『この作品はフィクションであり、特定の国家・地域情勢とは関係はございません』
ご了承ください。
「エスコートの一つも無いなんて、酷い提督よね~?」
「……少々、頭に来ました」
「まぁ、そうなるな」
背後からのルパン鎮守府の艦娘三人の口からは嫌味がこぼれる。
しかし、今回の後から呼び出すという事は織り込み済みであり、この嫌味も当然織り込み済み。
目の前の金城提督はその様子を見ても、特に反応を示さない。
いや、むしろあえて反応を出さずに観察をしているのかもしれない。
本心が反艦娘派であるならば、このような嫌味などといった反抗ともとれる行動に何らかの嫌悪を示すこともありうるかとも思ったが、そういう様子は見えない。
「あら~、私の顔に何か付いてるかしら~?」
「いやいや、そちらさんの秘書艦が美人だったモンでね。見とれてたのさ。」
龍田のからかい雑じりながらも、不躾ともとれる視線に反撃をするが、冗談めかして肩を竦めてかわす。
とはいえ、あくまで龍田は艦娘であり、提督からすると部下という対象になる。
あまり他所の鎮守府の提督相手に龍田だけで相手をさせるのはまずいとルパンが混ぜっ返す。
「あら~?もしかして龍田ちゃん口説いちゃったりなんかしちゃったりしてるワケぇ?」
「まさか。んな事したらウチのカミさんに殺されちまうわ」
冗談なのか、本気なのかわからないが後ろの金剛を示しながら金城提督が苦笑する。
その様子を見て、龍田たち三人は目を輝かせるが、次元と五右衛門は何となく悟ったように『あぁ…』と小さく漏らした。
表立って金城提督の相手をしているのはルパンであり、特にまだ敵対していない以上、失礼な対応をするわけにはいかないのでルパンはあえて特に反応を示さない。
「へーぇ、そちらさんが?」
「ハイ!テートクのwifeの金剛デース!宜しくお願いシマース!」
よろしくと言いながらも旦那の腕に抱き着いて、こちらにアピールする金剛。
何となくいたたまれずにルパン一行は苦笑するしかなかった。
とはいえ、艦娘達は思うところがあった様子でもあったが。
「んじゃま、とりあえず鎮守府の中を見学させてもらいてぇんだけっども?」
「このまま会食……でも俺は構わねぇんだがな」
飛行場での立ち話もなんだ、ということで移動をしながらルパンは提案する。
一応は『視察』という名目になっている以上、拒絶されることはないだろうが、いい気分のものでもない。
ルパン鎮守府のように国内の鎮守府はさておき、国外や大本営から離れた僻地の鎮守府は一種の裁量権を与えられている。
海の大半が深海棲姫に奪われた中で、数限られたシーレーンがあるとはいえ一から十まで大本営にお伺いを立てていると、緊急時の対応に後れを取る。
その遅れでシーレーンを喪失などということは絶対に避ける必要がある。
さらに各地の風土にあった対応を求められることもあるが、その風土や気質を肌で感じていない離れた土地の大本営の人間が把握しきれるものでもない。
勿論大本営もある程度の首輪はつけているし、今回のような『視察』も適度に行われている。
しかし、その費用もばかにならないため、能力があり、ある程度以上の信頼が置けないと僻地の鎮守府には配属させられない。
それでもやはり僻地であるが故に政治的には後れをとりがちであるため、左遷の色合いは否定できないが。
閑話休題。
そういった、『己の王国』である鎮守府の施設を見られる、というのは歓迎すべきことではない。
しかし、金城は歓迎とまではいかないが、普通に応じた。
「いや~、滅多に他の鎮守府なんて来る事ぁねぇし、何より海外遠征なんて提督なってから初でねぇ。是非とも見学させて貰いたいんだわ。な?センパイ。」
そういうお題目で下手に出て、『見させていただく』形で提案する。
あからさまなおだてに金城だけでなく、次元もよくやるぜと言わんばかりに鼻で笑う。
もしかしたらこの『視察』に丈二をはじめとする親艦娘派の派閥からの内情偵察も含んでいるのすら気付いているのかもしれない。
「よく言うぜ、ったく。……まぁいいさ、大淀!青葉!」
そうして呼ばれたのは、ルパン鎮守府でも顔を見知った大淀と青葉だった。
しかし、違いがあるとすればそれぞれの顔や雰囲気だろうか。
「はい、ここに」
「今日は宜しくお願いします!」
挨拶をしながら、振舞いや様子を観察する。
ルパン鎮守府の青葉はここまで好奇心を表に出さず、もう少し静かにこちらの情報を引き出すような雰囲気もある。
そういった物腰から龍田からの信頼の篤い、執務室詰めもこなす艦娘である。
一方大淀はルパン鎮守府の大淀に比べれば、若干血色がいい。
執務室詰め制度が始まる前までは一人で鎮守府運営の事務を切り盛りして、先日やっと艤装が手に入ったが、いまだに事務関連業務の重鎮の一人である。
当初に比べれば負担は軽減させてはいるが、出撃のために練度も上げて、事務もこなさせているというのは負担が多すぎるかもしれない。
(ちと、こきつかいすぎたかね?)
