Twitterで友人には様々なお呪いの言葉をいただきました。
正直ブラ鎮ネタ考えると、鬱展開がどうしても混じるため、悩んでいたんですがsirataki様の感想で「ホワイト鎮守府書いてもいいんだ」と気付かされて目から鱗が落ちましたwww
とある鎮守府の一室。
金剛型四姉妹と二航戦の二人が呼び出されていた。
目の前にはまさに巌と言うべき、険しい顔つきと逞しいを越えた逞しい男が執務机に座っていた。
「お前らには明日、演習へ回ってもらう。今回はウチが出向く番らしい。」
重厚感のある声が執務室に響けば、旗艦である霧島が書類を受け取る。
行先の鎮守府の一つに目を止めると霧島はピクッと目を少し見開く。
「…どうした?」
「……あの…ここの鎮守府を最後に回ってもいいでしょうか?」
霧島の反応を見たらしく、男はギロリと視線を向ける。
その眼光に誤魔化せないと悟ったのか、熟考の上で言葉を紡いだ。
「…ほぉ、新人の所か…。」
「ええ、新人故に所属艦娘への指導にも時間がかかるかもしれませんので。」
素知らぬ顔をして理由を話す霧島にフンと鼻で笑うと、机にあった葉巻をナイフで切って咥える。
そのまま少し考えれば、火をつけて煙を吐き出す。
「…ならば、資材を各500ずつ手配しろ。
そして、ワシも行く。いつかは顔を合わせねばならないとは思っていた。」
霧島はその言葉を聞いて大きく見開く。
明らかに顔にはしまったと書いてあり、他の五人から責めるような視線を向けられる。
さて、演習のシステムを説明すると基本的には大本営からの指示で様々な鎮守府からとの練習試合じみた演習を指示される。
しかし、これは双方の鎮守府の合意の上で行われる演習であり、必須ではないが熟練の艦娘との演習は大きな経験になるため各鎮守府は極力行うようにしている。
提督によっては演習による敗北の経歴を避けるために避ける者もいるが。
基本的に高練度を擁する鎮守府が低練度の鎮守府へ赴いて、演習を行う。
低練度の鎮守府は演習に一軍を連れて行った場合、鎮守府の守りが薄くなるため他所の鎮守府への演習出向は避けられるか、同レベルの近場の鎮守府への出向に留められる。
「し、しかし…提督が演習に同行するというのはあまりない話です。それに提督がいらっしゃらない場合、鎮守府の指揮系統が…。」
「この鎮守府まで攻め込まれるような大事はあるまい。それとも…ワシが知らんとでも思っておるのか?」
齢50を過ぎた男は鋭い視線で霧島を射抜けば、ゴクリと唾を飲み込む。
「何が目的かも確かめねばならん…それに一方的に貸し付けられるのも気に食わん。
見極めは必要だろう。」
男の静かな響く声に6人は黙って敬礼を返すしかできなかった。
翌日。
ルパン鎮守府に他の鎮守府からの演習出向のバスから遅れて一台のバスが入って来た。
鎮守府には違いがあるものの、他の鎮守府とは異なり、通常のマイクロバスを軍用とわかるように塗装しただけのものだった。
「ありゃ?龍田ちゃん、アレは?」
「少し遅いけど~…別の鎮守府を回って来られたんでしょうね~。」
ルパンの質問に龍田が首を傾げながらも答える。
そのまま出迎えようとバスの降り口に向かえば、一番に出てきたのは随分と厳めしい男だった。
「…へ?」
「貴様が、ルパン三世か。今回の出向に同行した、岩隈拓真だ。」
ギロリとルパンを睨みつけるように鋭い眼光で射抜き、のそりと降りてくる岩隈と名乗った男は日本人離れした体格を持っていた。
ルパンよりも高い身長に、倍はありそうな太い腕。
そして四角い顔には、左目の上に火傷の痕。
これでもかというほどに歴戦の戦士という風格を漂わせていた。
「は、へ?…確かに、ルパン三世だけっども…。」
「提督…岩隈提督は初期の大戦期よりの歴戦の提督よ~…元はヤ○ザだったらしいけど…日本刀や銛で深海棲艦も突き殺したっていう話も聞くわ~…。」
「いや、マジ?いくらなんでも…そりゃちょっと眉唾だろ?」
見目麗しい艦娘が降りてくるだろうと思っていたところに強面の、軍服を肩に引っ掛けた男が降りてくればルパンも戸惑いを隠せない。
そのまま隣の龍田が小さな声で岩隈の情報を提示する。
「真実だ。とはいえ、近海に出たイ級やホ級やチ級だがな。」
「いやいやいや、おかし……くないのか?」
岩隈の断言に慌ててツッコミを入れるものの、よく考えれば五右衛門がいるのでおかしくないのかと考え直し。
「…ウチにも、やりかねない人はいるわねぇ~…。」
「ならガタガタぬかすな。…大本営ってわけでもないから、ココでの服装は言わんが…敬礼の一つくらいしとけ。縦社会なんだからよ。」
