毒舌な妖怪は寂しがり屋 作:カルタネット
今日から一週間、ミナミツは用事で来れないそうだ。寂しいな……
「……」ノソッ
久しぶりの静かな朝。私はいつもより少し遅く起床した。うん、たまには自分のペースで起きるのも悪くない。
「……」パチパチッ
顔を洗い、朝ご飯の準備をする。
今日は昨日の残りの煮物に焼き魚とほうれん草のおひたし、そしてご飯だ。
「頂きます」
と、生命を頂いく感謝の印を言葉にする。
カチャ,カチ,カチャ,
少しの間、箸の奏でる音だけが居間に聞こえる。
「ご馳走さま」
全ての料理を食べ終わり、食事の終わりの合図をする。
ふぅ、食べるの遅いから結構時間がかかってしまった。ささ、油がお皿にこびりつき始める前に洗わなきゃ!
~1時間後~
さて、何しようか……
朝ご飯は食べた。布団も干した。洗濯物も昨日やって布団を干すときついでに取り込んだ。掃除も昨日のうちに終わらせた。買い物も昨日のうちに全部済ませた…………
うん、なにもすることがない。なにやってるんだ昨日の私!用事昨日のうちに終らせすぎでしょ!!少しぐらい残しててよ昨日の私!!!
……はあ、それはおいといてほんとなにしよう。別に何らかの趣味があるわけでもないし。
「あー!暇ー!誰か来てー!」ゴロン
と、願わぬ願望を口にしながらその場に寝っ転がる。私のうちに来るやつなんてミナミツかその友達の一輪ぐらいだよ……
他はちゃんとした用事以外来る人なんて皆無だし……やっぱり悲しいな……前は一人でもあまり気にしてなかったけどこうしてまた誰かとふれ合ってみると寂しくなるものだ。
「あ、これ……」
居間のど真ん中で辺りを見渡して見るとはしっこの方であるものを発見。
「この人形、そういえばミナミツから貰った物だっけ……」
そう、人形である。しかも水兵服姿で頭には水兵帽とどこかしらミナミツに似た姿をしている。
そして私の身長の半分くらいと中々大きい人形というなんで今まで放置できていたのか不思議に思うサイズだ。まあ、結構前にもらった物だから全然気にしてなかっただけだけどね……
そういえばこの人形をもらったのって何が原因なんだっけ?なんかとても恥ずかしいこと言われた気がしたんだけど……
と、暫し考えに耽る。
……あ!そういえばこう言われて貰ったんだった!
『明日からちょっと用事で来れないからこの人形で気分をまぎらわしてね!ほら!私に似てるでしょ!思いっきり抱きついてもいいよ!』
うわぁ、思い出しただけでも恥ずかしい……あのときミナミツに寂しいっていうのが見抜かれてて物凄く顔が赤くなったのを覚えてる。ああ、思い出しただけでも恥ずかしい……
あ、でもこの人形貰ったのって今日のような日だったんだなぁ。
「……」ゴックン
はっ!私は何を考えてるんだ!何で今私はこの水兵人形を抱きつこうとしてしまったんだ!これじゃミナミツの思う壺だよ!
「で、でも今は誰もいないし……」
確かに今家に居るのは私だけ。どんなことをしようと誰にもバレない。それなら……ちょっとぐらい抱きついても許されるよね?
「!!」ガバッ!
そしてついに私は思いっきり水兵人形に抱きついた。腕と足で人形をホールドしながら覆い被さる感じで。
「寂しいよ~寂しいよ~暇だよ~」ゴロゴロゴロ
ホールドしたまま本音を呟きつつ水兵人形と一緒に居間の中を転がり回る。私ってこんなにも寂しがり屋なんだなぁ……
「誰か来てよ~話したいよ~」ドタバタドタバタ
意味もない地団駄。ああこれ、我儘な子供のようだ。こんな姿、誰かに見られたらあまりの恥ずかしさで顔が破裂しそうだよ……
「うきゃー!ひまじゃー!だーれーかーきーてー!」
ははは!なんだか楽しくなってきた!いまならなんでもできる気がする!