と、少々内心で反省しながらも、軽い三枚目といった様子で挨拶をする。
「ウチの鎮守府の総務担当の大淀と、広報の青葉だ。この二人も同行して鎮守府の案内をさせる」
「あらま~、そちらも別嬪揃いで。俺様嬉しいねぇ♪」
後頭部のあたりで指を組み、周囲を呑気に観察するといった様子を見せながら歩く。
すると、歩く先へと距離を取ってついてくる気配を感じる。
(ま、それなりに出来るようだが、まだまだ甘いねぇ…)
その尾行・観察の腕前を内心で笑いながらも、剣呑な気配がしないため放置する。
次元や五右衛門が警告、もしくは警戒の様子を見せない事からも安心して歩く。
当然、万が一の時に即座に動ける、自然体でではあるが。
「まずは本館です。ここで普段の執務や業務、出撃の準備などを整えます」
大淀の解説に周囲を見渡せば、ルパン鎮守府の造りとの違いに頷く。
ルパン鎮守府の場合は、出撃準備の場所は発艦所という別棟の小屋でなされている。
その理由は、次元提案で、出撃前となると緊張などで気分が昂ることがあり、それが元でトラブルが起きないようにといった配慮である。
あえてルパン鎮守府の実情などを教えてやる義理もないので、黙っているが。
「随分と建物の造りが広いな」
「ここは元々艦娘量産化の実験施設を兼ねててな。どれだけ艦娘が増えても良いように元の設計から広く作ってある」
その解説に納得して、ルパンは頷きながら周囲を物見遊山であるような様子で見渡す。
(…壁も相応に厚いし、中に何か仕込んでそうだな、コリャ)
広いだけではなく、壁も厚い。
それだけで警戒に十分に値する。
それが中の艦娘による暴動などの外に向けての防備の壁か、それとも、外からの攻撃に備えた中に向けての防備の壁かはわからないが。
その辺りを軽く突っつく。
「それに万が一の時は、ここを要塞代わりにして籠城戦も出来るようにしてあんだろ?多分」
「ご明察、流石だな」
「いやね、ここの土地と海域の位置関係を考えりゃあ誰でも解るこった」
最初の内は、『外に向けて』の防備であった可能性が高い。
しかし、この鎮守府の艦娘などの様子や現在の立地や社会情勢を考えれば『中に向けて』の防備だろうと推察する。
シーレーン、と言うのは『海の道』である。
ただ、現状海が深海棲艦にほぼ制圧されているため、その道が途中でどこかが途切れた瞬間にその先もその手前も全てが崩壊する。
陸の道と違って、海流などの影響もあるため、そう簡単に回り道などは出来ない。
深海棲艦たちに占領されれば、下手すれば日本だけでなく世界各国の輸送ルートは崩壊する。
今の勢力バランスが一気に崩壊しかねない。
そのため、現在このブルネイをはじめ、ブルネイ・トラック諸島・ショートランドといった東南アジアは世界的に重要な人類の拠点である。
日本からここまでのルートを取れば、この諸泊地で補給をした後に陸伝いに欧州まで回るシーレーンで各地に物資などを提供できる。
そのため、艦娘という深海棲艦に特化した海戦力を持つ日本がメインで防備を張っているが、陸地では国連軍が警備を行っている。
しかし、問題は深海棲艦ではなく、人類である。
深海棲艦が出る前から、大陸の某国は南沙諸島などに独自理論で占有権を主張していた。
まぁ、国際司法の場には一切出たがらなかったことから正当性がない事はわかっていたのかもしれないが。
