Scribed a bullet hole   作:byとろ

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どうも、遅くなりましたが14話です。

んー?思ったより弾がチートしてない?タグが詐欺になっちゃうよ?


Thing called family

学年別トーナメント当日、弾はまたも管制塔の頂上にいた。視線の先では、何の因果か一回戦であたった一夏とラウラが戦っている。それを見る眼差しは真剣そのものだが、実際のところ戦いなど見てはいない。

 

朝から予感がしていた。虫の知らせというやつだ。

 

今日の試合中に何かが起こる。

 

その確信ともいえる強い予感が、弾を急かしていた。だが、一向にそれは現れない。所詮は予感でしかないのか?だが、時間が経つごとにその不安は大きくなるばかりだ。

 

故に動けない。ただただ感覚を研ぎ澄まして異変を探知するだけにとどまってしまう。

 

 

「チッ……」

 

 

煩わしい。面倒くさい。今すぐ試合に乗り込んでいって暴れてやろうか。

 

そんなことを考えるが、あれはいわゆる『因縁の対決』というやつであるらしいので、さすがに自重する。しかしそれが原因で更なるストレスがたまるのだが。

 

そもそもラウラ・ボーデヴィッヒとかいうあの少女。あれで軍人、しかも部隊長だという。意味が分からない。教官教官と、まるで親とはぐれて泣きじゃくる迷い子みたいに喚きやがって。それで癇癪を起こして周りに力を振りかざすのだ。

 

 

「いかん……思考が変な方向に流れちまってる」

 

 

頭を小突いて思考を一旦切る。ストレスのせいで強暴で短絡的な思考になってしまった。冷静になれ、となんとか心を落ち着かせた。

 

しかし、さっきのは少しストレスできつい言い方になってしまったとはいえ、弾の考えそのままのことでもあるのだ。

 

なぜならラウラの暴力、つまり求めているモノとは『それ』なのだから。

 

そのことを分からせてやるためにも、千冬に無理を言って専用機持ちとの試合を組んでもらったのだ。まあ、半分は弾がしたかったからだけれど。

 

 

「ん……?」

 

 

視線の先のアリーナで変化があった。一夏に負けそうになっていたラウラのISがまるで生きているようにうごめき、形を変えていく。

 

それが最終的になった形には、見覚えがあった。それの握る剣にも。

 

あれは間違いなく千冬の『暮桜』、そして雪片だ。

 

 

「さすがに、あれは静観してられないよなぁ……!」

 

 

激昂して謎の変化を遂げたラウラに襲いかかろうとしている一夏を落ち着かせるためにも、黙ってみている場合ではない。弾は管制塔の上でゆらりと立ち上がり、アリーナに向かって跳ぼうとした。

 

その瞬間。

 

ドクン、と心臓がはねた。

 

圧倒的な存在感が周囲を支配する感覚に弾は思わず身をすくませてしまい、危うく落ちそうになった。急いでバランスを取り、プレッシャーの発信源を探る。

 

発信源は、弾の後方。

 

だが、振り向いたところには誰もいなかった。

 

ただし、空間が歪に曲がっていた。ギギギ、とまるで錆びた歯車同士が無理な稼働をしようとしているときのような不快な音を立て、その空間は何かを生み落そうとしている。

 

ついに限界を迎えた空間が、ガラスが砕け散るように破壊される。そこから出てきたのは黒い人型。鈴と一夏が戦っていた時にも出てきたあの人型だ。

 

 

「……」

 

 

一夏のところに行くのは無理だと判断し、弾は『ブラッディ・ロード』を展開した。肩から鮮血が舞い、その血でもって形成される。

 

弾は構えない。人型も構えない。それどころか、襲ってくる気配すら感じさせない。ならばこちらから仕掛ける。そう思い、弾が片足を後ろへ下げた。

 

人型が後ろにいた。

 

 

「……!」

 

 

瞬時にそれを感じ取り弾は裏拳を繰り出すが、人型は視認することすら困難なその拳を掴みとって逆に殴ってきた。

 

弾は掴まれた拳ごと人型を回転させ蹴り飛ばす。腕に感じる痺れが、後一瞬遅ければ完全に折られていたことを伝えてきた。

 

ありえない。強すぎる。

 

弾に傷をつけることさえあの『世界最強』ですらどうあっても無理だったのに、腕を折るだなんて。見るからに生物ではないとわかるが、異常だろう。

 

