ウルトラマンティガ―THE PARALLEL WAR― 作:龍気
その夢の中で彼女と対話する。
ゴルガとメバルを撃退し。
その夜に、自分と違う地球から召喚された少年才人と、同じ主人を持つ風韻竜の幼生シルフィード、そして主人であるメイジの少女タバサ・・・いや、
タバサは彼女の偽りの名、その真名はシャルロット。
彼女達に自分の正体を明かした光牙は今シャルロットと共に深い眠りについていた。
安らかな寝顔の光牙とシャルロット。
だが光牙の意識は、夢の中ではなく、不思議な空間の中にあった。
「・・・・ここは?」
『光牙。』
「レンスか?」
『あぁ。』
「ここは一体?」
『安心しろ、彼女が君の精神に語りかけてきたのだ、この空間もそのせいだろう。』
「彼女?」
「ありがとうございます、光の人よ・・・。」
「!?」
光牙は声のする方を見ると、少女の姿をした星の声が浮かんでいた。
「あなた方のおかげで、一時的とは言え、この星が壊滅するのを免れました・・・そしてこの星に住む民達をもう一度信じる事が出来ました。
本当にありがとうございます。」
「俺達は当然の事をしただけだよ・・・、それに人を信じるのは自分の意思だ、確かに切欠は俺達だったかもしれないけど、
決めたのは君の意思だ。」
「・・・・・はい・・・。」
「それよりも・・・・それだけを言いに来た訳じゃないだろ?」
「はい・・・この星を包む闇は・・・この星に闇の存在を産み出すだけでなく、その影響でこの星でおとなしく人目に触れずに生きてきた巨獣、
あなた方の言葉を使えば怪獣が凶暴化し、人里を襲うでしょう。」
「やはり・・・。」
「それだけでなく、この星より遠方の者達が星の海を渡り、この地に来るでしょう。」
『それが奴等の副産物だからな・・・ある程度は予想はしていたが・・・。』
地球に邪心融合体が復活した時も、当時確認されていた怪獣や、確認されていなかった怪獣が凶暴化し、
町を襲う事がおきた。
またその力に引き寄せられるかのように、異星人達も侵略目的で地球に来ることも頻繁に起きた。
このハルケギニアでも同じ事がおきるとは予想はしていたが、光牙の表情からはどこかやるせない雰囲気が感じられた。
「どうしましたか?」
「・・・・俺が・・・邪心融合体と戦うのは、星や・・・命を護るためって事もあるけど・・・それだけでなく、
奴等の現れる元となった、怨念を浄化し、その負の念や陰我から開放するって意味もあったんだが・・・。」
『奴等は我等光の超人の光の力によって、その闇を浄化しされる事によって消滅・・・いや開放される・・・それ故に奴等は我等を恐れ襲う。』
ティガ達光の巨人には邪心融合体を浄化し、その怨念を開放する力を秘めている、しかしそれは邪心融合体に対してのみ、
それ故に怪獣や異星人に対しては、致命傷を与えれば命を奪ってしますのだ。
「だけど奴等の影響で現れた怪獣は違う・・・そこに在るたった1つの命なんだ・・・俺達と同じ・・・だが・・・それとも戦わなければいけない。」
光牙は例え怪獣でも、その命を奪う事を良しとは思ってはいない。
視点を変えれば、邪心融合体によって出現した怪獣達も被害者なのだ。
確かに倒さなければ護れない事があるのは理解している、しかしそれで他の命を犠牲にする事は命の重さを誰よりも知る光牙にとって、
何よりも辛い事であった。
「・・・・あなたは優しい・・・優しすぎます・・・。」
「ああ・・・分かってる・・・甘いことも・・・偽善だと言うことも・・・。」
「しかし・・・。」
「ん?」
「懸命に生きている・・・その者達の分まで・・・。」
『そうだ光牙、君は護る為に怪獣や異星人の命を奪って来た・・・しかしその者達の分まで懸命に生きようとしているではないか。』
「それが俺に出来る唯一の罪滅ぼしだ・・・星を護り、俺自身も奪った命の分まで懸命に生きる・・・。」
「その気持ちを失わないでください・・・それが命達に対する励みです。」
「・・・・あぁ・・・ありがとう。」
光牙は俯き際に、僅かに見せた笑顔で答える。
「ですが気をつけてください・・・災いはこの世界からだけでなく、他の世界からもやってきます。」
「何だって!?」
『確かに地球でも次元の歪みによって、異界の者が現れる事はあったが・・・。』
「如何言う事かは、この私にも分かっていませんが、最近次元の壁に歪が生まれ、その歪の向こう側まで闇の力がもれています。」
『星の声であるそなたでも理解できてない事とは・・・・光牙、予想はしていたが、前以上に厳しい戦いとなりそうだな・・・。』
「あぁ・・・だが俺は決して諦めない、そして死なない・・・生き延びて・・・守り抜いてみせる!!」
