Scribed a bullet hole   作:byとろ

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The first day

出席簿で頭を叩かれ続けるショートホームルームが終わり、さらに一時限目のIS基礎理論が終了して、今は休み時間。

 

ちなみに、女子から一夏と弾の二人に送られる好奇の目は一時間ちょっとで止むはずもなく、現在も絶賛さらされ中だ。

 

 

「あー……きつい。おまえは楽そうだなァ、弾」

 

 

いかにもぐったりといった様子で、一夏が弾に尋ねる。

 

もはや女子からの視線にものともしなくなっていた弾は胸を張った。

 

 

「文句言っても仕方ないからな。慣れろ」

 

「相変わらず男らしい……」

 

「他にどうしろってんだ。ここから抜け出して、別の学校にでも行くか?」

 

「そりゃあ無理だろうけどよ。しかし、あれだぜ」

 

 

『あれ』といいながら、一夏が廊下を見る。そこには、一夏と弾を一目見ようと他のクラス、二年、三年からも人が来ていた。そのせいで、廊下はとんでもなく人口密度が高そうだ。

 

一夏と弾が視線を送っただけで体を硬直させるあたり、彼女たちも緊張しているようだ。というか、『あんた話しかけなさいよ』的な空気がものすごく伝わってくる。

 

ISが世界に広まってから、男性の地位は落下の一途をたどった。それはISが現存する兵器のすべてを凌駕し、無効化する強度を持ち、そしてそのISを動かせるのが女性だけだからだ。当然、どこの国も女性優遇の措置を取った。

 

それから十年、女尊男卑の風潮は瞬く間に浸透し、今に至る。

 

故に、男性に免疫のない女性が増えている。一夏と弾を見る女子生徒の多くが、それに当てはまるのだろう。

 

 

「……ちょっといいか」

 

「え?」

 

 

突然一夏に声がかかる。顔を上げると、そこには六年ぶりに再会した幼馴染みがいた。

 

篠ノ之箒。一夏が昔通っていた剣術道場の娘。長い髪をポニーテールにしているのは、六年前から変わっていない。

 

 

「……箒?」

 

「…………」

 

 

名前を呼んだら、きっと睨まれてしまった。六年前から日本刀のような少女だと思っていたが、さらに鋭さが増している。

 

 

「廊下でいいか?」

 

「え……ああ、っと」

 

「俺のことはいい。一夏の知り合いなんだろう?積もる話もあるだろうさ」

 

 

空気を察し、弾は気遣いは無用だといった。五反田弾は優秀なのだ。一夏と違って。

 

一夏と違って(強調)。

 

 

「……すまないな」

 

「いいって。篠ノ之サン?」

 

「……箒でいい」

 

「そうかい。なら、そう呼ばせてもらおう。俺も弾でいいぜ」

 

「……分かった」

 

「よろしくよろしく。……頑張んな」

 

 

小さく、箒にだけ聞こえるように耳打ちしてやる。

 

 

「……!な、何を言って……!く、ほら早く来い、一夏!」

 

 

すると箒は顔を真っ赤にして一夏と廊下に出て行った。強引に掴まれて困惑している一夏を見れば、彼女の思いが伝わっていないのは明白だ。

 

 

「青春だねぇ」

 

 

口元を綻ばせながら、しみじみとつぶやく。

 

同じく一夏に好意を寄せている弾のもう一人の親友――二年ほど(正確には一年ちょっと)前に中国へ転校していった幼馴染みと、これまた一夏に好意を寄せている妹の顔を思い浮かべ、今度は苦笑が出てきた。

 

どれもが成就するわけではないが、後悔だけはしてほしくないと思う。

 

いつか思い返して、笑って盃をかわせ合えるような。

 

そんな結末になってほしいと思うが、それは無理な話なのだろう。

 

痛み無くして、愛は無い。

 

 

「まったく、世知辛い世界だぜ」

 

 

 

>>1

 

 

 

