夕日に照らされ黄金に染まる浜辺で、弾の治療は行われていた。右目は潰れ、喉も抉り取られ、左手が千切りとんでいる。さらに腹には大きな穴がぽっかりと開いているのだ。常人ならとっくに死んでいる。
一夏が弾を連れ戻してからそれほど時間は経っていないが、急ピッチで行われた治療により傷をふさぐことには成功していた。しかしそれでも、無くなった血が多すぎる。輸血しようにも、弾の皮膚は固すぎて針が通らない。
篠ノ之束も奮闘したが、彼の命は……。
皆がこの状況を打破するために画策する中、弾が口を開いた。けれどそれは皆が待ち望んでいたものではなく――諦めの言葉だった。
「いいんだ……これで。これ以上は無駄だ……」
「そ、そんなことない! らしくない! 全然お前らしくないぞ弾!」
「そうよ弾! しっかりしなさい!」
「自分の体のことだ……それに、この感覚は
「え……?」
弾の言ったことがよくわからなくて、一夏は問い返した。けれど、弾は自虐気味に薄く笑うだけで答えない。
そうして、弾は不意に口を開いた。遺言となるであろう言葉を、とぎれながらも残していく。
「……箒、聞こえているか」
「……ああ、ここにいる」
「前に、言ったな……傍観者にしかなれない、と。おまえは、もう傍観者ではなくなった。自分で踏み出したんだ……迷うな。決して」
「……ああ、わかっている」
踏み出したのなら、最後まで到達しなければならない。後戻りは許されないのだ。
箒は力を手にした。一度は失敗したが、一夏達がいれば、その暴力的な衝動に負けずに、正しい道を突き進んでいくだろう。
ひとまずは、安心できる。
「……鈴」
「いや、いや……弾……!」
「自分らしさを貫け……それだけで、きっと皆ついてくる」
「弾……いやだよ。こんな……!」
鈴は、光なのだ。道を見失わないように明るく照らす黄金である。故に、こんな嗚咽交じりの声は似合わない。
弾は手のかかる子供をあやすように、優しく微笑んだ。安心させるはずだったその笑みを見て、鈴はさらに泣きそうになってしまう。
――まだ、まだ。
「セシリア――」
「言わなくても、結構ですわ。私はもう、あなたから様々なものを貰いましたから。お返しすることができないことをお許しください」
「……はは、なんだよクソ。強ぇなぁ」
さすがは、と言ったところであろう。凛々しく立つその姿は、まさにノブレス・オブリージュ。その精神が伊達ではなく、不朽のものであることが証明された。
精神面で言えば、おそらくここの誰よりも強い彼女である。箒や鈴といった不安定さが抜けきらないやつを支えていってほしいと思う。
――もう少し。
「五反田、さん……」
「シャルロット、誰かに依存するのはやめろ……その先にあるのは、破滅しかない。俺のようにな……自分の足で、立つんだ」
「うん、うん……大丈夫だから。僕は、だいじょうぶだから……」
悔しそうに涙を流しながら、シャルロットは弾の手を取る。
傀儡から解放されてから、彼女は拠り所をなくしてしまった。だからこそ、救ってもらったという糸を頼りに依存してしまったのだ。
自分の足で立たなければならない。とりわけ、シャルロットには三年の期間しかないのだから。
――ここじゃあダメだ。
「ラウラ、俺は……お前が嫌いだよ」
「知っているさ」
苦笑しながら言い切ったラウラの顔は、学園に来た頃よりずいぶん成長して見えた。親とはぐれ泣いていた迷い後はもういないのだ。
「そうかよ……ああ、まったく、あんだけ泣きわめいてたのにな……欲しいもん手に入れてよ。うらやましいぜ、ちくしょうが……」
最初は強がっているのが見え見えで苛立ったが、結局、その後も弾がラウラのことを気に入らなかったのは嫉妬だったのだ。弾が欲しかったものを、ラウラは手に入れてしまったから。
醜い自分を嘲りかすれた笑い声が出るたびに、大量の血が喉からせりあがってくる。それを吐き捨て、それでも弾は笑っていた。
「クラリッサに、伝えてくれ……約束、守れなくて、わるいって」
「……ああ。確かに」
――まだもつだろう、俺の体。
「千冬さん、アンタにはずいぶん迷惑をかけた……」
「馬鹿者……現在進行でかけてるだろう」
「かっ、はは、ほんとだな。なら、ついでだ……一夏達のこと、頼むよ」
