Scribed a bullet hole   作:byとろ

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Rhapsody of the beginning

五反田弾と篠ノ之束が邂逅する少し前。就寝前の自由時間に、篠ノ之箒やセシリア、鈴、シャルロット、ラウラは一夏の部屋に集まっていた。まあ、一夏の部屋と言ってもその本人はいず、同室を使っている千冬に座らせられているのだが。

 

とうの一夏は汗を流すために風呂に行っている。

 

 

「まぁ、そう固くなるな。飲み物でも飲むか?」

 

 

鬼教官とまで言われる堅物教師の前でいささか緊張している少女たちに苦笑しながら、千冬は備え付けの冷蔵庫から各種飲み物を取出した。そして、少女たちが恐る恐るといった様子でそれを飲んだのを確認し、にっと笑う。

 

 

「よしよし、全員飲んだな」

 

「えっ、何か入っているんですか!?」

 

「入れるか、馬鹿者」

 

 

あまりに的外れなシャルロットの声に再度苦笑し、そのまま自分用に持ってきた缶ビールのプルタブを開け、豪快に缶を傾ける千冬を少女たちは呆然として見ていた。

 

 

「ん?どうした、何か可笑しなことでもあったか?」

 

「え、いや、その、教官でもお酒飲まれるのですね」

 

「当たり前だ。別に油にまみれてオイルを飲んで生活しているわけじゃない」

 

「ええ、まあ、それはわかりますけど……」

 

「今は仕事中なんじゃ……?」

 

 

そうである。生徒が寝静まった深夜ならばいざ知らず、未だ就寝時間も越えていない。これでは職務怠慢だ。

 

なのだが、当の千冬は酒精が入ったためかほんのりと朱がさした頬を上げ、少女たちが持っている飲み物を指差した。

 

 

「口止め料」

 

「あ……」

 

 

ようやく渡された物の意味を理解した少女たちがなるほどと表情を崩した。今のやり取りでそう固くならなくてもよいとわかったのだろう。

 

 

「まあ、前座はこれで良いだろう。肝心のことを話そう」

 

 

二本目のビールに口をつけ始めた千冬がまじめな顔つきになっていう。効果音をつけるならば(キリッであるが、手に持った缶ビールの所為で全然凛々しくない。

 

 

「おまえら、あいつのどこがいいんだ?」

 

 

あいつが誰を指すのか分からないほど、少女たちは鈍くはなかった。

 

 

「あいつ? 誰のことですか、教官」

 

 

一人分からない子がいた。

 

 

「……一夏のことだ、ラウラ」

 

「ああ、なるほど」

 

「あー、うん。で、どうなんだ?」

 

「わ、私は別に……あいつが頼りないので」

 

 

箒はラムネを傾け、

 

 

「あたしは腐れ縁だし……」

 

 

鈴はスポーツドリンクの蓋をなぞりながら言った。

 

 

「素直じゃないな、まったく。セシリアはどうなんだ?」

 

「わたくしですか? そうですわね、やはり彼は強いですからね。そこに惹かれたのかもしれません」

 

「ああ、それなら私もだな」

 

 

セシリアの言葉にラウラが乗っかった。その顔はどこか誇るようで、一夏の姉をしている千冬も少しむずがゆかった。

 

 

「ふむ、なんだ、強ければいいのか?」

 

「いえ、強いというのは惹かれた一因なだけですわ。決め手は彼の人となりと言いましょうか……」

 

「一夏は優しいからね」

 

 

今度はシャルロットが乗っかってきた。素直になれない幼馴染み二人は置いておくとしても、少しの間のこととはいえ一緒に暮らしていたこともあるシャルロットだ。より深く一夏の人となりに触れていたのだろう。

 

 

「その経緯で惚れた、と」

 

「あぅ、そ、そうですね……。私を助けてくれたし」

 

 

顔を赤くしながらも、シャルロットは答えた。はぐらかすことなく思いを言えるシャルロットをうらやましそうに見る箒と鈴がいたが、それは別の話。

 

と、そこで鈴が意趣返しとばかりに千冬に質問をぶつけた。

 

 

「せ、先生は誰か好きな人とかいないんですか?」

 

「はあ? わたしか?」

 

「ああ、興味ありますわね。実は五反田さんとかですか?」

 