2時限目を知らせるチャイムが鳴って、一夏と箒が教室に戻ってきた。

 

ばかげた身体能力を誇る弾には、廊下での二人の会話が鮮明に聞こえていた。たとえ何重もの人垣ができていてもだ。その気になれば、学園どころかさらに遠くまで完全に把握できる。プライバシーの問題でやりはしないが。

 

先程の二人の会話はそう多いものではなく、ただ一夏が唐変木っぷりを発揮していただけだった。

 

 

「つまらんなぁ」

 

「ん?なにがだ?」

 

「いや、なんでもない」

 

「?変な奴だな――」

 

 

パァンッ!

 

 

「さっさと席につけ、織斑」

 

「……すいません。織斑先生」

 

 

一夏のやつ、また叩かれてやがる。

 

いい気味だ。

 

陰でこっそり笑う弾だった。

 

 

 

というわけで2時限目である。

 

黒板の前では真耶がすらすらと教科書を読んでいる。

 

だがしかし。

 

 

「…………」

 

 

一夏には全く理解できなかった。

 

アクティブなんちゃらとか広域うんたらとか、机に積まれた5冊の教科書が、もはや何かの魔術書のようだ。

 

しかし、ちらっと周囲を見渡しても、わからないと思っている生徒は一夏以外にはいない模様。

 

一夏と同じ程度の学力しかない、あの弾もである。

 

意味もなく裏切られた気分だ。

 

 

「織斑くん、何かわからないところはありますか?」

 

 

そこに差し伸べられる救いの手。真耶が気を利かせてくれたらしい。

 

 

「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」

 

 

誇らしげに胸を張る真耶。大き目の服の上からでもわかる、たわわに育った2つの実が揺れた。

 

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん!」

 

「ほとんど全部わかりません!」

 

「え……。ぜ、全部、ですか?」

 

 

救世主であるはずの真耶の顔が引きつる。滅茶苦茶困っているのが見て取れた。

 

 

「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階で分からない人ってどれくらいいますか?」

 

 

シーンと静まり返る教室。誰も挙手しない。

 

見かねた千冬が教室の端から訪ねてきた。

 

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

 

パシィンッ!

 

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」

 

「うおお、おぉぉ……あ、頭が……割れる……!」

 

「後で再発行してやるから、1週間以内で覚えろ。いいな」

 

「……い、いや、1週間であの厚さはちょっと」

 

「やれと言っている」

 

「……はい」

 

 

ぎろりと睨まれ、一夏はしぶしぶ了承する。

 

それを見て、千冬がやりきれなさそうにかぶりを振った。

 

 

「まったく、五反田でも理解しているというのに」

 

「そうだぞ一夏。おまえ、馬鹿になったんじゃあねぇのか?」

 

「うっ、いや、でも、お前本当に理解してんのか!?」

 

 

弾にまで馬鹿扱いされた一夏はかっとなって叫ぶ。さっきからやたらしたり顔をしている弾を見るのは、正直限界だ。

 

 

「当たり前だろ?」

 

 

すると弾は、さらにむかつく顔をして胸を張った。

 

 

「よし、じゃあ五反田。今までの授業を要約してみろ」

 

「ええ、いいですよ」

 

 

自信満々に答えた弾は、ぐっと親指を立て、

 

 

「要は、気合ですよね」

 

 

全く理解していなかった。

 

 

「五反田、お前というやつは……!」

 

「うおっ、千冬姉、何とか怒りを抑えてくれ!頼むから!」

 

「止めるな一夏ァ……!今日という今日は叩きのめしてやる!」

 

 

先生と呼ばれていないことにも気づかず、こめかみに青筋を立て、今にも弾に襲い掛かりそうな千冬。そしてそれを羽交い絞めにしている一夏。

 

カオスだった。

 

 

「あっ、振りほどかれた!」

 

「五反田アアアァァァァァァッ!」

 

 

一瞬の隙を突き、一夏を振りほどいた千冬が五反田に襲い掛かる。

 