それはさておいて、その延長線なのか、各泊地の所有権を主張するとともに乗り込んで制圧しようとする動きもある。
その大国の要求は理不尽で、『日本は深海棲艦という脅威への対抗を名目に、不当占拠をしている。即座に防備のための艦娘を置いて、日本に帰れ』である。
『君たちはいつもそうだね。わけがわからないよ』が某匿名掲示板の流行語に一時期上がった。
そんな余談はさておき、そういう事への対策でもあるのだろうと推察はした。
が、現役の軍人、さらに鎮守府の提督がそれに関してコメントすれば問題になるだろうからあえて口にしなかった。
「でも、これだけ設備が大きいと維持費や設備投資費が凄い額よねぇ~、そのお金……どうしてるのぉ~?」
龍田の疑問も当然である。
人や物を動かし、運営するには当然カネが必要になる。
それは執務室詰めであり、副業も取り仕切っている龍田には肌をもって理解していることだ。
「では、それに関しては私がご説明を」
そう言って一歩進み出たのは大淀だった。
『解説しましょう!』と言わんばかりに、メガネの位置を直している。
「我が鎮守府では大本営からの予算の他に、ブルネイや日本、その他協力関係にある国の企業から海上輸送の際の護衛任務を受注し、それによって報酬を得て運営予算に計上、私達艦娘の給与もそこから支払われています」
「つまり……現金支給か?」
「えぇ、そういう事になります」
その言葉を聞いた次元が軽く眉をしかめる。
「オイオイ、そいつはまずいんじゃねぇのか?だってそりゃあ傭兵稼業みてぇなもんだろうが」
いくら裁量権が与えられているとはいえ、独自採算で収入を確保しているというのは色々と問題がある。
言うならば、カネという首輪を外しているのと同じだからだ。
ルパン鎮守府の場合は、あくまでも『いったんすべての収入を大本営に納め、その中の一部を運営費用として渡されている』という名目にしている。
さらに海産物加工業は『艦娘達の趣味で収獲した魚介類の有効活用の結果』であり、軍事行動を商業活動へ転化させてはいない。
「その点は問題ありません。日本・ブルネイ両政府からも認可を得ている歴とした正規の依頼です」
「つまり、半国営の傭兵稼業ってワケだ。……まぁ、ウチの鎮守府がテストケースらしいがな」
その説明に次元はわかったようなわからないような顔つきになる。
ありていに言えばこのブルネイの鎮守府はルパン鎮守府と同様に『テストケース』であり、本格的には取り入れられないものの実用性の類などで特別に取り入れさせた結果なのだろう。
全ての鎮守府でこれを許可してしまえば、大本営に反旗を翻す連中は数えきれないだろう。
独自に収入を得ることが出来る上に、裏帳簿などによる後ろめたい資金も貯めやすくなるのだから。
しかし、『テストケース』とはいえ、それを認めさせれるくらいには色々と『優秀』なのだろう。
「な~る程、熊みてぇなガタイかと思ったら、とんでもねぇ狸親父だったワケだ。」
「よせやい、褒めても何も出んぞ。」
男たちはニヤリと笑って顔を見交わした。
その上で、ルパンは金城の目を見て、はっきりと爆弾発言をつきつけた。
「じゃ、よっぽど大本営上層部か深海棲艦がバカやらない限り、未来永劫この戦争が終わらない、ってのもわかってるよな?
いや、大半の大本営の人間の望みは『現状維持』だっていうべきか?」
現状E6甲ラストダンス。
レアドロは道中の三隈程度、新規艦ドロップはまだありません。