アクセル・ワールド 22番目の金属   作:傍から観る者

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第6話 連戦

 ニードルを倒した直後、目の前に【YOU WIN】の文字が浮かび上がった。

 

「……リベンジャーも倒し終わってたのか」

 

 レベル4と5の戦いにしては随分速い決着だと思ったが、リベンジャーのアビリティを考えると、そこまで驚くことではないかもしれない。

 

「よっ、お疲れさん」

 

 いつの間にか秋次の背後に近づいていた敦司が、肩に手をおいた。

 

「……びっくりしたわ。気配を消すな気配を。……つーか、いつからいたんだ?」

 

「お前が必殺技くらったあたりからだな」

 

「早いなおい」

 

たぶん5分もたってないころだろう。どれ程早い決着だったのか。

 

「ま、むこうさんも俺と同じでピーキーだからな。最初の必殺技で大体勝負が決まっちうんだよ」

 

なるほどとうなずく秋次。確かに、敦司のアビリティはなかなか特殊だから、グレープは一気に決着をつけるつもりだったのだろう。

 

「できれば、あの人の必殺技見てみたかったんだけどな」

 

ジュースの必殺技が予想できない秋次。頭から果汁でも噴射するのだろうか。想像してみると、かなりシュールだ。

 

「そうそう。いつ頃知り合ったんだ? ジュースさんと」

 

 少し疑問に思い秋次が尋ねる。

 

「ぶどうと? えーとな、俺がレベル1のときに戦って勝ったんだ。そんで、そのときぶどうはもうレベルが4だったから、めちゃくちゃ悔しがられてな」

 

「レベル1で勝ったのか」

 

それはかなりすごいのではなかろうか。いまの秋次が敦司と再戦しても、まず勝てない。

 

「まぁぶどうが油断してたってのもあるけどな。それ以来毎回勝負しかけられるんだよ」

 

そこで敦司はため息をついた。

 

「ま、ぶどうのことはおいといてだ。いまポイントはどのくらいだ?」

 

「ああ、ちょっと待って」

 

 コンソールを操作し、現在のバーストポイントを把握する。

 

「162ポイントだな」

 

「んーそんなもんか。やっぱ5回じゃ足りねえな。……いっそレベル1のまんまでポイントをためるって手もあるが」

 

 敦司がいっていることは、いわゆる低レベルで効率よく経験値を稼ぐテクニックのことだろう。アクセル・ワールドでも応用はできるかもしれないが……。

「……でも正直厳しくないか? 必殺技ひとつしかないし、なによりまだ慣れてない」

 

「そうなんだよな。ま、普通に上げていけばいいか」

 

「レベル4まで何ポイントいるんだ?」

 

 レベル2になるには300ポイント必要だということは知っているのだが。敦司は腕を組んで思い出そうとする体勢になった。

 

「1から2が300で、2から3までが400だったかな。そんで3から4は600ポイントだ」

 

 脳内で計算する。1300から162を引くと、1138。今日得たポイントは60とすこし。仮に毎日5回戦い全勝して、3週間。

 

「結構時間かかるなあ」

 

「このペースならな。ま、今日はチュートリアルみたいなもんだ。ぶっちゃけレベル2になればあとはマジで何とかなる。自分のアバターを解析される前に、一気に行けばいいんだ」

 

実体験のように話す敦司。

 

「確か、レベルが上がるごとにちょっと体力が増えるんだろ?」

 

「それもあるけど、レベルアップボーナスで、必殺技が手に入ったりするから、そっちがメインだな。ま、そこらへんはレベルが上がってから考えればいいさ」

 

 そこで敦司は話を切った。

 

「さて、終わりにしますかね。さすがに疲れたろ?」

 

「それはそうなんだけどさ。……なぁ、戦う前にジュースさんが何か話したがってたみたいだけどいいのか?」

 

「あー、そうだったそうだった。ちょっと待っててくれ」

 

 そういうと、敦司はすたすたと歩き始めた。おそらくジュースと戦った場所に向かっているのだろう。秋次もニードルが爆散したところに顔を向けると、もうそこにはいなかった。バースト・アウトしたのだろう。

 

 思ったより早く敦司は戻ってきた。

 

「あれ、はやいな」

 

