呪われてるのかしらと思わざるを得ない…。
今年、厄年だったのかなぁ…orz
道中で一服をしたルパンと次元を尻目に、こっそり龍田たちと金城提督の金剛は密談を交わしていた。
「…なるほど、そのような感じですか…」
「そうなのデス!ウチのdarlingは奥手すぎて困りマース!!」
「あら~…そういう時は普段と違う衣装とかはどうかしら~?」
「…そういう下着とかもあるらしいな」
若干生々しすぎる会話に必死にルパン、次元、五右衛門はわざとらしく空を見つめて煙草を吸う。
普段から吸うわけでもない五右衛門も近くに居たくないのか、喫煙所にわざわざやってきたのだった。
「…そういう薬でも送ってやるか?」
「やめておけ…ある意味、最悪の喧嘩の売り方になっちまうだろ」
ルパンのお節介を次元が横目で睨んで止めるのだった。
「冗談だよ、どうせ金剛の性格からして独占欲とかを満たすほどのイチャつきができねぇのが不満なんじゃねぇの?」
「ふむ…演習で来た艦娘に聞いた話だが、酷い金剛の場合は24時間貼りついて、執務室でも膝の上から降りたがらない、という金剛もいるらしいな」
次元のツッコミに肩を竦めるルパンだったが、不意に漏らした五右衛門の言葉に全員が驚きを隠せずにいた。
「「「マジかっ!?」」」
「うむ…我らの金剛があまりルパンに執着を表立って見せていないことにあちらは驚愕していたがな」
あまり吸い慣れていない五右衛門が、軽くふかし気味に煙を吐き出しながら淡々と告げる。
つい、金城提督にルパンと次元の視線が向かうが、必死に横に首を振っていた。
「ウチはそんなんじゃねぇからな!?」
きゃいきゃいと華やいだ会話が一段落するのを待った一同は、金城提督に案内されるままに屋内を移動する。
前を歩く金城提督を眺めていたら、不自然な動きが少し見て取れた。
その直後に、ルパンたちの監視の目が和らぐとともに急に気配が現れたのを感じ取る。
確認のために次元や五右衛門に目配せをすると小さく頷かれる。
ルパンの推測だが、これまで気配を消そうとして逆に不自然な『全く気配のない』監視者が監視をして、任を解かれて脱力してしまったのだろう。
全く気配を感じさせないのは立派だが、そのあとの消え方などがまだまだ『超一流』には足りないなとルパンは採点する。
「もういいのかい?」
「あぁ、お前さんらにそういう気を起こすつもりが無いようだしな。
万が一の備えだったが……必要無かったようだ」
ルパンたちが警戒していたのと同様に、金城提督側も警戒をしていたようだった。
ルパンたちからすれば杞憂としか言いようがない。
今のところ敵とも味方ともつかないものの、あえて敵にしたいような非道でもなければ十分に有能な提督相手である。
しかも欲しいお宝があるわけでもなく、敵に回して面白そうな相手でもない。
ルパンからすれば、悪い言い方になるが『眼中にない相手』なのである。
別にルパンは戦争(戦闘)狂なわけではない。
好き好んで殺し合いや戦争を仕掛けることはないのである。
売られた喧嘩は最高値で買うが。
「そりゃま、ご苦労さん」
軽くからかうようにニヒヒッと笑いながら言ってやると、肩を竦める金城提督。
とはいえ、本気でバカにしているわけではなく、提督という立場かつ守るものがある人間である金城は『大泥棒』であるルパンを警戒せずにはいられない立場なのはわかっている。
そんな不自由な金城への言葉であった。
「さぁ、ここだ」
そして、開けられたドアの先はルパン鎮守府のほどは広くないが、標準的な執務室よりも広い執務室だった。
(仕出し弁当か何かか?今更歓迎してないって示すにしちゃ今更過ぎるしなぁ…)
どう見ても目の前の執務室は客を迎えて会食をしようというには向いている部屋ではない。
それを不思議そうにしていたが、不意に壁や机の周りを見て違和感に気付く。
(…擦れた跡?……なるほど、ね)
「さて、その辺の調度品には触らないようにな」
納得するとほぼ同時に金城提督が何やら操作すると壁や机が動いて部屋の内装が一気に変わる。
「あら~…」
「…なるほど、な…」
このような仕掛けに慣れていたルパン一味は無言で見るにとどめるが、ついてきた艦娘三人はギミックに驚きを隠せない。
加賀は何も言っていないものの、普段よりも目が見開いてまじまじとバーと言うには少々キッチンが豪華な内装に変わった部屋を見渡していた。
「さぁさぁ、いつまでも呆けてないで座ってくれ」
呆ける龍田や日向、加賀を置いてさっさと席に座るわけにもいかず、立っていたルパンたちだったが店主たる金城提督に促されてカウンター席に並んで座る。
巻き込まれたくないのか壁寄りの一番端に五右衛門が座り、軽く肩を竦めた後にその隣に日向が座る。
