を唸らせながら振り切られるも、鈴が対象としていたその人物は頭上に移動していて、そのままレールカノンを撃ち出してくる。

 

鈴に迫る弾丸を、青い閃光が吹き飛ばした。

 

セシリア・オルコットの駆る『ブルー・ティアーズ』、そのメインウェポンである『スターライトMkⅢ』の一撃だ。

 

 

「まったく、世話が焼けますわ」

 

「別に頼んでないわよ」

 

 

軽口をたたきながら、鈴とセシリアは放課後のアリーナで急に喧嘩を吹っかけてきた相手、ラウラ・ボーデヴィッヒと対峙する。

 

襲撃者のラウラが展開しているのは漆黒のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』。武器を構えながらこちらをにらむ眼差しはまさに水のよう。なるほど、『ドイツの冷水』とはよく言ったものだ。

 

だが、その程度でひるむ鈴とセシリアではない。というよりも、この程度ではひるもうとしても無理な話だ。五反田弾という理不尽を知っている彼女たちは、対峙した時に味わう真の恐怖と絶望をも知っているのだから。

 

 

「さて、行きますか。セシリア、援護頼むわよ」

 

「ええ。ですが、私の射線上には入ってこないでくださいね?撃ち抜いてしまいますわよ」

 

「ハッ、上等――!」

 

 

再び『双天牙月』が振り下ろされる。ラウラはそれを避けず、プラズマ手刀で鈴の一撃を受け止めた。そのままレールカノンが火を噴くが、衝撃砲で相殺され爆風で二人とも大きく吹き飛んだ。

 

体勢を立て直すラウラに、無数の青い光が迫る。休む暇を与えずセシリアが放ったそれは明らかに展開されているビットの数よりも多い。フレキシブルを応用して、一発目とそれ以降を同時に相手に叩き込むことが可能なのだ。

 

ラウラは防げるものは防ぎ、躱せるものは躱すという器用なことをやってのけ、無数の同時攻撃を何とかいなす。

 

しかし、ラウラの顔に焦りはない。そう、確かに焦りはないのだが、どこか緊張しているようだった。

 

二人を相手にするのが無謀なことだと気付いたのかと思ったが、かれこれ十数分は続く攻防を鑑みるにそれはあり得ない。

 

その緊迫した顔は、どこか焦っているようにも見えるのだが、しかし彼女は冷静さを欠いているというわけでもなさそうだ。

 

しかしそれはセシリアと鈴の見解であり、ラウラ・ボーデヴィッヒが二人と出会う前からこうならばその限りではないのだが。

 

 

「考えても仕方ないわよね」

 

「ええ、わたくしもそれには同意ですわ」

 

「なら――」

 

「「全力で圧し潰す!」」

 

 

セシリアと鈴が同時に叫び、ラウラへと襲い掛かる。その時、一瞬ラウラが何かに反応したように体を震わせたのを二人は見ていた。

 

変化は劇的。結果は痛烈。

 

ラウラの動きが、凶悪な獣のそれへと変貌した。

 

 

「アアああアアアァァァっァァァァァッぁぁッ!」

 

 

絶叫し、レールカノンを遠慮なしにばらまく。セシリアと鈴は突如変貌したラウラに驚愕していたが、しかしそこはやはり代表候補生。瞬時に我に返り後退、轟々と迫る弾丸を迎撃しながら体勢を立て直す。

 

止まらない弾丸の雨をいなしながら、鈴が毒づいた。

 

 

「一体なんなのよ……!」

 

「知りませんわ。ですがおそらく、先程の会話にきっかけがあったのでしょう」

 

「んなことは分かってるわよ!」

 

 

きっかけがあった、と言いながらも、セシリアと鈴はどの言葉が彼女のトリガーになったかおおよその見当はついていた。ラウラ・ボーデヴィッヒの強さに対する執着を知っていたからこそだ。

 

 

「まったく、面倒くさいわねぇ!」

 

「それにも同意させていただきますわ!」

 

 

間一髪、せまってきた弾丸をよける。すると、積んでいた弾が終わったのかレールカノンの嵐が止んだ。二人はほっと胸をなでおろしたが、それで止まる今のラウラではない。

 

 

「……ッッ!!!」

 

 

もはや声にならぬ叫びをあげて、プラズマ手刀で切りつけてくる。鈴が『双天牙月』でそれを止め、セシリアが『スターライトMkⅢ』のトリガーを引いた。

 