 

セシリアの声に、少女たち五人の視線が千冬に集まる。千冬はそれに面食らった顔をして、その後声を上げて笑い出した。

 

 

「はははは、何を言うかと思えば、私が? 五反田をだと? はははは!」

 

「その様子じゃ違うみたいですね」

 

「いやぁ、久しぶりにこんなに笑ったよ。悪いがありえないな」

 

 

まだ引きずっているのか、千冬は喋りながらも時折体を震わせていた。

 

 

「そういえば、夕食のとき見かけませんでしたが、どこにいるんでしょうか?」

 

「ああ、ほっとけ。どうせあいつのことだ。心配するだけ無駄だよ」

 

「いいんですか、それで……」

 

「いいんだよ。アイツに何かやばいことが起こるわけないだろ。考えられるか?」

 

「確かに、想像できませんわね」

 

 

五反田弾の身に何か起こることを想像しようとして、けれど到底無理そうだったのでセシリアやリンは苦笑した。あの弾に限ってそんなことはあり得ない。

 

少女たちの想像を振り払うように千冬が二つ目の缶ビールを飲み干して、乱雑に床に置いた。

 

 

「まあ、各々事情はあるんだろうが、あいつと付き合える奴は得だぞ。料理はうまいしマッサージもうまい。どうだ、欲しいか?」

 

「えっ、くれるんですか!?」

 

「誰がやるか、馬鹿者め。あいつが欲しいなら奪ってみせろ。自分を磨けよ、乙女たち」

 

 

三つ目のビールを開けながら、千冬は悪戯が成功したように無垢に笑った。

 

 

 

>>1

 

 

 

臨海学校二日目である。今日からは昨日までのような自由さはなく、ISについてより専門的なことについて扱っていく。今日は午前から夜まで丸一日各種装備試験運用とデータ取りである。

 

なのであるが、だがしかし。

 

ラウラの遅刻から始まり篠ノ之束の乱入と、今日の様子はどこか違っていた。というか、その篠ノ之束からして普段の様子を知っている一夏からすれば偽物ではないのか、と疑うほどに物静かだった。いや、決してハイテンションではないということではないのだが、いつもの支離滅裂さがないのだ。

 

そう思ったのは一夏だけではなく、箒やあの千冬さえも少なからず動揺するほどである。

 

 

「箒ちゃん、なにか違和感はなぁい?」

 

「い、いえ……大丈夫、です」

 

 

今も、せっかく専用機を手に入れてその調整中だというのに箒はどこか他人行儀で見ている分にもやりにくかった。

 

最初は身内だからといって専用機を貰えるのはずるい、とか言っていた幾人かもその様子を見て気まずさを察したのか、今ではおとなしくなっている。

 

 

「借りてきた猫みてぇじゃねぇか。お株奪われたぜ、鈴?」

 

「あざといわね、箒……」

 

 

一部はいつも通りだった。

 

 

「さぁ、調整終わったよ! ちょっと飛んでみて」

 

「はい」

 

 

ふわり、と。

 

『紅椿』を纏った箒が宙に浮く。そのまま爆発的に加速し、二百メートル上空で滑空し始めた。

 

その性能に満足そうに頷きながら、束は箒と回線をつないだ。

 

 

「どう箒ちゃん?」

 

「ええ、思ったよりも動きますね」

 

「やったね! それじゃあそのまま武器テストに移りましょう、そうしましょう。右のが『雨月』で左のが『空裂』ね」

 

 

言いながら束は空中に指を躍らせ、十六連装ミサイルポッドを呼び出す。粒子が集まって形成されるのと同時、一斉射撃が始まった。

 

 

「データは送ってあるからわかるよね? それの性能なら楽々できるはずだよ」

 

 

言外に束は突破できなければおまえが悪いと言っているのだ。

 

あのシスコンで有名な篠ノ之束が、こんな挑発的な行動をするとは思わず、一夏と千冬は束を二度見してしまった。

 

 

「やれる、この紅椿なら!」

 

 

束がつないでいるオープン・チャネルから箒の声が飛び込んできた。その声には恐怖や竦みなど欠片もうかがえず、なんとも堂々たるものだ。

 

その声に違わず、箒は事も無げにミサイルを撃ち落としていった。

 

