アクセル・ワールド 22番目の金属   作:傍から観る者

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第4話 夏休み直前

「『それで、あの剣の効果は結局何だったんだ? なんか急に大きくなってたし』」

 

 秋地はとんかつを口の中で味わいながらそう敦司に聞いた。食べながら相手と話せるというところが、直結のいいところだろう。たまに味の感想までが相手に伝わってしまうこともあるが。

 

「『聞いてくると思ったぜ。あの剣、<<ダインスレイフ>>(吸血剣)』って名前なんだが、持ってるだけで体力を消費するんだよ。そして、持ち主の体力が減るか、敵やオブジェクトにダメージを与えるかすると威力と大きさが増す。」

 

 敦司もD定食を口にしながらそう返した。味噌汁、さんまの梅漬け、大根の漬物にご飯と、なかなかしぶい組み合わせの定食だ。敦司は和食が好みらしく、よくD定食を注文する。隣の空が注文したのはステーキ丼。お茶碗3杯分はあるだろう白米の上に、分厚い肉が3枚乗っている。学食のメニューの中でもトップクラスのカロリーと値段を誇る。食べきれるか不安になる量だが、空は表情を変えることなく黙々と食べている。

 

「『ダインスレイフ? 確か伝説の剣だな。じゃあ、無制限フィールドでドロップしたのか? 確か無制限フィールドはMMORPGみたいになってんだろ?』」

 

 ダインスレイフ、あるいはダーインスレイブ。北欧の伝承で語り継がれる伝説の武器。デンマークの王ホグニが女神フレイヤより渡された、敵を殺しつくすまで鞘に戻らない魔剣。秋地はゲームの知識を脳内から引っ張り出した。様々なゲームで高レアリティとして扱われているので、ボス撃破の報酬かなにかと推理して、秋地はそう言ったのだが。

 

「『それがな、俺の初期装備なんだよ』」

 

 敦司は苦笑しながら秋地の考えを否定した。

 

「『……えぇ? ダインスレイフをはじめから持ってんのかよ。チートじゃん』」

 

 先ほど真っ二つにされたばかりの秋地としては、文句も言いたくなる。あの魔剣から繰り出される必殺技は、それほどすさまじかった。たとえ無傷の状態でも、今の秋地では一発でお陀仏だろう。

 

「『まぁそういうな。これでもはじめはかなり苦労したんだぜ? 持ってるだけで体力が減っていくから、遠距離攻撃タイプのアバターとやりあうと、まず仕留める前に自滅するからな。レベル1のころなんかひどいもんだったよ』」

 

 敦司は味噌汁をすすりながら、ため息をついた。確かに、何もしなくても体力が減っていくのなら、戦闘開始直後に逃げ回ることも戦法の一つだろう。秋時としては真正面から敦司を倒したいので、するつもりはないが。

 

「『ま、あれだけ性能良ければデメリットもあるよな。でさ、空さんのアバターはどんなタイプなの? なんか見た目は遠距離攻撃してきそうな感じだったけど。たしか、ブラウン・ダーティーだっけ』」

 

 秋地は空のアバター姿を思い出しながらそう言った。確か、レベルは7だったので敦司より強いということはわかるのだが。空はステーキ丼から秋地に目線を移した。

 

「『私のアバターのタイプ? ……とりあえず近距離タイプではない。格闘も苦手なわけじゃないけど。一回戦ってみる? そのほうが説明するより早いし』」

 

「『待て空。……なあ秋地、悪いことは言わんからやめとけ。おもちゃにされるぞ』」

 

 そういった敦司は真顔だった。空の提案に賛成しようとした秋地も思わずためらうほど。

 

「『え、空さんそんなに強いの?』」

 

「『強いっつーか、いやまぁもちろん強いっちゃ強いんだが。なんというか、性質わりぃんだよ空のアバターは』」

 

「『……そんなことない』」

 

 初めて敦司の真顔を見て、とりあえずもうちょっとレベルを上げてから挑もうと秋地は思った。

 

 

 

 放課後、秋地と敦司は今後の予定を立てるためにボーンに集まっていた。空は明日行われる終業式の準備のために学校に残っている。

 

「『それで、これからどうするんだ?』」

 

 秋地は敦司に思考発声でどうするのか問いかけた。

 

「『それなんだがな、どうせだし土曜日に人が多い所に行って乱入しようと思ってるんだ。土曜日から夏休みだし、バーストリンカーも多いだろ』」

 

「『世田谷(ここ)じゃだめなのか?』」

 

「『ああ。世田谷っていうか、桜新町にゃ俺たち以外のバーストリンカーは多分いないと思うぜ。だから新宿あたりに出かけて乱入待ちだ』」

 

「『乱入待ち?』」

 

 乱入はわかるが、それを待つのだろうか。それより、こちらから乱入を仕掛けたほうが早い気がする。そう秋地は考えた。

 

「『あ、説明してなかったな。えーと、レギオンはわかるよな? 領土って言って、レギオンが支配してる場所では、マッチングリストの登録を拒否できるんだよ』」

 

「『へぇ。なら、新宿もどこかのレギオンの領土なのか』」

 

「『ああ、青の領土だ。好戦的なのが多いから、対戦しまくりたいときにはお勧めだ。まぁ、あえてマッチングリスト登録してる奴もいるだろうし、こっちから乱入もできると思うぜ』」

 

 好戦的と聞いて、面白そうだと思う秋地。対戦でもらえるポイントは、レベルが自分より高い敵と戦ったほうが多くもらえると聞いたので、できるだけ高レベルプレイヤーがいるといいのだが。

 

「『そうだ、タッグ戦もしてみるか? レベル1と4だし、受けてくれるやつも多いだろ』」

 

「『いいね、やろうか。あ、でも俺たちどっちも近距離攻撃しかできないじゃん』」

 

 秋地の必殺技は今のところスラッシュ一つのみ。敦司のデュエルアバターも、少なくとも遠距離攻撃ができるようには見えなかったが。

 

「まぁそこは問題ないぜ。青のレギオンには基本的に近距離攻撃メインが多いし、俺も近距離攻撃しかできないわけじゃねえしな」

 

「『お、なんか必殺技でもあるのか?』」

 

「『ま、そこは明後日のお楽しみにしとけ』」

 

 敦司は笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

 




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