《ぐーたら男と終焉の剣》~拾ってみたら日常生活でめっちゃ使えましたw~   作:どるふべるぐ

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Q.こんな伝説の武器の使い方は間違っているのだろうか?
A.便利だからこれでよし。


《スルトの炎剣》編・1
プロローグ。或いはある終焉の剣の受難の始まり


 

 《スルトの炎剣》

 

 それは、世界を焼き尽くす終焉の剣。

 

『おいこら人間。貴様なぜ我に油を塗っている?』

「……ん? だってそろそろ夕飯の時間だろ?」

 

 北欧神話に曰く、遥かな未来、神々と巨人族による最終戦争《ラグナロク》において、世界はただ一本の剣によって焼き尽くされるのだという。

 

『いやそれは分かっておる。が、それと我の刀身に油を塗るのには何の関係があるのじゃ?』

「いや決まってるだろ? レバニラ炒めを作るのにレバーを焦がしたら台無しだからな」

 

 炎の国『ムスペルヘイム』の炎巨人スルトが振るいしその一撃は天地を焼き、太陽よりもなお輝く灼熱の刀身は神すらも滅ぼす。やがて炎は天を焦がし、地を焼き、世界樹ユグドラシルを破壊した後、世界は劫火に包まれ終焉を迎えるのだ。

 

『いやいや待て。そんな「え、当たり前じゃん?」という顔をされても意味が分からんぞ。……ってなんだその肉は? なぜ我をちゃぶ台の上に横たえるのか!?』

「いいから黙って大人しくしてろよ。天井の染みでも数えてればすぐに終わるから」

『んなっ!? き、貴様我を辱める気か!? 我こそはいずれ世界総てを焼き尽くす終焉の――っておいこらやめっ肉を載せるなああああ!?』

 

 故に、決して誤った使い方をしてはならない。一たび悪しき者がその力を使えば、人も獣もそれから神も、天地万物が灰燼に帰すのだから。

 

 まして……。

 

「おージュウジュウいってんのにちっとも焦げ付かない。やっぱりお前めっちゃよく肉焼けるなぁ♪」

『焼くなぁ! くうぅ……我は伝説の武器なのにッ。終焉の剣なのにぃッ。こんな使い方は間違っておるのじゃああああああ!!』

 

 

 ――その刀身で肉を焼くなど、絶対に間違っているのである。

 

 

 ×××

 

 

『ちょっといつまで寝てんのよ! もう朝よ起きなさいったら!』

 

 すぐそばから聞こえる、眠りの闇の向こうから呼びかける声。鈴の音のように澄んだ、だがそこはかとない怒気を滲ませた声に導かれ、俺――九十九洋吾(つくもようご)は瞼を開けた。

 

「……んぅ。朝……か……」

 

 眠気の残るぼうっとした頭で、気だるげに呟く。初春の朝日が柔らかに射し込むボロアパートの一室。寝ぼけ眼のぼやけた視界に最初に映るのは、心地良く惰眠を貪っていた自分を起こした張本人だ。

 

『やっと起きたわねぐーたら洋吾。さあさっさと布団から出なさい。今日は大学があるんでしょ』

 

 目にも鮮やかな金髪のツインテールに、青く煌めく勝気そうなツリ目。バランスの良いすらりとしたスタイルをアニメに出てきそうな露出度の高い衣装に包んだ、極上の萌え絵師が描いたような美少女が、わずか眼前10センチという超至近距離から俺の顔を覗き込んでいた。

 

「……近いなぁ」

『し、仕方ないでしょっ! あんたがあたしを抱きしめてるんだから!』

 

 ……うん、それはそうだ。そういえば昨夜もこいつと一緒に寝たんだった。

 

『……ていうかここ最近は毎晩じゃない』

「ふぁぁ……それこそしかたないだ…ろ…。この季節は夜寒いし、お前は柔らくて気持ちいいから抱いて寝ないとよく眠れないんだよ」

『――ッば、ばかっ! なに変な事言ってんのよ……っ!』

「変な事か……? だってお前――」

『い、いいからさっさとお布団から出るの! ぼさっとしてるとまた講義に遅刻するわよ!』

 

 そんな、どことなく照れ隠しのような声に促され、俺は渋々……本当に渋々布団から這い出る。そして朝の冷気がランニングにトランクス一丁の体全身に突き刺さったところで再びお布団に帰還。やわらかな温もりの国に包まれホっと溜息をついた。

 

