大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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前回の話はどうもルパンの葛藤を描きすぎたせいで正直、書きながら「これでいいのか」という葛藤に塗れた話でした。
とはいえ、描かずにいくのはどうもという考えもあり、自分の中でも賛否両論です。

さておき、今回は息抜きな番外編となります。
「」が多い文となり、読みにくいかと思われますがCDドラマやラジオを聞いてると思って下さい。


EX2.ルパン放送局<1>

ルパン(以下ル)「というわけで、始まりました『ルパン放送局』。…って、どういうわけなのか教えてくれよ、加賀に赤城。」

 

赤城(以下赤)「お休みを先日から定期的に取っていただくことになったとはいえ、出撃などが重なった艦娘はやはりお会いできませんので。

その代わり、ではないですが就寝前のこの時間にこのような形で放送することで、鎮守府の近況や事前告知などといったことをしていただこうかと。」

 

ル「ってもなぁ…そんな全体に報告しなきゃいけねぇこともそうそうありゃしねぇだろ?」

 

加賀(以下加)「間宮さん曰く、その辺りは臨機応変に、だそうです。」

 

ル「間宮さん発案なのかよ!!」

 

加「…具体的には、執務室詰めの艦娘達が慰労を兼ねて食事会をした際に話し合った結論、らしいです。」

 

赤「間宮さんや鳳翔さんが絡んでいる『食事会』って時点で、お酒が入っていそうですね。」

 

ル「…酔った勢いでの企画かよ……サイコロで深夜バスに乗せられるとかに比べりゃマシか…。」

 

加「なんですか、その苦行は。」

 

赤「とはいえ、彼女たちも色々負担を軽減させようと色々工夫はしているんですよ?

気軽なトーク、ということで専用の収録部屋もこの通り用意しましたし、執務時間外という事なので軽食や飲食可という恵まれた環境での生放送です。」

 

(プシュッ!×2)

 

ル「…躊躇なく、今、二人とも缶ビールの缶開けたな?

聞いてる皆、この一航戦、真っ先に飲みやがったぞ!」

 

(プシュッ!)

 

赤「提督こそ、開けてるじゃないですかまったく。」

 

加「…ビールではなく、私はサワーです。

日本酒も悪くはありませんが、このような甘いお酒というのも新鮮でいいものです。」

 

ル「ま、早速飲み始めっちまったけれども…実際、そう伝えることもねぇよなぁ?」

 

赤「……。」

 

加「……そういえば、あのDVDは結局許可するのでしょうか?」

 

ル「あーアレなぁ。そんな映像にされるような大したもんじゃねぇけどよ。

…特に駆逐艦の子たちをはじめとして、皆から見たいって言われちゃ、なぁ。」

 

赤「私は結構好きですよ、ステルスのお話とか。」

 

加「アレもいいですね…私はマモーの話など、色々考えさせられました。」

 

ル「いや、別に俺が作ったわけじゃねぇんだけどな?

色々あったなぁ、今になって思えば。」

 

(ガサガサッ、パリッポリッ)

 

赤「あら、この九州醤油味というのはなかなかいいですね。」

 

ル「……。」

 

加「赤城さん…話の流れというものをですね…。」

 

ル「結構イケるねぇ…つまみにもいいんじゃねぇの?」

 

加「ほら、提督も拗ねてしまわれました。」

 

ル「拗ねてねぇから。ほら、加賀も食えよ。」

 

(BGM:『鎮守府の朝』)

 

加「いただきます…第六駆逐隊ですか?」

 

赤「はい、那珂ちゃんよりアイドルらしいんじゃな」

 

ル「止めて…止めて。乗り込んできかねない。」

 

加「大きなお友d」

 

ル「もっと過激な発言をするんじゃねぇよ!!

…で。このBGMで何かするんだ?」

 

赤「ははぁ…なるほど。この箱に入った紙を一枚取り出して、中の質問に答えればいいわけですね?」

 

ル「鳥海ちゃんありがとな?んじゃ、ベタだけどネタもねぇし、引きますか。」

 

(ガサガサッ)

 

加「では、読みましょう。」

 

ル「へいへい……『提督の好みの女性像はどのような女性ですか?』…。」

 

(BGM:『決戦!鉄底海峡を抜けて!』)

 

ル「止めろッ!?なんだこの曲ッ!?すっげぇ嫌な感じがするぜ!?」

 

赤「…嗚呼、古鷹さんが自分でかけて、大打撃を…。」

 

加「収録室の隣で頭を抱えて机に突っ伏しています…。」

 

ル「自爆してんじゃねぇか!!

