そして更新が遅くなって誠に申し訳ございませんでした。
とある昼下がり。
「おとーさんたち、間宮さんからの差し入れなのです!」
「お茶の支度は任せなさい!」
外の寒波に負けないようにと暖房の効いた執務室へ鼻の頭を赤くした暁と電を先頭に第六駆逐隊の4人が入ってくる。
電を筆頭として、多くの駆逐艦たちがルパンたちを父親と呼ぶようになった。
発端は木曾である。
何気なくあの後に食堂で、木曾に「ルパンの親父」と呼ばれてしまった。
それが広まった結果である。
四人が入った給湯室からはレンジの音と、湯を沸かす音が微かに聞こえると全員に小皿と湯のみが配られる。
「へー、酒饅頭か…あちちち!軽く焼いてもイケるんだよなぁ。」
「うむ、仄かな優しい味わいでござるな…。」
差し入れされたのは次元の言う通り、酒饅頭だった。
大まかに言えば、酒饅頭とは皮になる小麦粉に
今では様々な饅頭が広まったが、実は日本最古の饅頭であったりする。
それを次元が二つに割れば、ほんのり焦げ目のついた皮が割れて漉し餡からほのかに甘い小豆の湯気が立つ。
次元は手で割り、五右衛門は黒文字と呼ばれる木を切って作った楊枝で小さく切ってから口に運ぶ。
どちらがいいのかは人それぞれであるが、間宮の珠玉の一品に二人とも満足そうに頷いていた。
「ほんと、渋めのお茶とよく合うねぇ…。」
「そうね!アイスも悪くないけど、こんな上品な甘さがレディには相応しいわ!」
ルパンがのんびりとした口調で言うと、来客用の向かい合うソファー陣取った暁が満足そうに言う。
同じソファーにいる4人は細かな違いはあれども、似通った笑顔で甘味を楽しんでいた。
しかし、ルパンの顔つきはあまり浮かないものだった。
「しっかし…金がねぇなぁ。」
ルパンの悩みはこの一言だった。
気持ち程度だが、ルパンの肩が落ちている。
これは十分予見された未来ではあった。
そのため、ルパンは多めの運営費を大本営から獲得していたし、龍田も自発的な趣味という形で海産物の加工業を立ち上げた。
しかし、はっきり言えばルパン鎮守府の収入は今のところこの二つのみなのである。
それに対して支出は多い。
酒保の商品に通常必要な運営費。
そして、艦載機の改造にまつわる資材や機材、消耗品の費用。
特に艦載機関係が大きかった。
基本的にルパン仕様へと変更のために使用されるエンジンなどの製造はルパンが独自に設計したオーダーメイドになる。
これが、すべての鎮守府に適用できるのならば特許を取って大本営に売りつければいいものの、適用できない特殊装備であるために大本営から予算が降りることなどあり得ない。
そのため、他の鎮守府同様の『提督の独自の裁量による鎮守府運営費からの支出』で賄うしかない。
鎮守府運営は各提督により独自の裁量権を与えられている。
提督は一応海軍に所属はしているものの、出自はそれぞれ異なる。
一時期の人類側の劣勢だった時期には各鎮守府に国防を一任するしかなかった。
その結果、抑えつけ過ぎて反発されることを恐れた大本営、というよりも政府は裁量権を委ねる事にしたのだった。
その反動で現在のブラック鎮守府や汚職提督が生まれた、とも言えるのだが。
ルパンとしてはこの自由度はありがたいのでとやかくは言うつもりはないが。
ともあれ、ルパン鎮守府は金欠状態なのであった。
「う~ん…資材の売却ルート、早く何とかしなきゃいけないわね~。」
「焦って不備だらけにしてもしょうがねぇし、商売で足元見られちゃお終いだしなぁ。」
龍田の重い呟きに隣のルパンが首を横に振って止める。
しかし、打開策に唸る二人に電が心配そうに言う。
「あの…おとーさん…。私たち、食事や暖房とか節約しても事情がある以上は協力するのです。」
「それも下策だな。
…お前たちがこの鎮守府の防衛の要なのに、その健康管理に支障出るような事はするわけにゃいかねぇやな。」
半分に割った饅頭をホフホフ言いながら食い終えた次元が電の提案を却下する。
電からしたら今のルパン鎮守府の待遇は良すぎるほどで、大本営の艦娘からも大本営よりもいいという評判である。
それから少しくらいグレードが下がろうが、それでも十分に好待遇だと電は考えていたが、次元はそれを良しとしなかった。
そのまま、ニヤリと笑ってルパンを見た。
「…足りないモノは、よそから持ってくりゃいいんじゃねぇのか?