千冬は誰よりも弾に近づいてきてくれた一人だ。だが、それゆえに弾の本質を見抜けなかった。灯台下暗し、というわけでもないが、眩んでしまったのは事実だろう。
らしくもなく泣いている千冬を見て、弾は仕方ないなとぎこちなく笑った。
「束さん……アンタにも、頼んどくよ。一夏達のこと……」
「わかってるよ。大丈夫……大切な家族だからね」
これから、一夏と箒はいろんな組織に狙われることになるだろう。『世界最強』と『天災』の弟妹というのは、恰好の餌だ。強くならなければ、周りどころか自分の身さえ守れない。
『銀の福音』の件はおそらく束がそれを見越して仕掛けた事件であるから、言わずとも大丈夫であろう。
微笑む弾を見て堪えきれなかったという様子で、ぽつりと束が声を漏らした。
「……いいの、キミ。このまま世界に負けちゃって」
「負ける? 馬鹿言え……どうみたって、俺の勝ちだよ……」
「……そっか」
束の問いに、やはり弾は笑って答えた。別に死を迎えることが負けることではないだろう。
弾はもう、欲しかったものを手に入れたから。
それはどう見たって、弾の勝ちだ。
――もう、いい。
もう十分。後悔こそあるが、よく生きた。これで良いのだ、と弾は瞼を下ろす。
だが、
「弾、おい弾! そんな、そんな今わの際みたいなこと言うなよぉ……!」
「一夏……」
それを一夏が強引に引き上げた。まだ終わらせないと、あらんかぎりに叫んでいた。
だけど、弾はもう生きていく気はないのだ。なにより、世界が認めないだろう。
「これで良いんだ……本来なかったはずのものが、元に戻るだけなんだ……」
「元に戻るってなんだよ! それじゃあおまえが、いちゃいけないものみたいじゃないかよ!」
いてはいけないものみたい。
その通りである。「この五反田弾」は元来あってはいけないものだ。
死に戻ってしまった醜い腐敗。たった一度の生に恥を塗り、その一度にすら恥を塗り重ねて、見るに堪えない死に様で存在している。
総ては、欲しかったものを手に入れるために。
それが消えるだけなのに、一夏は大切な宝物が壊れてしまったかのように泣いてくれている。
それを見て、ついに弾の心は決壊した。
心の内、今まで誰にも言わなかった本当の願望があふれ出てくる。
「俺はずっと――ずっと何かを求めていた……」
その言葉に反応したのは千冬。弾がラウラとひと悶着起こした夜に、彼自身が千冬に言ったのだ。
暴力とは求道である、と。
いまさらながらに、千冬は思い至る。なぜ気づかなかったのだろう? 弾はずっと自分の力を暴力にしか使わないと言っていたではないか。つまりそれは、弾が何かを求めていることの動かぬ証拠だというのに。
「弾……」
「俺は――隣に立ってくれる奴を求めてた」
同類でも仲間でもない。対等な立場、戦友とでもいうべきそれ。普通に生きていれば抱かない、抱く必要などない願い。弾はそれを、心より――まさしく死ぬほど渇望していたのだ。
「俺は、化け物だ……人間じゃない」
生まれた時から、超絶の力を持っていた。物心ついたときには、それを当たり前のようにふるっていた。総てを背にし、存在としての頂点に立った。
そこにいて気付くのだ。ここには自分しかいないのだと。触れ合えるものなどないのだと。
だけど――
「――そんなの嫌だ。嫌なんだ! 超絶的な力も、圧倒的な技術も関係ない。俺はただ、誰かが隣に立ってくれることを望んでた。一緒に戦ってほしかった! 誰かに背中を任せたかった!
悲痛だった。いつの間にか弾の双眸からは涙があふれ、親とはぐれた子供のように泣きじゃくるその姿。まぎれもなく、強がりもない。五反田弾の本当の姿。
篠ノ之束が抱いていた願望と確かに似ているが、その実は違う。
束は同類。同じ方向を向き切磋琢磨できる存在が欲しかった。
弾は戦友。共に立ち背中を預けられる者を望んでいた。
「そんなの、いつでも言ってくれればよかったじゃないか! 俺たちが嫌がるとでも思ってたのかよ!」
一夏は叫ばずにはいられなかった。そうしなければ、胸に芽生えた疑念を肯定することになってしまいそうだったから。
だから叫ぶのだ。その疑惑を、打ち払うように。
けれど、束に言われたあの言葉。『君は本当に彼を友と見ているのかな?』というあの言葉が脳裏から離れない。
弾は友達だ。親友なんだ! 言ってくれれば一も二もなく一緒に戦う!
