Scribed a bullet hole   作:byとろ

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今回はおまけみたいなものです。

>>2以降はそれが顕著ですね。


Fate should never meet

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

 

試合の翌日、ホームルームで言われたその言葉に、一夏は一瞬何を言われたのか分からなかった。というより、わかりたくなかった。

 

青春熱血系マンガみたいな終わり方をしたが、それで終わりではないということをすっかり忘れていた。

 

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「俺は昨日の試合に全敗したわけですが、なんでクラス代表になっているんでせうか?」

 

「それは――」

 

「それは私が辞退したからですわ!」

 

 

がたんと音を立てながら、セシリアが立ち上がった。いつもの腰に手を当てたポーズである。だが、今日は一段と優雅というか気品が出ているっぽい。しかも嫌味じゃない。

 

何があった?

 

 

「あの試合を終え、私もいろいろと考えさせられましたわ。一夏さん、あなたが男としてプライドを持っているのならばおやりなさい!私に構うことはないのです!」

 

 

ぐっと親指を突き立ててくるセシリアさん。こいつ昨日の試合で頭打ったのかもしれない。そういえば弾に投げ飛ばされてたわ。

 

というか、弾はどうした?姿が見えない。あいつは昼食時とかときどきいなくなるけど、どこに行っているんだ?

 

まぁ、いい。いないならばあいつに丸投げしてしまおう。

 

 

「織斑先生!弾でもいいんじゃないですか!?」

 

「あいつはだめだといったろう」

 

「そうだった……!」

 

 

最初に弾は代表になれないとか言ってた。大人の事情ってなんですかね?

 

いずれにしても、弾は実害が全くないわけだ。

 

 

「や……野郎ォ~~」

 

「一夏さん、代表を任されるのに「野郎」なんてセリフを吐くもんじゃあありませんわ。こういうんですのよ。

『我が名は織斑一夏。我がクラスの期待の為に。前にいる姉織斑千冬の尊厳の為に。この俺がクラス代表を務めてやる』

――こう言って決めるんですのよ!」

 

「セシリア、お前マジで大丈夫か……?」

 

 

本格的に頭打ってしまってるぞこいつ。薬もやってるかもしれん。

 

 

「さあ、一夏さん!」

 

「うぁ……や、やめろ!催促するな!お、俺は代表にやりたくなんかない!」

 

「あきらめろ一夏」

 

「いや、でも千冬姉――」

 

 

バシィンッ!

 

 

そんなこんなで、織斑一夏はクラス代表を務める運びとなったのだった。

 

 

 

>>1

 

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット。飛んで見せろ」

 

 

四月の下旬。今日も今日とてIS学園生徒はまじめに授業を受けていた。千冬の授業は厳しいから、とりわけまじめに取り組んでいるんだろう。

 

実際にやって見せろという千冬に頷く一夏とセシリアだったが、疑問を持つものが一人。弾だ。

 

 

「千冬さん、俺は?」

 

「お前はPICがないのだろう?というか織斑先生だ」

 

「おりぃむらせんせぇい」

 

「なめてんのかテメェ!」

 

 

千冬の口調が荒くなった。

 

真耶になだめられて冷静になった千冬が咳払いを一つして、一夏とセシリアに早くISを展開するように促す。若干頬に朱が混じっているので、恥ずかしかったらしい。それを見てきゅんとした生徒がいるとかいないとか。

 

滅多に見れない姉の姿に一夏は苦笑し、ISを展開するために意識を集中させる。一夏のISの待機状態はガントレットだ。セシリアはイヤーカフス、弾は右肩の刺青ということを考えると、少々ごつい印象を覚える。

 

『白式』(一夏の専用機)を呼び出すために一夏は右腕をつきだし、ガントレットを左手でつかむ。このポーズが一番イメージしやすいのだ。

 

光の粒子が舞い、体全体に膜のようなものが広まっていくのがわかる。スキンバリアが形成され、IS装甲が展開されるまで0.7秒。ふわりと体が軽くなり、各種センサから莫大な量の情報が送られてきた。世界がさらに色鮮やかに染まっていくようで、一夏は地味にこの感覚を楽しみにしているのだ。

 

セシリアも展開を終えて、ふわりと浮遊していた。

 

 

「よし飛べ」

 

 

千冬の言葉でセシリアが急上昇し、遥か上空で静止する。一夏も拙いながら上昇。のろのろと後に続いた。

 

 

「何をしている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ」

 

「まあまあ、千冬さん。乗り始めて一ヶ月もたってねぇ奴には酷だぜ」

 

「甘やかすとつけあがるだろう」

 

「手厳しいねぇ」

 

 

地上で千冬と弾が会話しているのがわかる。ずいぶん離れているのに、近くで言われたように鮮明に聞こえてくるのだ。つくづくハイパーセンサとやらには感服させられる。

 

セシリア情報だと、これでもまだ機能制限がかけられているのだとか。

 

優等生セシリアさんのわかりやすい説明を聞いていると、箒の説明のひどさを思い出してしまう。

 

ぐっとする感じ。どんっという感覚。ズカーンという具合。

 

これを聞いて理解できればすごい奴だ。もはや天才だろう。

 

 

「織斑、オルコット。急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地面から十センチだ」

 

「了解です。では一夏さん、お先に」

 

 

セシリアはそれだけ言って、地上に向かう。あっという間に小さくなる背を見て、一夏はさすが代表候補生だと感心した。

 

完全停止も難なくやって見せたようなので、一夏も後に続く。スラスターをふかし、一気に地上へ。

 

 

 

ギュゥンッ―――――――――ズドォォォォンッ!