鳥海ちゃん、外に連れ出してやって!!」

 

(ガチャッ…

 

鳥「よく頑張ったわ、古鷹…貴女は仕事を全うしたの…。」

 

バタン)

 

ル「そんなになってまでやるべきことなのか、コレ…。

…で、タイプ、ねぇ…。」

 

加「…それにしても、鳥海さんも顔色はよくないですね…加古さんも一緒に連れ出されましたし。」

 

赤「土地柄、ね…青葉型は色々と因縁のある地ですから。」

 

(ポリポリ、プシュッ)

 

ル「そういうお二人はタイプとかあんの?」

 

赤「…難しいですね…。」

 

加「……。」

 

ル「ま、難しいよなぁ。俺もこの質問は難しいな…。

基本的にカワイコちゃんなら大歓迎だけどな。」

 

赤「なるほど、となると我々にもチャンスがある、ということですか?」

 

(ガタンッ!カランカランッ…)

 

加「あっ、赤城さんっ!?」

 

ル「うわっとぉっ!?あっぶねぇー…。

からかうんじゃないよ、お嬢さん。もうちっと色々勉強して大人になってからにしな。」

 

赤「うふふ、あしらわれてしまいましたね。

…倒れたのがほとんど空き缶になってて、よかったですね。」

 

加「す、すみません。」

 

ル「これを聞いてる艦娘の皆には焦らないで欲しいね。

愛ってのは激情でもあり、またはぐくむものでもあり、与えるものでもある…ってな。

恋や愛に恋して、ロクでもない男に引っかからないでもらいてぇなぁ。」

 

赤「あら…では提督はロクでもない女に引っかかったことがおありで?」

 

ル「ま、昔は色んな女とそれなりにあったし、そんな女とのスリリングなやりとりを楽しんだけどな。」

 

加「なるほど、実体験からの忠告ですか。」

 

ル「俺はスリリングなやりとりをしつつ、その先の破滅をするりとかわすまでもを楽しむのさ。

ただ、それが出来ずに溺れて破滅してもらいたくねぇってこと。」

 

赤「…破滅、ですか。」

 

ル「そ、破滅。世の中遡りゃ、いくらでも相手に睦言囁いて情報や金やと貢がせてポイなんて(こた)ァいくらでもあったしなぁ。

ちと古い事件だが、『西山事件』、別名『外務省機密漏洩事件』なんてわかりやすいな。」

 

加「はぁ…機会があれば調べてみます。」

 

ル「ま、そんな大層な話じゃねぇさ。興味があればでいい。」

 

(BGM:『敵艦隊、見ゆ!』)

 

ル「…話題を切り替えろ、ってことかぁ?」

 

赤「そのようですねー。」

 

加「…今後の鎮守府運営について、お伺いしたいです。」

 

ル「棒読み、あんがとよ。

とりあえず予定としては鳳翔さんたちの企画のイベントやって。

んで、次回『イベント』こと、大規模作戦やって…かね。」

 

加「気分が高揚します。」

 

ル「すんじゃねぇよ。」

 

赤「…と、言われますと?

大本営からの評価も影響するかと思われますが。」

 

ル「やるこたぁやるさ。だが、張り切りすぎんなってこと。

第一、数多くの鎮守府がこの大規模作戦には参加するし、ウチが倒しきれなかったら日本が崩壊するわけじゃねぇ。」

 

加「…それは、そうですが…。」

 

ル「それによ、この大規模作戦は、俺の推測だが、あくまで相手戦力のすり潰しが目的なんだ。

完全撃破なんて大本営は考えちゃいねぇな。」

 

赤「へ!?」

 

ル「あのなぁ…目の前に報酬や評価っていうニンジンぶら下げられて目の色変えてるだろうが、完全撃破してどうすんだ?

