ウルトラマンティガ―THE PARALLEL WAR― 作:龍気
「マドカ・コウガ君、学院の者達を救ってくれた事を、この学院の代表として言わせて貰いたい、本当にありがとう。」
オスマンは光牙に感謝の言葉を継げ、頭を下げた。
光牙は今、トリステイン魔法学院の学院長室で、オスマンとコルベール、そしてロングビルの3人といた。
才人達とティガの名を決めた、あの後、光牙はオスマン直々から、お礼がしたいと言われ、奇跡的に無事だった学院長室へと来たのだった。
「いや・・・俺は只当然の事をしただけで・・・頭を上げてください。」
「じゃがのぉ・・・・。」
「それより今は怪我を負った人達の方に手を回してください、助かった人達の無事な姿を見られる事が、俺の一番の喜びですから。」
「コウガ君・・・ありがとう、君の様な若者が居る事が知れただけでも、ワシみたいな老人にとっても一番の喜びじゃ、
うむ・・・ではもう行っても構わんよ、ミス・ロングビル彼をミス・タバサの部屋へ案内しておくれ。」
「かしこまりました、こちらへどうぞ。」
「はい、では学院長、コルベールさん失礼します。」
光牙はロングビルに連れられ、学院長室から出て行った。
「・・・・彼は一体何者なのじゃろうな?」
「分かりません、ディテクト・マジックを使って調べましたが、彼は普通の人間でした。」
「それに彼の持っていた銃、あんな威力を持ち、尚且つ連射ができる銃など見た事が無い。」
「・・・ですが、優しく勇敢な少年ですね。」
「うむ・・・彼の爪の垢を煎じて、全貴族達に飲ませたいものじゃの。」
「・・・・彼について王室には・・・。」
「無論報告してはならん、そんな事を聞けば、王室のボンクラ共は、彼を利用しあの強力な銃の出所を知る為、
監禁し無理にでも吐かせようとするかもしれん、この学院の英雄をそんな目に合わせたくはない、
報告するのは、あの2体の怪物、そして巨人・・・彼等は彼の事を「ウルトラマンティガ」と名を付け呼んでおったの、
この二つのみ報告じゃ。」
「かしこまりました。」
「・・・・・このトリステイン・・・いやこの世界に何が起き様としておるのじゃ?」
オスマンは不安な表情を浮かべ、夜空に浮かぶ、地球と比べると巨大で蒼く輝く月と、その隣の少し小さな薄っすらと赤く輝く月の双月を見詰めた。
それから少しして、光牙はロングビルの案内でタバサの部屋の前まで来ていた。
「では、私はこれでミスタ・コウガ。」
「光牙でいいですよ、ロングビルさん、俺は貴族でもなければ偉い人間でもない、普通の人間ですから。」
「・・・・分かったわ、じゃあ私は失礼するわコウガ君、またオールド・オスマンからのお呼び出しがあると思うから、
その時は私が呼びに行くから、よろしくね。」
「はい、ではありがとうございました。」
ロングビルと別れ、ロングビルが見えなくなるのを確認し、光牙はタバサの部屋の扉をノックした。
コンコン・・・
「タバサ、光牙だ。」
「・・・・入って。」
タバサの返事を聞き、光牙は部屋の中へと入った。
タバサの部屋は女の子の部屋としては殺風景としていて、ベッドと机、クローゼットと、沢山の本が収められて本棚があるだけだった。
そしてタバサは、まるでお土産を持って帰ってくる父親を迎える子供の様に、入ってきた光牙へ、目を輝かせながら早歩きで駆け寄り、
いまかいまかとある物を待ち望んだ。
「早く聞かせて。」
「待て待て・・・実はもう1人この話を聞かせたい奴がいるんだ。」
「?・・・誰?」
タバサが光牙に尋ねようとした時。
「その前に・・・。」
光牙は部屋の窓を開け、腰に挿したGUTSハイパーガンを取り出した。
バシュンバシュン!!
ズガン!!
バリーーン!!