なのにどうして、弾と共に立つことを想像できないのだろう?
いくら叫んでも、疑念を否定することができなかった。鈴や千冬、セシリア、ラウラ、シャルロット。それ以外も合わせた誰もが、彼と共に戦うなんて考えたことすらなかった。
あまりに強かったから。ただ一人、孤高の決意を持ってすべてを薙ぎ倒していく、それが五反田弾だと思っていたから。
「どうして……」
口を開いたのは、鈴だった。
「じゃあどうして、アンタは一人でいたのよ……呼んでくれれば、よかったのに……!」
「もう少し早く気づいていれば、違ったのかもしれないな……」
でも、と。弾は思う。
きっと、それを知っていたとしても、弾は言わなかったはずだ。最期の最後に、決壊する以外はなかったはずだ。
だってそれが、恩返しだったから。
こんな自分に話しかけてくれた。こんな自分でも受け入れてくれた。
並び立つことはなかったけれど、これ以上は高望みだと思っていた。
「そんな、ことで……?」
「そんなこと、じゃあないさ……」
鈴たちからすれば、何気ないことで、意識する必要もないことなのかもしれない。だが、それで弾は救われていたのだ。
紙一重。
通じ合うことのできぬ境界線で起こった、ささいなすれ違い。
「ごめん……ごめん、弾……!」
顔を歪ませて、一夏は声を絞り出した。
「いいんだ……それが、普通なんだよ……恥じることじゃない……」
「だけど……! だけど!」
「それに、俺は感謝してるんだ……一瞬でも、俺と共に戦ってくれたじゃないか……」
――俺の願いは叶ったんだよ。叶えてくれて、ありがとう。
笑顔で弾は言いきった。もう後悔はないというような、本当に嬉しそうな笑顔だった。
「だったら……俺の願いも聞いてくれ、弾!」
「一夏の……?」
「ああ、そうだ。俺の願いだ! 俺と――友達になってくれ!」
それは遅かったというしかないだろう。だけど、遅すぎたということはなかった。
ぎりぎりで、織斑一夏は間に合った。
「い、いのか……? 俺は、人じゃないんだぞ……?」
「良いも悪いもあるか! 俺とおまえは――友達だ!」
一夏は声を絞り出す。弾は目を見開いて信じられないとでも言いたげに体を震わせていたが、すぐに顔を歪ませて涙を流し始めた。一夏も、もう涙を堪えるのは限界だった。
涙と砂で汚れゆがんでしまった顔で、一夏は弾に微笑みかけた。
「なあ、だからさ。次の休みに遊びに行こうぜ……せっかく、友達になれたんだから……」
「ああ、そうだな……」
「鈴も一緒だ。中学の時のメンツをそろえてもいい……」
「ああ……そうだ、な……」
弾の声が次第にかすれていく。瞳から光が抜けていき、体から力が抜ける。
一夏は慌てて、その体を抱き起した。
「弾……なあ、弾……! 聞いてくれよ……!」
「わ、るい……少し、寝させて……くれ……」
「だめだ、だめだ!起きてくれ弾!なあ……!」
「いち、か……」
「お前がいなきゃダメなんだよ! 俺はなんにもできないんだ! 弱くて弱くて、どうしようもなく弱いんだよ俺は!」
これまで何度弾に助けてもらっただろうか。恩返しするのは一夏達の方だ。
数え切れないほどに溜まってしまった恩を、まだ一夏達は返していない。こんなところで、いなくなってしまっては困るのに。
五反田弾は、微笑んでいて。
「だい、じょうぶさ……おまえ……なら……」
「弾、おい弾! だめだ目を閉じるな! おい、聞いてんのかよぉ!」
「――――」
一夏の耳元で何かを呟き、弾は静かに瞼を閉じた。そして、もう二度と目覚めることはない。
一夏はもはや動かなくなった弾を荒々しく揺さぶった。こんなの、弾らしい質の悪い冗談だ。呼びかければすぐに「おい止めろよ一夏」と言っていつものように笑いかけてくるはずだ。
けれど、弾はもう笑わない。目覚めることもない。
「嘘だろ、弾……? いつもみたいな冗談なんだろ? 頼むよ、だから! 目を開けてくれ! なあ!
――だああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!!」
夏の日、黄金に染まる海辺にて、五反田弾は――その生涯に幕を降ろした。
>>0
雨が、降っていた。
五反田弾の葬儀は慎ましく行われた。家族と親戚、後は一夏と千冬それから鈴。葬式に来たのはそれだけだった。
いや、それだと少し語弊があるので言い直そう。来れたのがそれだけだったのだ。
彼を知る者は皆行きたがったのだが、弾の部屋から出てきた「遺書」には、もし葬式をあげるならばなるべく少ない人数でするようにと書いてあった。家族はせめてもと、その意向に従ったのだ。
見つかった「遺書」という存在が、一夏を苦しめる。弾は自分の死期を悟っていたのに、自分は全く気づかなかった。相談してくれることもなかった。
弾を理解できず、のうのうとありもしない友情に一人よがっていた自分が腹立たしい。自身の無能さに耐えられなかった。
一夏は自分を責め続けた。
弾の冷たくなった体が以前の強靭なものでなく、ただの人のそれへと変わっていたことも拍車をかけた。弾が特別な存在でなく、何も変わらないありふれた人間だったということが、皮肉なことに死後に証明されたというわけだ。
そんなことにも気づかず彼を特別だと決めつけて、尊敬を友情とはき違えて生きてきた。かつての思い出すらも色褪せて、一夏を責めているように感じてしまう。
だから一夏は葬式会場を飛び出して、雨の中一人泣いていた。
何が皆を守る、だ。かけがえのない友を失って、無様に醜態を晒してこのザマだ。
衝動のままに、一夏は拳を地面に叩き付けた。何度も、何度も。
「こんなところにいたんですか」
絶望にくれる一夏の背に、声がかかった。振り向けば、弾の妹である蘭が傘もささずに立っていた。肩で息をしているので、よほど急いでいたのだろう。一夏が自殺するとでも思ったのかもしれない。
「風邪、ひくぞ……」
「一夏さんもですよ」
「いいんだよ……俺なんて」
「そんな言い方……」
「事実さ……俺は何もできな――」
パンッ、と。
乾いた音が雨の中に消えていった。鈍い痛みが疼く頬から、自分が蘭にはたかれたのだとわかる。
「そんなこと言わないでください!」
彼女は、泣いていた。
いつからだろう。きっと、ずっと泣いていたのだ。雨のせいで気づかなかった。いや、気づこうとしなかった。
怖かったからだ。咎められるのではないかと恐怖し、目を背けてしまった。
「貴方は、お兄に守られたんです! 友達だったんです! そんな貴方が自分を卑下してしまったら、お兄が何のために生きていたのかわからなくなるでしょう!」
「……っ!」
「胸をはれ! 前を見ろ! それが貴方のできる贖罪だ!」
「お、俺は……」
「それでも、貴方が納得しないというのなら」
――強くなってください。
彼女は泣きながらも微笑んでいた。触れれば壊れてしまいそうなのに、その強さは一夏など遠く及ばない。
ただ素直に、美しいと感じた。
「お兄と同じくらいに、とは言いません。それでは、一夏さんが不幸になってしまう。お兄は優しいから、そんなことを望んではいないでしょう。ですから、せめてお兄が誇れるように、貴方の『最強』を目指してください」
その時の一夏には、正直言葉は聞こえていなかった。けれど、蘭の口から出てくる音の一つ一つがどうしようもなく胸を打ち、心に響いた。
「私ではダメなんです。私は妹という存在だから、お兄の庇護からは抜けれない。どれだけ頑張ろうとも隣に立つこともできず、私にできるのはただその背に手を添えるだけ。けれど、あなたは違う。最後にお兄から言葉を託されたあなたなら、いやあなただからこそできることなんです」
「おれ、だからこそ……」
一夏は震えながら、自身の手のひらを見つめた。何度も地面に打ち付けたせいで、泥と血で汚れているその手。
守るためと剣を取った手。けれど、無二の親友を零れ落としてしまった咎の手。
「握っても、いいのか……こんな、手でも」
震える一夏の手を、蘭の手が包み込んだ。温かく、優しい手のひらがゆっくりと一夏の震えを止めていく。