 

「いや、異常っつったら俺もそうなんだろうが……」

 

 

ともかく、相手は蹴飛ばされてからこちらに襲い掛かってこない。負傷したというわけでもないのに、じっと弾を睨みつけて(顔だと思われる部分には凹凸がないので雰囲気からだが)いる。

 

立ち位置は最初に対峙した時と正反対になっている。人型がアリーナ側だ。そして、ここから戦闘を行えば間違いなくアリーナにいる一夏達に気づかれるだろう。それは面倒くさい。

 

 

「ちぃと……面貸せやァッ!」

 

 

人型に向かって跳ぶ。奴も反応して弾の後ろを取りに来るが、さらに弾は後ろに回り込んだ。そのまま腕を掴み、『グラビティ・アトラクション』を併用して真上に放り投げる。高速でぶん投げられた人型は遥か上に吹き飛び、雲海を突き抜けたところでようやく止まった。

 

しかし、その時にはもう弾は人型の目の前で拳を握っていた。

 

 

「止まってんなよォォォッ!」

 

 

 

――瞬拳。

 

 

 

一夏の音速を捉える瞬剣とは威力も速度も桁違いの悪魔の一撃。

 

間一髪、人型はそれを避ける。だが、弾の拳は止まらない。瞬拳の次には更なる一撃が待っているのだ。

 

 

 

――瞬閃。

 

 

 

その速度は瞬拳の倍。大気を切り裂き、空間を圧し潰す極大の一撃が人型を穿つ。腹部へめり込んだ弾の拳によって、人型の体がくの字に折れた。そこへ、瞬閃の勢いを利用した回転蹴りを食らわせる。

 

吹き飛んだ人型を空礫で戻し、追撃を行おうとするが、そこで信じられないことが起きた。

 

弾の使った空礫が人型の使った空礫によって相殺されたのだ。

 

 

「嘘だろ……!?」

 

 

空礫は、弾が考えだしそして実用化まで持っていった完全にオリジナルの技だ。これまで教えたのは鈴だけであり、人型が使用できる代物ではない。それなのに、こいつはあたかも自分の技のように使ってきた。空礫をくりだす一連の動作に不自然なところは見受けられず、しかも弾の空礫を相殺できるほどの練度でもって。

 

予想外のことに弾は絶句し、後退することで人型から距離を取った。なぜこいつが空礫を使えるかはこの際おいておく。『グラビティ・アトラクション』で重力を操作して滞空しながら、弾は冷静になるように努めた。

 

そこで、はたと気づく。

 

人型が襲ってこないのだ。そういえば最初も襲い掛かってはこなかった。来たのは弾が一歩下がった時で、しかし今度は後退したら襲い掛かってこなくなった。

 

ふと、アリーナが目に入った。一夏がラウラを止めるべく奮闘しているのが見て取れる。

 

まさか、と弾はある答えにたどり着いた。実証するために、アリーナの方、つまり人型の方向に体を動かす。弾が動いた瞬間、人型が動いた。それを確認し、弾は大きく後ろに下がった。

 

すると人型の動きが止まる。

 

 

「やはりか……」

 

 

こいつは、アリーナに近づこうとすると襲ってくるようだ。なぜかはわからないが、しかしそれがわかればやりやすい。ある程度の行動をこちらで操れるのだ、これがアドバンテージでなくて一体何だ。

 

 

「ハァッ!」

 

 

弾は一瞬で人型との距離を詰め、掌底でわき腹を穿つ。それはいなされるが、本命は掌底に隠れた腹部への一撃。先の瞬閃で殴った場所を打ち抜く。

 

だが、人型は掌底でのばしきった弾の腕に絡まるようにして下から上へ、弾の顎を打ち抜かんと蹴りを放ってきた。即座にボディへの一撃を断念して蹴りを回避する。

 

そこへ、人型の反撃。蹴り上げた足ごと体を反転。弾の両肩を掴んで先程のお返しと言わんばかりに弾の体を投げ飛ばした。

 

弾の体が投げられる。人型と一緒に。

 

投げられる瞬間、弾は人型の体を掴んで共に吹き飛ばされるようにしたのだ。二体で錐もみ回転しながら、攻撃の応酬が繰り広げられる。

 

 

「おらおらおらァッ!」

 

