大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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大変更新が滞り、申し訳ございませんでした。

今回は大規模作戦のまとめ話です。


15-4.礼号作戦参加者たちは打ち上げをするようです

通称16冬イベ、こと「礼号作戦」の殊勲艦たちが小料理屋鳳翔に集っていた。

 

勿論、作戦に参加していなかった艦たちを見下すわけではないが、実際に作戦を成功させた実力者達をねぎらうという意味合いでの報酬であった。

この飲み会の会費は全てルパン鎮守府の経費で賄うことになっている。

 

しかし、そこに集っていた全員の顔は晴れやか、とは言い難いものであった。

 

「…まぁ、色々と思うところはおありでしょうが、我々が勲一等ということになっております。

その労を労うということで、皆様グラスをお持ちください」

 

今回の幹事を任された大和が座敷の上座でグラスを掲げて合図をすると、各員がそれぞれ全員のグラスにジュース、ビールを注ぎ合う。

 

「それでは…乾杯」

 

その合図とともに全員がグラスをぶつけ合い、澄んだ音を立てるとともに全員が複雑な感情を吹っ切ろうと決意した。

 

 

 

「しかし…育ったわねぇ、アンタたち」

 

しみじみとため息をついたのは足柄。

その視線の先にはちとちよ姉妹、扶桑姉妹、そして大淀と五十鈴、霞だった。

 

「ちょっ!?そりゃ、特別改装が実装されたから優先的に私たちが出撃しただけじゃない。

ろくに休めずにたまったもんじゃなかったわよ!」

 

霞がその生暖かい目で霞を見つめるのに耐えきれなかったのか、いつもの憎まれ口をたたく。

しかし、それを年上の余裕なのか大淀がアツアツの肉じゃがを飲み下して薄く笑う。

 

「あら、『あとちょっと!あとちょっとだから出撃させなさいよぉっ!!』って休めとおっしゃる提督に噛みついて出撃したのはどなただったでしょう?」

 

「ちょっ!?ア、アンタは牛丼でも食ってなさいッ!!」

 

礼号作戦が開始される直前に、霞には改二と言われる特別改装が大本営より告知された。

また、史実に基づく推測から羅針盤に何らかの影響を及ぼすのではないか、という推測からイベント開始前から居た礼号作戦組は重点的に育成を行っていた。

 

しかし、いかんせんルパン鎮守府の運営方針や全体の練度の関係上イベント開始まで改二まで間に合わなかった。

そこで俗に言うE1ことカンパン湾沖作戦から積極的に作戦に参加したのだった。

 

その結果、オートロ島マーマレードワン沖作戦(俗に言うE2)の途中での改二への改装が可能になったのだった。

 

そして、その連続出撃の結果、足柄・霞・五十鈴は改二へとなったのだった。

なお、この宴会に参加していることからもわかるだろうが、大淀はE1の最初のうちの出撃で艤装がドロップしたのだった。

 

「…それも悪くないですが、お腹にたまりますからねぇ…」

 

霞の悪態にうーんと考え込んだのが、大淀である。

悪意ととらずに真剣に宴会で牛丼を食べる事を検討していた。

 

 

 

何故牛丼か。

それはルパンの仕掛けがあった。

 

外部との様々な取引の中で、偶然知り合ったとある営業職の男がいた。

その中で、大淀たち艦娘への抵抗が薄い男だった。

 

様々な思惑の重なり合った結果、ルパン鎮守府の艦娘がその営業の会社と契約が結ばれた。

それにその営業職の仲介もあって、他社の営業も乗っかった。

 

 

その内容は『艦娘のキャンペーンガール』化である。

 

 

これは大きな反響を社会に轟かさせた。

大まかに言えば『反発派』と『肯定派』である。

 

牛丼チェーン企業は自前の店舗で一定額を買えばランダムで艦娘のブロマイドをもらえるというものである。

俗に言う『おまけ商法』であった。

 

もう一つの企業はルパン鎮守府にも商品を卸している大手コンビニチェーンであった。

そこも同様の『おまけ商法』を仕掛けたのだった。

 

社会の艦娘達への反対派からの抵抗も最初はあったが…。

その牛丼チェーンは『見た目はいいので、起用した』。

『競争がなかったので、格安で雇えた』。

そして、反対しづらい『差別をしない』というお題目で封じた。

 