光牙は夜の闇に向って、二発レーザーを放った。
すると少しした後、何かに当たり爆発する音と、何かが割れる様な音がした。
「・・・今のは?」
「・・・・視線を感じた、どれも俺達を監視する様な視線と生物とは違う気配がした、この話はあまり聞かれたくないし見られたくない、
だが一体誰が?」
光牙がそこまで言うと、タバサはしばし考え口を開く。
「・・・・1つは心当たりがある、私を監視していたガーゴイル。」
「ガーゴイル?」
ガーゴイルとは、土系統の魔法で作られた動く魔法人形、ゴーレムとは違って擬似的な意志を持ち、魔力が供給されていれば、
メイジの操作を受けずに自律行動をとる事が可能である。
「・・・誰がタバサを監視してるんだ?」
「・・・・・・・・・。」
タバサは黙り、何も言おうとはしなかった。
それは聞かれたくない事ではなく、言えない事だと光牙は理解した。
「分かった、何も聞かないよ、だからそんな顔しない。」
「・・・うん。」
一方もう1つの視線の正体、それは「遠見の鏡」で光牙達の様子を見ようとしていた、オスマン達であった。
学院長室の壁に掛けられている鏡には、まるでテレビの砂嵐の様に荒れた画像の様な物が映し出されていた。
「オールド・オスマン・・・・。」
「何とも気配に敏感な少年じゃ・・・あ~あ・・・これは当分使えんのう・・・。」
学院長室ではオスマンとコルベールが、鏡を見ながら話していた。
「まぁ・・・ワシもこんな事はしたくはなかったんじゃが、彼は色んな意味で異端過ぎる。」
「ミス・ヴァリエールの召喚したサイト君、その左手に刻まれた、始祖ブリミルに仕えた伝説の使い魔「ガンダールヴ」のルーン、
それだけでもとんでもない事なのに、彼のルーンも見た事の無い上、四つも刻まれている。」
「・・・・もうよい・・・この様な事は止めよう、彼に対しても失礼じゃ。」
「ですね・・・。」
「・・・・・気になるのなら直接彼に聞こう、それが一番じゃ。」
2人は互いに顔を見合わせて頷いた。
そしてもう1つの視線、ガーゴイルを操っていた者達は。
「ジョゼフ様・・・あの者を見張っていたガーゴイルとの繋がりが消えたとの事です。」
「ほう・・・何が起きた?」
ジョゼフと呼ばれるこの男、ハルケギニア1の大国、「ガリア王国」の国王、国内外から「無能王」と知られている「ジョゼフ1世」である。
彼が何故タバサを監視しているかは、いずれ知る事となろう、なので今はその事は伏せて話を進めよう。
「最後の知らせでは、あの者のもう1体、いやもう1人の使い魔が目覚め、その少し後なぞの巨大な怪物2体に、あの者が通っている学院が襲われ、
壊滅し掛けたとの事です。」
「「し掛けた。」だと?壊滅しなかったのか?」
「はい、怪物は突如現れた謎の巨人によって退治されたと。」
「巨人?」
「はい・・・怪物達もメイジ総出の魔法では傷1つ付けられない程の強さを持っていましたが、その巨人の前に敗れました。」
「・・・・興味があるなその巨人・・・。」
「監視は如何いたします?」
「よい・・・暫くはほっとくがいい、それよりその巨人について調べろ。」
「かしこまりました。」
女性は王室から出て行き、ジョゼフは1人となり、1人不気味に笑い呟くのだった。
「・・・・巨人よ・・貴様は俺に痛みを教えてくれるのか・・・・それとも・・・・フフフ・・・フハハハハ!!」
場所は戻り、タバサの部屋。
ばさ・・・ばさ・・・
「おっ!!来たか。」
「きゅ~いきゅ~い。」
「何だ何だ!?」
羽ばたき音と共にシルフィードが現れ、その口には、パーカーのフードを銜えられ、ぶら下がっている才人の姿があった。
「ありがとうシルフィード。」
「きゅ~~~い。」
「彼は・・・ルイズの・・・。」
「光牙、何なんだ一体?」
「実はな・・・・タバサ、音が外に漏れない様にする魔法ってある?」
コク
タバサは頷き、「サイレント」を唱えた、これで会話が部屋から盛れる心配は無くなった。
「さてと・・・才人、実を言うと俺はお前と同じ世界の人間じゃない。」
「何だって!?」
才人は光牙の言葉に驚愕し、光牙に詰め寄る。
「でも、お前あの時・・・。」
「確かに俺は地球の日本から来た、だけど俺の居た地球に、過去にも今にも怪獣防衛隊・GUYSなんて組織は無い。」
「そんな!?」
「俺はお前の居た世界とは別次元に存在する地球から来たんだ。」
「・・・・それって、SFであるパラレルワールドって事か?」
「パラレルワールド?」
「多次元宇宙とも言われる、もう1つの可能性が現実となり、実在する自分の住む世界と似た世界の事だ。」
「・・・・?」
タバサは今一理解できないのか、かわいらしく頭を傾けた。
「例えばだ、タバサは自分が男として生まれたらどうなったかと思った事はある?」
コク
タバサはしばし考え、頷いた。
「それが現実として実在する世界、それがパラレルワールド、幾つにも枝分かれした、無数の可能性が現実となって存在する世界。」
「そんな世界が・・・。」
「実在する・・・俺達の存在がその証拠だ、それに俺達にとってもこの世界は異世界だ。」
「どう言う事?」
光牙は自分の居た世界について大まかに説明した。
魔法は御伽噺の中での存在で、嘗ては貴族制度があるも今は存在しない世界。
魔法ではなく、科学と言う誰もが使える技術が発達した世界。