 

「すげぇ……」

 

 

全てを撃ち落とし、漂う煙を刀で切り払いながら空に立つ箒の姿に、一夏は感嘆を漏らす。

 

そしてその時、一夏はゆっくりと晴れていく爆煙の中に光を返さぬ漆黒を視た気がした。目を凝らして見るが、そこには何もない。気のせいかと胸をなでおろし、そこで一夏は隣で虚空を睨みつける弾を見た。

 

 

「……」

 

「弾、どうし――」

 

「織斑先生! 大変です!」

 

 

突然割り込んできた山田真耶の叫び声に、一夏の声はかき消されてしまった。

 

いつの間にか地上に戻ってきていた箒や他の生徒の視線が、一気に山田真耶の方へ集まる。いつもならそれにたじろぐだろう真耶は、そのことにも気づかずに慌てていた。

 

 

「どうしたんだ、山田先生?」

 

「こっ、こここれを……っ!」

 

「特命任務レベルAだと……?」

 

 

真耶に渡された書類を見て、千冬は顔色を変える。尋常ではない雰囲気に、生徒の誰一人として動ける者はいなかった。

 

 

「全員注目! 現時刻を持って教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館へ戻れ。連絡があるまで各自室内で待機すること。以上だ!」

 

「え……!?」

 

「ちゅ、中止?どういうことなの……?」

 

「詳細キボンヌ」

 

 

突然の状況に騒がしくなる生徒たちに、千冬の一喝が響き渡る。

 

 

「とっとと戻れ! これは遊びではない! 以後、許可なく室外に出たものはその身柄を拘束する。いいな!」

 

「「「は、はいぃ!」」」

 

 

今まで聞いたこともないような千冬の怒号に、生徒たちが飛び跳ねるように動き出した。

 

 

「専用機持ちは全員集合しろ! ……おい、なんで五反田がいないんだ!あと束も!」

 

「し、知りません!」

 

「あいつらぁ……! ちっ、まあいい。専用機持ち五人は私と一緒に来い!」

 

 

千冬のいらだった声に恐縮しながら、一夏達専用機持ち五人は旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷、風花の間に移動させられた。照明を落として薄暗くなった室内には、空中投影型ディスプレイが浮かんでいる。

 

 

「では、状況を説明する。二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの報告があった」

 

「…………」

 

 

全員が全員、一言も発さなかった。一夏と箒は発せなかったといったほうが正しいが、代表候補生たちは事の重大性を確かに理解している。

 

故に、さらなる状況の理解に努めているのだ。

 

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過することが分かった。時間にして、五十分後。学園からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった。教員は学園の訓練機を使用して空域および海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらうことになる」

 

「なっ……!どうして……?」

 

 

あまりの驚愕に、一夏はつい声を発してしまった。だが、それもしょうがないだろう。

 

本来、この事態は学園なんかが対処するものではないはずだ。それこそ、国際問題に発展するほどの大事にもなりうるのにもかかわらず、なぜIS学園それも一介の生徒が対処するのか。

 

 

「仕方ないんだよ、この学園の特性上な。あらゆる国家・組織・団体の介入を許さないという原則が、今回見事に裏目に出てしまった」

 

 

千冬が吐き捨てるように言った。

 

IS学園は、その重要性ゆえあらゆる外部組織の介入を許さない。ということはつまり、現状のような事態が起きてもその付近に近づけないのである。

 

これが学園自ら外部からの侵入を許可し主催する行事であればどうとでもなるのだが、それには厳重な申請が必要なのだ。今、そんな時間はどこにもない。

 

 

「かといって封鎖を生徒にさせるわけにもいかない。こういう事態も想定して訓練を受けている専用機持ちが適任なのさ」

 

「お、俺と箒はそんなん受けてないけど……?」

 

「……すまない。普通はお前たちが出る幕ではないのは確かだが、今回に限ってそういうわけにもいかないんだ。なにより、人が足りん」

 

 

その言葉と共に千冬の顔が曇る。言った本人も納得できていないのだろう。

 

そこへ、やはりというか疑問が上がった。真剣な様子で問うたのはラウラだ。

 

 

「教官、今回に限ってとはどういうことですか?」

 

