ウルトラマンティガ―THE PARALLEL WAR― 作:龍気
『愚者達の歓喜・神の食卓』
バルタン星人のトリスタニア襲撃から3日が経ち。
トリステイン宮殿では、トリステインを代表する大貴族や、役職に付く、重役達を一堂に集め、先日のバルタン星人襲撃の際、
トリステインを救った巨人、ウルトラマンティガについての審議を行っていた。
「あのウルトラマンティガなる巨人については、今の所不明な点が多いのですが、オールド・オスマンの報告や、
先日のトリスタニアの街を庇いながら戦うそぶりから、おそらくは我々には敵意は無いと思われます。」
「しかしマリアンヌ王妃、それだけではその巨人が味方なのか如何かを決定付けるにはいささか早い気がしますが・・・。」
「確かにそうですが、我が娘、アンリエッタは近くでウルトラマンティガとバルタンの戦いを見ていました。」
「アンリエッタ王女が!?」
「何と!?」
「その際、ウルトラマンティガの事を知る者と同伴だったと言っておりました。」
「「「・・・・・。」」」
「アンリエッタ様・・・。」
「はい・・・。」
マザリーニに推され、アンリエッタは国の代表達の前に姿を現し、その時の経路を話し始めた。
「私は不覚にもあのバルタンに操られ、意識を失っておりました・・・そして目が覚めると、1人のメイジが使い魔とする風竜の背に、
そのメイジと共にいました。」
「そのメイジの名は?」
「・・・・名前は告げられませんでしたので分かりません・・・。」
アンリエッタは、風龍の主人でありトリステイン魔法学院の生徒であるタバサの名、そして自分を救った光牙の名を知ってはいたが、あえて言わなかった。
それはアンリエッタが事前に、あの後説教を終えた後に、母であるマリアンヌ、そしてマザリーニに話した時、
この二人の名は伏せる様に言われたのだ。
タバサはアンリエッタ直々の勲章の授与の誘いを断った。
それは、タバサが光牙を含み、大きな騒ぎを避け、事を大きくしようとしなかった為、もしくは知られてはならない何かがあるとも思われたからだ。
特にタバサの特徴を聞き、彼女がガリア王家の者かもしれない以上、下手に嗅ぎ回る事は出来ないのだ。
もし、この事をトリステインの重役達が聞けば、事を大きくし、彼女達を如何こうしようとするだろう。
それは下手をすればガリアとの戦争を引き起こしかねない。
それと、娘の恩人に迷惑はかけられまいと、この場ではタバサと光牙の名前を口にする事は禁じたのであった。
「そこで私が見た物は、ウルトラマンティガと、バルタンの・・・この場に居る誰もが体験した事の無い程の、激しく凄まじい戦いでした。」
アンリエッタはその一部始終を話し始める。
スクウェアクラスのメイジ百人が居て出せるか出せないかの威力の光を互いに出し、それを受けてもなお戦い続け、
編成の魔法と同じ様に分身を作り出したり、空を信じられない速度で飛び回る等、その一つ一つを話すにつれ、
重役達の顔は青褪め、信じられないと口々に出すが、アンリエッタの言葉に、王女が言う事だから信じるしかないと言う事ではなく、
アンリエッタの言葉に込められた迫力に、誰もがその言葉に嘘偽り無く、真実だけが込められていると感じたのだった。
「して・・・そのウルトラマンティガが味方だと言う保障は?」
「・・・私を救ったメイジが言っておりました・・・彼は・・・ウルトラマンティガは「この世界を守る為やって来た、光の勇者。」だと・・・。」
「この世界を守る為に?」
「・・・と言う事は・・・これからもこの様な事が起きると言う事ですか!?」
「・・・・かも知れません・・・そして、この言葉が彼を味方だと私に思わせていただいた言葉でした。」
「それは何ですか?」
「ウルトラマンティガは3分間しか戦えず、その3分を過ぎたら命を落とすと・・・。」
「!?たった3分!?」
その言葉に誰もがざわつき、隣に座る者同士、顔を見合わせ其々意見を述べ合っていた。
「たった3分・・・その命を削ってまで戦った彼が、敵だなんて私には思えませんでした。」
「・・・確かにそうね・・・皆さん、先程もありましたが、これから先、今回の様な事が無いとも限りません。」
「その為、これまでに無い厳重な警備と各々の軍の強化を、トリステイン全土に伝達するのです。」