龍田もルパンの言葉から五右衛門が思いついたらしく、そのままうーんと唸っていると岩隈の言葉に慌てて二人で敬礼する。
言われて初めて岩隈の軍服についた階級章に気が付いたのである。
「よし。…大本営は資材はそちら持ち、と言ってたがな。
若造に奢られるほど落ちぶれてもいねぇ…各資材500ずつ持ってきた。
あとこれを相応額のテメェの所の軍票に交換してもらおうか。」
敬礼に頷けば、顎で後ろから降りてくる霧島に指示するとバスの奥から資材を下ろさせ。
そのまま懐から数万円ほどの入った封筒をルパンに渡しながら、喧嘩を売っているともつかない口調で言い放つ。
「い、いや…そりゃありがたいんだけっども…その辺りは日本円で買えるだろうし、軍に手配させた方が安いんだが…。」
ルパンはシンジケートのトップであったことはあっても、縦社会の中に組み込まれたことはない。
また、岩隈のような威厳・威圧感を伴う人間と『対立』したことはあっても、縦社会の中で『対処』したことは少なく、気圧されるままに引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
「んなこたぁわかってんだよ…ウチの艦娘に買わせるんだ。どんなモンかも見なきゃいけねぇしな。」
全く擦り寄る気配も見せずに言い放つとルパンに封筒を押し付ける。
厚みで大体の金額が予測できたのか、少し困った顔をしつつもそれをそのまま龍田に渡す。
「悪ィけど、龍田ちゃん頼むわ。差額発生したら困るから、帳簿に上手くつけといてくれ。
じゃ、その岩隈少将。執務室の方へ…。」
「それは最後で頼む。ウチの連中の動きなども確認せにゃならんしな…そこの椅子で構わん。」
ルパンがどうしたもんかと思いながらも、来賓として招こうとすればきっぱりと断ると艦娘達用のテントの方へ先に行き、自分の配下の金剛型達と一つの長机へと向かう。
その自由奔放とも言える様子にルパンは頬を引きつらせるのであった。
「ほぉ、しっかりと鳳翔たちに調味料も提供しているようだな。使い慣れている味だ。」
「いや、わざわざケチる意味もないだろ…どうせなら美味いモン食いたいし、食ってもらった方がいいだろ。」
岩隈は長机に移動すると、ルパン鎮守府の振舞いの鍋を全員分準備させてそれを岩隈を含む7人で淡々と食べていた。
艦娘達はまともな食事に慣れているのか、ほんの少し顔を綻ばせる程度で静かに食事を済ませた。
そのまま腹ごなしに、といった様子でルパン鎮守府との演習へと向かったのだった。
ルパンも岩隈を放置するわけにもいかず、同じ長机で早い昼食なのか、今日の鍋のポトフを食べた。
「…このポトフのソーセージ、自家製か?」
「やってみたい、ってこの前言ってたし、そうみたいだ…燻製かもな。」
慣れない敬語を使って話していると、岩隈が最低限でいいと言い放ったので普段の調子でルパンも喋っている。
演習の場所である海上が見える波止場に、テントからパイプ椅子とポトフを持って移動していた。
「……そうか……お前は、艦娘をどう思っている。」
体格に似合う健啖家ぶりで岩隈は何杯目かわからないポトフを食い終えると海を見ながらルパンに問いかけた。
「そりゃま。ちょーっち特殊な力は持ってるけど、可愛い子ちゃんだと思って…ますがね。」
ふと普段の調子で喋りかけるが、さすがに階級が大幅に違うため、言葉を修正する。
それを聞くと、少しだけ岩隈は唇の端を歪めた。
「フン、なら自分のモノにしてしまったらどうだ。
こちらは上官だし、基本的には逆らえん。
聞いた話には脅して何人も情婦にしている者もいるらしいしな。」
「ハッ、そういうのは、そういうのが好きなヤツがやればいいかと。
俺ァ粋な関係で愛し合いたいんで。」
岩隈の言葉に眉をしかめるが、上官の岩隈の勧めである以上は一方的に切るのもマズいし、あくまで『聞いた話』である以上は何も判断できない。
そう判断したルパンは趣味じゃないと切り捨てた。
「そうか、ならそうすればいい。」
「ええ、そうしますよっと。」
そうとだけ会話をすれば、ルパンもポトフを食いきってしまうとともに、スープも飲み干す。
すると、海上に6人ずつの影が浮かんだ。
「……ワシはな、さっきも言ったが世間の鼻つまみ者だった。
田舎町を仕切る程度の小さな組だったがな、まぁそれなりに悪さもしたが、あくどい真似はしやしなかった。」
演習の最後の詰めなのか、それぞれが近づいて何かを話しているのを見つめながら話し出した。
