大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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先日のイタリア編のSPがこちらでは放送してなくて、チクショウ!!と思ったら、今晩(11日夜9:00)から放送と番組表にあって、ヤッター!と思ったら…。

実写版でした、ファッ○ンッ!!!!

あっち見るくらいならまだ田○邦衛や伊○四朗が出た念力珍○戦の方がまだマシだ。
どっちも見たくないですが。(ぉ

テレビを付ける直前までの俺のトキメキを返してほしい。
(結局イタリア編のSPは見れず。DVDで見ます。)


-追記-

この話の裏話をちょっと活動報告に書きましたので、もしよろしければ見ていただければ幸いです。


11.長門さんは困惑するようです

とある鎮守府に朝がやってくる。

 

この鎮守府では全員個室にはなっているが、オートロックシステムで時間になれば勝手に施錠され、朝の決まった時間になると解錠される。

全て、提督の指示通りに動くためらしいが。

 

解錠した時間には起きて、身支度を整えねば食事やそれ以降の仕事の時間に間に合わない。

長門はいつも通り身支度を整えた状態で部屋を出る。

 

「点呼を始める。各班長、報告へ。」

 

長門が廊下の先頭に立つと、十人単位の班の班長が長門の下へ報告に来る。

 

これは以前、この鎮守府のやり方に反発し、抵抗したものの認められず、ならば死をと解体を望んだがその戦力故にそれも認められなかった艦娘が朝、自決していたからだった。

艦娘同士の交流や私語も大っぴらにできないこの鎮守府では、その艦娘が自決したのに気づくまで時間がかかった。

 

その後の処理は非常に大変だった。

クーラーもない部屋での真夏の暑い最中であり、数日ではすまない時間も経っていた。

 

それだけでなく、その事にきわめて激昂して喚き散らす提督の対処にも頭を悩まされた。

 

 

極端な事例だったが、以後「各自班を作って見張る」という名目で鎮守府内での絆を作らせたのだった。

 

 

この日も普段通り、全員の点呼が終わった後、食堂へ行く。

その間にも私語は一切ない。

 

見つかったら鉄拳制裁を受けかねないからだ。

 

食堂で調理に当たるのは間宮・伊良湖ではない。

提督の子飼いの軍人たちである。

 

当然、調理師免許の類など持ってはいない。

彼らの仕事は、賞味期限ギリギリのレーションの袋を艦娘達に渡すことだからだ。

 

(あの鎮守府で食べた鍋は…温かったな、いろんな意味で。)

 

長門は冷えたレーションの封を開けて、粗末な金属製の食器の音をカチャカチャと鳴らしながら食事を終える。

この鎮守府で唯一憩いを取れるのはこの食堂だった。

 

食事の時間の後、出撃などの時間までは一応自由だし、レーションは冷えていても一応給湯器があるので温かいお茶などを飲めるのはここだけだからだ。

とはいえ、大っぴらに話などをすれば提督の子飼い達に密告、もしくは制裁を受けるので声を潜めて、だが。

 

 

しかし、この日は違った。

 

全員が食事を取り終えた頃を見計らったのか、今まで一度も来たことのなかった提督がやってきたのだった。

その体つきは軍人とは思えないほど腹が出た、のっそりとしたものだった。

 

「…長門、陸奥、赤城、加賀、那智、妙高。起立。」

 

「「「「「「ハッ!」」」」」」

 

どこか疲れたような、虚ろにもとれる表情をした提督を見て、訝し気に思うが、高練度の6人を呼んだことからきっと特別な任務でも押し付けられたのかと思った。

しかし、信じられない命令が提督から出た。

 

「この食堂にいる、艦娘以外の軍人を捕らえろ。手荒にして構わん。」

 

「…ッ!?了解した。」

 

一番早かったのは、那智だった。

答えるや否や、机を踏み台にして飛べば混乱している一番近い軍人を蹴り飛ばす。

そのまま着地とともに他の軍人を力任せに殴り飛ばす。

 

艦娘は艤装でも相応の質量はある。

それを装備したまま不安定な海上を走らねば、艦娘はやっていけない。

 

その力は軍人の技量をしても覆せない、圧倒的な差だった。

もっともこの鎮守府にいる軍人は全員提督の子飼いであり、まともに訓練などしていないのも知ってはいたが。

 