そこでは誰でも教育を受けられ、国の代表は国民の意思で選ばれる等、ハルケギニアではありえない事が当たり前として存在する世界の話を聞いたタバサは感心していた。
そして自分達は、その世界からこの世界へと召喚されたのだと。
「信じてくれるかな?」
「信じる・・・今此処で嘘をつく必要は無い。」
「ありがとう・・・さてこれからが本題だけど。」
「えっ?俺と違う地球から来たって話じゃなかったのか?」
「それもそうだが・・・才人、お前の世界にはウルトラマンは存在してたんだよな?」
「あぁ・・・まさかお前の世界には居なかったのか?」
「いや・・・居た・・・だが今は居ない。」
「?どういう事だ?」
才人は光牙が何を言いたいのか今一分からず、頭を掻きながら光牙に尋ねた。
すると光牙は懐に手を入れ、スパークレンスを取り出した。
「?それは何?」
「・・才人・・・これからの事は他言無用で頼む、タバサも頼めるかな?」
「約束する。」
「あぁ・・・俺も。」
「シルフィードも。」
「きゅ~~い(分かったのね)。」
「ありがとう、これはあまり人に知られる訳にはいかない、君達を信じて話す、俺の目的と正体を。」
「正体?」
「才人、先程の俺の居た世界に、ウルトラマンが今は居ないと言った意味、その答えは・・・。」
光牙はタバサ達から少し離れ、スパークレンスを起動させ、胸の方へと持って行った。
ピキュイイイイイイイイイイン
「!?」
「きゅい!?」
「何だ!?この光は!?」
スパークレンスから眩い光が放たれ、そのあまりもの眩しさに、タバサ達は目を瞑った。
そして光が治まり、目を開けると。
「・・・・・・!?」
「きゅい!?」
「う・・・嘘だろ!?」
光牙が立っていた場所には、夕方に自分達を救ってくれた英雄、ウルトラマンティガが、最初に現れた時の巨体ではなく、
人間のサイズの大きさで立っていた。
『俺がウルトラマンだからだ。』
「光牙!?」
「やはり・・・あなたが・・・ウルトラマン・・・ティガ。」
『フン・・・。』
「「「!?」」」
突如タバサ達の脳裏に、映像が送り込まれた、ティガがテレパシーを通して映像を流しているのだ。
その映像は、漆黒の宇宙に浮かぶ、蒼く美しく輝く惑星、地球の姿が映し出されていた。
「これは・・・?」
『今俺がテレパシーを通じて、君達の精神に直接俺の記憶をイメージとして映し出している。』
「これは・・・地球だよな?」
『そうだ・・・俺の居た世界の地球だ。』
「これが・・・・・綺麗・・・。」
『俺は地球に居た頃、3000万年前の超古代の地球を守護していた戦士の魂と一体化しウルトラマンとなった。』
「3000万年前!?」
「戦士の魂?」
『そう・・・私の魂と嘗ての体を彼に託し、彼は光の巨人ウルトラマンとなった。』
「誰!?」
突如として聞こえてきた、聞いた事のない声に、タバサ達は辺りを見渡すが誰も居ない。
『今の声はレンス、俺にティガの力と名を与えた、嘗てのティガだ。』
『タバサ嬢、平賀殿、シルフィード嬢よ、驚かしてすまなかった、私の名はレンス、普段は先程光牙が変身時に使ったスパークレンスの中に居る、
以後お見知り置きを。』
「はぁ・・・どうも、俺の事は才人でいいです。」
「私はタバサでいい。」
「きゅ~~い(私はシルフィーで構わないのね)。」
『あぁ・・・よろしく。』
『さて・・・これから話す事は俺の地球での出来事だ。』
光牙・・・ティガは、自分の居た世界の地球での出来事を話した。
そのつどタバサ達の脳裏には様々なイメージが映し出された。
3000万年前の地球に世界を壊滅させようとした邪悪な存在、この世に存在する万物、人や動物、草木や土、空や海等の全ての、邪悪で邪な魂、
憎しみや怨念等の心がエネルギーとなり、集合、実体化し怪獣となった「邪心融合体」と地球を守る光の巨人、ウルトラマン達との激しい戦いが繰り広げられていた。
ウルトラマン達は邪心融合体との戦いに勝利し、石像となり永き眠りについた、いずれ蘇る邪心融合体に備え。
そして3000万年後の現代に、邪心融合体は蘇った。
現代に蘇った邪心融合体は手始めに、嘗ての敵である、ティガの石像を破壊した。
その時、超古代人の遺伝子を受け継ぐ光牙と、遺跡に祀られたスパークレンスの中で眠っていたレンスは出会い、
光牙は力と巨人の体、名と使命を受け継ぎ、ウルトラマンティガとなった。
「マイナスエネルギーみたいな物か?俺の世界でも嘗て似たような事が起きたんだ。」
才人の居た地球でも嘗て、地球人の憎しみ悲しみ等の邪悪な心、「マイナスエネルギー」が怪獣を生み出し、人々を恐怖に陥れた事があった。
だがウルトラマン80(エイティ)の活躍により人々は救われたのだ。
『確かに似ているな、だが決定的な違いは、人間だけでなく命が宿る万物の邪悪な心が生み出した、
つまり地球に存在する全てが生み出したのが邪心融合体なのだ。』
「地球が・・・。」
『全ての物に命がある・・・地球にも命がある、嘗ての度重なる環境破壊や人間同士の戦争により、
傷付いた心、奪われた魂が集合し邪心融合体は生まれた。』
『奴等は邪な感情の塊ゆえに、破壊の衝動しかなく、全ての命を消し去る為に破壊を繰り広げるのだ。』
才人は黙り込んでしまった、もし自分の住んでいた地球がこれ以上人間の手によって傷付き、醜い争いが起きる物なら、