弾は千冬の一撃を後ろに飛ぶことによってかわし、そのまま窓の桟に着地する。

 

 

「はっはっは!後は頼んだぜ、一夏!アディオス!」

 

 

それだけ言い残し、弾は窓から外に飛び出していった。

 

あとに残されたのは、怒髪天を衝くとばかりに怒っている千冬と、一連の出来事を呆然と眺めていた一般生徒&真耶。そしてその全てに対して頭を抱えている一夏だった。

 

その後、中断されると思われた授業を普通に進めていったあたり、さすがはエリートの学校だと一夏が感心するのはまた別の話だ。

 

 

 

>>2

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「へ?」

 

 

とてつもなく疲れた二時限目が終わり(弾はまだ帰ってきていない)、これからの学園生活は大丈夫なのかと一夏が頭を抱えていると、いきなり声がかかった。

 

話しかけてきたのは、金髪とブルーの瞳がきれいな、いかにも『高貴』といった感じの女生徒だ。金髪ロールとはあざとい。

 

IS学園は世界に一つしかないというその性質上、日本以外の国から入学してくるのも珍しくはない。IS運用協定の中でも無条件に受け入れなければならないと決められている。

 

 

「訊いてます?お返事は?」

 

「あ、ああ。訊いてるけど……何の用だ?」

 

「まあ!なんですの、そのお返事。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではないかしら?」

 

 

一夏は重たい頭をさらに抱えたくなった。

 

女尊男卑の風潮が広まってから、男が女に尽くすのは当たり前という考えが浸透したのだ。多くはないが、街へ繰り出せばたまに会う。

 

正直、そういう輩は得意じゃない。

 

ISは確かに強力だが、粗暴な力はただの暴力だ。一夏はそれを、千冬と弾から嫌になるほど聞かされているし、理解している。

 

だからこそ、ISを動かせるだけで偉ぶっている女性は苦手なのだ。

 

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

 

「私を知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」

 

「あ、質問良いか?」

 

「ふん。下々のものの要求にこたえてやるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、何?」

 

 

がたた、とずっこける生徒がちらほら見えた。自己紹介の時もそうだったが、結構ノリがいい。

 

そしてその時、教室のドアが開いた。

 

 

「ははははははははッ!お前馬鹿だろ一夏。字面から分かれ」

 

「弾、戻ってきてたのかよ」

 

 

開いたドアから大笑いしながら入ってきたのは、さっき窓からどこかへ逃走した五反田弾だ。わきに紙袋を抱えている。

 

ちなみに代表候補生というのは読んで字のごとく国家代表の候補のことだ。

 

 

「って、お前それ!鷹羽ベーカリーのパンじゃねぇか!」

 

「おう、ちょっと小腹がすいたんでな。行ったら、丁度焼き上がりでよ。何個か買ってきた。何がいい?」

 

「カレーパン」

 

「迷いなく一番人気を取るかよ。いい性格してやがるぜ」

 

「うっせ。千冬ね……織斑先生をなだめるの大変だったんだぞ」

 

「わかった、わかったよ。ほれ」

 

 

ぽん、と一夏にカレーパンを投げる弾。そのまま紙袋から自分のカレーパンを取り出して食べ始める。

 

 

「うそ、鷹羽ベーカリーって超有名店じゃん。行っても大体売り切れっていう」

 

「すごいすごい」

 

「いや、でも鷹羽ベーカリーって隣の県じゃなかった?こっちにできてたっけ?」

 

 

教室がざわめく中、セシリア・オルコットが怒りに体を震わせていた。千冬といい、セシリアといい、体を震わせるのが流行っているのかもしれない。

 

 

「あ、悪い。で?国の代表候補生さんが俺になんか用か?」

 

「なんですのその言い方!私を誰だと思っていますの!」

 

「だから、エリートなんだろ」

 

「そう!エリートなのですわ!」

 

 