その那智に続いて、立ち上がっていた残りの五人は容赦なく殴りつけた。

手を挙げて降参した者もいたようだが、理不尽な暴力や嫌がらせを長く受けていた長門たちにはそのような者は見えなかった。

 

 

「提督ッ!何をッ、血迷ったのですか!」

 

艦娘達に殴られ、呻く、床に縛られて転がった軍人の一人が提督を見上げて必死に言う。

それを提督は一瞥だけすると、まだ状況が掴めず困惑する艦娘達を見渡して、太った身体を少し震わせると静かに言う。

 

「…私は、もう疲れたのだ。

深海棲艦に怯えるのも、お前たちに怯えるのも。

そして、あくせく小銭を貯めて、昇進争いをするのも。」

 

静かな口調で淡々と提督は語る。

 

「だから、私は全ての罪を告白し、罪を償う。

蓄えた資材は全て大本営へ納め、諸君等にはこれまでのお詫びを込めて希望する者には解体を。

または希望する鎮守府への異動、もしくは第一線から退くことも希望が通るように出来る限り計らおう。」

 

「そっ、そんなっ!!今更一人善人ぶろうなどっ」

 

「やかましいわ!!善人であるわけがないだろう。

故に全ての罪をこの身で償う、と言っておる。」

 

提督の告白にざわざわと食堂がざわめくとともに、子飼いの軍人たちが顔を蒼白にしてわめく。

しかし、それを一喝して静まらせたのも提督だった。

 

「各艦娘は六人で組を作り、それぞれ軍人たちを逃さず、捕まえろ。

そして、これから来る大本営からの憲兵などに引き渡すように。

これは諸君等への最後の命令だ、今更私に従うのは嫌かもしれないが…頼む。」

 

そう静かに言って、全艦娘達に頭を下げたのだった。

 

「「「「「「「了解ッ!!」」」」」」」

 

色々思うところはあったのだろうが、絶好の復讐のチャンスということもあり、全員が立ち上がれば各班長を中心にして軍人の確保へと走り出した。

 

「長門、大淀、お前たちは残れ。」

 

騒がしく動き出した中で提督は頭を上げると、長門と大淀を残す。

そのまま大淀に何かの連絡先の書かれた紙を渡す。

 

「大淀、これは憲兵組織の一人の連絡先だ。

この経緯を告げて、私が自首したい旨などを伝えてほしい。

勿論、これまでに行った罪も全て告げて構わない。」

 

「よ…よろしいのですか?」

 

「これが贖罪なのだ…。」

 

提督は、しんみりとその脂肪のついた老けた顔を俯かせて言う。

こんな弱った顔は大淀も長門も見たことはなかった。

 

「…正直、提督の下についたことは私にとって最大の不幸でしたし、これまでの数々を隠してあげる気にはなれません。

しかし……この御英断のみ、評価させていただきます。」

 

大淀は戸惑いながらも複雑な表情とともに紙を受け取り、最後に敬礼をした後に通信室へと向かって歩き出した。

 

提督と二人で残された長門は何も言えなかった。

 

 

長門は初期の頃に無茶な資材の投入で建造された。

そして、幾多の海域や大規模作戦に投入されて目の前の男に栄冠をもたらした。

 

しかし、甘やかな時間など一切なかったし、目の前のようなくたびれ果てた様子など見たことはなかった。

 

「長門よ…。」

 

「ハッ!」

 

長い習性で、呼びかけに直立して敬礼で答える。

 

「私は、執務室で全てをまとめ、身を律して待っておく。

以後の、この鎮守府の艦娘たちを頼む…伝手がなければ浦賀大佐を頼れ。

艦娘擁護派の筆頭の一人だ。」

 

「……わかった。」

 

静かに肥満の身体を揺らしながら廊下へ行く提督の背中を長門は敬礼で見送った。

 

 

 

 

 

「憲兵特別捜査本部所属、元ICPO特別捜査官、銭形幸一特別大尉だ。」

 

大淀があの後、大本営の指定された連絡先に連絡を取ったところ、目の前の男が出た。

そして事情を話すと一時間もせずに、憲兵部隊を連れて目の前のトレンチコートの男がやってきたのだった。

 

「ム?ワシの格好は気にせんでくれ、元は刑事なのでな。」

 

身分証明の手帳を見せながら苦笑して玄関先で言う。

それに長門と大淀の二人で頷く。

 