「「「・・・・・・・。」」」
「その必要は無いのでは?」
「何ですと?」
マザリーニの言葉に誰もが沈黙する中、1人の男性貴族がその言葉に異を唱えた。
その男の名は「ド・ポワチエ」トリステインの軍隊の一角を担う大将の階級の持ち主であった。
「如何言う事ですかド・ポワチエ殿?先程のマザリーニの言葉は私も同意です・・・異があるのならその訳を聞かせて頂きましょう。」
「その・・・ウルトラマンティガはあのバルタンとか言う愚かしい亜人を倒した、それも3分以内で・・・。」
「・・・・何が言いたいのですか?」
「つまりですね王妃様、私はこう思っているのですよ・・・あのウルトラマンティガは天に居られる始祖ブリミルからの使いだと、
あの者は我々トリステイン人を救う為に使わせた神の使いだと、ならば彼に全て任せればよろしいではないですか。」
「なっ!?」
「そんな・・・。」
「そう・・・ですな・・そうですよ皆の衆!!たった3分以内であの亜人を倒した力を持つ者がいれば、我々が如何こうしなくてもよろしいのです!!」
「そうだ!!ウルトラマンティガは始祖ブリミルの・・・神の使いだ!!」
「我々トリステインの守護神だ!!」
「それに他の国にもあの様な亜人や怪物が現れたら、必ず国力は低下し、他の国を攻め入る絶好の機会になりますぞ!!」
「いや!!ウルトラマンティガ様は我々トリステインの味方だ、他の国を攻め入るのにも手を貸してくださるぞ!!」
「なんと・・・。」
「・・・・・・・・・。」
ド・ポワチエの言葉を切欠に、周りの貴族もそれに同意し、騒ぎ出した。
その様子にマンアンヌ、マザリーニ、そしてアンリエッタも呆れた。
確かにウルトラマンティガの力は凄い。
しかし、その力だけに頼り、勝手に神の使いと称え、自分達の住まう国の警護を怠る発言と、加えてその力を戦争に利用しようとするとは何事かと、
3人は失望したように、目の前で騒ぎたっている貴族と言う名の愚者達を見ていた。
確かに国を大きくする為に戦争は必要になる事は分かるが、それに関係無く、他の国に住まう者達を見捨て、
自分達が良ければそれで良い、そして戦争にウルトラマンティガが手を貸してくれると言う考えが、
3人をより一層失望させたのであった。
そんな中、アンリエッタは窓から見える、夜空に浮かぶ2つの月を見詰めながら、ある事を思う。
(ウルトラマンティガ・・・貴方は一体何者なのですか?何故この世界を救ってくださるのですか?・・・・タバサさん・・・貴女は何を知っているのですか?
そして・・・その使い魔であるコウガと言う男の人・・・彼は一体・・・。)
その頃トリステインの重役貴族達・・・いや愚者達から「神だ!!」「守護神だ!!」「始祖の使いだ!!」等と称えられている本人はと言うと・・・。
「ぶえっくしょん!!」
トリステイン魔法学院の食堂厨房で調理をしながら大きなクシャミをしていた。
「如何したボーズ?風邪か?」
厨房のコック長である「マルトー」が光牙に気さくに聞く。
「・・・・いんや・・・誰かが噂してんじゃないの?何だか大分と勘違いしている・・・。」
「何だそりゃ?」
がちゃ・・・
突如厨房の扉が開き、そこからタバサが顔だけをのぞかせた。
「コウガ・・・出来た?」
「あぁ・・・タバサ、もう少しで出来るから、待ってて。」
コク・・・・
「今日は何?」
「今日は川魚の塩焼きに、豚と野菜の和風スープ、だし巻き玉子、それとタバサの大好きなはしばみ草のおひたしだ。」
「楽しみ・・・待ってる。」
タバサは静かに扉を閉め、食堂のテーブルへと向った。
他の者には分からないが、かなり足取りは軽く、好物を出され喜ぶ子供の様に嬉しそうであったとか、そうではなかったとか。
さて、何故光牙が厨房で料理を作っているかと言うと、バルタン星人が襲撃してきた翌日から、本格的な学院の修復作業が開始され、
光牙もそれを手伝いながら過ごしていた中、先日ようやく食堂と厨房がまともに使う事が出来るまでに修復し、
光牙は約束通りタバサに手料理を作ってあげる為に、早速コック長のマルトーに許可を取りに行った。
マルトーは快く許可を出した。