そして、艦娘擁護派ともいかない一般市民と肯定派の市民には大好評だった。

各企業の店舗には肯定派の市民が行列を為したのだった。

 

当然、大本営にも許可は取っているし、各企業から手数料も支払っているので文句のつけられる筋合いはない。

 

なお、『肯定派』の反応はとある掲示板の書き込みが全てを物語っていた。

「いいぞ、もっとやれ」

 

 

おかげで大淀をはじめとしたキャンペーンガールをやった艦娘は大規模作戦開始前という忙しい時間を縫って撮影をこなしたのだった。

その際に撮影対象になった艦娘と、牛丼チェーン店の関係者とのコミュニケーションの結果、持ち帰り用の牛丼の真空パックなどをお土産に大量にもらったというのは余談である。

 

 

さて、この宴会は酒が進むにつれて次第に少し沈み気味だった気分も盛り上がってくるのだったが。

例外はE3こと北海道北東沖・捷四号作戦参加組だった。

 

ルパン鎮守府の捷四号作戦に参加した面子はというと。

 

<輸送作戦部隊>

・第一艦隊

 大潮・荒潮・朝潮・熊野・嵐・千代田

・第二艦隊

 阿武隈・雪風・夕立・時雨・利根・筑摩

 

なお、千代田は当時は水上機母艦であり、今は輸送作戦終了とともに軽空母へと改装している。

 

<殲滅作戦部隊>※水上部隊

・第一艦隊

 千代田・大和・武蔵・長門・陸奥・千歳

・第二艦隊

 時雨・阿武隈・雪風・霧島・大井・北上

 

であった。

なお、駆逐艦に関しては他の高練度駆逐艦と入渠時間の兼ね合いなどで交代して従事していた。

 

「…しかし、とんでもない鎮守府に着任してしまったな…」

 

梅サワーの入った薄い赤い炭酸の液体の入ったグラスを片手に武蔵が苦笑する。

それにビールを手にした大井が半目になりながら、ぼやく。

 

「とんでもない、っていうか…無茶苦茶よ。あんなのが普通だったら轟沈なんて出ないんじゃない?」

 

「まーそーかもねー。でも、ウチらが楽なのはいい事じゃん?」

 

それに相槌を打ちながらビールかと思えば、一緒に運ばれてきたショットグラスに入ったハーパーをそのままジョッキに入れて飲む北上。

意外に北上は酒豪なのか、美味そうにニコニコしている。

 

この二人はルパン鎮守府発足当時からの第一優先育成艦であった。

勿論、大本営と大淀からの情報、そして武蔵たちの助言もあって最優先としたのだった。

 

理由は言うまでもない、夜戦火力と先制雷撃という比類ない戦闘能力である。

 

そして二人とも今作戦において、絶大な戦力を思う存分に発揮したのではあるが。

 

「私たちの力で、提督に栄冠を…と、思ったのですが…」

 

「私たちの力が足りなかったっぽい~…」

 

「そうだね…ボクらの練度がもっと高かったら、ね…」

 

大和の呟きに時雨と夕立が項垂れ気味になって反省を示す。

 

それに反発したのが、他の面子だった。

 

「そんなことないのじゃ。

他の鎮守府ではカッコカリで限界を突破した駆逐艦でも、大破するときは大破しておる」

 

「利根姉さんの言う通りです。

提督も仰った通り、相手もこちらを狙い、避けようとするものですから…」

 

利根姉妹が特に項垂れている時雨・夕立の背を撫でて宥める。

 

ルパンは大破撤退をしても、彼女たちを責めることはしなかった。

ルパンは怪盗稼業の中で、相手が防犯などの対策を練っていたのが当然だった。

勿論、その最たるものが銭形幸一ではあったが。

 

ルパンと言えど、必ずその相手を出し抜いたわけではない。

有名なのは駆け出し時代のカリオストロ公国での失敗だろう。

 

そのため、大破した艦娘を責めずに『敵もさるもの引っ掻くもの』と笑ったのだった。

ちなみにいつもの発着艦場で出迎えた次元は『恐れ入り谷の鬼子母神』と示し合わせたわけでもなく言ったのは長い付き合いだからだろうか。

 

「…しかし、アレはないわよねー…」

 