そして、次元も端に座ろうかと一歩踏み出しかけるが、不意に隣の龍田からの視線が強まる。
(へいへい、わかりましたよっと…)
刺すような視線に負けて、肩を竦めればせめてもの復讐なのか、次元は煙草を咥えて火をつけながら日向の隣に座る。
別に日向はルパン鎮守府の中で特に意見を口にすることはない。
彼女が興味を示すのは、己の鍛錬と瑞雲を初めとした艦載機に関してのみである。
なので、次元とも五右衛門とも、ルパンともそれなりに仲が良い。
おかげで日向とは適度な距離関係が築けているのが現状である。
それに、煙草を吸っても文句を言わないのが次元的には評価が高かったりもする。
その隣に加賀、さらにルパンが座『らされ』、龍田が一番奥に座る。
(…絶対にあっちは見ねぇでおこう…)
紫煙を吐き出しながら、次元はそう誓うのだった。
「『Bar Admiral』へようこそお客様。ささやかながらおもてなしをさせて頂きます」
その修羅場の火種を見て見ぬふりか、気付かないのか金城提督はカウンター内に入って挨拶をする。
次元の隣の日向はどうしたものかとばかりに、次元と五右衛門を交互に見る。
(ま、慣れてるわきゃねぇな…)
居酒屋ならまだしも、バーというものは敷居が高く感じられがちである。
独特の雰囲気を持っていたりすることや、内装のイメージから堅苦しく感じられがちなのもあるだろう。
さらに本土では艦娘には様々な制約が課せられている事が多く、気軽に飲みに行くなんてこともできないのが現実だからだ。
「ま、堅苦しい挨拶はこれくらいにしよう。さぁ、飲みたい物を言ってくれ」
「そうは言っても……メニューが見当たらねぇが」
出し忘れかとカウンターテーブルを見渡しても見たらず、煙草片手に問いかける。
しかし、どこか自慢げにニヤリと金城提督が笑う。
「ウチはメニューが無い分、食いたい物・飲みたい物を言ってくれれば材料があれば何でも作るのさ」
よほどのレパートリーや客の目利きに自信があるようだった。
その言葉のみならず、挑むような意思が瞳に見えた。
「ほーぅ、なら……バーボン・ロックだ。銘柄は任せる、それと料理の前に摘まめる物を」
「……拙者は日本酒を貰おう。冷やでな」
五右衛門は金城提督の言葉に特に何も思っていないのか、いつも通りの注文をする。
逆に面白がっているのはルパンだった。
「……で?お前さんはどうするんだ?ルパン提督」
左手で頬杖をつき、軽く見上げるようにして笑いながら言う。
「俺かい?そりゃあアンタが俺に飲ませたい一杯をくれ」
次元は内心苦笑する。
初見の客相手に、好みに合う一品を出せるのか、という挑戦状だった。
しかし、金城提督は慣れているのかあっさりと流す。
「お嬢さんがたはどうするね?」
「じゃあ……提督と同じ物を」
それに応じたのは龍田だった。
しかし、どことなく挑むような、勝ち誇ったような笑みを金城提督ではなく、ルパン越しに加賀に向ける。
それをどこ吹く風とばかりに流して加賀は少しだけ考えて口を開く。
「では、私も日本酒を。肴は……そうね、何か温かい物がいいわ」
「私は芋を貰おう。ツマミは……魚がいいな」
それにかぶせるように注文をしたのは日向だった。
あまり酒に執着を見せない日向があえて芋を選んだのを珍しいなと次元は思っていたが、背後のテーブル席から怒りの声が飛んできた。
「ちょっとdarling!こっちの注文は!?」
先ほどまでルパン鎮守府の龍田たちとガールズトークで盛り上がっていた金剛だった。
ガールズトーク、という割には生々しい内容もあったのは、既婚者、しかも新婚であるが故か。
「あ?まずは客人優先だろが。少しくらい我慢しろ」
「薄情者~!」
その会話を聞いて、ルパンは軽くため息を漏らす。
(そりゃ金剛ちゃんが不満を抱えるわけだ…もうちっと言いようがあるだろうに…)
微笑ましいやり取りではあるものの、色んな意味で『百戦錬磨』なルパンとしては合格点をやれないなと判断する。
とはいえ、放置するほど薄情ではないのか、軽く注意の意を含んだ言葉を紡ぐ。
「随分ラブラブじゃねぇの」
「うるせぇ、茶化すなぃ。あれでも寂しがり屋な上に嫉妬深くてな、手懐けるのに苦労してんだ」
それを聞いて苦笑を漏らすルパン。
(ま、嫉妬深いっても可愛い反応しかしねぇならいいのかね…ちっと鈍感な提督と可愛い焼餅焼きの嫁さん、か。
お似合いって事でお節介はこれくらいにしときますか)
あえてそれ以上は何も言わずに小さく肩を竦めて、料理の手つきを眺める。
意外なことに次元も何も言わずに作業の様子を煙草を吸いながら見ていた。
「あら~、随分奥さんの事理解してらっしゃるんですね?」
「まぁね。一目惚れ、なんて口に出すのも恥ずかしい惚れ方した相手だからこそ、どんな事でも理解したいのさ」