びしっと胸を張るセシリアを見て、弾が一夏の後ろで少し吹きだしていた。幸いセシリアは気付いていないため、余計な面倒事は起きないようなのでほっとする。

 

 

「本来なら私のような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

「そうか。それはラッキーだ」

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

「そんなことはないぞ」

 

「大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを動かせると聞いて、少しくらい知的さを感じさせるかと思いましたけど、期待はずれですわね」

 

「ははは。滅茶苦茶言われてんじゃねぇか、一夏」

 

 

ついに堪えられなくなったのか、弾が大笑いしながら会話に割り込んできた。

 

 

「何を笑っていますの?あなたも入っているのですわよ?」

 

「え、マジで?一夏と一緒にされてんのかよ。ひでぇ」

 

「いえ、あなたの方がもっと酷いですわね。なんなんですの?さっきの授業は。さすが極東のサルというところですわ。――まぁ、ISのことで何かわからないところがあれば、そうですわね……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。なにせ私、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 

唯一という部分をずいぶんと強調して自慢するセシリア。だが、一夏はちょっとした引っ掛かりを感じた。

 

 

「入試って、あれか?ISを動かして戦うってやつ?」

 

「それ以外に入試はありませんわ」

 

「あれ?俺も倒したぞ、教官。というか、弾も倒したよな?」

 

「ああ、やってやったぜ。あれは楽しかったな」

 

「わ、私だけと聞きましたが……?」

 

「女子ではっていうオチじゃないのか?」

 

「つ、つまり、私だけではないと……?」

 

「うん、まあ。たぶん」

 

「たぶん!?たぶんってどういう意味かしら!?」

 

「えーっと、落ち着けよ。な?」

 

「こ、これが落ち着いていられ――」

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

話に割ってきたのは三次元目開始のチャイムだ。一夏には福音に聞こえていた。

 

 

「っ……!またあとできますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

「おう、いつでもいいぜ」

 

「いや、弾。何勝手に答えてんだよ」

 

「いいじゃねぇか。面白そうだろ?」

 

「全然面白そうじゃねぇよ……」

 

 

ぼやきつつ席に座ると、真耶ではなく千冬が教壇に立った。どうやら、この時間は千冬が教鞭をとるようだ。

 

 

「再来週行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めようと思う。クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議などいろいろやってもらうから、要はクラス長と考えてくれればいい。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大差はないが、競争は向上心を生む。一度決まれば一年間変更はないから、そのつもりで」

 

「はい!織斑くんを推薦します!」

 

「私もそれがいいと思います!」

 

「私は五反田君を推薦します!」

 

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか?自薦他薦は問わないぞ」

 

「お、俺!?」

 

 

なんだか流されそうになったが、思い直して驚愕した。立ち上がってしまったので、教室中の視線を独占する羽目になった。今日で何度目ですかね?

 

 

「というか、なんで弾は推薦されたのに候補に入らないんだよ!?」

 

「あー……五反田はだめだ。大人の事情で」

 

「大人の事情ってなんだよ!」

 

「とにかく、他になければ無投票当選だぞ」

 

「ちょっ!?お、俺はそんなのやらな――」

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 

バンッ、と勢いよく机を叩いて抗議したのはさっきのセシリアだった。

 

きりっと整った顔を怒りにゆがませている。

 

 

「そのような選出は認められません!だいたい、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 

セシリアは机をバンバンと叩きながら猛抗議。

 

ちなみにそんな喧騒の中、弾だけはすやすやと夢の世界に旅立っている。

 

 

「実力からいけば私がクラス代表になるのは必然!それを物珍しいからという理由で極東のサルに任されては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来たのであって、サーカスをする気は毛頭ありませんわ!

いいですか!?代表は実力トップの人間がなるべき、そしてそれは私!