焼酎をロックグラスで飲んでいた陸奥はグラスを傾け、鳴らしながら唇を尖らせる。

その言葉に思い当たるものがあったのか、全員が黙り込んでしまう。

 

 

 

全員が脳裏に浮かんだのが、捷四号作戦の最終日だった。

 

ルパンの考えは独特な大規模作戦の攻略法を提示した。

先日もルパンが口にしたように、今回の作戦の攻略は絶対とは思っていなかった。

 

知っての通り、ルパン鎮守府は立ち上がってから間もない。

武蔵達の加入により、特化した戦力はいるものの全体的な練度は低い。

 

そのため、ルパンが第一目標に掲げたのは『戦力拡充』だった。

それは、レア艦ドロップでもあり、甲作戦の報酬でもあった。

 

E1はルパンの読み通りに駆逐艦や軽巡が必死の思いの開発が実って、充実した対潜装備のおかげで甲クリア。

報酬の16inch三連装砲mk.7は大きさの関係で、大和型姉妹の専用とされた。

 

ここの攻略の最中で大淀の艤装ドロップ。

さらには春雨、清霜、瑞穂、酒匂、海風といったレア艦を通称『掘った』。

 

数日かけて駆逐艦勢のレベリングを兼ねて存分に掘った後に、E2へと移行。

 

E2作戦に関しては、次元・五右衛門との三者の話し合いで割れたものの、レア艦のドロップ率もあり、やはり甲作戦を選択。

 

ここの攻略でかなり手間取った成果が、冒頭の「礼号作戦」組の改二である。

 

やはり甲作戦の難度もあり、通称『ゲージ削り』の時でかなりの時間を費やした。

何回も道中での途中撤退もあった。

それでも鎮守府のメンバーは決して諦めも、またダレることもなかった。

 

幸いだったのはその間に俗に言うレアドロップは手に入れた事だった。

 

おかげで必死に遠征部隊がこれまでにかき集めた資材もまだ余裕があり、また時間も僅かながらあった。

ルパンは主だった艦娘を集め、意見を集めた結果、温存していた武蔵たちには一切の疲労がなかった上に鎮守府随一の練度である。

出来る限りのチャレンジをすることになった。

 

そしてレベリングを兼ねた輸送作戦は終了とともに、沖波・風雲のドロップ。

これはいける、と歓喜に鎮守府は沸くとともに武蔵たちの出番であった。

 

しかし、そこまで大規模作戦は甘くはなかった。

先ほどに上げた大和型・長門型による資材の溶解。

そして、戦艦棲姫による道中、及びボス戦の強力な妨害。

ボスの頑健さ、強大な火力。

 

流石の武蔵たちも苦戦を強いられた。

 

そして5回目の撤退をした後、ルパンは時間を見た。

そのまま、バケツを使用した上での再出撃を命じた。

 

 

疲労が抜けた後の出撃、道中を小破のみで切り抜けて最深部、ボス戦へと武蔵達は海を駆けた。

そして、旗艦の千代田が海を疾走しながら全員に大きな声で告げる。

 

「道中撤退を避けるための旗艦だってわかってるけど、旗艦として言わせてもらうわ!!」

 

気迫のこもった千代田の声に全員が黙ったまま、艦隊の編成を乱さぬままに耳を傾ける。

言う通り、千代田は武蔵たちに比べれば練度も低ければ、経験も浅い。

しかし、それを侮る者はいなかった。

 

彼女と千歳が必死に食らいついて、この海域制覇に努力しているのを知っているから。

 

「細かい数字は知らないけど、資材ももうそろそろカツカツ!

そして制限時間もそうないわ!しかも、今回は運よく中破すらいない!!

まさに千載一遇の好機よ!」

 

距離が近づいてきたのを察知して索敵機を飛ばしながら、声を掠れさせながら叫ぶ。

その先には海域のボスがいる時に現れる、暗雲が立ち込めた海域があった。

 

「これは甲作戦。でも、それが何!?

私たちの力、提督に、そして分からず屋の大本営に!