これが最後の深海棲艦ってわけでもないし、あくまで勢力が削れるだけだろ?」

 

赤・加「……。」

 

ル「戦略的勝利と戦術的勝利を混同するんじゃねぇってことさ。

事前に情報が流れてるってことは、多分大本営辺りが画策して活動が活発になって来た地域からある程度のルートを決めて誘引してるんだろうさ。

本拠地から離れれば離れるほど補給線が伸びて、相手の戦力も自然と削れる。

心当たりがあるんじゃねぇの?」

 

赤「た、確かに…姫級の控える最深部に近づけば近づくほどこちらも弾薬や燃料が減り、疲労も重なります…。」

 

ル「だろ?だから大本営は引きずり込んで叩く、そうして戦力を調整することで相手からの本格的な大規模侵攻を防いでるんじゃねぇの?

あとは…資材とか余力を余らせた鎮守府の戦力も削る意図もあるんじゃねぇか?」

 

加「ち、鎮守府の…?」

 

ル「艦娘って戦力とそれを支える資材がありゃ、クーデターも可能って思うバカに増長させない目的…ってのは邪推かね?

定期的に大規模作戦で資材を適度に減らしてくれりゃ、バカな考えも浮かびにくくなるんじゃねぇかってね。」

 

加「さ、流石に…それは…。」

 

ル「あくまで『邪推』さ、第一俺たちには何の関係もない話だがな。

ま、そういうわけで頑張るのはいいが、張り切りすぎてポカやらかすなよーってな。

武蔵とかの熟練組はさておき、ウチの連中は初めてだったり、ほとんど経験ねぇだろ?

逆に熟練組も、いいとこ見せようとして踏み込み過ぎねぇようにな。」

 

赤「では、今回はほどほどで、という事ですか?」

 

ル「様子を見ながら踏み込む、ってことさ。

行けそうなら完全に叩く、出来ないなら出来るところまで叩く。」

 

加「臨機応変、ということですか。」

 

ル「そういうこったな。

だが、期待はしてるぜ?その代わりにお前らの誰かの犠牲の上でまで為すべき事じゃない、とも考えてるだけさ。」

 

赤「…ありがとうございます。」

 

ル「それに、もう半分の意味は『提督たちへの景気付け』ってのもあるだろうしな。

わからずに踊らされるのは勘弁だが、わかった上で踊るなら構わねぇ。

無理してまで踊るまでもない、ってことはわかった上でな。」

 

加「なるほど…以上、ルパン提督の意気込みでした。」

 

<BGM:『艦娘のお菓子作り』>

 

龍田「美味しいお菓子から、一流メーカーの絶品お取り寄せ料理」

 

高雄「便利なインスタント食品から、美味しいお酒」

 

長良「楽な部屋着から、機能性溢れた運動着に、可愛いお洋服!」

 

扶桑「アンニュイな気分を晴らしてくれる素敵な音楽」

 

朝潮「柔らかくて暖かい素敵なお布団!」

 

全員「なんでも揃うルパン鎮守府酒保では皆様をお待ちしております!!」

 

<BGM:『雨とお酒と艦娘』>

 

ル「CMまで作ったのかよ…はい、というわけで長々お付き合いあんがとな。

あとはフリートークのコーナー…って、前半もほぼフリートークだったよな?」

 

鳳「あら、そんな事はありませんわ、提督。」

 

ル「っと、というわけで後半のゲストは皆さまご存知、鳳翔さんだ。」

 

鳳「さんなんて不要ですわ。鳳翔、とお呼び下さい。」

 

ル「たはは…なーんか、照れくせぇな。で、わざわざ七輪用意して来てくれた、ってことは何かそれに関係した連絡でも?」

 

鳳「そうですね…では、早速焼かせていただきましょう。」

 

(パタパタ…)

 

ル「っと、籠から出したのは…天ぷら、かい?」

 

鳳「ええ、先日龍田さんをはじめとした軽巡や駆逐艦の皆さんで海産物を取り扱う会社を立ち上げられたそうでして…。

その製品化にご協力させていただいたわけです。」

 

ル「へー、聞いてる側じゃわかんねぇかもしれねぇけど、今鳳翔は七輪の上で手のひらくらいの大きさの天ぷらを金網で炙ってるな。

…っ…ごま油でも使ってんのか?やけに香ばしいんだが…。」

 

鳳「うふふ、それは企業秘密です、提督。

では、どうぞ。」

 