ガタッ
「!!?」
あれ、今襖の方から音が聞こえたような……
え、ちょ、やばくない?誰か来たの?
「(ま、まさかミナミツが!?)」
そりゃダメだ。絶対に弄られる。死ぬ、恥ずか死ぬ。
ま、まずは確認だ。
そう思い、一旦水兵人形を置いたあと、音のした襖を恐る恐る開けてみる。
すると_____
「あ、えーと……久しぶりだね朱!この前酒を飲み交わした以来かい?」
「……」ボォン!
「どうしたんだい!?」
アカン、ミナミツよりアカンやつや……
●■●■●■●■●■●■●■●■●■
「いやぁ、まさか朱があそこまで本性見せるとはねぇ」
「黙れ、お前に見せるために出してた訳じゃない」
「お、てことはあれが本性ってこと認めるってことかい?」
「な訳があるか単細胞!」
現在、居間で胡座をかいて話しているのはここ旧都をしきっている鬼だ。名前は星熊勇儀といい、たまに私の家に『監視』という名目で来る。最近めっきり来なかったから完全に忘れていた。
「で、お前は何しに来たんだ?またいつもの監視か?」
「いや、今日はそんなんじゃないよ。ちょっと渡してほしい物があるんだ」
「ん、なんだ?」
渡してほしい物ってことは私が誰かに勇儀から渡されたものを届けなくちゃいけないってこと?
そう思ってると、勇儀が1つの紙を取り出した。
「この手紙さ。これを地霊殿へ持っていってほしいんだ」
「はい?」
地霊殿ってあの心を読む覚妖怪のいるあの地霊殿?!
「なんで私に頼むんだ。お前が直々に行けばいいだろ」
別に心を読まれる事に嫌悪感はない。だけど物凄く恥ずかしい、さっきみたいに恥ずかしさで頭がオーバーヒートするよ……
「私だって暇じゃないんだ。今日だって用事の合間を縫ってきたんだよ?」
「因みにその用事は?」
「飲み仲間と癒着店回り」
「屑め」
いや、本当は羨ましいよ。酒を飲み交わすのはかなり楽しい。だけどさ、それをするために人に面倒事押し付けるのは駄目じゃないかな?
「いいじゃないか。どうせ暇だろ?」
「確かに暇だが面倒事は御免だ、他を当たれ」
口は悪いがこれは本心だ。心を読まれてみたいとは思う。そうすれば私がこんな口が悪いのかわかってもらえるからだ。でも恥ずかしい、知ってもらいたいけど恥ずかしい。物凄く勇気がいることなのだ。本当の自分を知ってもらうということは……
「まあまあ、そんな怒った顔をしなくてもいいじゃないか。ちゃんと礼をするからさ。ほら、酒」ドンッ
「お前はどこまでも酒ばっかりだな。なんかお前、いつか酒の飲み過ぎで死ぬんじゃないか?」
「酒で死ぬなら本望、いい妖生じゃないか」
「……」
まあ、そういうと思った。でも私は行かないよ、さっきから何度もいってるけどはず__________
~1時間後~
「んじゃ、ありがとねぇー。明日までに頼むよ」
「二度と来るなアル中」
結局行く羽目になりました。……はぁ、私ってなんでこう、押しに弱いんだろう……
「あ、人形に甘えてた朱、可愛かったよ」
「……!!さ、さっさと帰れ!!」
やめて!あれを思い出させないで!!?
___________________________________
「あれで良かったんだろうか……」
本当はあの子に頼む必要は全くといっていいほどなかった。
「まあ、でもいい加減朱にも交友関係の範囲を広めさせたいしいいか」
あの子ったら私らがこの地底に来る前からいるってのに全然交友関係を増やそうとしないからね。だというのに私らが酒を飲んで楽しんでいるのをいつも遠くから羨ましそうに見る。
あんな顔をされたらお節介をかかないわけにもいかないじゃないか。だから許しておくれ、朱″ちゃん”。