 

 

 

地上にはついたが、一般的にはこれを墜落というらしい。クラスメイトの笑い声が一夏の心中を容赦なくえぐった。

 

 

「馬鹿者、誰が地面に激突しろといった。グラウンドに穴をあけてどうする」

 

「さすが一夏!俺たちにできないことを平然とやってのけるッそこにシビれる!あこがれるゥ!」

 

「これ見よがしにネタ持ってきやがった、こいつ……」

 

 

とりあえず上昇し、姿勢を正す一夏。土煙がすごいことになっているが、シールドバリアのおかげで白式には汚れ一つない。

 

 

「情けないぞ一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

 

肩を落としている一夏を、箒がずばずばと切り捨てた。擬音と感性の塊を押しつけられては、ちっとも理解できないということに気づいてほしい。

 

仕方のない個性なのか、と半ば諦める一夏。

 

 

「貴様何か失礼なことを考えているだろう」

 

 

そんな一夏の気持ちを読み取ったのか、箒が小言を言ってきた。

 

しかしセシリアがそれを遮る。

 

 

「一夏さん、お怪我はありませんか?」

 

「あ、ああ。大丈夫だけど……」

 

「そうですか。それは良かったですわ」

 

「……ISを装備していて怪我などするわけでもないだろう」

 

「あら、他人を気遣うのは当然のことですわよ?それがISを装備していても、ですわ」

 

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

 

「鬼の皮をかぶっているよりマシですわ」

 

 

セシリアと箒の視線がぶつかり合い、火花を散らした。仁義なき女子の戦いというやつだろうか?なぜかこの二人は日に日に仲が悪くなっていっている気がする。

 

 

「いつまで馬鹿をやっている。次は武装展開だ、早くしろ。五反田、お前もISを展開しろ」

 

「おっけーおっけー」

 

「一夏ァ、早く雪片を出せ!ぶった切ってやるッ!」

 

「おちつけぇぇぇぇぇッ!落ち着くんだ千冬姉ッ!なんかマンネリ気味だからァァァッ!」

 

 

ガクガクと千冬に体を高速で揺さぶられながら、一夏が叫んだ。世界最強の駄々っ子ゆすりは、いろんな意味で凶器のようである。

 

弾は千冬を無視して制服の上着を脱ぎ、シャツ一枚になった。弾以外の生徒は肌にぴったりと合う一見しただけでは水着と間違えるであろうISスーツを着ているが、弾だけは制服だ。それは弾のISが通常とは違い、装甲のほかに衣服までも形成するためである。

 

制服を脱いだのにはもう一つ意味があるのだが。

 

 

「……!」

 

 

ブシュッと、右肩の刺青から決して少なくない量の血が噴き出た。それが膨大な赤の粒子となり、弾の体を包み込んでいく。次の瞬間には、弾は『ブラッディ・ロード』を身に纏っていた。

 

それを見て、一夏がしみじみとつぶやく。

 

 

「……相変わらずスプラッタな展開だなぁ」

 

「お子様には見せられないぜ」

 

「割とガチだ……」

 

「ええい!何をしているッ。ちゃっちゃと武装を展開せんか!」

 

 

織斑先生がお怒りになっているので、一夏はすぐに雪片弐型をその手に召喚した。あいかわらずメカチックな武器である。

 

セシリアは『スターライトMkⅢ』を召喚した。一夏の召喚時間より明らかに早い。

 

 

「弾には何かないのか?」

 

「なんもねぇな」

 

「俺以上の残念機体だな……」

 

「ふんっ。五反田には丁度いいさ」

 

「千冬さん、さっきのこと根に持ってる?」

 

「そんなことはない。それと、織斑先生だ」

 

「おりぃむらせんせぇい」

 

「五反田ァァァァァテメェェェェェェェッッ!」

 

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁッ!千冬姉が激昂したァァァァァッ!?」

 

「お、落ち着いてください!織斑先生!」

 

 

この日も、割といつも通りにカオスだった。

 

 

 

>>2

 

 

 