いずれ自分達の世界にも邪心融合体が現れるのではないかと、不安が頭をよぎった。
「・・・・その後どうなったの?」
邪心融合体の出現による影響は、地球に様々な異変を齎した。
元々異星人の存在が確認されていた地球に、邪心融合体の放つエネルギーに引き寄せられるかの様に、宇宙からの侵略にも見舞われる様になる。
そして世界各地で眠っていた怪獣の出現、時限の歪みによる怪事件が頻繁に起きる事となった。
現代に蘇ったティガは、彼の居た世界の防衛組織GUTSと協力し、邪心融合体や怪獣、宇宙からの侵略者達の脅威に幾度と立ち向かい、
邪心融合体の根源、破滅の闇を齎す邪神・ヴェノムゾーアを、世界の人々の希望の光と共に戦い、
ついにヴェノムゾーアを撃退し、1年以上の短くも長い戦いは終えた。
「よかった・・・。」
「じゃあもう光牙達の居た世界は無事なんだ。」
『・・・・あぁ・・俺達の居た世界はな。』
「?・・・どういう事?」
『今日現れた2体の怪獣、ゴルガとメバルは、先程話した、俺達の世界で倒した筈の邪心融合体だ。』
「「「!?」」」
『奴等は俺達の世界に居た邪心融合体とは違う、この世界に存在・・・いや生まれた邪心融合体だ。』
「そんな・・・。」
「きゅ~~い・・・・。」
『それに奴等は俺達の世界に居た個体と比べると明らかに強くなっている。』
「そんな!!なんで?」
『奴等の強さは、その怨念の強さにより変わる・・・この世界の怨念は私達の世界とは比べ物にならぬほど強力だと言う事だ。』
「・・・・・・・・。」
レンスの言葉に、タバサは納得したのか、何も言わないで黙り込みそして心の中で嘆いた。
この大陸に住まう貴族達による気まぐれや傲慢の為に、土地を奪われ、自由を奪われ、命を奪われた者達の恨み辛みの怨念が、
長い時の間につもりにつもり、ついにはあの様な凶悪な怪獣達を生み出すまでになったのだ。
だがこの大陸だけでは邪心融合体が生まれるほどの怨念が集まるとは思えなかった。
この大陸意外にも存在する国でもこの大陸でも同じ悲劇が繰り返され、それがこの様な悲劇を生み出したのだと、
タバサは1人、貴族の・・・人間の醜さに、自分も同じ、その醜い人間である事に嘆くのであった。
『地球で過ごしていた俺達の前に、ある少女が現れ俺達に「世界を救って。」と救いを求めてきた。』
『私達は、彼女の願いを聞き、彼女の計らいでタバサの使い魔としてこの世界にやって来たのだ。』
「じゃあ俺と違って、光牙達は自らの意思で召喚されたって言うのか?」
『そうだ・・・実際誰の使い魔として召喚されるか選ばされたしな。』
「・・・その少女は一体何者?」
『彼女はこの星の意思、「星の声」が形を持った姿だ。』
「星の声?」
レンスは星の声について説明した。
全ての物に命が宿る様に、星にも命が、心がある、その意思を伝えるのが星の声、地球で突如として起こる天変地異等も、
星の意思による、危機を知らせる声だとも言われている。
星には神秘的な力が宿り、星の声もその力により、様々な形へと形成し、古き時代人々の前に現れた神の姿は、
星の声が人々の思考に合わせた姿であるとも伝えられている。
光牙達もその力によってこの世界に送られ、タバサの使い魔として召喚させられたのであった。
「じゃあ・・・コウガは私の使い魔としていなくても・・・。」
『いや・・・俺は契約通りに君の使い魔として、このタバサと居るよ。』
「・・・・分かった。」
そして、辺りが輝きだし、光が収まるとティガの姿はなく、スパークレンスを持った光牙が立っていた。
「と言う訳だ、俺達の目的は邪心融合体の脅威から、この世界を守る事だ。」
『その為に、君達に協力して貰いたいのだ。』
「俺達に?」
「この世界の事は俺達は殆ど知らないし、何時もティガが現れる時には必ず俺が居なかったら怪しまれるからな、
特に俺はタバサの使い魔だ、その俺が怪獣と言う凶暴な敵を前に、タバサの傍に居ないのは非常に怪しい。」
「成程・・・俺達は、光牙の正体が他の人達に知られない様に口裏を合わせたりすればいいんだな?」
「そう言う事。」
「でも・・・何で俺に頼むんだ?タバサは兎も角、それに俺の場合ルイズにも頼んだ方が良いんじゃないのか?」
才人は最初から持っていた疑問を光牙に問いだした。
「才人はウルトラマンに関しての知識がある、さっきも言った様に、ティガが現れた時に俺が居ない事で、一番気付く可能性がある、
それでもし騒いでみろ?あっという間に俺の正体が知られるだろ?」
「成程・・・じゃあルイズに言わないのは?」
それに光牙は苦笑いしながら答えた。
「それは・・・あいつ・・・・・口が軽そうだろ?」
「・・・・・あぁ・・・確かに・・調子に乗ったら辺り構わず言いそうだ。」
「正論。」
「良かった・・・使い魔との感覚の共有が出来なくて、あったら今絶対騒いでる・・・。」
光牙の一言に才人とタバサは、すぐに納得し、ルイズに関して何も言わなくなった。
そして、当のルイズはというと。
「クシュン!!」
可愛らしくクシャミをしていた、キュルケの部屋で。
「どうしたの?風邪でもひいたの?」
「知らないわよ!!てかっ!!何であんたが居るのよ!? ツェルプストー!!」
「私の部屋だから私が居るのよ、あんたの部屋はあの襲撃で壊れちゃったから、オールド・オスマンの指示で隣のあたしの部屋で寝泊りするんでしょ?