 

拳と拳がぶつかり合う。もはや人体が出しているとは思えぬ轟音が響くが、どちらもまだまだ余力を残している。亜光速で行われる攻撃の応酬がさらに苛烈なものへと変わっていった。

 

そして、弾の蹴りが人型を捉えた。体勢を崩す相手に、弾は拳を振りぬく。

 

 

 

――瞬拳。

 

 

 

ここでまた、信じられないことが起きた。

 

人型が弾の瞬拳と全く同じ型で、同じく瞬拳を使ってきたのだ。だが、弾はそれを気に止めない。瞬拳自他は空礫と違って分かりやすい技だ。盗まれた程度では驚かない。それに、瞬拳の真価は瞬閃以降にある。

 

瞬拳は音速以上での攻撃の総称だ。そして、段階ごとにさらにブーストされる。けれどそれは、普段から音速どころか光速で駆動できる弾にとっては意味のないことだ。

 

ならばなぜ弾が瞬拳を使うのかといえば、その技の性質にある。

 

一点突破。一極集中。

 

ヒットの瞬間拡散する衝撃波を拡散させずに纏め上げ、さらに次の動作に取り込む。つまり、瞬拳より派生する技は全て、直前に放った攻撃の威力をそのまま上乗せできるのだ。

 

瞬拳から、その倍の速度の瞬閃。

 

瞬閃から、その四倍の速度を誇る瞬天。

 

瞬天から、さらに八倍に跳ね上がる支瞬天。

 

特殊な技法によって実用が可能になるこの攻撃は、ばかげた強度を誇る弾にだからこそできるものだ。故に、瞬拳を防がれた程度では止まらない。

 

 

 

――瞬閃。

 

 

 

何かが破裂したような音とともに、弾の拳が弾かれてた。

 

 

「んな……っ!?」

 

 

人型が瞬閃を使った。事実だけを言えばこうなってしまう。だが瞬閃は、弾にしか使えないのだ。よしんば真似をしたところで、威力は弾のそれをはるかに下回る――はずなのに。

 

動揺を隠せぬ弾の目の前で、人型が拳を構えていた。弾のよく知る、瞬閃から繋がる攻撃の構え。

 

まさか、そんなばかな……!

 

 

 

――瞬天。

 

 

 

躱せたのは偶然だった。いや、引っ張られるような感触から察するに、『グラビティ・アトラクション』が発動したのだ。それは弾が無意識にやってのけたのか、はたまた違うのか。それはどうでもよかった。

 

迫りくる次の一撃を、躱すことなどできないのだから。

 

 

 

――支瞬天。

 

 

 

何とか防御は間に合ったものの、両腕を組んで固めたはずのガードはいとも簡単に跳ね上げられた。がら空きになる弾の体にはもはや防御の術はなく――

 

その一撃は、支瞬天の十六倍。

 

 

 

――悲想天。

 

 

 

人型の拳が弾の脇腹を貫いた。ぎりぎりで体を逸らすことには成功したが、深々と突き刺さった拳の周りの肉は根こそぎ吹き飛んでいる。

 

 

「糞がァ……ッッ!!」

 

 

ISのシールドも、絶対防御も関係ない。まとめて、文字通り吹き飛ばされたのだ。

 

こんな屈辱を味わったのは、前世を合わせても初めてだ。

 

人型の腕を掴み、憤怒を持って人型を睨みつける。

 

 

「あ……?」

 

 

睨みつけ、そこで気づいた。見覚えがある。顔に凹凸はないが、輪郭からだけでもかすかに感じる懐かしい雰囲気。それと共に感じる強い憤りと絶望。それすらもなぜだか懐かしく感じる。

 

呆然とする弾の目の前で、黒い人型は以前と同じように溶けるように虚空へと消えていった。

 

理解も納得もはできないが、ひとまず助かったといつの間にか荒くなっていた息を整える。そして、ゆっくりと地上に降りていった。

 

前に感じた黒い人型の正体。そして、見覚えのある形と雰囲気。懐かしく思った負の感情。

 

アレしかいない。考えれば考えるほど、そうとしか思えない。

 

ありえない、なんて言葉はひどく弱いものだと思い知らされた直後でもある。何より、弾の勘がそう言っている。

 

だとすれば、近いうちにまた弾の目の前に現れるだろう。おそらく、そこが決着の場となるはずだ。

 