なぁルパンよぉ。」
しかし、ルパンはうなだれてしまう。
「それがよぉ…とっつぁんや浦賀から釘刺されちまってよぉ…。」
「はぁ?下手打ったのか、お前。」
ルパンの言葉に信じられないとばかりに身を乗り出し、帽子を少し上げてルパンを見る。
うなだれながらも視線を上げて、ルパンが苦笑する。
「それがだな…仕事が完璧すぎて疑われてるんだとさ。
だって、ほら。俺天下の大泥棒なわけだし。」
「はぁ…なんだそりゃ…。」
ルパンの言葉に呆れの隠せない次元である。
しかし、納得もいく。
同名の別人ということにしてはいるが、世の中にルパン三世一味の犯罪歴は知れ渡っているのである。
泥棒として生きていくなら疑われても知ったことではないが、今では提督という守るものがある立場である。
だからこそ、前回のようなことはあまりできないということである。
「では、どうするのだ。我々だけならまだしも…。」
はっきり言葉にするのは室内にいる艦娘達を気にしてか、避ける五右衛門だったがルパンは引き出しから一枚の封筒を取り出した。
「ま…何とかしましょかね。」
そして、夕方。
武蔵、漣、龍田、次元、そしてルパンの五人で鎮守府の外にいた。
「…なんで、こんなドレスなのかしら~?」
「ま、ドレスコード、って言うじゃない?」
三人はドレスを選ぶためのブティックにルパンの車で行っていた。
ルパンはタキシードを、次元は普段のとは違うスーツへと新調していた。
龍田はスタンダードな鎖骨が浮かぶ程度の淡い紫のタイトなドレス。
漣は全体的にふんわりとふくらみを持たせた赤に近い濃いピンクのドレス。
武蔵はタイトながらも胸元、そして背中を開けた淡い水色のドレス。
「…こんなお金、使って大丈夫なの~?」
「必要経費、必要経費。気にしちゃダメだぜ。」
龍田がドレスにかかった金額を考えて眉根を寄せれば、ヘラヘラと笑って龍田と武蔵の腰に手を回す。
龍田が気にするのはレンタルならまだしも、それなりではきかない品質のタキシード、スーツを買っているからである。
「金をケチっちゃいい仕事は出来ねぇぜ、お嬢ちゃん。
そろそろ時間だな、相棒。」
「だな。じゃ、車に乗った乗った。」
「おぉぅ!新衣装キタコレ!!」
唇の端を上げる次元に頷いてルパンが店先に止めているベンツSSKとフィアットを顎で指す。
しかし、それが聞こえないのか鏡の前で漣がクルクルと回っていた。
「おーい、漣ちゃん?俺の声届いてる?聞こえるか?」
「メカ次元ですか、ご主人様?」
「ご主人様って言うな。」
「…俺がなんでメカ?」
意味不明な反応を返す漣に困った顔をしつつも、ルパンが苦笑する。
首を傾げて漣の言葉に反応しながらも次元はフィアットに漣と武蔵を乗せる。
「じゃ、行きますか。」
「そうね~エスコートしてもらいましょうか~?
というか、どこに行くの~?」
そしてSSKに龍田とルパンが乗り込む。
二人で先導して走り出しながらドアに肘を置いて咥え煙草をして笑う。
「なぁ、龍田ちゃんよ。
急に金を持った人間の欲求ってどんなもんだと思う?」
「使い道、ってこと~?