「握っても、いいんだな……」
――だから今、織斑一夏はここにいる。『世界最強』を決める大会、モンド・グロッソの決勝に。
「……ちか。一夏! 聴いているのか?」
「ん?……ああ、悪い。どうかしたか箒?」
箒に声をかけられ、一夏は意識を現実に戻した。靄がかかったような意識が次第に晴れていき、ここが選手用控え室だったことを思いだす。どうやら、浅く眠ってしまっていたようだった。
いつまでもほうけていたからか、箒が心配そうな顔で一夏の顔を覗き込む。
「そろそろ時間だが……どうしたんだ?」
「いや、昔を思い出してたんだ」
「……そうか。あれから、もう十年も経つのだものな」
「ああ。ずいぶん時間が掛かったけど、ようやくだ。ようやく、約束が果たせる。これでやっと、スタートラインに立てるんだ」
「おいおい、早計すぎるぞ。これからあの『世界最強』と戦うというのに、もう勝った気分か?」
「わかってる。千冬姉と戦うんだ。油断なんか毛ほどもしてないさ」
「それならいいが……妙に嬉しそうだな?」
「そりゃあ長年の夢だったし、やっぱあいつの隣に立とうっていうなら『世界最強』程度の肩書きは持ってなきゃな」
「……まったく、お前はいつも五反田のことばっかりだな。そういう趣味なんじゃないかと時々不安になる」
「ちげぇって……さて、そろそろ行くか」
「ああ、行って来い!」
最後にハイタッチを交わして、一夏は控え室をでる。部屋を出る直前、箒が軽く微笑んでいたのがわかった。
控え室をでたところに、かつての友人たちが揃っていた。鈴、セシリア、シャル、ラウラ、楯無、簪。懐かしい顔ぶれだ。中国の国家代表の鈴とは準決勝で戦ったけれど。
「皆見に来たのか?」
「当然ですわ。世紀の一戦ですもの」
「言いすぎだ」
セシリアが相変わらず優雅な腰に手を当てるポーズで笑う。セシリアはIS学園を卒業後、国家代表ではなく実業家になった。親から託された家を守るためだという。
「頑張ってね、一夏」
「おう、シャル。任せろよ」
卒業後を懸念されていたシャルは、なんと逆に実家のデュノア社を乗っ取ってしまった。経営難であったが、武装を中心に開発していくことで会社は立てなおったらしい。今では敏腕美女社長として有名だ。
「嫁と姉、どっちを応援するか……」
ラウラは今でも現役の軍人だ。最近は新人の教育に力を注いでいるという。相変わらず千冬の存在が大きいようだ。
「頑張ってね! お姉さん、応援してる!」
「……ファイト」
楯無と簪は姉妹で更識を統率している。さすがに暗部だけあって苦労は多いらしいが、お互いに支え合ってなんとかしているようだ。よくよく喧嘩するのだが、そこは喧嘩するほど仲がいいというやつだろう。
「何ぼさっとしてんのよ。私に勝ったんだから、無様な姿は見せないでよね」
「分かってるさ鈴。それと皆。ありがとな」
――勝ってくる。
それだけ言って、一夏は振り返らずに歩き出した。
選手入場口にたてば、会場の熱気が肌を焼いた。それを心地良く感じながら、一夏はISを展開する。体を光が包み込み、『白式・立花』が展開されていった。
「やっとだ……やっとここに来た」
ハッチが開き、光が差し込む。
「今、隣に行くよ……」
刀を握りしめ、一夏は勢いよく飛び出した。
「さあ勝ちに行こうぜ、弾!」
――ああ。
――お前は勝てるよ、一夏。
というわけで、この作品もとうとう終わりになりましたね。
今までありがとうございました。
この作品はまあ、ぶっちゃけオレTUEEEEEがしたかったから始めたんですけれども、思った以上に熱が入った作品だったと思います。
結末については思うところが多々あるとは思いますが、ここの弾君にとって最上の結果であります。
主人公は主人公のままで転生者はあくまでわき役、というのが私個人の意見です。適当に死んで神様から能力貰って原作にぽーい、というのはどうなんでしょうか。なんか本編でも転生についてアンチ発言があるのでタグに追加しておきましょうかね。
ともあれ、ここまでお読みいただいてありがとうございました。
また、どこかで私の作品をお読みいただければ幸いです。