「今朝、提督が先ほど報告した通りの事を申しまして…。

私の方でもここに所属していた軍人の全員が、何らかの形で汚職に関与していた証拠も見つけました。」

 

「ウム、話が早い。ならば、その提督は?」

 

「執務室で憲兵隊を待つ、と言っていた。

念のため我々艦娘で逃亡兵が出ないように見張っていたので、逃げてはいないはずだ。」

 

三人で話せば、銭形はその返答に頷く。

すると銭形は振り返り、整列していた憲兵隊に指示を出す。

 

「既に汚職兵たちは拘束済みだそうだ。

万が一にも逃げられぬよう、全員拘束を確かめた後に護送車に押し込めろ!」

 

「「「「「「了解であります!」」」」」」

 

憲兵隊には元警視庁関係者が多い。

特に銭形と長い付き合いの機動隊員もそれなりにいた。

 

その憲兵隊たちは指示通り、提督子飼いの兵隊たちを護送車に押し込める。

艦娘達の演習出向用の護送車紛いのバスにまで押し込められたのは皮肉ではあったが。

 

 

「フム…急に心変わり、をな。」

 

「正直、私たちには何があったのかわかりません。

もっとも…まともな会話などありませんでしたので、前々からの行動なのか、それすらも判断できませんが。」

 

艦娘達は鎮守府の周りを警備し、残りは汚職兵達を押し込めた食堂を見張っているため鎮守府は静まり返っている。

その廊下を三人の足音だけが響く。

大淀の声にはには嫌悪の色が濃かった。

 

「しかし、それも今日までだ。

浦賀大佐にも悪いようにはせんようにワシからも言っておこう。

まともな鎮守府もいくつか心当たりがある。」

 

「…すまないな。」

 

歩きながら静かに頷けば、執務室のドアを開ける。

 

「ンーーーーッ!!!んんんぅぅーーーっ!!!」

 

執務室の真ん中には、ブリーフ一枚で縛られて唸る提督だけが転がっていた。

それに三人はギョッとするものの、銭形は一瞬だけ止まるが、そのまま執務机へと向かう。

 

「…フン、なるほどな。」

 

銭形の手には大判の封筒に入った何枚もの資料をめくった後に、大淀に渡す。

 

「…これは…。」

 

「汚職の証拠、揉み消してきたいくつもの悪事の証拠だな。」

 

その言葉を聞いたのか、縛られた提督は首を激しく横に振る。

しかし、誰もその猿ぐつわや縛るロープを解放しようとはしない。

 

「ま、コレが自分でやったのかどうかはわからんが…いずれにせよ証拠はココにある。

そして、正式文書による辞表も、自白書もある。

もうどうにもならん…神妙にしろ。」

 

それぞれの封筒を手に銭形は提督を見下ろしながら宣告すると、ガックリと下着一枚の提督は脱力したのだった。

 

 

 

 

 

その頃。

 

鎮守府から少し離れた場所で提督が歩いていた。

すると後ろから一台のフィアットが走り寄って、クラクションを鳴らす。

 

「いよぉ、ルパン。用事は済んだのかよ?」

 

「ま、ちょいと小遣い稼ぎをな。」

 

提督がフィアットの運転席から声をかけた次元にニィと笑うと助手席に乗り込む。

そして、軍服のボタンを外してシャツの中を少しいじるとプシュウゥゥッという音とともにだらしなく出た腹が引っ込む。

 

「ま、こんなチンケな盗みは趣味じゃねぇけどな。」

 

「小銭だけじゃなくて、ソイツの輝かしい未来も盗んだ、ってことでいいんじゃねぇの?」

 

体格が中年太りを超えた肥満から一気に痩身へと変化していく。

それに伴って顔の皮がダブついていくと、邪魔になったのか顔のマスクを一気に剥がす。

 

「そういうことにしとくかね?…で、お前は何しに行ってたの?」

 

「あん?…後ろ見りゃわかるだろうが。酒や掃除用品の買い出しだよ。」

 

ルパンが既にブカブカになった軍服を脱ぎ捨てながら振り返れば、大型量販店の袋に詰まった雑貨などが後部座席に詰まっていた。

 

「取り寄せじゃ時間かかるからってな。外出のついでに頼まれたんだよ。」

 