「ま、話つっても次はいつ戦うかとか、青のレギオンに入らない? とか、そんぐらいだしな」

 

「へー、スカウトされてんだ?」

 

「まぁな。さっき言った初ぶどう戦の時に青の幹部が見てたらしくてよ。ぶどうはそんな熱心じゃないんだが、上から結構入らせるよう言われてるんだと」

 

「入る気はないんだな」

 

「まぁな。ぶっちゃけゲームの中まで行動を拘束されたくないんだよ。自由に行動したいから」

 

 敦司は本気で嫌がっている様子だった。

 

「それじゃ、リアルに戻ったら真っ先にグローバル接続を切れよ? そうしたら、すぐに動く。ないと思うが、万が一リアルばれすると面倒だからな」

 

「リアルばれ?」

 

「ああ、……本当に面倒だからな」

 

 やけに実感がこもっている。もしかして経験があるのだろうか。そう思いながら、敦司に続いてバースト・アウトのコマンドをつぶやいた。

 

「お疲れさま。……駅に行こう」

 

 現実に戻り、グローバル接続を切った瞬間、空が立ち上がった。敦司と秋次もそれに続く。会計は割り勘だった。

 

 

 桜新町駅で降り、敦司の提案で貸し切り状態のボーンで明日の予定を話し合うことにした。 

 

『それじゃ、明日どうする?』

 

 麦茶を飲みながら思考発生で秋次と敦司に問う空。

 

『そうだな。秋次はどうしたい?』

 

『どうせなら、違うところの奴と戦いたいな。青以外のところで』

 

『お、いいな。よーし。夏休みの目標は全てのレギオンと戦うことに決めたぜ』

 

『……全ては無理だと思う』

 

 敦司の発言に空は苦笑した。

 

『だよね』

 

『ならせめて、6大レギオンメンバーと戦ってはみたいな。俺もまだ青と緑と赤の奴らとしかやってないしな』

 

 6大レギオン。青赤黄緑紫白の6つの王たちが統べているレギオンのことだろう。

 

『あのさ、レギオンって、どうやって作るんだ?』

 

 ふと疑問に思った秋次は敦司と空へ訪ねる。

 

『レギオンの作り方? えーと……』

 

 敦司が首をひねっていると、空が話し始めた。

 

『レベル4以上のリンカーが、無制限フィールドでマスタークエストをクリアすればいい。それでレギオンを作る権利が生じる。けど』

 

『けど?』

 

『そのあと、レギオン自体を作るクエストをクリアしないといけない。そして、そのクエストは最低4人いないと攻略できない仕掛けがある』

 

『ああ、要するに4人いないとレギオンが作れないんだ』

 

『基本的にはね』

 

 基本的にはという空の言葉から、何か裏技でもあるのだろうかと考える秋次。

 

『なんでそんなこと聞くんだ?』

 

 敦司が氷をかみ砕きながら問い返した。

 

『いや、領土をもってみたいだろ? 新しいゲームをインストールしたら、基本何でも試したいから』

 

『なるほどな、その気持ちはわかるぜ。残念ながらうちは一人足りないけどな』

 

 空、敦司、秋次の3人。それぞれ親と子同士の関係だ。仮に秋次が子を作れば、4人になるので、レギオンが作れるようになる。

 

『そのうち作ってみたいな。ほら、王ってたぶん対戦とかしないでしょ? レギオンメンバーとだったらともかく、普通のプレイヤーとはさ』

 

『ああ、そもそも姿を見たことがないな俺は』

 

 麦茶の氷をかみ砕きながら敦司が同意した。

 

『でもさ、領土戦だっけ? あれで攻め込めばもしかしたら王と戦えるかもって』

 

『なるほど、その手があったか!」

 

 敦司が力強くうなずく。興奮したのか、後半のほうは口でしゃべっていた。空が敦司を見つめ、気づいたらしい敦司。

 

『すまん。……でも、マジでいいなそれ!』

 

『だろ? やっぱ戦いたいよな!』

 

 テンションが上がった敦司を空がじっと見つめている。

 

『……今の敦司だと、3分かな』

 

 空がぼそっと思考発声でつぶやいた。

 

『何がだよ?』

 

『空さん、3分って?』

 