「こちらに渡された敵機の詳細データだ。ただし、二ヵ国の最重要軍事機密ゆえ、口外は決してするなよ」

 

 

千冬がそばの教師に合図すると、ディスプレイに様々なデータが表示された。一夏と箒以外はそれを食い入るように見つめている。

 

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……わたくしと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」

 

「攻撃と機動性の両方に特化した機体ね。しかも、スペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから向こうの方が有利……厄介だわ」

 

「けど、これだけの情報じゃあ……偵察は行えないのですか?」

 

「無理だ。この機体は現在も超音速飛行を続けている。最高速度は時速二四五〇キロメートルを超えるとある。アプローチは一回が限界だろう」

 

 

千冬のアプローチは一回が限界という言葉に、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラは納得した様子で一夏を見た。

 

だが、一夏には訳が分からなかった。なぜ一回が限界で一夏になるのか。

 

 

「一回きりのチャンス……つまり、交戦と同時に一撃必殺の攻撃力で撃墜するしかない」

 

「え……?そ、それってまさか」

 

「あんたにしては察しが良いじゃない。そうよ、あんたの零落白夜しかないってことよ」

 

 

はっきりと告げられた鈴の言葉に、一夏は言葉を失った。しかし、思考の止まった一夏を差し置いて、話はどんどん先へと進んでいく。

 

 

「アタッカーは一夏さんでいいとして、問題は移動手段ですわね」

 

「エネルギーは全部攻撃に回さなきゃいけないから、もう一人運搬役がいるってことかな」

 

「ああ。しかも、目標に追いつける速度でなければならず、超高感度センサを搭載していなければならないだろうな」

 

「ちょ、ちょっと待て、本当に俺が行くのか!?」

 

「……織斑、これは訓練ではない。覚悟がないならば無理強いはしない。その場合、補佐に回ってもらうことになる。本来は……五反田がいればそれで解決だったんだが」

 

 

身を案じるような千冬の声に、一夏はわずかに及び腰になっていた自分を蹴りおこした。

 

超音速飛行がなんだ。弾はセンサにすら捉えられない速度で向かってくるのだ。

 

 

「……できます。俺が、やります!」

 

「そうか、よし。それでは、織斑を運ぶ手段だが……」

 

「織斑先生、私が」

 

 

そこで名乗りを上げたのは箒だった。『紅椿』のデータを開示し、自ら作戦に参加したいという意を示す。

 

 

「篠ノ之、おまえはまだそれを使い始めたばかりなんだぞ」

 

「スペック上は何も問題ありません。どころか、この中で最も適していると思われますが」

 

「……」

 

 

箒の言葉に、千冬は眉根を寄せて考え始めた。確かに、箒の言った通りスペック上は問題ないどころか必要なもののすべてを高水準で満たしている。だが、今日機体を送られたばかりの人間に任せてもいいものか、と。

 

その時、重い空気がのしかかるそこに、ころころと妙にメカメカしい人参が転がり込んできた。

 

 

「やあやあ、重い空気だねぇ。どうしたのかな?かな?」

 

「……束」

 

「はいはぁい! みんなの束さんここに参上!」

 

「どこに行っていたんだ。いや、それより、五反田を見なかったか?」

 

「うんにゃ。知らないよぉ」

 

 

にやにやと意地の悪い笑みを浮かべる束は、どこからどう見ても知っている様子だった。千冬は珍しく声を荒げて束に詰め寄る。

 

 

「ふざけて――」

 

「なんかないよ。言っとくけど、今日の束さんはこれまでに無いぐらい真剣なんだ」

 

「……」

 

「……」

 

 

しばらくの間、千冬と束は両者共ににらみ合ったまま動かなかった。千冬の本気で胸ぐらをつかまれているにも関わらず、束は大胆不敵に構えている。

 

数分にも感じる、おさらくは数秒程度の間の後、千冬はゆっくりと束から手を放した。

 

 

「……嘘はないようだな」

 

「もちろん。私は味方だよ」

 

 

あっけらかんと言い放つ束に、千冬はいかにも慣れている体で鼻を鳴らした。

 

 

「さて、どちらのだか。まあ、いい。調整にはどのくらいかかる?」

 

「七分」

 