来たるべき戦いに思いをはせる弾の視線の先で、一夏が『暮桜』の形をしたISを倒し、ラウラを救いだしていた。

 

 

 

>>1

 

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは保健室で目を覚ました。体の節々がずきずきと痛み、思わず顔を歪ませる。

 

だんだん意識がはっきりしてくると、何が起きたのかを思い出した。

 

そうだ私は、織斑一夏に負けたのだ。

 

それは屈辱的な事実のはずだった。だが、ラウラの心境はむしろ屈辱とは対極で、まるでどこまでも続く空に解き放たれたようにすっきりとしていた。

 

それはきっと、暴走していたラウラを倒した時に交わした会話の所為だ。彼の最後の一撃を食らった時、確かにラウラと一夏は思考を共有し会話した。そこでラウラは聞いたのだ。

 

お前にとっての強さは何か、と。

 

彼は少し照れながら、大切な人たちを守るためだと言った。そして、ラウラを守ってくれるとも。

 

それを思い出すだけで、心が満たされるのがわかる。こんな感情は知らない。けれどとても温かく、幸福を感じることができた。

 

不意に保健室のドアが開く。入ってきたのは千冬だった。

 

 

「起きたか、ラウラ」

 

「……教官」

 

 

織斑先生だ、と千冬は訂正しなかった。そして名前で呼んでくれた。それだけでもラウラには嬉しくて、安らぎを得られる。

 

 

「お前の暴走の原因は、ISに組み込まれていた違法技術VTシステムによるものだ」

 

「VT……ヴァルキリー・トレース・システムですか……」

 

 

ヴァルキリー・トレース・システム。

 

過去に行われたモンド・グロッソにおける部門受賞者、つまりヴァルキリーの動きをトレースするシステムのことだ。現在はアラスカ条約でどの国家・組織・企業においても研究、開発、使用全てが禁止されているはずのもの。

 

それが組み込まれていた。ラウラの、ドイツのISに。今頃国の人間は慌てふためいているのだろう。

 

 

「私は……どうなるのですか……?」

 

「心配するな。IS学園はどんな国家でも干渉不可能な場所だ。おまえ自身に問題があったならともかく、追放処分になったりはしない」

 

「そうですか……」

 

「それと、おまえのISだが、こちらの方もVTシステムの消去が確認された後お前のもとに帰るだろう。どこかの馬鹿が手をまわしたのか、おそらく明日の朝には処理が完了し返還される」

 

「え……?」

 

 

さすがにそれはラウラとしても予想外だった。学園に残れるだけでも僥倖なのに、まさかISも返還されるとは。まるで、幸福を詰め合わせた演劇を見ている気分だ。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

お互いに無言だった。ラウラは呆けた様子で中空を見て、千冬は目を閉じ口を堅く結んでいる。気まずい、ということはない。それは二人にとっても、心の整理をつける大切な間だったから。

 

カチ、カチ、と時計の針が一定間隔で音を鳴らし時の経過を表していた。両者が沈黙し、静寂という聞こえぬ音楽を清聴してから、およそ六十回。針が時を刻んだ。

 

 

「すまなかった」

 

 

突然、千冬が頭を下げた。

 

 

「なっ、何を言っているんですか!教官が謝ることなんて何も……」

 

「私はお前のことを何もわかっていなかった。教師失格だ」

 

「そんなこと……」

 

 

否定するラウラに、千冬はそれでも頭をあげようとはしない。

 

 

「結局、おまえが苦しんでいることも弾に教えてもらわなければ気付けなかった。あいつに教えてもらわなければおまえが何を求めているのか、きっと私には一生分からなかっただろう」

 

「私の、求めているもの……?」

 

「おまえは、寂しかったんだな……」

 

「ぁ……」

 

 

寂しかった。千冬から放たれたその言葉はなぜだかストンと胸に落ちた。足りなかった何かが埋まった感覚。それと同時に、熱い何かがあふれ出してきた。

 

そうだ、私は寂しかったんだ。家族というものを求めていた。

 

誰もいない暗闇の中で生きて、傷つき傷つけることでしか生きられない。たった一人でがむしゃらに走っても、光なんて見つかるはずもない。だから、寄り添ってほしい。その光で照らしてほしかった。

 

 

「ごめんな……気付いてやれなくて」

 

