毒舌な妖怪は寂しがり屋   作:カルタネット

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あかちゃんとさとりとミナミツ

 

 

「ない……」

 

 朝御飯を作ろうと食料庫を開けてみると、中には調味料以外、何もなかった。

 ……そういえば、昨日買いに行くの忘れてたなぁ。

 買い物かぁ……行くには良いんだけどお金が……

 

 ここがまだ旧地獄ではなかったとき……つまり地獄だったとき、私はこの地下の拡張作業の仕事をしていた。まあ、穴堀りをしていたってこと。それで収入を得ていたんだけど、ここが地獄ではなくなり、穴を掘る必要性が無くなったせいで、私は職を失ってしまった。

 今は当然無職。前までしていた分のお金でやりくりをしている。

 

 どうしよう……働いても良いんだけど、旧都の皆は、私を見るなり目を逸らすし……まあ、私(の毒舌)が悪いと思うんだけど……だから、ちゃんと働かせてもらえるかどうか……

 只でさえ、この家を借りるの大変だったのに。

 

 あ、私の家は一応借り家だ。一軒家だと言うのに、家賃が殆んどかからないからかなり気に入っている。なぜ安いのかというと、この家が旧都の端っこの方で、空き家も多く、長年使われていなかったということらしい。

 

 

「って、そんなこと考えてる場合じゃない!」

 

 

 取り敢えず貯金があとどれぐらいあるか調べてみよう。

 そう思い、私はお金のある私室に向かう。

 一軒家と言ってもあまり広々とした空間ではないので、直ぐに着くことが出来る。台所から居間を挟んだ所に私の部屋がある。徒歩約5秒。

 

 そう、5秒だ。そして私が台所に行ったのは、起きてすぐなので、私が私室から出たのは2分に満たない。

 それなのに______

 

 

「おはようございます、朱ちゃん。良い天気ですね」

 

 

 先日知り会った覚妖怪。古明地さとりが、私の布団の中に入っていた。

 

 

「なにしてんだお前。二度と来るなと言ったはずだぞ」

 

「来るのは良いけど布団に勝手に入るな、ですか。仕方ありませんね。出てあげますか」

 

「家から出ていけ!」

 

 

 そう言いながら私は開いた窓に目をやる。どうやら前と同じく、私室の窓から侵入してきたらしい。

 

 

「ええ、他の箇所はちゃんと戸締まりしているのに、この部屋だけはいつもしていませんしね」

 

「なんでうちに来て2回目のお前がそんなことがわかる?」

 

「……知りたいですか?」

 

「いや、いい。嫌な予感しかしない」

 

 

 まさか……

 

 

「そのとおりです。最近、朱ちゃんの家に私室の窓から来るようになった猫は私のペットです。」

 

「やっぱり!」

 

「そう、その顔が見たかったのです」

 

「黙れこのサディスト野郎!」

 

 

 さとりが私室の窓の鍵を開けてるのがわかってたのは、猫経由で知っていたからなのか……

 

 

「因みに、その猫の名前に『にゃーちゃん』なんて可愛らしい名前をつけているようですが、本当の名前は火焔猫燐ですよ」

 

「うっ……」

 

 

 やめて……これ以上言われたら恥ずかしすぎて死んでしまう……

 

 そんな願いも虚しく、さとりは止めの一撃を食らわせてきた。

 

 

「あと、お燐いわく、『お風呂入れたり、ブラッシングしてくれるのはありがたいけど、寝るときに強く抱き締めながら撫で撫でしてくるのはやめてほしい』とのことです。」

 

「うわあぁぁ!!もうお前口を開くなぁぁ!!」

 

 

 猫の事について思い出して赤面しているところに、さとりの一撃のおかげで私はついに耐えきれず、またもや、さとりに襲いかかってしまった。

 あれ、これってこの前と同じ展開のような……

 

 

「ほう、向かってきますか。この前は朱ちゃんのグルグルパンチという幼稚な技に、てこずって負けてしまいましたが、今回はその対策はバッチリです!」

 