その日、更識簪は昼食を屋上にある倉庫の上で食べようと思っていた。入学から一週間が経ち、屋上で昼食をとる風情のある生徒などいないことを見越してのことだ。

しかしそれでも、一人ぐらいは居るんじゃないかと考えていた。そうだったら諦めて帰ろうとも。

結果から言えば、人は居た。

だが、簪は帰らなかった。居たのが、話題の男子である五反田弾だったからだ。組んだ腕を枕にして仰向けで寝ていた。

彼がとんでもない規格外だということは知っている。セシリア・オルコットとの試合はこれまでの常識を覆すものだった。

もう一人の男子、織斑一夏とはちょっとした因縁がある簪だが、五反田弾にはない。

簪には珍しく、彼女自身から近づいたのも、そういう要因があったからだろう。

じっと五反田弾の顔を見つめる。こうして見ると普通の少年だ。馬鹿げた珍事を起こす人間とは思えない。

 

「……」

 

特になにかをするわけでもなく、ただ五反田弾の挙動を観察する。まあ、挙動といっても寝ているのだから、目立った変化はないが。

そのうち簪は観察するのも止めて、当初の目的である昼食をとって帰る。

簪が横にいた間、五反田弾はついに動かなかった。

 

 

>>3

 

 

 

次の日も、五反田弾は昨日と同じように寝ていた。簪も同じように観察する。やがて昼食を食べて、同じように帰った。

この日も、五反田弾は動かなかった。

次の日もいた。その次の日も。

実はずっとここで寝ていたと言われても、簪は疑わなかっただろう。それぐらい変わらずそこで寝ているのだから。

 

「……」

 

だから今日も、簪はもはや日課になりそうな観察をしていた。最近は突いたりしているが、やはり反応はしない。口と鼻を塞いでも反応しなかった時は、さすがに死んでいないかと心配になった。ちゃんと生きていたが。

故にこの日も反応などないと思っていたから、突然五反田弾が目を開いた時は心臓が飛び出るかと思った。

聞けば、弾は最初から簪に気付いていたという。簪が弾を観察していたように、弾も簪を観察していたのだ。けれど一向に話し掛けてくる気配がないので、痺れをきらして弾の方から話し掛けようと思ったらしい。

弾が起きてからは、いろいろなことを話した。趣味、好きな物、果てにはISの悩みまでも。

人見知りをするというか、有り体に言って暗い性格の簪だが、まるで人と会話していないのではないかと思う程饒舌に話ができた。

 

「へぇ、ISを自作してんのか。すげぇな」

「……自作というか、システムの……構築」

「どっちでもいいさ。十分すげぇ」

「でも……なかなか進まなくて……」

「大変なんだな」

「うん」

「……」

「……」

「……」

「え……終わり?」

「なんだよ、他に何か言うことあんのか?」

「いや普通……手伝うとか言うものじゃない?」

「手伝って欲しいのか?」

「……そうじゃないけど」

「だろ」

「でも……頑張れよとか……君ならできるとか」

「んな無責任なこと言えっかよ。ガキじゃねぇんだ、それぐらいで嬉しくなるもんじゃねぇだろ」

「……」

 

確かにその通りだ。簪は陳腐な言葉など求めていない。だが、それを言わないのはある意味で強さだ。物事を正面から受け止めて、逃げださずに立ち向かっているということだ。

 

簪にはそれを簡単に言ってしまえる弾がひどく輝いて見えた。

 

「あなたは……どうしてそんなに強いの?」

「生まれつきだ。天才ってやつだな」

「……」

「なんだよその不機嫌面は。笑えよ」

「……あなたにはわからない。……天才のあなたには」

「ああ、そうだろうな。だが、天才だっていいもんじゃない」

「なにそれ……励まし?」

「ちげぇよ。いいから聞け。

俺はな、この力を自覚した時、自分の為の暴力以外には使わないと決めた。社会の為とか、誰かの為じゃない。自分の為だけの暴力だ」

「……たまにもう一人の男子に……稽古つけてる」

「あれだって俺の為さ。そして暴力でもある。なにせ強引に和に入れてもらおうとしてるんだからな」

「……?」

「きっと、あの篠ノ之束もそうだったんだ。ただ、既存の和に入ろうとせずに、造り替えてしまったというだけで」

「……」

 

後半から、簪にはわけがわからなかった。弾自身も、簪と話しているというよりも独り言をしているという感じだ。

 

「まぁ、この話はいいさ」

 

簪が手持ち無沙汰になっているのを察したのだろう。弾は強引に話を終わらせた。簪も深くは聞かない。

簪と弾は午後の授業をサボって話を続けた。初めてのサボタージュに簪は不安だったが、それ以上に弾と話していたいのだ。おそらくは弾もそう思っているだろう。

話したいことは全て話した。愚痴も悩みも全て。

日が暮れる頃の簪は、ISのシステム構築を何とか完成させたいと強く思っていた。一人じゃなくてもいい、どうせなら幼馴染みの手を借りたっていいだろう。

今ならできる気がする。

希望を胸に、簪は弾と別れた。もともと出会うはずのない者同士、在るべき場所に帰るのだ。

――さぁ、始めよう。

 

 

>>4

 

 

 

これ以降、彼らが出会うことはなかった。

それが当然。

それが必然であり、運命だ。

だから、運命を破って二人が出会ったあの一瞬は、まさに奇跡。

誰かを救う為の――小さな奇跡だったのである。

 

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