毒舌な妖怪は寂しがり屋 作:カルタネット
『小妖の分際で俺のものに触るな!』
そんな……私はただ落とし物を拾っただけなのに罵声を浴びなきゃいけないの……
『お前がいると不幸が起きる!2度とこの村に足を踏み入れるな!』
なんで……最初は快く迎えいれてくれたのに石を投げてくるの……
『殺せ!こんな厄害なぞ生きるに値せん!!』
どうして……私はなにもしてないのに刃物を向けてくるの……
『消えろ』
やめて……
『近づくな』
やめて
『殺せ』
やめろ
『お前に生きる価値なんてない』
ならもう関わらないで。
もう誰とも関わらないから……
『大丈夫?怪我してるよ』
話しかけないで……貴女も不幸になる……
『お腹すいてるでしょ、私のあげる!』
やめて、私に触れたら貴方にも不幸が……
『帰る家がないの?仕方ないなぁ、私のうちに泊めてあげる!』
……あ、ありがとう。
『私ね、これまで友達ができたことがなかったの……だから嬉しい!朱ちゃんみたいな友達ができて!』
とも……だち?
『ねぇ、今日はなにして遊ぶ?私は鬼ごっこがいい!』
うん……私も、それがいい……
『ははは!ずっと友達だよ!朱ちゃん!』
うん、ずっと……友達だよ……
『朱ちゃん、なんだか、眠たいの……』
○○ちゃん!!?
『……私、もっと朱ちゃんと……一緒に……』バタッ
ああぁ!!私のせいだ!私と関わったから○○ちゃんが!
……私がいなければ○○ちゃんは死なずに済んだのに……!
……私が○○ちゃんと一緒にいたいと願わなかったらこんなことにならなかったのに!!……
……もう、誰とも関わらない。関わってくる人がいるのなら自分から遠ざける。私のことを嫌わせる。
もう絶対にあんなことは起こさせない。
『ねぇ、こんなところでしゃがみこんで何してるの?』
…………
「煩い、話しかけるな塵が」
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「……!!?」バッ
今のは……夢?
「はぁ、はぁ……」
確かに夢だ。私は布団の上にいて、今、起きたのだ。
久しぶりに見た、忘れもしないあの子の顔……
今見ていた夢はフィクションではない。
……あれは過去の記憶。私の口が悪くなったきっかけの出来事であり、トラウマ
今ではその過去については解決してる。
だから別に人を遠ざけるようなことを自分からしようとは思ってない。でも毒舌の癖だけは残っている。もしかしたらあのときの出来事が無意識に尾を引いてるのかもしれないけど……
___でも、彼女とは
正確には彼女の霊と会ったのだ。
そう、あの夢には続きがある。私は彼女の死後、人と関わらないと改めて決意した50年後、彼女の霊と会った。私の容姿が全く変わっていないのと、口調があまりにも変わっていたことに驚いていた。
が、そんなことは一瞬で、そのあと私と彼女は泣いて抱き合った。私に触れると不幸が起こるというのに……
それからは彼女と昔のようにはしゃいで遊んだ。遊び疲れていつの間にか地べたで寝るぐらいまでね。
そして起きた後、私は彼女からお礼と謝罪の言葉を聞かされた。
『私があんな楽しい人生を送れたのは貴女のおかげ』、『貴女を一人にしてしまってごめんなさい』と。
そんなわけない。お礼は私の方が言いたい。謝りたいのも私だ。『私の人生は貴女がいたから始まった』と、『貴女を死なせてしまったのは私、謝るのは私の方だ』
そう告げると彼女は微笑みながら『いいよ。それに全然怒ってないよ』と許してくれた。その言葉を聞いて私はまた涙が溢れ、一時の間、止まることはなかった。
それから何時間経っただろうか、私がそう思っているだけで本当は数十分、もしかしたら数分の間しか経ってないかもしれない。しかし、あのときの私にはかなりの時間がたったような感覚に陥っていた。
そして、私と彼女の別れのときが来た。
彼女は『自縛霊』であった。この世に未練をもち、やり残したことがある者がなる霊だ。
彼女は私にさっきのことを言いそびれたことが心残りでこの世を漂っていたそうだ。ほんと、私のためにこの世に残ってくれたのだ。感動のあまりまた泣きそうになる……
最後に彼女と抱擁を交わした後、彼女は光を発しだし、空の彼方へと散っていった。
その光景を私は完全に光が見えなくなるまで眺めていた。
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それが夢の続きの内容。自分でも思うが感動的だけどかなりベタな話だ。それを自分自身がすることになるとは思わなかったけど……
「うわぁ、汗びしょびしょ」
もう何年前かさえも定かではない事を久しぶりに思い出したからか、布団の中は私の汗でお漏らししたみたいに濡れていた。
うわ、これ。ミナミツに見られたら絶対に誤解されるよ……
「兎に角、お風呂沸かして入ろうかな」
布団も人目につかないところで干すとしよう。見られたら何て言われるかたまったもんじゃない。
~風呂場~
パカーン
ふぅ、朝風呂ってあんまりしないからなんか新鮮だなぁ。沸かすのが少々面倒だからそうはやらないけど……
「○○ちゃん、元気にしてるかなぁ……」
無事、転生の輪に入れていればいいけど……
そんなことを思いつつ、髪から滴る水がお湯に落ち、波紋を立てているのをぼ~っとみる。
あのときは本当に楽しかった。おそらく、彼女がいなければ今の私はいなかっただろう。それぐらいまでに彼女は私の人生の中で大きな存在だ。
「はあ……」
これを思い出すとどんなものも鮮明に見えてくる。木材でできた浴室。湯気をゆらゆらと出しているお湯。それに波を加えることによって生じる波紋。窓から少し見える地底の空。
少し考えただけでもこんなにも身近な所にも神秘的な光景が広がっている。こんなことを思えるのも○○ちゃんのおかげだよ……
ドタドタドタドタ
「ん?」
風呂場の中で、物事に思い耽っていると風呂場の入り口から離れた場所から誰かが走る足音が聞こえてきた。
バシャン!!
「きゃあ!?」
そし段々近づいてくると思いきや、風呂場の入り口を思いっきりあけられた。
え、だれ!!?
「ってミナミツ!なに勝手に人が入ってるのに開けてんだ!恥を知れ馬鹿!」
「ほぅ、朱ちゃんはお漏らしで濡れた身体を洗っている最中ですか」
「なっ!?」
ま、まさか……!?
「お布団がびしょ濡れだったよ~、しかも全体に広がってたし……どんだけ洪水だったの?」
「隠して干してた筈じゃ……」
「ああ、彼処?ダメダメ、このむらっちゃんから隠しとおせると思ってたの?」
み、ミナミツ……
「てっ、てめえぇぇ!!!」バシャァァ!
「お、全裸で私に襲いかかるの?」
「くっ……!」バシャッ
は、恥ずかしい……まずあれお漏らしじゃない!汗だから!
「まあ、失敗は誰にでもあるってことよ!気にしないでね!」
「私は今、猛烈にお前の目を抉り取りたくなった」
完全に子供扱いされてる……さっきまで○○ちゃんとの出来事を思い出して心が安らいでたってのに台無しだよ!
「あ、あれは漏らしたんじゃない」
「はいはい、皆そう言うんだよねぇ」
「皆って!?」
まあ、今の生活も悪くない…………と思いたい。取り敢えず誤解を解かないと!