忘れちゃったの?その歳でもうボケ始めちゃった?」
「きゅるる・・・。」
「ボケてないわよ!!ちょっと忘れていただけじゃない!!」
部屋には部屋の主キュルケ、その使い魔火蜥蜴(サラマンダー)のフレイム、そして何故かルイズがいた。
ルイズの部屋は、ゴルガとメバルの襲撃で崩壊し、とてもじゃないが使える状態ではなかった、タバサやキュルケの部屋の様に、
無事な状態の部屋へ泊めて貰う様、オスマンからの指示で、ルイズは渋々嫌々キュルケの部屋に泊めて貰う事となった、
他の生徒達も出来る限り他の者の部屋に泊めて貰っている。
それでも余った生徒達や教師は、食堂や教室等、比較的被害が少なかった場所で寝泊りしている。
ちなみにタバサの場合、使い魔に男で、今回の襲撃の英雄光牙が居ると言う事で、他の女生徒を泊めるのは非常に拙いと言う事で、
タバサの部屋には他の女生徒を泊めてはいない。
才人の場合は、キュルケの方から別に構わないと言われたが、彼の主人であるルイズがそれを激しく断り、
毛布を1つ渡され、野宿する様言われ、部屋を閉め出されたのであった。
だが、流石にまだ決闘での傷が癒えきれてない状態での野宿はこたえるので、コルベールか光牙に相談しようと歩いている時に、
シルフィードに拉致され、今に至るのであった。
「はぁ~~あ、ダーリンが居ればもう少し楽しい夜になったのに・・・。」
「誰がダーリンよ!!人の使い魔に手を出さないでちょうだい!!」
「恋にそんなのは関係ないわ、好きになったのなら全力で物にする、それがツェルプストーよ・・・それにしても傷も完全に癒えてないダーリンを、
毛布1つで野宿させるなんて、あんたも鬼ね。」
「あんたと一緒にさせたら何するか分からないじゃないの!!それにあんたなんかオーク鬼で十分よ!!」
「でもたしかオーク鬼の好物は人間の子供らしいから、お子ちゃまスタイルのルイズちゃんならオーク鬼にモテモテかもよ。」
「ぬあああああああああああああんですとぅええええええええええええええええええええええええええ!!」
ドシャーーーーーーーーン!!
ガラガラガラ・・・・
「「・・・・・・・・・・。」」
ルイズの大声に、隣の崩壊したルイズの部屋では更に瓦礫が落ちてきた音がした。
「叫ぶのはやめましょ・・・あんたの部屋更に使えなくなりそうだから。」
「きゅるきゅる・・・。」
フレイムもキュルケの意見と同意なのか、うんうんと頭を頷かせた。
「あん!!・・・・たの所為でしょうが・・・・。」
ルイズは一度大声で叫ぼうとしたが、途中で息を止め小声で残りの言葉を出した。
そうして2人の夜は過ぎて行った。
そしてタバサの部屋では。
「感覚の共有?そんなのがあるの?」
「知らなかったのか?」
「彼には使い間の役割等はまだ話していない。」
「・・・まあ・・・とりあえずあいつ(ルイズ)に知られてないのは間違いないな、知ったら今絶対騒いでる。」
「うんうん・・・。」
コクコク・・・
「後で使い魔について教えてタバサ。」
「わかった。」
「あのさ・・・話は変わるんだけど、俺何処で寝ればいいと思う?」
「そう言えば、何で毛布なんか持ってんだ?」
元々最初から持っていたのだが、光牙の話があまりにも驚愕過ぎて忘れていたと言うか見えてなかった。
「ミスタ・コルベールに頼めば良いと思う、学院の裏にミスタ・コルベール専用の部屋がある、シルフィードは知っているから案内させる。」
「きゅい(分かったのね)!!」
「ありがとう助かるよ。」
そして才人はシルフィードの背中に乗り、タバサの部屋を出て行った。
そして部屋には、タバサと光牙の二人だけとなった。
光牙は才人が出て行った、窓から空に浮かぶ双月を眺めていた。
「二つの色違いの月か・・・綺麗だな・・・。」
「・・・・聞いても良い?」
しばし黙り何かを考えていたタバサから質問の声をかけられ、光牙はタバサの方を向く。
「何をだい?」
「あなたは・・・人間なの?それとも神様なの?」
「・・・どういう事?」
「シルフィードが言ってた、あなたは・・・ウルトラマンはどの精霊よりも高貴で、神に近いと・・・。」
「・・・・・・・どうなのレンス?」
『私にも分からん、確かに嘗てと今でも、光の巨人を神と崇める者達は居たが、私自身は神とは思っていない。』
「そうだよな・・・。」
「では・・・何なの?」
「そうだな・・・・でもこれだけは言えるな、ウルトラマンは、光であり人である、人であり光である。」
その答えの意味に、タバサはしばし考え込むが理解できず、光牙に答えを求めた。
「どういう意味なの?」
「うまく言えないが、何であれ、俺は俺と言う事だ、どんな力を手に入れても、どんな姿になろうと、俺は人間だという事だよ。」
光牙の言葉に、タバサは理解出来た様な、出来ない様な表情をしたが、新たに質問をする。
「じゃあ・・・何であなたは戦うの?神でもない、人間のあなたが・・・醜い人間を・・・・。」