私たちをバカにする世の中に!!思い知らせてやりましょうッ!!!」

 

「「「「「「「「「「応ッ!!!」」」」」」」」」」

 

その場にいた全員の気持ちは一つだった。

そして、支援艦隊も。

 

「皆、今回は私たちの出番はなかったけれど…私たちのこれまでの鍛錬の成果、見せてあげましょう?」

 

どこかおっとりした穏やかな、しかし、決意のこもった声で静かに目の前の五人に扶桑は告げた。

 

その場にいたのは、決戦支援艦隊。

扶桑、山城、隼鷹、飛鷹、嵐、夕雲。

 

全員が気迫満ちた瞳をしていた。

 

「ハッ…別に、アタシ達が轟沈(しず)めてしまっても構わないんだろう?」

 

「バカ言ってるんじゃないの、一回こっきりの空爆で轟沈(しず)められるわけないでしょうが」

 

載せれるだけ載せた彗星一二型甲、流星改を次々に発艦(とば)しながらそんな掛け合いをする。

しかし、その艦載機に乗った妖精達は二人の気持ちはわかっていた。

 

可能な限りヤる。

 

そこには妥協も油断もなく、ただ本気(殺る気)の目だった。

 

「そうよ、そんな無茶して当てられませんでした、なんて事言うんじゃないわよ?」

 

二人の掛け合いにツッコミを入れる山城。

扶桑とお揃いの46cm三連装砲二門、そして32号対水上電探二つで真剣に照準を合わせていた。

 

その次の瞬間、嵐が声を挙げる。

 

「第一艦隊、千代田から!予想位置より北に20、東に3の位置に敵艦隊は配備!!」

 

その耳元には小型片耳用の、ブルトゥースイヤホンのような無線機が装備されていた。

これもルパン特製の従来品を改良し、伝達距離などを強化された装備である。

 

嵐が告げた位置に全員が照準を合わせるとともに、先に飛び立った艦載機達はその砲弾の花道を開ける。

 

「山城、いくわよ?援護砲撃、始めェッ!!!」

 

飛鷹・隼鷹の目配せとともに艦載機が砲弾の着弾とほぼ同時に攻撃を仕掛けれるタイミングを計って、扶桑姉妹の砲撃が空を裂く。

勿論、嵐・夕雲は魚雷をタイミングが合うように飛ばしている。

 

「さ…あとは任せたわよ?」

 

夕雲は目を細めてその先を見据えると、小さく頷いて帰港への途に就いた。

 

 

 

 

一方、第一艦隊。

 

「ッ!来たわ!!支援攻撃、着弾に合わせて開始するわよ!!」

 

敵艦隊が目視できるようになってくるとほぼ同時に違う方角から砲弾の空気を引き裂く音が聞こえた。

それを横目で見るとともに、千代田は全員に呼びかけながら自分と千歳の艦載機を飛ばす。

 

わずかな時間とともに、敵艦隊も顔をそちらに上げるが、もう支援艦隊の砲撃を避ける時間はなかった。

 

「クッ、流石ね!!でも、敵駆逐艦二艦、轟沈確認!

空母棲鬼、戦艦棲姫損傷軽微!」

 

千歳が僅かに眉を寄せながら告げる。

それとともに千歳・千代田の艦攻・艦爆が攻撃を仕掛けるが、敵も当然察知していた。

慌てて空母棲鬼も艦載機を繰り出すと、艦載機がつぶし合うとともに、千代田に爆弾が迫る。

 

「千代田ッ!!」

 

「お姉ェッ!?」

 

それに割って入ったのは千歳だった。

その爆撃をかばったために千歳は中破、甲板はボロボロになり発着艦が不可能となる。

 

「私の艦載機はほぼ全滅、千代田が残りは引き取って…!」

 

「千歳さん、後は我々に任せて回避行動を!」

 

大和の言葉に頷くとともに艦隊の後尾に千歳が回る。

その間に、北上・大井のハイパーズによる先制雷撃が戦艦棲姫によって受け止められる。

阿武隈はまだ改二になっていないため、雷撃はできていない。

 

「…戦艦棲姫が一艦中破っぽい!残り、四艦…素敵なパーティしましょ!!」

 

夕立の勇ましい掛け声にニヤリと長門が笑い、砲門を敵艦隊に向ける。

 

「さぁ、大和型とビッグセブンの力、見せてやr」

 

「待ぁて待て待てぇ~~~!!!」

 

さあ、戦艦同士の殴り合いの開始だ、と言わんばかりに気合の籠った長門の声にどこかひょうきんな、明るい声と甲高いモーター音が海を引き裂いた。

 