「・・・・光の人・・・あなたは希望・・・あなたは望み・・・それはあなたを苦しめる楔になるかもしれない・・・しかし、
あなたならその楔を力に変えて、この世界に光を燈すと信じています。」
「あぁ・・・ところでその「光の人」っての止めてくれないか?」
「えっ?ですが・・・。」
光牙の申し出にいささか戸惑う星の声。
「俺の事は光牙でいいよ。」
『私もレンスでいい、それが私の名なのだから。』
「・・・分かりました・・・ではコウガさん、レンスさん・・・この世界を・・・命をお願いします。」
「『ああ!!』」
星の声は再度、しかし以前の沈んだどこか悲しげな表情でとは違い、光牙達を信頼し、希望に満ちた笑顔で、この世界の行く末を託した。
それに力強く答える光牙とレンス。
「それはそうと、君の事を「星の声」って呼び続けるのはちょっとなあ・・・。」
「えっ?」
なまじ人の姿で現れるので、彼女を「星の声」と呼ぶのにはいささか抵抗があった。
『では名前を与えたらどうだ?私に「レンス」と言う名を与えたように。』
「そうだな・・・。」
「えっ・・・でも・・・。」
『形有るものに名は必用だ、それが意思である君であっても。』
「はぁ・・・。」
「よし!!「アスア」なんてどうだ?」
「アスア?」
「おとめ座の神話に出てくる、「正義の女神・アストレア」、それを縮めて「アスア」。」
『フム・・・良いと思うぞ。』
「君はどうだい?」
「アスア・・・私の名前・・・嬉しいです。」
星の声・・・いや、アスアもその名が気に入ったようだ。
「よし!!気に入ったようだし、君の名前はアスアに決定。」
「ありがとうございます光牙。」
名前を与えられた事に、アスアはその見た目通りの、年相応の少女にふさわしい笑顔で喜んだ。
「そうでした、コウガさん、あなたに与えたルーンは、これから先あなたにとって必用になる効果をひめています。」
「どんな効果なんだ?」
「それはその時になれば分かります。」
「教えてくれてもいい気がするけど・・・。」
「お楽しみは後に取っておくものですよ♪」
彼女の性格なんか変わってないか?と疑問に思いながらも、仕方なくその時のお楽しみと、ルーンの効果を聞くのを諦めた。
「では私はこれで。」
「おう。」
シュウウウウウ・・・・・
そう言い、アスアは足元から消え始めた。
「・・・・あの少女。」
「?シャルロットの事か?」
「彼女を守ってあげてください・・・彼女は・・・いえ、これは彼女自身の事、私が口にする事ではありません・・・ですが守ってあげてくださいね。」
シュウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・
それだけ言い残し、アスアは消えた。
それと同時に光牙の目の前は真っ暗になり、光牙の意識は肉体に戻った。
光牙の隣で眠る蒼髪の少女シャルロット。
毎夜必ずと言っていい程見るはずの悪夢、忌まわしき過去を思い出させる悪夢が今日は見ない。
シャルロットは久しぶりと言える、悪夢に苦しまれない一時の安眠を心なしか満喫していた。
「シャルロット・・・シャルロット・エレーヌ・オルレアン・・・。」
だがそんな彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ん・・・。」
シャルロットはその声に導かれるようにゆっくりと目を開けていく。
「・・・・・ここは?」
目を開けるとシャルロットは見た事も無い空間に浮いていた。
半開きで眠たそうだった目を開き、辺りを見渡すも何も無い空間、辺りが淡く光るだけの空間、自分を呼んだ声の主はどこにと思った時。
「こちらです。」
「!?」
シャルロットの背後に、ハルケギニアには無い、白いワンピースに赤い靴を履き、黒髪のロングヘアーの少女、
星の声・・・アスアがシャルロットに笑顔を向けて空間に浮かんでいた。
「あなたは・・・・?」
「はじめまして、シャルロット・エレーヌ・オルレアンさん。」
「!?」
自分の本名を知る謎の少女に警戒の眼差しを向けるシャルロット。
今シャルロットの姿は、寝巻き姿、故に杖は持ってはいない。
もし杖を持っていたのなら、シャルロットは間違いなく、アスアに杖を向けていただろう。
そんな警戒しているシャルロットに対し、アスアはシャルロットの前に現れた時のそままの笑顔を崩さず、
優しく口を開く。
「落ち着いて、私はあなたの敵じゃないわ。」
「・・・・・・・。」
「私の名前はアスア、コウガさんとレンスさんから聞かれたと思うけど、彼等をこの世界に導いた星の声。」
「!!あなたが・・・星の声・・・・この世界の意思・・・。」