「まぁワシが鼻つまみ者なのはしょうがねぇ。
ガキの時分に、親に逆らって社会に逆らって暴れ回ったからな。
深海棲艦が現れてからワシの事を一部のバカどもが英雄だ何だとか言いやがるが、ワシは守りたい街を守るためにどうすりゃいいのかと思って漁船借りて突っ込んだだけだ。
そんな剣術なんかやっちゃいねぇからな、組の武器ありったけ持って、撃って、
「…やれただけスゲェんじゃねぇの?」
岩隈とルパンはちらりとも視線を交わさずに海を見据える。
最後の話が終わったらしく、それぞれの艦隊が決まった距離を取り始めていた。
「逃げるっていう選択肢が思いつかなかっただけだ。
女房はワシの事を『バックギアのブッ壊れた暴走車』って言うしな。」
「まぁそんだけの事やりゃ言われるかもな。」
フッフッフと軽く鼻で笑いながら言った岩隈の妻の評価に苦笑する。
ルパンはポケットから携帯灰皿と煙草を取り出して火をつける。
そのまま横の岩隈に腕を伸ばして、煙草の箱を差し出す。
「すまんな。…だがな、アイツらは何をした?
ワシが英雄だって言われて、アイツらはバケモノって言われるのは…どうもな。」
一本ルパンからもらった煙草に火をつけた岩隈がパイプ椅子に身体を預けるとギシリときしむ音がする。
それに意識すら向けずに角刈りの頭をボリボリと掻いて、煙を吐き出す。
「アンタ……スゲェな。」
「凄くねぇよ。この顔の傷も間一髪で避けた砲撃が掠めた痕だ。
チ級の砲撃で、だぜ?あんなの受け止めきれるか。
ル級すら沈める艦娘に比べりゃ、ままごとにもならん。」
ルパンの呟きに苦笑して、肩を竦める岩隈。
その視線の先にはそれぞれの艦娘が縦横無尽とまではいかないものの、巧みな機動を見せていた。
「いや、劣ってるって認めれるだけスゲェさ。
周りは英雄だ何だってチヤホヤしてくるのに、そう言えるヤツぁそうそういねぇよ。」
「よせよせ。煽てられても現実が見えてりゃ、逆に冷めるわ。
実際、ワシは鍛えたが常人の域を出ねぇ…ただ崖に向かって思いっきり一歩踏み出した。
そして、ワシが振った賽が、たまたまいい目が出ただけだ。」
ルパンの素直な賛辞に岩隈はハッと鼻で笑って自嘲気味に笑う。
「…ピンゾロ、くらいかな。」
「チンチロだってんなら…もう一個か二個賽を増やさなきゃいけねぇな。
生き残った人数を考えりゃ、な。」
あくまでも大したことはないと言い張る岩隈に静かにルパンが煙草の煙を冬の空気に吐き出しながら言う。
そして、岩隈が煙草を半分ほど吸ってからルパンの携帯灰皿に揉み消す。
「だがな、ワシは学もなけりゃ、自分でどうこうする力もなかった。
だから、周りの人間の評価をどうにもできなかった。
若ェ頃はそんな人間じゃねぇとも言ったが…逆に現実を見せたら暴走するバカばっかりでな。
…いっつもしかめっ面して、黙って踏ん反り返る。
そうしときゃ、自分の見たいモノしか見たがらねぇバカどもは勝手に納得してくれるんだ。」
「…なるほど、ね。アンタが踏ん反り返って黙ってりゃ、『英雄様』がいるから俺たちゃ大丈夫って思ってくれるってか?」
ルパンの言葉に頷けば、そういうことだな、と小さく言う。
ルパンがちらりと横目で見れば、そこには少し疲れた老人の顔があった。
「正直、ワシも艦娘との接し方の正解なんかわかんねぇ。
ただ、人並に扱いはしたつもりだがな…オメェんとこの艦娘はパッと見ただけでもわかるほどいい顔してやがる。
なら、オメェんとこと同じ扱いしてやりゃ…ちったぁ、報いれるのかね、と思ってな。」
「それで俺の鎮守府に来た、ってわけか。」
「それだけじゃねぇ。…オメェ、ドルーネ、って知ってるか?」
深い溜息とともに岩隈が告げた言葉にどこかしんみりとした響きにルパンは不器用な男の嘆きを聞いた。
しかし、ルパンの問いかけに小さく首を横に振ると、岩隈が初めてルパンに向き合った。
「…ドルーネ、爺さんの事かい?EUの暗黒街のボスと呼ばれた男。」
「……そうかい。やっぱり、本物のルパン三世だったか。」
ルパンの回答を聞いて、静かに岩隈が頷く。
その顔はどこか安らいだものだった。
「…ワシのな、爺さんが昔一山当てようってんで、モロッコに行ったらしいんだ。
そこでイゴ族とゲルト族の戦争に参加したらしいんだ。」
「…なるほどね。そこでドルーネ爺さんと知り合ったのか。」
モロッコでは昔、ゲルト族という民族とかつてのイギリス占領政策に手を貸したイゴ族という民族の間で戦争が起きた。