「タバサ・・・・。」
質問をする時のタバサの表情は、どこか悲しく理解できないと言った表情であった。
「・・・・・確かに・・人間は醜いな・・・。」
「じゃあ・・・。」
「でも・・・だからこそ美しい。」
「えっ!?」
「確かに人間は・・・自分の欲等を満たす為に、他人を傷付ける等酷い事をする者は沢山居る、だがそんな人間も居れば、
良い人間だって居る、タバサの様に俺を心配してくれたりな・・・。」
「・・・それは・・・。」
「使い魔だからでも何でも良い、あの時俺を助け様と、怪獣に1人で挑んだり、ウルトラマンを信じ、心から助け様としてくれたじゃないか。」
「・・・・うん・・あの時に、ウルトラマンの・・・あなたの見ているものが見えた・・・だからあなたがウルトラマンじゃないかと思った・・・。」
「実は俺もあの時、タバサと繋がった気がした、心配してくれてありがとう。」
タバサは俯き黙ってしまった。
「・・・俺が誰かの使い魔になるか選んだ時、誰かは分からないが、とても悲しい気持ちを感じたんだ・・・。」
「・・・それは私の?」
「分からない・・・それが君の感情なのか、別の誰かの感情なのか・・・でも・・・俺はその心の持ち主を救いたいと思った。」
「・・・何故?」
光牙は暫し黙り、口を開く。
「・・・・・・・その悲しみが、俺の幼い頃の悲しみと同じだったから。」
「・・・どういう事?」
「俺の両親は・・・俺がまだ三つの頃に・・・死んだ・・・。」
「えっ!?」
「・・・・俺の誕生日のお祝いと言って、両親に海に連れて行ってくれた帰りだった、詳しくは言えないが・・・怪奇事件に巻き込まれてな、
両親は・・・俺の目の前で・・・・、
その時と同じ悲しみが・・・伝わってきた。」
「・・・・・コウガ・・・。」
光牙は、嘗ての事を思い出し、その表情は悲しみに包まれていた。
そしてタバサもまた、悲しみの表情となった。
(おそらくそれは私の感情・・・父さまの命を奪われ、母さまの心を壊された、私の悲しみ・・・コウガ・・・。)
「だから分かるんだ・・・それがどれ程辛いか・・・それを知っているから、俺は助けたいと・・・心から思った。」
「・・・・・・。」
「星の声も言ってたよ・・・この世界の人間は醜いって・・・。」
「・・・・当然。」
「でも、それで見捨てる事なんか出来ない、俺の様な悲しみを・・・誰かを失う悲しみを・・・限りは有るけど・・・・それでも、
誰にも悲しんでほしくない・・・だから戦うんだ。」
光牙の悲しくも、強い決意の宿した言葉に、タバサは、自分の心に暖かい物を感じた。
そして、誰よりも痛みや悲しみを知る、優しく強い少年、それが自分の使い魔、円光牙なのだと思った。
「それに、人は何時かその過ちに気付くと、俺達は信じている、その時まで俺達は・・・・。」
『うむ・・・。』
「・・・・・ありがとう・・・。」
タバサは静かに涙を流していた、光牙の思いに、人類を信じるという強く優しい思いに。
自ら凍らせた、いや凍らせるしかなかった、冷たくした心を、温かく溶かしてくれる様な思いを、タバサは胸一杯に感じていた。
光牙はそれに気付いて無い・・・いや気付いているからか、タバサの泣き顔を見ない様に、視線を双月へと向けていた。
そしてタバサは、涙を拭い、口を開いた。
「あなたは秘密を話してくれた、私も全てではないけど・・・私の秘密をあなたに話す。」
「タバサ?」
「私の本当の名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン、シュヴァリエの爵位を持つ、ガリア王国の国王ジョゼフ1世の王弟、
オルレアン公シャルルの娘。」
タバサ・・・いやシャルロットの言葉に、光牙はもちろんだが、レンスも驚愕した。
『!?何と・・・。』
「・・・・えっ・・という事は、タバサ・・。」
「シャルロットでいい・・・。」
「・・・シャルロットは王族?」
「・・・元王族・・・今はガリア王国騎士団、北花壇騎士団配下の騎士、北花壇騎士・七号。」
「・・・でも何故?元王族にしても、何でシャルロットが騎士団なんかに?」
「・・・・御免なさい・・これ以上は・・・今は言えない・・・。」
シャルロットは申し訳なさそうな表情で、光牙に謝る。
それに対し光牙は、優しく微笑んで、シャルロットの頭を優しく撫でた。
「無理に言わなくても構わないよ。」
「いいの?」
「今は言えないって、言ってただろ?何時か言ってくれるのなら俺はその時を待つよ。」
「・・・・・ありがとう・・。」
「あっ・・・王族の・・今は騎士か・・・頭を撫でるなんて無礼だな・・・。」
「いい・・・・続けて・・・。」
「?そうか?」
シャルロットは頭を撫でられる事に不快には思わず、どちらかと言えば心地良い様だ、光牙はシャルロットが満足するまで、
優しく頭を撫でてあげた。
