毒舌な妖怪は寂しがり屋 作:カルタネット
私は今日という日が来ることを拒んでいた。
今日来るな今日来るなと、ミナミツに似た人形を抱きながら寝ないようにしていたが、癖というものは凄いもので無意識のうちに布団を敷いて中に入っていた。
急いで布団から出たがどうしても布団の中の温もりが忘れられなかった私は入るだけならと結局布団の中にはいった。
まあ、このあとの展開はお察しの通り寝てしまいました。
そして現在私は目が覚め、朦朧とする意識の中、私は今日”しなければならないこと“を思いだし、一気に頭が覚醒した。
「はあ、なんで行くって言っちゃったんだろう……」
上半身を起こし、隣の部屋にあるちゃぶ台に顔をやる。
そのちゃぶ台の上には昨日、勇儀から頼まれた手紙が置かれており、私が今日という日を拒んでいた理由だ。
____そう、今日私は覚妖怪である古明地さとりのいる地霊殿に行かなければならない。
覚妖怪は人妖問わず心を読むことのできる妖怪であり、ここ、旧地獄で最も嫌われている妖怪だ。
だからといって私は別に心を読まれることにたいして嫌悪感はない。だってやましいこととか考えてないもん。
だけど恥ずかしさが尋常じゃない。
私は関わりを絶つために口悪くなった。
しかし今では関わりを絶とうとは思わなくなった。でもなぜか口が悪いのが残ってしまい、どうしても友と言える人が少なかった。私は本当はそんなこと思っていないのに……
「『だから私の心の内を聞けるさとりとは仲良くできる』ですか……確かにそうですね。そう思われたのは初めてです」
「そうなの……覚妖怪には会ったことないんだけど友達になれると思うんだ」
「それにしてもここは狭いですね。いや、ここぐらいがちょうどいいのかも」
「狭いかな?私としてはちょうどいいんだけ、ど……?」
あれ?私今、誰と話してるの?確か声は私の背後からだけど……まさかね、私の背後って言ったら窓だよ?ちゃんとロックもしてた……あれ、昨日ちゃんと戸締まりしたっけ?
「いいえ、してませんでしたよ。少なくてもこの窓は」
「……」
マジですか……どうしよう。もしかして後ろの人、強盗?私の家、そんな大層なもの置いてませんよ?
「大丈夫です。私はただ、酒好きの鬼からどうしてもということで仕方なくここまで出向いただけの者です」
え、私声に出してないよね、今……もしかして……!!
嫌な予感がした私は勇気を振り絞って振り返ると
そこには_____
「ふふ、おはようございます」
私と同じぐらいの身長の可愛い女の子がいた。
「可愛いだなんて、そんな……」ポッ
「……」
~10分後~
寝間着から着替えた私は一応客人である女の子にお茶を淹れた。
そして淹れられたお茶を一啜りした女の子は漸く自己紹介をしてきた。
「改めまして……私の名前は古明地さとり。旧地獄の中で最も嫌われているらしい覚妖怪です」
はい、さっきは失礼なこと言って(思って)すいませんでした……ていうかあっちから来るなんて行くの省けたね、心の準備が全然できてないけど……
「ふん、私は「朱ですね、わかりました」……おい、勝手に心読むな。心は読めても空気読めないのな、お前」
ああ、ごめんなさい……
そう心の中で謝っているとさとりが驚いたような顔をしてこちらを見ていた。
「驚いた……普通、言葉を発したものには必ずどこか思っている部分があるものなんですが、朱にはそれがないですね……」
「は?それってどういう……」
「つまり思っていることと言っていることが『完全に』違うということです。」
「んな訳ないだろ。頭おかしいんじゃないのか?」
やっぱり覚妖怪にはわかってもらえた……よかった……
「普通ならこういう場合強がってる人が多いのですがでも朱にはそういった感情は見られませんし……いや、ほんと、興味深いです」
「止めろ、そんなにじろじろ見んな。そしてそのふよふよ浮いてる目、キモいからあっち向けろ」
「ほう、『なんか奇抜だけど可愛らしい』ですか。ありがとうございます」
「……!!……その目に私の握り拳が放たれる前に心を読むのを止めろ」プルプルッ