元々光牙は、ゴルガとメバル襲撃の際に、自ら囮になり、学院の者達を救う時間を作った少年として、話は聞いていたので、
えらく光牙を評価しており、「我らの英雄」と呼び受け入れてくれたが、ずっとそう呼ばれるのは恥ずかしいので、
「その呼び方は止めて。」と言った結果、「ボーズ」でおさまった。
そして光牙は、厨房にある見た事の無い調味料や食材を駆使し、何とか和風に近い料理を作り出し、タバサに食べさせた。
その際タバサはハルケギニアではなく、光牙と才人の故郷、日本での食事の作法「いただきます」と「ごちそうさま」を使った。
トリスタニアの食堂で食事した際に、光牙の故郷での作法とその意味を聞き、深く感動したタバサはそれ以降、
食事の際には「いただきます」と「ごちそうさま」を使っている。
光牙の手料理が気に入ったタバサは、毎日作ってと頼み、光牙もそれを引き受けた。
元々光牙も自分とタバサの料理は作ろうと思っていた。
周りで食事をしている他の生徒達の食べている料理とその量を見てからそう決心したのだ。
この学院の生徒達が食べている料理はどれも味が濃く、油を多く使った物が多いおまけに野菜は少なく、栄養バランスが悪すぎで、
光牙から言わせれば偏食の極みであったからだ。
マルトーに聞くと、「貴族のヤロー共はこうしなきゃ食おうともしない。」らしく仕方がないと言っていた。
更に聞いてみると、他の生徒は殆ど残すが、タバサはそれを残さず食べると聞き、「この子がこの歳でこんな体型なのは偏食だからか?」等と思い、
まるで妹か我が子の将来が心配そうな、兄もしくは母の様な目でタバサの体を見ていた光牙は、
「これからタバサ(シャルロット)の料理は自分が作ろう。」と決心したのであった。
「よし、出来た。」
「今日も美味そうだなボーズ、シエスタ、運ぶの手伝ってやれ。」
「は~い。」
光牙は、黒髪と瞳が特徴のメイド、シエスタと共にタバサのもとに料理を運びに行った。
タバサが待つテーブルの所に着くと、タバサは表情には出してはいなかったが、かなり楽しみにしていた様子だった。
「では、ミス・タバサ、コウガさん、失礼します。」
「ありがとうシエスタ。」
コク・・・・
料理を並び終え、シエスタは他の仕事の為、その場を離れる。
「じゃあ・・・食べますか?」
コク・・・
「「いただきます。」」
光牙とタバサは、手を合わせ「いただきます。」と言い、食事を始める。
つるっ・・・ぽと・・・
「・・・・・。」
つるっ・・・ぽと・・・
「・・・・・・難しい・・・。」
「そりゃそうだ・・・・。」
タバサはフォークやナイフを使わず、光牙が作った箸を使って食べている。
光牙の故郷の料理を、光牙の故郷で食事の際に使う箸で食べたいと言うタバサの既望で、光牙がタバサの手のサイズに合わせ作ったのだ。
だがやはり扱いが難しく、はしばみ草のおひたしを何度も掴んでは落とすと言う事を繰り返していた。
そんなタバサに箸の扱い方を教えながら食事を続ける光牙、それを聞きながら懸命に箸を使いながら食事をするタバサの姿は、
さながら仲の良い兄妹の様に見えのほほんとしていた。
そしてそんな2人のもとに1人の男がやって来た。
「光牙!!頼む!!俺にも・・・俺にも米を食わせてくれ!!」
才人であった。
光牙とタバサの料理の中に、何も混ざっていないご飯、昔で言う銀シャリがあり、才人は故郷の味が恋しくなり、
どうしてもご飯が食べたくなったので、見事なまでに綺麗な土下座までして光牙に頼みに来たのだった。
因みに、何故米があると言うと、元々地球で言うピラフやパエリア等の米を使う料理の為にあった米を分けて貰ったのである。
ピラフ等、生米から作る料理しか知らないハルケギニアの人達にとって、炊くと言う光牙達の故郷日本独自の調理法は、
マルトー達コックに衝撃を与え、現在賄では殆ど必ず、光牙が炊いたご飯が出されるのであった。
「ちょっとサイト!!何皆の前で他人の使い魔に土下座なんかしてるのよ!!恥ずかしいから止めなさいよ!!」
「うるせええええええ!!久しぶりに故郷の味が食えるかもしれないんだ!!土下座もするわ!!」
「相棒・・・目がマジになってるぜ。」
「マジだよ!!マジ!!そりゃあマジにもなるさ!!ひょっとしたら二度と食えないかもと思った故郷の味が目の前にあるんだぞ!!