ラウラは鈴を蹴り飛ばし、その反動でセシリアの一撃をかわす。だが、フレキシブルによって軌道を変えられた一撃が再びラウラを襲う。それをもろに食らい、ラウラは吹き飛んだ。

 

 

「おりゃあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

そして、そこに待ち構えていたのは蹴り飛ばされた鈴だった。ラウラが体勢を整える前に『双天牙月』を振り下ろす。

 

風をうならせながら特大の一撃がラウラに落とされた。しかし、ラウラには当たらなかった。当たる直前で攻撃が鈴の体ごと止まっている。

 

 

「んなっ……!?」

 

 

呆気にとられる鈴にプラズマ手刀が叩き込まれ、間髪入れずにワイヤーブレードが射出される。両肩、そして腰部左右に取り付けられた計六つの三次元躍動で接近してくる攻撃に、鈴は回避を間に合わせることができなかった。

 

セシリアが助けに向かうが、やはり突然空中でその動きが止まる。

 

ラウラはそれを一瞥すると鈴に向き直り、何の躊躇もなしにぼろぼろとなった彼女にプラズマ手刀を振り下ろした。

 

 

「なにしてんだお前ぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

今にも鈴を貫こうとしていたラウラのプラズマ手刀が、横やりをいれてきた何者かによって弾かれた。ラウラは続けざまに放たれた射撃を回避するために鈴からワイヤーブレードを回収し、スラスターを逆噴射して一気に攻撃範囲から抜け出す。

 

 

「大丈夫か、鈴!?」

 

「い、一夏……?」

 

 

ラウラの手刀を弾き飛ばした人物、織斑一夏が鈴の問いに首を縦に振った。それを見て安心したのか、鈴はいつもの笑みを浮かべて「遅いわよ、馬鹿……」と言った。

 

まるで物語のようだと鈴は思う。まさかこんな場面で想い人が助けに来てくれるなんて、それこそ絵物語の中だけだと思っていた。ああでも、初めて会った時もそうだったか。

 

ピンチの時に颯爽と現れて自分を救ってくれたその姿に、鈴は惚れたのだ。

 

 

「気を抜かないで一夏。ボーデヴィッヒさんを倒したわけじゃないんだから」

 

 

そこに現れたのはラウラを後退させた射撃を行ったシャルルだ。わきにはセシリアもいる。一夏に注意を促しながら、シャルルは『ラファール・リヴァイヴ』を纏って一夏の隣に立った。

 

一夏も『雪片二型』を構えてラウラを睨みつける。よくもやってくれたな、と。

 

 

「貴様ァ……!」

 

 

ラウラの目が怒りに染まる。さっきまでの狂化状態が、一夏への怒りで上塗りされたようだ。ある程度の理性が戻っている。まあそれでも、まともな状態とはとても言えないが。

 

 

「殺してやる!」

 

「こいよ、こっちだっていい加減頭に来てるんだ!」

 

 

両者共に咆哮を上げ、それぞれの獲物を振りかざす。ほぼ同時のタイミングでお互いの体に攻撃が当たろうとした時、

 

 

「悪いが、茶番はここまでだ」

 

 

五反田弾がそれを止めた。一本の腕でラウラの手首を、もう一本の手で一夏の『雪片二型』の刃を掴んでいる。

 

一夏は弾に掴まれたということを認識した瞬間に抵抗をやめた。ラウラは振りほどこうと必死になっているが効果は出ていない。

 

 

「やめろって。千冬さんもお怒りだぜ?」

 

 

弾のその言葉で、ラウラの抵抗がぴたりと止む。尊敬する教官の名が出ただけで、狂化も怒りも解けたようだ。

 

アリーナの出入り口を見れば、千冬が怒るというよりは呆れたようにため息をついていた。

 

 

「やれやれ、模擬戦をやるのは構わんが、アリーナに損傷が出るのは許容しかねる。この続きは、月末のトーナメントでやれ」

 

「……教官がそうおっしゃるなら」

 

 

いかにも納得してませんといった様子でありながら、ラウラは素直に頷いた。すぐさまISを待機状態にし、アリーナから出ていく。

 

必ず決着をつけなくてはならないと一夏は思った。自分だけならまだいい。だが、あいつは友まで傷つけたのだ。もう戦う理由などとは言ってられない。

 