「お布団最高だぁ………」

『いやなんで戻ってきてんのよ!?』

「春先とはいえ朝の冷気は容赦なく俺を蝕むんだ。勝てる気がしないから今日は俺お布団の国の住人になる。……ぶっちゃけ寒い中動くのがめんどいでござる」

『っこのぐーたら駄目人間! さっさと出てけーー!!』

 

 澄んではいるが鼓膜も破らんばかりのアニメ声で怒鳴られ、俺はキーンとした耳を抑えつつ再び布団から出る。またまた容赦なく襲い来る冷気にブルッと震えつつ、ジーンズを履くと極限まで冷え切った生地が柔肌に密着してますます寒くなった。嗚呼お布団の国に帰りたい。

 

「ひっ……ちべてー」

『それは仕方がないというものだぜ。そういう素材なんだ我慢しろよ』

 

 思わず上げた悲鳴に返ってきたのは、生地以上にクールでドライな返答だった。

 

「なんで俺、こんな寒い思いしてジーンズを履かねばならんのだろうか……」

『洗濯と買い物を面倒臭がって上も下も二着ずつしか買ってないのがいけないな。たまには若者らしくお洒落に気を使ったらどうだ?』

「紳士服売り場に行くのがめんどくさい」

『じゃあネット通販とかどうだ? あれならワンクリックだぞ』

「商品一覧に目を通すのが以下略」

『……時々お前さんがどうやって19まで生きてこられたのが不思議になるぜ』

 

 呆れたような渋いハスキーボイスの溜息を聞きながら、着替え終えた俺は洗面台の前に立つ。

 鏡に映るのは見慣れた腑抜け面だ。

 ろくに剃ってない無精ひげに、伸び放題にほったらかしたボサボサの髪。顔のほぼ半分を覆う前髪の隙間から覗く瞳は何とも気だるげで、一片の覇気もやる気も感じられない。ちなみに背丈は一応190はあるが、背筋を伸ばすのがタルいので常に猫背にしてる。

 うん我ながら完全無欠の駄目人間ビジュアルだなハハハ。

 

『はぁ……洋吾君。笑い事じゃないでしょう』

 

 したら大人のお姉さんっぽい声に突っ込まれた。はいそうですよね大学生のカッコじゃないですよね。分かってるよでも手入れとかめんどくさいのさ。

 

『そんなことじゃ、いつまで経っても彼女なんて出来ないわよ』

「いや彼女とか面倒だしいらないよ」

『それが負け惜しみならまだ救いはあるんだけどねぇ……』

 

 またまた呆れたような溜息をつかれたよ。オンボロアパートの優雅な一人暮らしだってのに、俺の一日はいつでも皆から色々呆れられつつ始まるのだ。

 そして顔を洗い、うがい歯磨きを終えた後、朝食にレバニラ炒めを食う。超低血圧の俺にはレバー様が必要だ。しっかり食っておかねば。

 

 食後、家に帰るのが面倒臭くなった時いつでも野宿ができるよう日用品一式と筆記用具を詰めたリュックをえいやと背負い、玄関に向かう。

 外への扉を開き足を踏み出す前に、ふと自室の方へと振り向いた。最低限の日用品しかないボロアパートの一室は、実に何とも殺風景だ。だが、ここに一応俺の帰りを待つ奴らがいる以上は言っておこう。

 

「んじゃ、いってきます」

 

 誰もいない無人の室内から、答える声はもちろん

 

『遅刻すんじゃないわよー』

『帰りにコンビニにでも寄って整髪料くらいは買って来なさいね』

 

 

 世話焼きの抱き枕と洗面台の声だった。

 

 

 




はじめましての方ははじめまして。そうでない方はなに他の作品ほっといて新連載始めてんだよクソが!とお怒りかもしれませんが許してください作者です。

あさて、この物語は神話や伝説に出てくる様々な武器をネタ的に弄り倒す話なので、イメージ崩壊が嫌だ不快だこのファッキン野郎という方はご覧にならない方がいいかと思います。

そしてそしてタグにも付けましたが不定期かつ亀更新です。あくまで他の作品が詰まった時の息抜き用の作品……が詰まった時の息抜き用の作品ですので、いつ更新されるかは完全に作者の気分次第です。

それでもいいという心の広すぎる読者様は、どうかまったりご覧ください。ヤマもオチも意味もないぐーたら日常ストーリーですが、少しでも楽しんでいただけるよう頑張ります。

ではでは次の回で('ω')ノ
PS.剣の名前に首を傾げた方へ。作者は『あの剣とは別物派』です。
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