マジにもなるさ!!」
((駄目だこりゃ。))
光牙とデルフは才人の目を見て同時にそう思った。
因みにデルフは、ウルトラマンティガの正体が光牙だと知っている。
バルタン星人との戦闘後、光牙が才人とこれから行動を共にするデルフに自らその正体を明かしたのだ。
最初は信じられなかったデルフであったが、インテリジェンスソード特有の探知能力で、それが真実だと分かった。
そして光牙がウルトラマンティガだと言う事は他の誰かに明かさない事を約束した。
「あのさ・・・・才人、土下座しているところ悪いんだけど・・・。」
「何?」
「もう無いんだよ。」
そう言い、ご飯の入っていたお櫃を見せると、米粒1つ無く綺麗にたいらげられていた。
「何いいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
「ごちそうさま。」
「お粗末さまでした。」
そして何時の間にか、光牙とタバサは全ての料理をたいらげており、食事を終えていた。
「今日も美味しかった。」
「ありがと・・・と言う事だ才人、又今度にしてくれ。」
「そんなああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ほら行くわよ!!バカ犬!!ご主人様に恥を掻かせた分!!後でみっちり躾をしてあげるわ!!」
ズルズルズル・・・・・
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・ご飯・・・白米・・・・銀シャリぃぃぃぃぃぃ・・・・。」
「相棒・・・諦めろ・・・。」
あの小さな体の何処にそんな力があるのかと疑問に思いながら、才人を引き摺りながら食堂から出て行った。
「・・・・ダーリン如何したのかしら?ルイズに引き摺られながら、何か叫んでいたけど?」
「きゅるきゅる(本当に何時も騒がしい主人と使い魔ですね。)。」
才人とルイズが去った後、キュルケがフレイムを引き連れて、光牙とタバサの居るテーブルにやって来た。
「よっ、キュルケ、如何したんだ?フレイムも連れてきて。」
「きゅるきゅるきゅる(こんちわコウガ、御主人がお前の主人と食事をとりたかったんだが・・・。)。」
「もう食べ終えちゃったんだ。」
「言ってくれれば待ってた。」
「ごめん、言い寄ってくる男共をあしらうのに時間が掛かって・・・。」
「きゅるきゅる(俺もその場に一緒に居たから、食事をとり損ねた。)。」
「それは災難だったなフレイム。」
因みに光牙はフレイムの言っている事が理解できる。
額のルーンの効果で、ハルケギニアの文字が解るだけでなく、動物や幻獣、精霊と言った、この世界の意思を持った者との会話が可能だと分かったのだ。
尤も精霊との会話にはかなりの集中力が必要となるが、今は精霊と対話が出来るシルフィードの教えの下慣れる為の練習をしている。
「デザートなら作ってあるけど、どうだ?」
「食べる。」
「タバサは勿論食べられるわよ、コウガの作るデザートは珍しいけど美味しいからいただくわ。」
「わかった、フレイムもおいで、頼んでお前の分のごはん貰える様に頼んでみるから。」
「きゅる(ありがとう。)。」
親友同士の使い魔と言う事もあって、フレイムとはシルフィードと共に仲良くやっている。
フレイムのごはんをマルトーに頼み終えた光牙は、手作りの白玉善哉を持ってタバサとキュルケの待つテーブルに向った。
光牙の作った白玉善哉の評価は上々で、2人とも喜んで食べてくれた。
「ふぅ~・・・ごちそうさま、温かいデザートなんて初めて食べたけど美味しかったわ。」
「美味。」
「ありがとう、その言葉と笑顔が作った人にとって、一番の喜びだよ。」
「私はこれから部屋に戻る、コウガは如何するの?」
「俺は皿洗いを手伝ってから戻るから、先に戻っててくれ。」
「分かった。」
「私は少し散歩してから戻るわ、このスタイル保つのも大変なのよ・・・じゃあね。」
「おう、後でフレイム連れて行くから。」
「お願いね。」
「・・・・・・。」
タバサはそのまま無言で自分の部屋に戻るため食堂から出て行った。
それに続くようにキュルケも食堂を出る。
「・・・・・ふう・・・。」
自室に戻ったシャルロットはベッドに腰掛け、しばらくするとその小さな背中をベッドに預け、天井を見つめる。
「・・・・・楽しい・・・。」
シャルロットはポツリと呟いた。
こんなにも日常が楽しいと感じたの何時以来だろうと、そんな事を思っていたシャルロット。
願わくば、このままこんな楽しい日常が終わる事無く、続く事を思うシャルロット。
しかし・・・。
カンッ・・・カンッ・・・・
「!!」
彼女を取り巻く闇はそれを許さなかった。
音のする方を見てみると、そこには外から部屋の窓を1羽の梟が叩いていた。
「・・・・・・。」
ガラッ・・・・
シャルロットは無言で窓を開けて、梟を部屋の中へと入れた。
するとその梟は手紙へと姿を変えた。
「・・・・・・・・。」
シャルロットは無言でその手紙を開き、そこに書かれている文章を読んだ。
その手紙にはこう書かれていた。
『北花壇騎士・七号に次の指令を与える。
これよりエギンハイム村に赴き、エギンハイム村の村民と翼人との争いを止めよ。
期間は本日から3日まで、失敗したらどうなるか分かってるな?