一夏はラウラの消えていったアリーナの扉を見ながら、力強く拳を握った。

 

 

 

>>3

 

 

 

「大丈夫だとは思うが、鳳を保健室に連れて行ってやれ」という千冬の言葉を聞き、一夏と弾、シャルルは鈴を保健室に運んだ。セシリアはISの状態を見るために別行動だ。

 

幸いにして鈴の傷は打撲程度のものだったので、適当な手当てをしてもらっただけで済んだ。

 

 

「しっかし、無茶したなぁおまえら」

 

 

弾がけらけらと笑いながら言った。一夏と鈴をからかうつもりでいるのが傍目からも見て取れる。それを察したシャルルは乾いた笑いしか出てこなかった。

 

案の定、一夏と鈴もそれをわかっているようで、ばつの悪い顔をしていた。

 

 

「いやぁ、ついカッとなっちゃってさ……」

 

「あいつが悪いのよ。いきなり襲ってきたんだから」

 

「それでボロボロにされた、と」

 

「うっさいわね。あのまま戦ってたらあたしが勝ってたわよ」

 

 

弾の言葉に、鈴は拗ねたように口を尖らせる。それを見た弾がからかい、鈴が反応し、また弾がからかう、という不毛なループが完成した。

 

和気藹々とする中、シャルルの耳が何かをとらえた。

 

 

「ねぇ、一夏。何か聞こえない?」

 

「ん?……そういえば、地鳴りのような音が……」

 

「どういうこと、弾?」

 

「ああ、大勢の女子がここ目指して迫ってきてるな」

 

「「「なっ!?」」」

 

 

弾の何気ない答えに、三人は驚愕した。地鳴りを起こすほどの女子の大群だ。一体どれだけの数なのであろうか……。

 

絶句する三人に、弾が扉を指し示した。

 

 

「ほれ、来たぜ?」

 

 

その言葉と共に保健室のドアが乱暴に開いた。そして、予想をはるかに上回る数の女子がまるで雪崩のように駆け込んでくる。もはや、一種のホラーですらあった。

 

 

「織斑君っ!」

 

「デュノア君っ!」

 

 

入ってきた女子は口々に一夏とシャルルの名前を呼び、手に持った何かの用紙を見せようとしてくる。

 

 

「な、なんなんだ!?」

 

「ど、どうしたの、みんな……?ちょっと落ち着いて……」

 

「「「「「これっ!」」」」」

 

 

バッと一斉に手に持った用紙を押しつけられた。その中の一枚を手に取り、一夏は内容を読み上げた。

 

 

「えーっと、なになに……。『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアができなかったものは抽選により選ばれた組むものとする。締め切りは』――」

 

「そこまででいいから!まっ、とにかく……」

 

「「「「「私と組もう!織斑君っ!デュノア君っ!」」」」」

 

 

声をそろえ、一斉に手が差し伸べられる。これを握り返せば、つまりペアを組むことに了承したということなのだろうが、一夏もシャルルも乗り気ではなかった。

 

 

「え、えー……あっ、弾はどうだ!?あいつなら優勝確実じゃないか!?」

 

 

困った一夏は強引に話題をそらす。結構いい話のチョイスだと自分で自分をほめたくなった。

 

その言葉を聞いた女子は一瞬くっと唇をかんで、「五反田さんについてはそこに書いてあるよ」とさっきの紙を指した。

 

 

「『一年一組の五反田弾は今回のトーナメントに参加することを禁ずる。そのための特別措置としてトーナメントの全日程の終了後、一学年専用機持ちとの試合を執り行う』……マジか」

 

「そういうことだ。俺と組むのは無理なんだよ」

 

「……はぁ」

 

 

用紙の内容を読み終えた一夏は諦めたように一つため息をついて、女子たちに向かい合った。

 

 

「あー……悪いんだけど、俺はシャルルと組むからさ」

 

「え……?」

 

「いや、まあ、他の女子組まれるくらいなら……」

 

「……………………へたれめ」

 

「おい最後に言った奴ちょっと出てこい」

 

 

女子たちはとりあえず納得したのか、各々がしかたないと呟きながら保健室を後にする。それからまたペア探しが始まったようで、廊下からはバタバタと喧騒が聞こえてきた。

 

その後、一夏は「何勝手に決めてんのよ!」と鈴に殴られ、箒に叩かれ、セシリアに怒鳴られるという三重苦がまっているのでした。まる。

 

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