だいたい、文化としても後進的な国で暮らさなきゃいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛で――」

 

 

一夏は限界だった。とさかに来たってやつだ。

 

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

「なっ……!あ、あなた!私の祖国を侮辱しますの!?」

 

「先に侮辱したのはそっちだ」

 

「決闘ですわ!」

 

 

バンッ、と先程よりも断然強い力でセシリアが机を叩いた。一夏としても、これ以上は我慢がならなかった。

 

 

――いいさ。決闘でもなんでも受けてやる。

 

 

「おう。いい「その勝負、俺が買おう!」ぜ――って、弾!いつ起きた!?」

 

「さっきだ。こううるさくちゃあな、おちおち眠ってもいられねぇ。

――というわけで、俺も混ぜてもらうぜ?エリートさんよぉ」

 

「ふん。いいですわよ。どうせあなたも叩き潰さなくちゃいけないのですから」

 

「……ふむ、五反田はさっきも言った通り代表にはなれないが、いいんだな?」

 

「ええ、千冬さん」

 

 

はっ、と鼻で笑って、弾は愉悦に口をゆがませる。一夏としても久しぶりに見る、弾が面白いおもちゃを見つけた時の顔だ。

 

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら小間使い、いえ、奴隷にして差し上げますわ」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

「真剣勝負?何言ってるんだ一夏。こんなの、ただの遊びだろ」

 

「なっ!あなた、ふざけているの!?」

 

「ふざけてなんかねぇよ。あんなおもちゃを身に着けて勝負だなんだとほざいてる方が、よっぽどふざけてるぜ」

 

「あ、あ、あぁ、あなたは……ッ!」

 

「んなことはどうでもいいんだよ。で?ハンデはどのくらいつけるんだ?」

 

「は、はは、なんですの?息がった割には、さっそくお願いかしら?」

 

「何言ってんだ。俺がつけるハンデの話だよ」

 

 

そう弾が言った瞬間、クラスは大爆笑に包まれた。

 

 

「ご、五反田君、それ本気で言ってる?」

 

「男が女より強かったのは、大昔の話だよ?」

 

「五反田君も織斑君も、そりゃISは使えるかもしれないけど、言い過ぎよ」

 

 

口々に弾と一夏をたしなめる言葉が笑いと共に吐き出される。一夏はそれを聞き、不愉快に眉をひそめることしかできなかった。

 

今、男性は圧倒的に弱い。ISが生まれてから、腕力は何の役にも立たなくなった。いや、腕力自体は兵器が生まれてから使われなくなったが、ISでそれが極まったといったほうがいいだろう。

 

だが、一夏は知っている。

 

腕力の強さを。その究極系を。

 

教室が笑いに包まれる中、千冬がそれを手を叩いて黙らせる。

 

 

「織斑はハンデなしだが、五反田は必要だろう。右腕一本だ」

 

 

その言葉に、教室は先程とはまた違った意味でざわついた。

 

あたりまえはあたりまえだが、一番食いついたのはセシリアだった。

 

 

「な……っ、織斑先生!それはどういうことですか!私が極東のサルに腕一本封印されないと勝てないと思っているのですか!?」

 

「勘違いしているようだが、右腕一本の封印じゃない。右腕一本だけの使用だ」

 

「な……ッ!」

 

 

その言葉に、完全に絶句させられる一同。

 

それに構わず、千冬は続ける。

 

 

「さて、話はまとまったな。それでは、勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。対戦の順番は追って知らせる。各々、準備しておくように。さぁ、実戦に使用する各種装備の特性についての授業を始めるぞ」

 

 

数々の不満と困惑を残しながらも、千冬は授業を進め始める。これ以上長引かせてもどうせ収集はつかないのだから、勝手にやらせようということらしい。何とも千冬らしい、と一夏は思った。

 

ふと横を見れば、弾が本当に楽しそうに笑っている。遊びだなんだとは言っておきながら、相当楽しみらしい。

 

そんな親友の姿を見て一夏は、戦いまでに最大限の努力はしておこうと、慣れない教科書を開きながら机にかじりついた。

 

 

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