「幼稚言うな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~10分後~

 

 

「それで、仕事を探しているんですか?」

 

「よくそんな状態で会話できるな……」

 

 

 今回は私がさとりの腕を十字固めを極めたことにより、決着がついた。

 そして今も十字を極めてるんだけど、さとりはお構い無く話しかけてくる。

 

 

「何をいってるんですか。朱ちゃんの股に挟まれるなんて寧ろご褒美………………痛い!痛いです!!私の腕が曲がってはいけない方へ曲がろうとしています!!?」

 

 

 ふざけたことを言ってきたので、少しだけ間接の曲がる逆の方に力を入れた。

 そういえばさっき、さとりが仕事を探しているのかと聞いてきて、なんでわかったのかと思ったけど、どうせ心を読んだんだろうから、気にしないでおく。

 

 あ、でもほんとに痛そうだからもう解いた方がいいかな?

 そう思い、私は足で挟んでいた腕を解いた。

 

 

「次ふざけたこと言ったら折るからな」

 

「酷いです……折角良い話をしてあげようと思っていたのに」

 

「良い話?」

 

 

 良い話って……先のさとりの発言からすると、仕事についての事かな?

 まさか良い就職先があるとか!?

 ……いや、それはないか。さとりの友好関係なんてほぼ皆無だろうし。

 

 

「ついに心の中の朱ちゃんまで私を虐げ始めましたよ。そんな風に育てた覚えはありませんよ」

 

「お前に育てられた覚えはない」

 

 

 はあ、なんかツッコむのも疲れてきた……たぶんさとりはこういう私の反応を面白がって、わざとこんな立ち振舞いをしてると思う。

 

 

「いいえ、素ですよ?」

 

「…………もしそれが本当に素なら、これまで友達出来たことないだろ」

 

「お互い様じゃないですか」

 

 

 うぐっ、確かに……いや、私にだって友達ぐらいいる!

 ○○ちゃんと、ミナミツと、勇儀と……ミナミツと、ミナミツと…………さとり?

 

 

「今出てきた○○ちゃんとミナミツについて教えてください。気になります」

 

「お前には関係ない」

 

「ありますよ。だって朱ちゃんの中では、私はもう()()の括りに入ってるじゃないですか」

 

「……違う、お前を友達だと思うぐらいならコモドドラゴンを友達にした方がましだ」

 

「あ、うちにいますよ、コモドドラゴン」

 

 

 あ~、もう駄目だ。ことごとく言い負かされる。

 これはいくら話していても勝てる見込みがない……まあ、元々勝ち負けとかないんだけど。

 

 あ、そういえば今日の私、よく話すなぁ。

 

 

「話を戻しますが……今、朱ちゃんは職を探しているんですか?」

 

「……お前に言ったところでなんになる?」

 

「ありますよ。ちょうど、朱ちゃんにピッタリな仕事がありますし」

 

 

 私にピッタリな仕事?……私にピッタリな仕事、私にピッタリな…………あ!こう見えて私、力には自信があるから、建築とか土木系の仕事かな?

 

 

「違います。力はあまり関係ないです」

 

 

 力とは関係ない?……まさか、身体を……!?

 

 

「確かに朱ちゃんの身体は一部には需要があると思いますけど……違いますよ、身体は少し動かしますが」

 

 

 ん~、それじゃあ……

 

 

「あの、もしかしてわざと心の中で喋ってます?」

 

 

 ん?そうだよ。よくよく思えば、心を読めるさとりなら、声に出して罵言を言ってしまうことなんて無くて済むし。

 

 

「それもそうですが……これだと、端から見たら私が一人で話しているようで嫌なんですが……」

 

 

 大丈夫、ここ、私の家だから。

 

 

「いや、いますよ。ほら、そこに」

 

 

 え……

 