ガリア北花壇騎士団・団長・イザベラ。』
「北花壇騎士・七号」それはガリア北花壇騎士に属しているシャルロット・・・いや、タバサの称号。
そしてガリア北花壇騎士団の団長である「イザベラ」とはガリア王国の国王、ジョゼフ1世の娘にして、
ガリア王国の王女。
つまりはシャルロットの従妹である。
何故そんな彼女が従妹であるシャルロットにこの様な指令を出すのか?
そして「失敗したらどうなるか」との意味は?
それは今語るべきではない・・・。
そして手紙の内容にある「本日から」とはこの指令書を受け取った日からだと言う事、そして今は夜、
目的地であるエギンハイム村へは今からシルフィードを使っても、トリステインからでは翌朝についてしまう故に、実際の期間は2日しかないのだ。
シャルロットは急いで準備を始める。
そんな時に。
ガチャ・・・
「!?」
「あっ・・・すまないノックするのを忘れた。」
光牙が戻ってきたのであった。
「ん?」
そして光牙の目には、先程シャルロットが読んでいて指令書が目に入った。
「何だこれ?」
「!!駄目!!」
シャルロットは慌てて光牙から指令書を取り上げて光牙に背を向けるが、既に光牙は指令書の内容を読み終えていた。
「・・・・・それって、前に言ってた騎士団の指令書だよな?」
「・・・・・・。」
「・・・・シャルロット・・・。」
「・・・・・うん・・・。」
「・・・・行くのか?」
「・・・・・それが任務・・・。」
シャルロットは静かに答えていく。
そして光牙は・・・。
「なら俺も行く。」
「駄目!!これは私の任務!!あなたを巻き込みたくない!!」
シャルロットの任務について行くと言う光牙だが、シャルロットは巻き込みたくないと言い、光牙の申し出を断る。
そんなシャルロットに対し光牙はシャルロットの両肩に手を置き、目を見て言う。
「今の俺は君の使い魔だ・・・だから行く。」
「なら主人として命令する・・・来ては駄目!!」
使い魔として行くと言った光牙に対し、シャルロットも主として来るなと命ずる。
「シャルロット・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
2人はしばし沈黙したままお互いの目を見詰め合った。
そして光牙が先に口を開いた。
「俺は君の力になりたい・・・。」
「えっ?」
「君が何を抱え、何を背負っているのかは俺には分からない・・・君の全てを知る事は出来ない・・・だけど、君の力になってあげることは出来る。」
「コウガ・・・・。」
「これは使い魔として言ってるんじゃない・・・・1人の人間、円光牙として言ってるんだ・・・。」
「・・・・でも・・・・。」
『諦めよシャルロット。』
「レンス?」
『こういう時の光牙は何が何でも諦めないぞ。』
「しかし・・・。」
「・・・・頼っていいんだよ。」
「えっ!?」
「今まで1人で頑張ってきたんだろ?でも今は俺がいる、レンスがいる、シルフィードがいる・・・・君を思ってくれる人がいる。」
「あっ・・・あぁ・・・。」
光牙の言葉にシャルロットはその瞳に涙が溜まる。
「頼っていい」1人孤独に任務をこなしてきたシャルロットにとって、最も言ってもらいたかった言葉。
シャルロットは今にも泣き出しそうだが、ぐっと我慢して光牙の話に耳を傾ける。
「今の君には隣に立ってくれる仲間がいる・・・だから頼っていいんだよ・・・。」
「うっ・・・うぅ・・・・。」
「俺も君の任務について行く・・・いいかな?」
「・・・・ぐす・・・うん!!」
シャルロットは瞳に溜まった涙を拭い、任務に同行する事を許可した。
「よしっ!!じゃあ準備を急ぐか!!俺は学院長かロングビルさんに適当に言って許可をもらって来る。」
「お願い。」
この十数分後、女子生徒寮の一室からガリアに向かって飛ぶ1つの影があった。
To be Continued