「ッ!?てッ、提督よッ!?」

 

陸奥がつい敵艦隊から目を切って、声の聞こえた方向を向くと半ばウィリーになりながら海原を突っ切るパワーボートが超高速で走って来た。

その甲高いモーター音は戦艦勢のトラウマを呼び起こすのには十分だった。

 

が、味方とならばこれほど心強いものはない。

 

敵艦隊が予想外の支援艦隊(?)に困惑する間にエンジン出力を落として、ウィリー状態から復帰。

すると、敵艦隊の目の前でルパンがハンドルを大げさなほどに回してほぼ90度と言っていい急カーブとともに大きな水飛沫が幕と化す。

助手席にいた次元が、ニヤリと笑って両肩にロケットランチャーを担いで水幕の向こうに放つ。

 

「コイツは、特別製だぜ!!」

 

次元が放った弾頭は水幕を突き破ると真っすぐに空母棲鬼へと進むと、ほぼ無傷だった空母棲鬼に直撃する。

 

「チッ!!硬ェなぁ、やっぱりよォ!!」

 

「無茶言うんじゃねぇよ!!流石の俺様でも戦艦一発で沈める砲弾なんか、そうそう作れるわけねぇだろ!」

 

次元の呟きにルパンが噛みつきながらも忙しなくパワーボートを操作しながら再びボートをターンさせる。

敵艦隊は爆煙が晴れた先の空母棲鬼が中破しているのを見て、慌てて速射性に長ける機銃で掃射するが…ルパンの操船の方が一枚上手だった。

 

「甘ェッ!そんな慌ててばら撒いた弾に当たるかよぉっ!」

 

ニヤリと笑いながら船を操作するとともに、中破した戦艦棲姫へと真っすぐ向かう。

それとともに後部座席に座り込んでいた五右衛門がふわりと浮くように飛ぶと、舳先へと立つ。

 

「またつまらぬ…いや、違うな。

これも戦の倣い…往生せいッ!ゼァッ!!!」

 

五右衛門が斬りやすいように、そして離脱に向けて最適なルートにパワーボートを疾走(はし)らせるルパン。

そして、思うところがあってか、言い直すとともに愛刀斬鉄剣を一閃させる。

 

その戦艦棲姫は理解できないといった驚愕の表情を張り付けたまま、自らの胴を見ていた。

ルパンが駆け抜けたその後、その艤装の巨腕に深い赤い線が。

その胴体にも同様の線が走り、その線の延長線上の肩口の砲塔が海に落ちる。

それと同時に彼女は一気に力が抜けたように海に崩れ落ち、そのまま深く昏い海へと沈んでいった。

 

五右衛門の抜き打ちの逆袈裟により、中破状態であった戦艦棲姫は海へと還ったのだった。

 

『よぉ、オメェら。後は任せたぜぇ…俺たちゃトンズラこかせてもらうからよ!!』

 

楽し気に笑う声が無線で入ると、何とも言えない感情がよぎりながらも第一艦隊の12人は攻撃準備に入るのだった。

 

 

 

それぞれほんの僅かな間でその最終決戦を思い出していたが、陸奥が芋焼酎の独特の香りの混じった吐息とともに告げた言葉が全てだった。

 

「もう、ルパンだけでよくね?」

 

あまりといえば、あまりな発言だがわからなくもない。

それが全員の心境だったが、責任感から大和が口を開く。

 

「ま…まぁ、口調等ツッコミどころはありますが…。

あの装備やパワーボートは海域を突っ切ったりと無茶をしているため、そうそう出せる支援ではないそうですし。

実際、龍田さんから聞きましたが我々の連合艦隊を一回出撃させるのとほぼ同じ資材を買えるほどの費用がかかるそうですから。」

 

「そ、そうだぞ、陸奥よ。

実際に空母棲鬼も沈めきれなかったし、あの三人で艦隊を相手取るのは無茶だ。

そして、実際にあの艦隊を撃破しきったのは我々だしな。」

 

大和にかぶせるように長門も援護の声をあげるが、陸奥はロックの芋焼酎『赤兎馬』を一気に煽る。

 

「…でも、あの三人なら何とかしそうじゃない?」

 

その場にいた誰も、返答を返せなかったのだった。




色々遅れた理由はあるのですが、そちらは活動報告の方で。

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