「き、きょうかん……う、ぅ……!」

 

 

ぎゅっと抱きしめられた。初めて感じる人のぬくもりは想像以上に温かくて安らかで、こみ上げる涙をとどめることはできなくて。

 

千冬の胸に抱かれて、ラウラはまるで赤子のように泣き叫んだ。

 

 

「う、うぅ……あぁ、うあぁぁぁぁぁ……!」

 

「今は存分に泣け。次には、きっと笑えるように……それまでは抱きしめてやるから。……あぁ、まったく」

 

 

 

――世話の焼ける妹だなぁ。

 

 

 

この日、少女は家族のぬくもりを知った。

 

それはとても暖かくて、そして少ししょっぱかった。

 

 

 

>>2

 

 

 

トーナメントは中止になった。後日予定されていた一回戦だけは行うようだが、それはつまりトーナメントの開始前から嘘か真かは抜きにしてささやかれていた「織斑一夏と交際できる」チャンスがなくなったというわけだ。

 

そのせいか、女生徒たちの顔には生気がない。ふらふらと歩き、時折思い出したようにため息をついている。

 

 

「なあ、弾。なんで今日はみんな落ち込んでるんだ?」

 

「トーナメントが中止になったからだ」

 

「ああ、そっか。みんなトーナメントとかそういうイベント好きだもんなぁ」

 

 

知らないとはいえ暢気なものである。トーナメントが中止にならなければ、十中八九誰かと付き合うことになったというのに。

 

弾がため息をついたところで、真耶が教室に入ってきた。朝のホームルームだ。

 

 

「はーい皆さん、おはようございます。今日は、その、転校生を紹介します」

 

「転校生ですか?また?」

 

「いえ、その、なんというか、転校生ではないかもしれないですけど、でもやっぱり新しいお友達なわけですし……」

 

 

妙に真耶の歯切れが悪い。いつもそうだが、今日は特に輪をかけて酷いものだった。

 

 

「ええい、もう紹介しちゃいましょう!入ってきてください!」

 

 

真耶が教室の外に声をかける。すると教室のドアが開き、入ってきたのは綺麗なブロンドの髪を持った中性的な容姿を持った美少女――というかシャルル・デュノアであった。

 

案の定、教室内が静まり返った。

 

 

「どうも、シャルロット・デュノアです」

 

「はい、というわけでデュノア君はデュノアさんでした~。あ、あは、あははは……」

 

 

真耶が空気を和まそうとおちゃらけて言うが、頑張り空しく声は虚空に溶けて消えていった。

 

 

「デュノア君……?女、の子?さんだったの……?」

 

「え、えーっと、つまり彼は彼女で彼女は彼で?」

 

「超展開ktkr!!」

 

「というか、デュノア君は女の子だったんだよね?同部屋には織斑君……」

 

「昨日は大浴場解放……?」

 

「詳細キボンヌ」

 

 

動揺一変、なぜか話の矛先は一夏に向けられていく。そしてそれを無視できないのは彼に思いを寄せている娘たち。

 

箒とセシリアが無言で立ち上がった。

 

 

「どぉいうことだぁ、一夏ぁ……?」

 

「いぃちかさぁん?どぉいうことですのぉ……?」

 

「ち、違う誤解だ!俺は何もしてない!」

 

「ぎゃははははははは!!なにこれチョー面白れぇんだけど!」

 

「笑ってないで誤解を解いてくれ弾!」

 

 

一夏は弾に助けを求めるが、弾は爆笑しているだけで救いの手を差し伸べてくれる気配は全くなかった。ついにISまで展開し始めた少女たちから逃れるため、一夏は脱兎のごとく暴走し教室から出ようとするが、ぴたりとその動きが止まった。

 

一夏の目の前にいたのはラウラ・ボーデヴィッヒで、AICによって動きを止められているのだと気付く。

 

身動きの取れぬ一夏の眼前に、頬を朱に染めたラウラの顔が迫ってきて、

 

 

――ちゅ

 

 

唇が重なった。

 

 

「「「え……?」」」

 

「おまえを私の嫁にする!異論は認めん!」

 

「「「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」」」

 

 

クラスメイトの絶叫と弾の大笑いをBGMに、少女という鬼が一夏を叩きのめそうと歩みを進める。

 

呆然とする一夏に、弾は手を合わせて冥福を祈るのであった。

 

 

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