「よし……作戦は決定した。織斑、篠ノ之両名による対象の撃墜を目的としこれより行動に移る。作戦開始は二十分後。各員、準備にかかれ!」

 

「「「了解」」」

 

 

こうして、確かな期待が宿る中『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』撃墜作戦は開始された。

 

皆が皆、慌ただしく作戦に向けて駆けまわっているのを見て、けれど一夏の中には不安が募っていく。

 

何かが頭に引っかかっている。箒がやけに自信ありげだったことだろうか。あるいは束の存在か。

 

けれど、決定的なのは。

 

仕組まれていると感じること。ただし、それは人為的とかそういうことではなく、もっと大きな、それこそ世界の意思であるかのように感じるのだ。

 

そうなるべくなった運命を体よく使われているかのようで、ひどく不快。

 

しかし、そんな根拠も何もない感覚を口に出せるわけはない。結局、作戦開始まで一夏は不安を募らせていくことになる。

 

 

 

そして、作戦が始まり。

 

織斑一夏は台本通りに(・・・・・)撃墜された。

 

 

 

>>2

 

 

 

「やあ、ちゃんと来てくれたんだね」

 

「まあな」

 

 

一夏達が『銀の福音』についての作戦を立てているのより、少し前。弾は篠ノ之束に呼び出されていた。

 

 

「んで?こんなところに呼び出してどうしようっていうんだ」

 

 

俺にも緊急収集がかかってんだけど、と。

 

砂浜から少々離れた磯の、その中でも一際大きな岩に腰をおろしながら、弾は問いかけた。なぜ呼びだされたのか、聞かされてはいないのだ。

 

しかしとうの呼び出した本人は、頭のうさぎ耳をぴょこぴょこと動かして、まるで「ちょっと買い物行ってきて」とでも言うように軽く両手を合わせているだけである。

 

 

「いやぁ、たいしたことじゃないんだけど、今君に動かれると厄介なんだよねぇ。だから、ここでじっとしててくれないかな?」

 

「……どういうことだよ」

 

「なぁに、ただいっくんや箒ちゃんを成長させてあげたいだけさ! 君にとっても悪い話じゃないよね」

 

「確かにな」

 

 

一夏達が成長するというのなら、異論はない。どころか、全面的に協力したっていいくらいだ。

 

同時に、この緊急事態はその為に仕組まれたのだということも理解したが、弾には些事でしかない。

 

善悪など、関係ない。

 

だが、『天災』と呼ばれる束ほどの人間が計画することは少々気になる。

 

 

「ん? もしかして、気になるのかい?」

 

「ああ。これが結構、興味津々だぜ」

 

「ふぅん……」

 

 

ほんの少し考え込んだ様子を見せて、束はまあいいか、と呟いた。

 

 

「おそらく君は放っておいても理解するだろうしね。まあ、運命に抗うため、とでも言っておこうかな」

 

 

ぴくり、と。

 

束の言葉を聞いた弾の眉が動揺したように動いた。

 

 

「ふん、なるほどね。そりゃあ傑作だぜ」

 

「君ならそう言うと思ってたよ。とりあえず、これは今私を見過ごしてくれるお礼」

 

 

束は懐から奇怪な形をした端子を取り出すと、それをぽいっと弾へ放り投げた。見事な放物線をなぞって綺麗に弾の手に納まった端子に、弾は首を傾げる。

 

 

「なんだ、コレ?」

 

「ISとその操縦者をつなげる為のツールだよ。待機状態のISと操縦者の間に『道』を作って相互リンクさせることによって両者の意識、あるいは感覚を共有できる」

 

「……あ?」

 

「簡単に言えば、ISと会話できるんだよ。まあ、こればっかりは体験した方が早いね」

 

 

未だどういうものか理解できずに、弾は束に言われるがままに端子を『ブラッディ・ロード』の待機状態である刺青に貼り付け、さらに自身の首裏にも付ける。

 

パチッ、と火花が跳んだような音がして。

 

 

「おやすみなさい。いい夢を」

 

 

にっこりと笑う束を見ながら、弾の意識は闇に沈んだ。

 




今回はあんまり遅くならなかったかな?
いや、十分遅いですね。すいませんでした。

つぎは念願の戦闘パートですよ。気合入れまくっていきますので、よろしくお願いします。
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