ル「ありゃ、軽く焦げ目がつくかつかないかでもう皿に乗せられてっと。

早速いただくぜ…ダメだ、もう匂いだけで美味いってわかるぜ?」

 

鳳「お好みでかぼす醤油、醤油、辛子などなんでもいいのですが…ちょっと珍しい食べ方を。」

 

ル「…なんだ、この緑色の…わさび、じゃねぇよな?」

 

鳳「ええ、柚子胡椒です。これは程よい刺激でお勧めです。」

 

ル「じゃ、いただこうか…くぅぅ~~!!たまんねぇな!!」

 

鳳「あらあら、新しいビールをご用意しますね?」

 

(シュポンッ!トクトクトク…)

 

ル「冷えた瓶ビールに、キンキンに冷えたグラスたぁ、わかってんな~…。

いやー、美味いぜ、コレ。やけに上品な魚の味だが、柚子胡椒がいいアクセントだねぇ。

ビールが進む進む!!」

 

鳳「実は、(はも)を練り込んでいます。」

 

ル「鱧!?高級魚なんじゃねぇの?」

 

鳳「そこまで大量には入れれませんが、それなりに、ということで。

それに下手に骨切りにしなくても擦って濾す際に骨を除外できるので、無駄なく使えるのです。」

 

ル「はー、いい場所に鎮守府があってよかったねぇ…で、こっちは?」

 

鳳「とある地域のを参考にしまして、さつま揚げのように仕上げてます。」

 

ル「ん~これまた鱧のとは違った、野菜の甘味が効いてるねぇ……こっちは柚子胡椒や醤油系もいいが…鱧のは塩だけでもイケそうだな。」

 

鳳「そうですね…鱧天ならビールだけではなく、日本酒や焼酎、ウィスキーとの相性もいいのではないかと。

…お酌致しますね?」

 

ル「おっととと…あんがとよ。

んで、これを鳳翔の小料理屋で出すわけ?」

 

鳳「ええ、同じ敷地内で作っているという特権を利用させていただきまして…。

その日獲った魚を分けていただきまして、私のお店では全て手製でその日のうちに食べていただこうかと。」

 

ル「手作りで?無理はしねぇでくれよ、鳳翔の料理食えねぇなんて聞いたらショックで暴動が起きかねねぇからな。

…というわけで、御返杯。」

 

鳳「大袈裟ですわ、提督…ありがたくいただきますね?」

 

ル「でも、色々すり潰すのもいいけどよ、あえてあまり潰さないのも面白いかもな。」

 

鳳「と、言いますと?」

 

ル「例えば、枝豆とかを半分は蒸しただけで触感残す、なんてのも良さそうじゃねぇか?

魚肉と枝豆だけ、とか…玉ねぎと魚肉だけとかに絞って、その味一本で勝負!とかよ。」

 

鳳「…試してみましょうか?」

 

ル「お、参考になったか?」

 

鳳「ええ、試行錯誤も楽しいですから。

あら、いけません…ちなみにこの天ぷらですが、会社の方では真空パックにして全国発送で販売するそうです。」

 

ル「いいねぇ…設備費用や人件費をきっちり稼いでくれるように祈ってるぜ~。」

 

鳳「そうですね…ちなみに、この鎮守府の方々も購入できますので、御夜食にトースターなどで炙って召し上がれますよ?」

 

ル「本格的に食いたくなったら?」

 

鳳「それは、お店にいらっしゃってください、と。」

 

ル「上手い!というわけで、気になった皆は試してみてくれ~。

鳳翔、鱧天もう一枚焼いてくれねぇかな?」

 

鳳「はい、少しお待ちください。

…というわけで、もうお時間のようですね。

それでは、皆様おやすみなさいませ。」

 

ル「え!?もうかよ…もうちっと飲んでいてぇけど…。

夜更かししねぇで、皆寝ろよー…特に川内!騒ぐんじゃねぇぞ~?」

 

鳳「あら、ひどい。川内さんが可哀想じゃありませんか。

…提督がお飲みになりたいなら、お付き合いいたしますわ。」

 

ル「おっ、悪ぃな。

じゃ、『ルパン放送局』、次回もお楽しみに!」

 




というわけで、ラジオ風味。

この世界において『イベント』とは、という考察も交えてまったりやってみました。
放送局を続けるかどうかは不明。

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