それに茶々を入れたのは龍田だったが、逆に返り討ちにあって赤面していた。
余裕ぶっているくせに、意外に純情な龍田である。
背後のテーブル席から歓声やら舌打ちなど聞こえてくるが、色々と怖いので聞こえないフリをする一同ではあったが。
「さて、そろそろあがるよ…はいお待ち、『バーボン・ロック』と『ナチョス』だ」
一番に出てきたのは、次元の注文だった。
ナチョスとは日本では馴染みが薄いかもしれないが、アメリカやメキシコではバーなどでの軽食で人気の一品である。
1943年にアメリカの国境にあるメキシコのレストランで、「ナチョ」というあだ名のウェイターが調理師不在の時にありあわせで作ったメニューである。
簡単に言えばトルティーヤ(トウモロコシの薄焼きパン)を揚げて、その上に熱したチーズとピクルスのスライスを乗せたものが始まりである。
自由度が高く、広まるうちに様々な工夫がなされて、サルサソースやバーベキューソースをかけたり、ひき肉炒めを乗せたりとバリエーション豊かな軽食である。
また、基本的に油が多く味が濃いため、バーだけではなく、野球観戦の売店などでもよく見る。
それを見て、少し次元は珍しさというより、懐かしさから目を見開く。
それなりに海外生活も長い次元はよく知るメニューでもあるし、お手軽にあるもので作れる一品だったりもしたことで好きと言うほどではないが食べつけていた。
適当な余り物を濃い目に市販のサルサソースなどで味付けして、市販のトルティーヤチップス(なければポテトチップスでも代用して)に乗せれば出来上がりのお手軽軽食である。
どうしても油物に油物を乗せるので、食べ過ぎには注意だが。
「悪いが、先にやってるぞ」
冷めたら味が落ちるのは経験上知っていたので、そう宣言してまずバーボンを口に運ぶ。
先入観のない、フラットな舌になじむ程度の量を口に含む。
そして口に拡がるねっとりとした甘みと深い味わい。
ともに広がる芳醇な香り。
次元の脳内にこれまで味わってきたバーボンのリストが広がる。
そして、一つの答えにたどり着く。
「『ブラントン』か…いい趣味だ」
それ以上は何も言わない。
酒飲みの口は蘊蓄を語るためのものではなく、酒を味わうためのものだ。
そう言わんばかりに黙ってもう一口。
しかし、先ほどよりも多くを口に含んで喉を微かに焼く刺激と喉から口までを満たす香りを楽しむ。
そのままナチョスを一枚口に含んで噛みしめれば、ソースの酸味と辛味、チーズの甘さ、そしてひき肉の旨味と油。
こうなると次元の口はその後味をブラントンでフラットに戻そうとまた一口口に運ぶ。
そして、飲み干すとブラントンの芳醇な香りを含んだ溜息を漏らす。
「なるほどな…提督にしとくにゃ惜しい腕だ」
「そうか?あくまでも家庭料理の延長のつもりなんだがな、俺としては」
正直な感想に謙遜気味に答える金城提督。
しかし、その顔は次の料理の準備なのか手元から離れない。
「美味そうだな、一口くれよ~次元」
「ヤだね、自分の分が来るまで我慢しろ」
しかし、無粋と言うべきかルパンが甘えた口調で次元の目の前のナチョスに手を伸ばす。
しかも、間に加賀がいるのに取ろうと身を寄せるせいで、加賀が二人の間に挟まれて少し顔を赤くしていた。
「…あの…提督…」
困ったように、しかし、喜色を声ににじませつつも何といっていいのかわからないらしい加賀に次元は溜息をつきながら、ルパンの手を叩き落とした。
(戦闘の時のように大胆にいきゃいいものをよ…)
突っぱねられて唇を尖らせたルパンが、フンとばかりに鼻を鳴らす。
その隙に龍田がカウンターの椅子をルパンに寄せたのを次元は横目で見ていた。
「ケチくせぇ野郎だぜ、ったく」
「テメェに言われたくねぇよ。スパゲティだって、すき焼きだって、お前はいっつも多く取っていきやがって」
多少カチンときた次元が過去を挙げて、鼻で笑う。
「何ィ!?晩飯奢ってやっただろうが!?」
「俺ァ13回奢らされたな」
「数えてんじゃねぇよ!!そういう所がケチくせぇんだ!!」
再び肩を怒らせて声を荒げるルパンを鼻で笑って、次元は見せつけるようにナチョスをまた一つ口に運ぶのだった。
今にも飛びかかろうとするルパンの両肩に背後からそっと苦笑しながら手を添える龍田。
それを横目で見ながら、自分の酒を楽しむ次元であった。
ちょっとマニアックな小ネタを交えつつ、じゃれあう二人でした。
ちなみにこのEX3が終了後、本編は大きく動く予定です。
一応言っておきますが、ハッピーエンドの方向への一歩を踏み出します。
前回イベ(16春イベ)と、本日より始まる夏イベの内容を見て、それを加味した話になるかと。
次回予告というわけではないですが、お楽しみに。