「凄い、嫌悪感が微塵もない。あ、でも恥ずかしさで顔が真っ赤ですよ?」
「んがー!!」
顔が真っ赤になり、ついに耐えられなくなった私はさとりに飛びかかっていた。
「ほう、向かってきますか。返り討ちにしてみせましょう!」
~5分後~
「まさか負けるなんて……」
「ふん、単純な力勝負で覚妖怪風情が私に勝てると思うなよ」
結局私がさとりを押し倒す形となって勝敗を決した。
いや、別に勝負してた訳じゃないんだけどね……
「ごもっともです。元々は朱が飛びかかってきたのが悪いんですよ」
「私は謝らないぞ」
「そうそう、ちゃんと謝れましたね。偉い偉い」ナデナデ
「……おい、また襲いかかるぞ。あと頭を撫でるな!」
頭を撫でていたさとりの手を振り払うと、さとりはシュンとした表情になる。
そりゃそうだ、だって本当に撫でられるの、子供扱いされているようだから嫌だもん。
「あ、今度から朱のこと、朱ちゃんって呼んでいいですか?」
「は?なんでだ?」
「いや、ほら、朱ちゃんって赤ちゃんと同じ言い方じゃないです……痛?!叩くのはどうかと思いますよ!?」
取り敢えず無言で叩いた。
この子、私が気にしていることを的確についてくるよ……
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~昼頃~
「それじゃあ私は帰ります。久しぶりに有意義な時間でした。また来てもいいですか?」
「二度と来るなよ、ストレスがたまるから」
「ふふ、分かりました。また来ますね。朱ちゃん」
そうさとりがいうと自然と胸が暖かくなった。たぶん、嬉しいんだろう。
さとりもそんの私を見て、ずっと無表情だった顔を綻びさせた。
そしてさとりは手を振りながら窓から出ていった。
「……なんで窓から出ていったんだろう……」
窓から出ていったことに疑問に思っていた私だったが、そんなこと考えても意味がないと思ったので諦めることに。
取り敢えず片付けよう。お昼さとりと食べた分のお皿を洗わなきゃ!
と、私がふとタンスを見ると、そこには_____
「手紙渡すの忘れてたー!!」
ちゃぶ台に置いてると食べられないからと、タンスの上に置いて忘れていた勇儀の手紙があった。
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「中々楽しかったですね」
あの鬼が後悔はしないからとしつこく言ってくるもんだから仕方なく住所を聞いて家を出てみたけど確かに後悔は無かったですね。思わぬ収穫もあった。
いやぁ、でも久しぶりに家をでて、少し不安だったけど、全然繁華街の配置が変わってなくてよかった。変わってたらもしかしたら迷子になってたかもしれない。まあ、その時はあの酒好きの鬼に頼ればいい話なんですけどね……
それにしても朱ちゃん。彼女はとてもいじりがいがあるから一緒にいて楽しかった。
朱ちゃんが悪口を放つ度に心の中ではごめんなさいと心の底からいちいち謝っている。
そんなの感じてしまうと不機嫌そうな顔もなんだか可愛げがでてくる。是非とも心の中で思っている事を顔に出してもらいたいものです。
……もしかしたら私はサディストなのかも知れない。
「さとりー!」
ん、この声は……朱ちゃん?
何事かと私は振り向くとそこには1枚の紙を持って走ってくる朱ちゃんの姿があった。
「あの手紙、あの印鑑……ああ、あの鬼か」
あの鬼が『お前が行かなくてもいずれあっちから来るからな!』っていってた理由が漸く解けた。
あれを持たせて、私の家である地霊殿へといかせようとしてたんですね。
あの鬼、中々侮れない……
まあ、朱ちゃんが走ってきているのはおそらく手紙を渡し忘れたからだろう。なんて健気な……
よし、それじゃあお詫びにもうちょっといじってあげましょう。
「はあ……はあ…………はい、これ。勇儀からの手紙、渡し忘れてた」
「ありがとうございます。赤ちゃん」
「ん、今の言い方、なんか可笑しくない?」
可笑しくないと思いますよ、朱ちゃんの聞き違いじゃありませんか?