(不思議・・・父さまや母さまに撫でられた時と同じで、気持ち良い・・嬉しい気持ちになる・・・。)
そして満足したのか、シャルロットは光牙にお礼を言い、光牙はそれを聞き頭を撫でるのをやめた。
「あっ・・・そうだ、ケース医務室に置きっぱなしだったな・・・。」
「何か入っているの?」
「あぁ・・・一応使えそうな物は。」
「なら取りに行った方が良い、医務室は確か無事だったはず。」
「分かった、場所は覚えているから、タバ・・・シャルロットは、強力な魔法を使って疲れているから待ってて。」
「・・・・・分かった、早く戻って来て。」
「うん。」
光牙は部屋を出て、医務室へと早歩きで向かった。
部屋に残されたシャルロットは、本棚からある一冊の古い本を取り出し、手に持った。
何度も読んだのか、本は元々の古さも加えボロボロであったが、所々補修された跡があった。
その本のタイトルは、「イーヴァルディの勇者」と書かれており、ハルケギニアに伝わる英雄譚の中で最もポピュラーとされる物語であり、
内容はハルケギニアで最も偉大なメイジと称されている、始祖ブリミルの加護を受けた勇者イーヴァルディが、
剣と槍を用いて龍や悪魔、亜人や怪物など様々な敵を倒すと言う、何処にでもある内容だが、主人公が平民というハルケギニアでは珍しい内容で、
その為か、平民の間では大人気で、貴族からは御伽噺と決め付けられているが、シャルロットはこの物語が大のお気に入りであり、
憧れであった。
何時かイーヴァルディの様な勇者、自分だけの勇者が現れ、勇者に助けられる囚われのお姫様になってみたいという夢を、
偽名を使い、辛い現状を過ごす、今でも抱いている。
シャルロットは、イーヴァルディの勇者の本を見つめながら、ウルトラマンティガを・・・光牙をイーヴァルディと重ねていた。
(私は・・・父さまが亡くなり、母さまの心を壊された時あの日から、今の様になり、全てに絶望したあの日から、私は世界で一番不幸なのだと、
この世界を・・・運命を呪った・・・・だけど彼は私とは違った、その絶望を・・・悲しみを知っているから、
自分と同じ人を出さない為に脅威に立ち向かっている・・・・そして人を守る・・・醜く愚かな人間を、
彼は信じている・・・人間はそれ程愚かではないと・・・彼はどれ程傷付き、悲しんだのだろう?
それでも彼は・・・戦うのだろう・・・人として・・・イーヴァルディの勇者・・・彼は・・・私が幼い頃から夢見た・・・私の・・・・いや、
この世界を救う為に異界より来た・・・異世界の勇者・・・。)
シャルロットは本を抱きしめ、幼き頃より抱いた夢が叶おうとしている歓喜に涙を流した。
(待っていた・・・・私は・・彼を・・・・勇者たる・・・・希望を・・・。)
たが、同時に彼女の心に、良からぬどす黒い感情が湧き上がるのであった。
(・・・彼の力を・・・使えば・・・あの男に・・・・私から全てを奪った・・・・・あの男を・・・・はっ!!
いけない・・・彼の力をそんな事に使っては・・・・人を守る為の力を・・・・・復讐に使うなんて・・・・。)
しかし、そこまで思ったシャルロットは、思考するのを止め、冷静になろうと息を荒げ、心を無理やりに落ち着かせようとした。
そして自己嫌悪の境地に陥るのであった。
(私は・・・彼の・・・主人に相応しくない・・・・こんな醜い感情を持つ・・・私は・・・・。)
シャルロットは先程とはま逆の涙を流した、己の中に流れる醜い感情に嘆く、自己嫌悪の涙を。
「・・・・知られたくない・・・私の中で渦巻く、この醜い心を・・・彼に・・・・・。」
それから暫くして、才人をコルベールの所へ送りに行ったシルフィードが戻り、才人を送り終えた事を伝えると、自分の寝床へと飛んで行った。
その後、部屋の扉をノックする音がして、ケースを取りに行った光牙が戻って来た。
「シャル・・・タバサ、入るよ。」
「・・・入って。」
光牙は他の生徒に、タバサの本名、元王族であるシャルロットの名を聞かれるのは、まずいと思い、
とっさにタバサの名で呼んだ。
光牙は出て行った時と違い、ケースを片手に持って入って来た。
「遅かった。」
「あぁ・・・医務室自体は無事だったんだけど・・・。」
『重症の怪我人をなるべく多く、収容する為、余計な物を部屋から放り出され、その中にケースもあってな、
探すのに手間取った。』
「そう・・・。」
シャルロットは少し落ち着いたのか、無感情、無表情で短く返した。
光牙とレンスはその様子に疑問を持つが、幼く見えるがタバサは女性、探索するのは失礼と思い、聞こうとはしなかった。
「さてと・・・もう遅いし、シャルロットも大分と疲れているから、寝ようか?」
コク・・・。
シャルロットは頷くと、着ている服に手を掛け、光牙が居るにもかかわらず、服を脱ごうとした。
それを見た光牙は・・・。
「ブハッ!?しゃ・・・・しゃしゃしゃ・・・シャルロットさん!!何をしようとしてるんですか!?」