その中でドルーネという男はゲルト族の独立に手を貸して、イギリスの力を借りたイゴ族と戦ったという過去があった。
「戦いも終わりを迎えかけ、敗北が間近となったときにな…ドルーネという方が脱出に力を貸してくれたそうだ。
そして、その後も気にかけてくれて多大な恩を受けたらしい。」
「ドルーネ爺さんは厳しいには厳しいが、身内にはしっかりした人間だったからな…。」
ルパンも駆け出しのころにもう老境に差し掛かっていたドルーネとの縁があった。
それなりに前の話だが、もう引退してベッドで寝たきりになっていたドルーネに呼ばれ、心残りを託されるほどには。
先日の事を思い出して、すっとルパンは目を細める。
「また、ベイビーって、呼ばれてぇなぁ。」
「深海棲艦が現れてしばらく経った頃、お前がEUで姿を消したってドルーネさんから連絡があってな。
…もし、日本で現れたら、出来る限りで構わないから気にかけてやってくれ、とさ。」
「……へっ、爺さんにゃ、かなわねぇな…。」
ルパンはしみじみとし、俯いて頭を掻く。
「とはいえ、ワシがお前に何かしてやれるかはわからんが…。」
「おいおい、勘弁してくれよ。俺もいい歳してんだ、ケツ拭いてもらわなきゃいけねぇガキじゃねぇんだからよ。」
ルパンの方から顔をそらして、海にまた視線をやって苦笑しながら言う。
ルパンもそれなりの歳であり、甘える気もないため合わせて海を見る。
二人の視線の先には、案の定、ルパン鎮守府の負けであったが以前のように全員轟沈判定というわけではなく、中破程度に収めていたりもしている。
一方で、岩隈鎮守府の方も二人だが中破まで追い込まれている。
「…いい鍛え方をしている。戦い、というものがわかっているな。」
「俺にゃ、頼りになる相棒たちがいてね。」
これまでの演習の動きを見ていたのか静かに岩隈が言うと、パイプ椅子を持って立ち上がる。
岩隈に従ってルパンは歩く。
「…お前の鎮守府は強くなる。士気の高い連中と低い連中じゃ成長速度も上限も変わる。」
「死なない程度でいいさ。」
「それが一番だ。死んだら何もできない。」
男二人でしみじみと話しながらテントへと戻っていった。
「…確かに相手の動きも悪くはなかった。しかし、それを叩きのめすのがお前たちのやるべきことだ。
各自、反省点を話し合って対策書を本日帰投後に提出すること。」
「「「「「「ハッ!!了解しました!」」」」」」
岩隈が立ち上がって自分の鎮守府の六人を見据えると、端的に指摘し。
特に激昂することもなく、ただ淡々と、しかし威厳を持って命じる。
それに六人は、怒ることも恐縮することなく真っすぐ受け止めて敬礼で返した。
「岩隈少将さんよ、コレがウチの軍票のルパン札。
アッチの中の酒保にあるものは買えるし…言えば在庫から出すんで、それなりの数で渡せるぜ。」
先ほど龍田に手配させていたルパン札を入れた封筒をルパンが岩隈に渡す。
中身を出して、少し興味深そうに見た後にまた封筒に戻すと、岩隈はそのまま霧島に渡す。
「…これは……小遣いのようなものだ。いつもの間宮のアイスなどばかりでは飽きるだろう。
ここの鎮守府の酒保で買えるだけ買ってもいいが、他の連中への分も忘れるな。
特に金剛、紅茶ばかりを買い込むんじゃないぞ。」
言いにくそうに迷った挙句に岩隈が言うと、六人が目を輝かせて。
しかし、念のためと金剛に釘を刺す。
「Oh!!Shittttt!!!」
「Shitじゃねぇ、誰に言ってんだ、コラ。」
金剛はそれを企んでいたのか岩隈の釘刺しに頭を抱える。
しかし、金剛の悪態を聞き逃さなかった岩隈がその大きな手で金剛の顔面を鷲掴みにして宙に吊るす。
俗にいうブレーンクロー(アイアンクロー)であった。
「NO!!NO!!提督ぅーっ!!頭蓋骨が立てちゃいけない音してるネー!!!」
「ルパン、酒保を確認してそのままウチの鎮守府に持ち込めるかを確かめたい。
ワシも行っていいな?」
金剛が吊るされながら叫ぶが、いつもの事なのか他に五人はただ合掌するばかりである。
流石にルパンも引きつった笑みを浮かべるが、触れないことにした。
「…おう。導入したくなったら帰りでいいから声かけてくれよ。
ウチのノウハウってわけじゃないが、大本営に通した許可とかやり方の資料まとめとくからよ。」
「…ワシの名前が必要な時は、力が必要な時は呼びな。『出来る限り』の事はしてやろう。」
そうとだけ言って、岩隈は酒保の方へと歩いていくのだった。
金剛を吊るしたまま。
「そういうことなんで、龍田ちゃん、今後の事も含めて酒保関連の資料まとめてくんない?