光牙達から聞かされた、星の意思を伝える星の声が何故自分の前に現れたのかと、全く予想だにしなかった事態に、
いつも冷静な彼女が珍しく混乱しそうになっていた。
「いきなり現れてごめんなさい。」
「えっ!?いえ・・・・そんな事は・・・・。」
星の声は言い方を変えれば、この世界そのものにして、この星の神でもある。
そんな存在が現れたら、いくらシャルロットでも戸惑うのは当然である。
「そんなに固くならなくてもいいのですよ。」
「しかし・・・。」
「今回はあなたに謝りに来たのです。」
「?謝りに?」
「あなたにはこの世界で、彼等が活動しやすくする為とはいえ、関係の無いあなたまを巻き込んでしまいました・・・。」
「・・・・・・。」
「本当にごめ「謝らなくてもいいです。」えっ?」
「私はコウガと出会えた事を、コウガが私のもとに召喚してくれたくれた事を、たとえ一日も経ってはいないとはいえ、
少したりとも迷惑だとも、厄介だなんて思ってません・・・。」
「シャルロットさん・・・。」
「むしろ・・・あなたには感謝しています。」
「えっ?」
「コウガと巡り合わせてくれた事を、彼がいなければ私は今こうして生きていなかった・・・、そして・・・人の温もりを思い出せた・・・。」
シャルロットが言い終えると、アスアの表情は先程の笑顔とは打って変わって、真剣な表情で瞳に力を込め、
シャルロットの心を見透かすかのように見詰めた。
「・・・・シャルロットさん、私はこの世界そのもの、ですからあなたの身の上にあった事は知っています。」
「・・・・・・はい。」
アスアの言葉に、やはりと最初から彼女が自分の過去を知っている事を理解していたのか、シャルロットは頷いた。
「そして・・・あなたが抱える闇も。」
「・・・・・・・・。」
アスアの次の言葉に、先程と同じ雰囲気を醸し出すシャルロットだが、それを黙って聞くだけだった。
「あなたは・・・彼の力を如何使いたいのですか?」
「・・・・・・。」
その問いに、シャルロットの脳裏に最初に浮かんだのは、「復讐」の2文字。
自分の人生を狂わせて、壊した男への復讐・・・・それがシャルロットの闇。
だがそれはしてはならぬ事、考えてはいかぬ事、それを理解しているからこそ、シャルロットは胸の内から湧き上がる衝動を抑えようとしていた。
「・・・・復讐・・・ですか。」
「!!」
アスアの発した言葉に、シャルロットは胸を押さえながら俯いた。
彼女は自分の闇を知っている、そう理解していた。
しかしその言葉に反応する様に、膨れ上がる復讐と言う名の衝動を抑えようと苦しむシャルロット。
「彼女は知っていいる、なのに何故そんな事を聞く?」シャルロットは俯いていた顔を少し上げてアスアを見た。
「シャルロットさん・・・如何なのですか?」
「・・・・・私は・・・・。」
「復讐がしたい!!」と言えばどれほど楽になるだろう?とシャルロットは思っていた。
もしウルトラマンの力を持つ自分の使い魔が普通の平民であれば、そう命令していたかもしれない。
しかし、彼は普通の人間ではなかった。
(確かに・・人間は醜いな・・・でも・・・だからこそ美しい。)
思い出すのは彼が言った言葉。
(確かに人間は・・・自分の欲等を満たす為に、他人を傷付ける等酷い事をする者は沢山居る、だがそんな人間も居れば、
良い人間だって居る、タバサの様に俺を心配してくれたりな・・・。)
(コウガ・・・・。)
(俺の両親は・・・俺がまだ三つの頃に・・・死んだ・・・。)
(私と似た境遇の彼・・・。)
(だから分かるんだ・・・それがどれ程辛いか・・・それを知っているから、俺は助けたいと・・・心から思った。)
(だけど彼は私とは違う道を進んでいた・・・。)
(星の声も言ってたよ・・・この世界の人間は醜いって・・・でも、それで見捨てる事なんか出来ない、
俺の様な悲しみを・・・誰かを失う悲しみを・・・限りは有るけど・・・・それでも、誰にも悲しんでほしくない・・・だから戦うんだ。)
(そんな彼の優しいくて強い彼の力を・・・。)
「シャルロットさん・・・。」
「・・・私は・・・・彼の力を・・・・私の復讐に・・・・。」
「!!・・・・・。」
シャルロットの口から、「復讐」の言葉が出た時、アスアの表情は強張った、だがそれは一瞬であった。
「使わない!!」
「!!」
シャルロットは俯いていた顔を上げ、真っ直ぐアスアの目を見ながら力強く言葉を発した。
「彼の・・・コウガの力は!!命を救う!!未来を護る力!!優しくて温かい光!!その力を私の復讐なんかには使わない!!」
「・・・・それが答えですか?」
「・・・・・・・・。」
コクッ!!