「…なるほどね。ま、軍を挟んだ購入じゃあまり贅沢品や民間の質のいいのは手に入れにくいからな。」

 

そのままルパンは煙草を懐から出すと次元にも一本咥えさせて、お互いの煙草に火をつける。

車はゆっくりと道路を走っていた。

 

「あとよ、化粧品の買い出しだよ。」

 

「ブッ!?…次元が、化粧品ッ!?」

 

苦々しげに、吐き出すように次元がいった言葉にルパンは思いっきり噴き出す。

運転しながら次元がルパンをジロリと睨む。

 

「しょうがねぇだろ、生まれて何歳か知らねぇが年頃って言やぁ年頃なんだからよ。

化粧の一つや二つしたくもなるんじゃねぇのか?」

 

「クックック…ぁーなるほどね。そりゃ、しょうがねぇや。」

 

ルパンが普段のジャケット姿になって、煙草の煙を窓の隙間から吐き出しながら言う。

想像してしまったのか、笑いながら。

それを横目で次元が睨みながら釘を刺す。

 

「言っとくがな、もう化粧品の買出しに行かねぇからな。

あんな恥はまっぴらごめんだ。

これからはお前が行くか、鎮守府でも仕入れれるように手配するんだな。」

 

「あいよ、俺もそんなことのために鎮守府開けるのはカンベンだしな。

ま、臨時収入もあったことだし、パーッとやっちゃおうぜ。」

 

次元の言葉にまだ笑いながらも頷けば、懐から数十枚の通帳を取り出してニヤリと笑う。

 

「んじゃ、買い出しだな。今日は…すき焼きなんてどうだ?」

 

「いいねぇ。問屋街の方にでも行くとするか…大量に買うならそっちの方がいいだろ。」

 

「よっしゃ、次元ちゃん、出発しんこ~!!」

 

 

 

その晩、ルパン鎮守府の食堂は全員すき焼きになった。

ルパンが何故か数十キロもの高級牛肉をタダで艦娘に振る舞ったのだった。

 

その全員の心境を現したのはとある艦娘だった。

 

「メシウマ!!!!!……って、出番これだけ?」

 

これだけでした。

 

 

 

 

ともあれこうして一つの鎮守府が滅んだ。

 

しかし、あるはずの汚職兵達の隠し財産は全て消え去り、摘発されたのは明らかに違法な薬物など。

そして、鎮守府に保管されていた資材は全て大本営に接収されたのだった。

 

その結果を見て、浦賀は苦笑し、銭形は渋い顔をするに留めておいた。

勿論、銭形からルパンへ電話があったものの、知らぬ存ぜぬで通しておいたが。

 

そしてすき焼きで全員が腹を満たす中で、各艦娘が自費で酒を酒保から買ってくれば宴会状態になった。

勿論、艦娘によっては飲まない者もいたため、全員が全員酒を飲んだわけではなかったが。

龍田を始め、執務室詰めが多い艦娘や、隼鷹などから肉の礼とばかりに飲まされたルパンはフラフラしながら自室へと帰っていた。

 

「ぁ~…ちぃと、飲み過ぎたかなぁ…。」

 

顔を真っ赤にしてルパンが揺れながら暗い廊下を歩けば、ひんやりとした空気がルパンの身体を震わせる。

すると、目の前にある艦娘が立っていた。

 

「…今日は、ありがとうございました。」

 

「んん?おう、ちょーっと気が向いただけだから気にすんなって。」

 

深々と廊下で頭を下げられると手をヒラヒラと横に振って、そのまま前を通り抜ける。

ふと、気になったのか数歩歩いてからルパンが振り返って呼びかける。

 

「…っと、まだ肉残ってたみたいだから、食いたいな…ら…?」

 

振り返っても、そこには薄暗い廊下があるだけだった。

周囲を見渡しても誰もいないし、ただ廊下しかない。

 

「………。」

 

そして、誰だったのか、と思っても思い出せない。

そこまで酔っぱらっているのか、それとも。

 

 

ルパンはふっと薄く笑って、自室へと戻るのだった。




というわけでブラック鎮守府解体話でした。

漣はなぁ、出したいんだけど、ルパンと噛みあうかがwww


先日のイタリア編13話はよかったですね。
漫画版で似た話がありましたが、こっちの方がとっつぁんの心情などが描かれていて、凄く好きです。

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