ほら、テンプレート作っとけばまた似た事があったらそれ渡すだけで済むしさぁ。」
そして、ルパンは執務室に戻って龍田に泣きつくのであった。
龍田は少しジト目になりながらもふと思案顔になると、中空を眺めながら唇に指を当てた。
「…私、鳳翔さんの所で晩御飯食べたいなぁ~。」
「OK!二人分ちゃ~んと予約しとくから!」
龍田の呟きに勿論とばかりに何度も頷いてルパンは承諾する。
二人分、と聞いて周囲は声を潜めつつも色めき立ち、龍田は目を見開く。
「へ?二人?」
「一人でディナーってのも味気ないじゃない?」
まさかのルパンからの申し出に信じられないとばかりに普段より大きく見開いた目でルパンを見つめれば、次第に顔が紅潮していく。
逆にルパンは二人で行って当然だろうとばかりに言い返せば、龍田の頭の艤装が普段より上下に揺れつつ回転が速くなる。
「まっ、まあ?そこまで気を使ってくれるなら、仕方ないわね~!」
龍田の声が普段よりも上擦り、表情をこらえようとしているのか頬がピクピクしていた。
それを見て、ルパンはうんうんと満足そうに頷いて自分の席に座る。
「じゃ、そういうことでお願いね~。」
その場にいた執務室詰めの艦娘はチラチラと目配せをしあっては頷く。
ルパンは上機嫌のまま、電話を手に取った。
「あ、もしもし鳳翔ちゃん?お店の方にいてくれてよかったわ~!
あのさ、今晩二人分のディナーセットを予約したいんだけどっもさ。
うん、請求は俺宛でいいんだけど。…じゃ、頼んだよ、龍田ちゃんと天龍ちゃんの二人分。」
そして、バキリッと何かが折れる音とともに執務室の空気が凍った。
言い訳をしておくならば、ルパンから女性に何かを捧げる、というのがデフォルトになりすぎていた。
特に頼みごとの交換条件となれば、相手に何かしてあげたり、プレゼントをするのが当たり前になっていた。
一言でいうなら、不二子が悪い。
そして、静かに龍田は折れたペンを机に置くとともにカップを持って立ち上がった。
ルパンはそれに気付かずに、他の仕事の資料を取り出していた。
そのまま静かにルパンの斜め後ろに立つと、静かな微笑みを浮かべたままルパンのYシャツの襟首を引いた。
「え?」
シャツが引かれるのに気が付いてルパンが顔を上げる前に。
龍田が湯気の出る、カップの中身をルパンのシャツの中にブチ撒ける方が早かった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~!!!!」
「死にたいバカはどこかしら~♪」
ルパン鎮守府は今日も平和です。(一部を除く
というわけで厳しいけど、一応ホワイト鎮守府な岩隈鎮守府のお話でした。
ちなみに途中で出てきた『ドルーネ』&『モロッコ』関連の話は、『トワイライトジェミニ』をご覧になってください。
一応言っておきますが、イゴ族・ゲルト族に関してはフィクションですので信じないように。
(ルパン史上ではあったことですが。)
以前から赤面龍田ちゃんの要望が大きかったので、入れてみました。
あと、メロ○ブックスで頼んでいた冬コミの新譜届きました。
耳が幸せです。