 と、さとりが指差した先を見てみる。さとりが指を差した場所は先程彼女が侵入してきた窓だ。

 そちらへと私が目線をやると、そこには_______

 

 

「むぅ~!」

 

 

 頬を膨らませたミナミツがいた。 

 

 

「朱ちゃんが私以外と楽しそうにお話してる!」

 

「今の何処が楽しそうなんだ、目が腐ってるのか?」

 

 

 なんでミナミツが窓から来たんだろうか……

 

 

「だって玄関から入ろうとしたら鍵しまってたから……」

 

「おい、いつの間にお前、覚妖怪と同じ能力を手に入れた?」

 

「朱ちゃんの考えていることなんてお見通しだよ!」

 

 

 あ、少し寒気が…… 

 

 

「ほう、この方がミナミツですか。そこにある人形にそっくりですね」

 

「え、なんで私の名前を……てそんなことより!」

 

 

 人形を見るや否や、目を輝かせて窓から入ってくるミナミツ。あちゃ~、見つかっちゃった……

 

 

「朱ちゃん!これを布団に持ってきてるってことは、つまりそういうことだよね!」

 

「そういうことってどういう事だよ!」

 

「勿論私の事を……むぐっ!?」

 

「これ以上言ったら駄目です。朱ちゃんに悪影響ですよ」

 

 

 そう言ってさとりはミナミツの口を塞ぐ。

 

 

「あ、そういえば、まだ貴方には名乗っていませんでしたね。私の名前は古明地さとり、地霊殿の主をしています。よろしくお願いしますね、ミナミツ」

 

「ん~、!むぅ~!ん!」

 

 

 さとり、口を塞いだままじゃ返事ができないよ……

 

 

「おっと、そうでした」

 

 

 そう言ってさとりは口を塞いでいた手を放す。

 なんでミナミツはさとりの手を退けなかったんだろう……

 

「……幼女の手が私の唇に……」 

 

 

 あかんやつや。ミナミツのやつ、おかしいモードにスイッチ入っちゃってる。

 

 

「そんなことより、朱ちゃん。貴方にピッタリな仕事について話したいので、明日私の家に来てください」

 

 

 さとりの家……って事はつまり地霊殿まで来いってこと?

 

 

「なんでいちいちお前の家に行かなきゃいけないんだ?ここで言えばいいだろ」

 

「それでもいいんですが……私の家の方が都合が良いんです」

 

 

 さとりが都合のいいと言うと、なにかをたくらんでそうで怖い。だってずっと無表情だし……

 

 

「それは朱ちゃんも一緒でしょ」

 

 

 うぐっ……確かに同じだけど……

 

 

「と言うことで私は帰ります。今日1日、頑張ってくださいね」

 

 

 そう言ってさとりは窓の外へと飛びだしていく。

 

 

「あ、ちょっ……」

 

 

 急に入ってきて、すぐ帰るって……さとりは一体なにしに来たんだろうか。

 

 

「幼女の手、私の唇……」

 

 

「……」ベシッ

 

「痛っ!?」

 

 

 いまだにミナミツが変なことを言っていたので、取り敢えず頭をぶっておく。

 

 さて、以前とは違って、地霊殿に行くことに対する躊躇いはだいぶ減った。

 さとりがどんな妖怪なのかわかったしね。

 ……一体、どんなことを話すのだろうか?仕事の事とか言ってたけど……紹介とかしてくれるのかなぁ。もしそれなら楽しい職場がいいな!

 

 

「ねぇねぇ、朱ちゃん。お腹空いたぁ」

 

「まさかミナミツ、そのためにうちに来たのか?」

 

「イエス!」

 

「今すぐ出ていってもらおうか。出口はあっちだ」

 

 

 はぁ、仕方無いなぁ。作ってあげようかな。そう思い、私は食料庫に向かう。

 ん~と、今ある食材は…………

 

 

「…………」

 

 

 中にはなにも、ない。

 

 

 空だって事、忘れてたぁぁぁぁ!!!?

 

 

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