…ん~美術品とか、車とか、食べ物とか~?」
煙草の灰を走る路上に捨てながらルパンは頷く。
「それも合ってるな。俗に言う成金趣味に走るヤツも多いな。
何かの本で読んだが、人間ってのは無意識にバランスを取りたがるらしい。
急に金が一方的に入ってくると、その入ってくる加重に耐えれなくなるのかねぇ?」
「…要は、大金が入ったら大金を使いたくなるってこと~?」
「大正解。元々の金持ちやセンスのある人間はその加重に潰されずに上手く回すもんさ。」
「なるほどね~、それが下手な人間が成金ってことね~。
…じゃ、この車はどうなのかな~?」
打てば響くような回答に満足そうに頷くが、思わぬ反撃に首がカクンと落ちる。
「必要経費だってばさ。
それに…これが成金趣味に見えるかい?」
「ま、悪趣味じゃないわね~。
で、こんな格好してどこ行く気?」
助手席でスカートの裾を軽く広げて示しながら問いかける。
「じゃ、人間の三大欲求ってわけじゃねぇけどな…人間の持ち崩すモノって三つあるんだよ。
それはな、酒・色・博打さ。」
「…そんなものかしら?」
「ま、実感はわかないかもしれないがね。
金が満ちると酒食に走り、色に溺れる。
その末がスリルを味わいたくなって博打に溺れるってのがよくあるパターンなわけ。」
煙草の吸い殻を龍田が差し出した車載用の携帯灰皿に入れて笑う。
「俺が怪盗やってる一つの理由がスリルってのがあるからあまり笑えないけどな。
で、博打をしたいが損もしたくない、って人間が思いつくのが何かわかるか?」
「贅沢な話ね~……胴元、かしら~?」
胴元とは、博打場を管理する大本のことである。
龍田の回答に頷くと、片手で懐から一枚の封筒を差し出す。
「とある上級将校様がそう思いついて、提督の悪友やその御同類を招いて裏カジノを開いたのさ。
それもそれなりに規模が大きくなって、今じゃちょっとしたもんだってね。」
「へぇ~ならそこから盗むの~?」
「おいおい、盗んだら面倒だって言っただろ?
だが、金はいただいていくぜ。」
怪盗と呼ばれる悪党らしい、ニィとした笑みとともに車を走らせるのだった。
「その招待状は悪徳提督達の中で広まってるんじゃないのか?
そんなものが煙たがられているルパン提督や次元提督に来るとは思えないんだが?」
一方、フィアットに乗った武蔵と漣と次元がいた。
ルパンと似た説明をしていたが、次元の名が記された封筒を見て後部座席の武蔵が問いかける。
「いいところに気付いたな。
ま、相当の数の提督が呼ばれてるけどよ…確かに悪徳提督かそれに近しい提督ばかりにしか広まってねぇんだよ。
さて、俺たちと接点のある悪徳提督と言えば誰だ?」
助手席の次元がシートを軽くリクライニングさせてもたれかかりながら語る。
それにノリノリで答えるのは漣だった。
何故かルパン鎮守府の漣は変な知識とともに車の運転に興味を持ったので、次元が運転を許したのだった。
「公文書偽造キタコレーー!!www」
「運転が楽しいのはわかるが、落ち着け。」
「公文書でもないな、漣よ。
…なるほど、あの提督の下に届いていた招待状から偽造したのか。」
次元と武蔵につっこまれても、「俺は鷹だー!」とか口ずさみながら運転している。
しかし、普通に法定速度を守って走っているだけだというアンバランスさに同乗者の二人は何も言えない。
「ま、そういうこったな。
だが、盗むわけにもいかねぇが、金が必要だ。」
「…うーむ、だから博打か?
あまり感心しないし、提督たちのやり方を見てると『勝つべくして勝つ』クチだと思ってたんだけどな。」
後部座席で腕を組んで、非難するように助手席の次元の方を睨む。
それをちらりと振り返って見ると、ニヤリと笑って答えた。
「おいおい、俺たちは裏社会にそれなりに長いんだぜ?
運否天賦なんてド素人みたいな事をやると思ってるのか?」
「…なら…イカサマか。」
「ざわ…ざわざわ…。」
武蔵の言葉にふっと笑って肩を竦める次元だった。
隠岐家周辺の現状。
・大雪(足首まで埋まる)
・水道管凍結で水が出ない
・市内で水道管が破裂しまくり
・市の水道局が修理などの関係で水道の水圧調整(低圧化)
・それでも破裂したまま気付かずに放置され続けていた影響か、市内の多くの場所で断水状態。 ←new!!
※隠岐家は断水まではいきませんが、水道の水圧が低くまともに使えない状況です。
チョロチョロとは水は出ますが…食器も洗えないし、風呂に入れない状況です。
温泉県なので今晩は近くの温泉に行って来ましたが、同じ考えの人が多く、団子状態(順番を並んで待って、満員の風呂に入る)でした。
明日には何とかなりそうとの広報がありましたので…祈りたいところです。