『王と戦ってどのくらい持つかの話』

 

『まじかよ!』

 

 ……どうやら勝ち負けの範疇にないらしい。秋次からしてみるとかなり強い敦司がそのレベルということは、やはり王たちの実力はけた違いなのだろう。そこで、空の話し方がまるで王を見たことがるようで、少し気になった秋次は少し質問してみることにした。

 

『空さんは見たことあるの? 王を』

 

 秋次の質問に空は少し目をつぶって、ゆっくりと答えた。

 

『ある。というか、戦ったこともある』

 

『へー! どの王と?』

 

『黄の王、イエロー・レディオと。戦った時は、まだ王ではなかったけれど』

 

『おいおい、初耳だぜ』

 

 敦司が面白そうに空を見つめている。

 

『別に、面白い話でもない。私は前、黄のレギオンにいただけ。秋葉原からこっちに引っ越して、かかわることが少なくなって、自然消滅みたいになった』

 

『……ふーん』

 

 空の普段以上にそっけない態度から、敦司も話を聞くことをあきらめたらしい。秋次も、あまり突っ込まないようにする。

 

『じゃあ、明日の話に戻すか。えーとなに話してたっけ……』

 

『どこのレギオンと戦うかだろ?』

 

『そうだったな。じゃあ、明日は緑と戦うことにしよう。近いしな』

 

『確か世田谷の一部も緑の領土なんだっけ?』

 

『おう。そこら辺は空に聞いた方がいいけどな』

 

 空が先ほどの雰囲気を消して、いつも通りの様子で話し始めた。

 

『……緑のレギオンは基本的に防御力に優れているアバターが多い。特に王のグリーン・グランデは加速世界最高の防御力を持っている』

 

『最高の防御力か』

 

『これは噂なんだがな』

 

敦司が空の話に付け加える。

 

『緑の王の体力ゲージは、半分切ったことがないらしい』

 

『それが本当なら、最高というか最強の防御だな』

 

どれ程硬いのか想像もつかない。攻撃したらこっちがダメージを負いそうだ。

 

『……緑系の攻略方法は、基本的に素早さで攪乱して、体力を削っていくこと。特に、あなたのアバターは素早さに特化しているから、戦いやすいと思う』

 

 空の言うとおり、オルトロスは、素早さと攻撃に優れている。半面防御はいまいちだ。チタンとついているわりにかなりもろい。

 

『なるほど、今日の戦いかたで問題ないわけだね』 

 

『まぁ今日の調子をキープできれば問題ないだろ。それじゃ、明日から10回勝利をノルマにするぞ。じゃねえと間に合わねえからな』

 

『厳しいなあ敦司は』

 

『……空に比べたら甘いと思うけどな。さて、そろそろ宿題始めるか』

 

 敦司はウィンドウを操作し始めた。宿題のデータを探しているのだろう。空も同じように動き始めた。

 

『忘れてた。……あ、加速してやるのはダメ?』

 

 いいアイデアを思い付いたとばかりに敦司と空に聞く秋次。

 

『んー……』

 

敦司は空のほうへ視線を写した。

 

『……あまり、日常で加速に頼らない方がいい』

 

『え』

 

『……日常的に加速に慣れてしまうと、無くなってしまったとき困るから』

 

『無くなる? あ、ポイントがゼロになったらもう加速不可能なんだっけ』

 

『ま、そういうわけだ。地道にやるしかないな』

 

『残念だな……』

 

 しょうがないと秋次は気を取り直し、宿題を始めた。

 

 

「明日の集合場所も秋次の家だな」

 

 ボーンを出て、敦司がいう。

 

「じゃあ、私も家にいけばいい? 多分そのほうが速いから」

 

「わかった。あ、そうそう。どうせなら明日は宿題をしてから出掛けない?」

 

正直、戦った後の勉強は集中しづらかったので、そんな提案をしてみる。

 

「そっちの方がいいか。さっさと終わらせてゲームに集中したいしな。空もそれでいいか?」

 

「うん。いいよ」

 

 明日の計画を立てつつ歩いていると、いつもの公園についた。

 

「じゃ、また明日」

 

「おう、じゃあな」

 

「またね」

 

そのまま二人と別れ、家に帰宅した。

 

 

 

 

 




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