「?・・・・・寝るから着替える・・・。」
「なら一言言ってくれ!!」
「?・・・私は別に構わない・・・。」
「君は良くても、俺はそうはいかないの!!外で居るから、着替え終わったら言ってくれ。」
光牙はそう言い、部屋を出た。
そして数分後、着替え終わったシャルロットが、内側から扉をノックし、光牙は部屋に入っていった。
部屋には、寝間着姿に着替えた、タバサが立っていた。
幼い外見からか、意外なほど寝間着姿のシャルロットは良く似合っていた。
「じゃあ俺は、何処で寝たら良い?」
「・・・・・・・・。」
すっ・・・・・
するとシャルロットは静かに、部屋にある唯一のベッドを指差した。
光牙はしばし固まり、平静さを装いシャルロットに質問した。
「えっ・・・・と・・シャルロットさんは何処で寝るのかな?」
「・・・・・・・。」
すっ・・・・・
シャルロットは再びベッドを指差す。
「俺は何処で?」
「・・・・・・・。」
すっ・・・・・
シャルロットは三度ベッドを指差す。
「・・・・・・シャルロットさん・・・失礼ですが・・・御幾つですか?」
「15歳。」
とてもじゃないが15歳には見えない。
光牙は混乱しつつも、横に置いてあった椅子に目をやる。
「シャルロット・・・さすがにそれは・・・まずいと思うよ・・・俺は椅子で寝るから。」
するとシャルロットがすかさず。
「それは駄目、あなたもかなり疲労しているはず、それにあなたは私の使い魔としてここに居る、
使い魔に寝床を提供するのも、主人の務め、だから一緒に寝る。」
光牙はシャルロットのどこか力の篭った声を前にたじろぐ。
そして光牙はシャルロットの意外なまでの勢いに推され、結局1つのベッドで2人一緒に寝る事となった。
部屋の明かりを消し、暗くなった部屋に、1つのベッドにシャルロットと共に入った光牙は、そこは17歳の少年、
隣で寄り添う様に寝転がるシャルロットが気になって、かなり疲れている筈なのに全然眠れる気がしなかった。
ちなみにレンスは、光牙の上着に入ったまま、椅子に掛けられていた。
元々彼には睡眠なんてものは無いので、寝床など関係なかった。
(・・・・眠れる気がしない・・・確かにベッドで寝た方が疲れは取れるけど・・・。)
ちらっ・・・・・
「・・・・・・・。」
(これはこれで・・・・かなり疲れる・・・・・・。)
光牙は隣で寝転がるシャルロットを、ちらっと見て、シャルロットに気付かれない様に、小さく溜息を吐いた。
「コウガ・・・・。」
「んっ?何?」
「あなたの世界の事、もっと聞かせて・・・。」
シャルロットは光牙の方へと寝返り、眼鏡をはずしたシャルロットと目が合い、地球の事を聞かせてと言ってきた。
「寝なくて大丈夫か?」
「大丈夫。」
「・・・・・明日起きられなくなっても知らないぞ。」
光牙は自分の世界の事を話した。
シャルロットは光牙の世界の話しに大変興味が湧いた。
ハルケギニアの様に、魔法が御伽噺の中の存在で、科学と呼ばれる、覚えれば誰でも扱える技術、
嘗ては存在したが貴族制度の様な差別の無い世界。
核兵器と呼ばれる多くの人の命を奪う兵器や、環境破壊といった公害などが完全に廃絶された世界。
誰もが教育を受けられ、努力する事で自分の目指す職に就ける世界。
海を渡り、異国の人々と交流を深め、文化を教え、知識や技術を提供し合い、より良い未来へと向かおうとする世界。
シャルロットにとって、光牙の居た地球は、彼女にとっては夢の様な世界であった。
そして・・・。
「他には・・・・ん?」
「すぅ・・・・すぅ・・・・。」
やはりかなり疲れていたのか、シャルロットは静かに眠りについた。
それを見た光牙は、優しく微笑みながら。
「おやすみ・・・俺の可愛いご主人様。」
そう呟き、シャルロットの顔を優しく撫で、光牙も眠りにつくのであった。
『・・・・これは光牙にとっても、いい傾向なのかも知れんな・・・。』
レンスは小さく呟き、そして彼等の夜は更けていった。
だが・・・。
トリステイン王都「トリスタニア」にて。
「フハハ!!見たかあの平民の慌て様?」
「まったく笑わせて頂きました、あの平民め我等貴族様の御陰でこの王都に住ませていると言うのに、金を払えだと?」
「まったくもって分かっておらん、少し仕置きで、店を焼いてやったら、慌てて許しをこいてきおった!!」
彼等はトリスタニアに住まう、とある貴族であった。
彼等は酷く酔っており、彼等から少し離れた場所では、火事があったらしく黒煙が立ち昇っていた。
彼等の会話を聞く限り、その火事の原因は彼等であろう。
それを愉快に笑いながら帰路に着く彼等を、少し離れた建物の屋根から見詰める光る目があった。
「フォフォフォフォフォ・・・・・・。」
それはまるで笑っているかの様な声を出し、後に新たな惨劇が起きる事となるのであった
To be Continued