アスアの問いに、シャルロットは迷いの無い眼差しでアスアを見詰め、力強く頷いた。
「・・・・・あの方達が言ったとおりですね。」
「えっ?」
アスアの表情は最初に現れた時と同じ笑顔に戻り、ゆっくりとシャルロットの手を、両手で優しく握った。
「あなたを試す様な事をしてごめんなさい・・・コウガさんとレンスさんが信じた人だからどんな人かと思ったけど・・・、
あの方達が言ったとおりの人でした。」
「あの・・・。」
突然の事にシャルロットは戸惑い、困惑している。
「あなたは・・・あなた自身が思っているほど弱くありません・・・その力で・・・優しさで、あの方を支えてあげてください。
例えどんなに力が強くても・・・人は・・・1人だけでは戦えないから。」
「あっ・・・。」
「私に出来ることには限界があります・・・ですからどうかあの方の力に・・・。」
シュウウウウウウ・・・・
アスアの体が足元から消え始めた。
「!!あのっ!!」
「あなたはあなた自身を信じて・・・あなたの内にあるの優しさを・・・あなた自身の光を・・・。」
「まっ!!」
シュウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・
アスアの姿は完全に消え、シャルロットの目の前は真っ暗になった。
「・・・・トッ・・・・ロットッ・・・・。」
闇の中自分を呼ぶ声が聞こえた。
(・・・・誰?優しい声・・・。)
「シャルロット!!」
「はっ!!」
シャルロットは目を覚まし、目の前の人物を見る。
「・・・・コウガ・・・・。」
「おはようシャルロット。」
シャルロットは上体を起こして、眠たい目をこすり、光牙の顔を見詰め返事をする。
「・・・・おはよう・・・・でも早すぎる。」
「あぁ・・・俺これから、いつもやってる筋トレしてくるから・・・。」
「・・・・キントレ?」
寝巻き姿で寝惚け眼の美少女が首をコテンッと横に傾げる・・・・まじかわいい・・・。
「うん・・・・一応言っておいたほうがいいだろ?2時間位で戻ってくるから、それまで寝てていいよ。」
「うん・・・・分かった・・・・。」
「じゃあ行って来る。」
バタン・・・・
光牙はそう言って、部屋から出て行った。
残されたシャルロットは、しばらくボーっとしてから再び横になった
そして先程自分が体験した事を思い出していた。
(あれは現実?それとも夢?)
今一先程の出来事が信じられないシャルロット。
しかし、シャルロットは自分の手にほのかな温もりを感じた。
「・・・・・夢じゃない・・・。」
その手はあの時、アスアが握った手であった。
その手に残る温もりで、先程の出来事が現実である事に気付いたシャルロット。
そしてその時アスアに言われた一言が頭をよぎった。
(あの方を支えてあげてください。)
「・・・・・・・・・。」
そしてシャルロットは布団に包まり、ぼそっと呟いた。
「・・・支えになる・・・・彼の・・・力になって・・・彼を助ける・・・・。」
そう言い終え、シャルロットは再び眠りについた。
一方、日課の筋トレをする為外に出た光牙は・・・。
『・・・・希望や望みは楔になるか・・・。』
「確かにそうかもしれない・・・途轍もなく重い・・・楔・・・。」
『だがそれは君はそれを力に出来る。』
「あぁ・・・希望を捨てない限り・・・望む未来がある限り・・・決して諦めない・・・それに・・・・。」
(彼女を守ってあげてください。)
アスアのその言葉が、幾度も光牙の脳裏をよぎる。
「・・・・守ってみせる、彼女も・・・彼女の優しさを・・・。」
光牙の静かで、だが決意の篭った強い言葉を発し、ゆっくりとシャルロットの眠る部屋を見詰め、光牙は静かに微笑んだ。
そして光牙は新たな戦いに身を投じる。
To be Continued
アスアの声は小倉裕子(ヒカリサーガでアーブの民役)をイメージしてください。
※ゼロの使い魔の作者、ヤマグチノボル先生がお亡くなりになりました。
グリーングリーン(18禁ゲーム)をやっていた時からあの人のシナリオは好きだったのに・・・。
それにゼロの使い魔も未完で終わってしまい非常に残念です。