大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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初めて投稿したもので、感想返しが感想のページでできることを今日初めて知った方、隠岐です。

『炎のたからもの』はガチ。


さらに先ほど小説情報を確認したところ。(12/30 午後11時過ぎ)

UA5021
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UAって何ですかね?閲覧回数でしょうか?
まさにメダマドコー?




4.ガンマンは銃の整備をするようです。

さて、ルパン一家で一番暇なのは誰か。

 

 

ルパンは多忙である。

 

今は『艦娘に人間らしい生活をさせるため』の様々な企みをしている最中である。

先日までは酒保の整備と酒保を使わせるための取り組み、で大変だった。

ルパン札の発行に、様々な商品の入手の段取りなど。

 

入手の辺りは本当ならば大本営に丸投げでもよかったのだが、浦賀曰く「途中までやって丸投げするのか。そんな無責任な男なのか、かの大怪盗の孫が?」と言われてしまえば放り投げれない。

ネットをはじめ、様々な方面から買い取るべき企業の選出や資金運用などすべての段取りまで整えたのだった。

 

現に今日、酒保に商品を持ち込んだ運輸会社はルパンが立ち上げたものである。

ルパンが社長ではなく、海軍の持ち株会社で、社長は元艦娘『陸奥』。

 

艤装を精神的な理由で纏えなくなった、大本営預かりだった艦娘に職を与えることになった。

数十人の重巡クラス以上だった艦娘に大型トラックの資格を取らせて、海軍関係の物資運搬の任をつかせることになった。

海軍関係の、民間に任せれない仕事を安心して任せれる会社となった。

 

酒保も元は少し品物を幅広く取りそろえたコンビニだったはずが、今では鎮守府の隣のちょっとした空き倉庫をまるまる酒保へと変更した。

さらに酒保の隣に専門のカタログショップを設置。

一人の担当の元艦娘が、それぞれの艦娘の希望商品をカタログから選ばせて、取り寄せを手配するのだ。

 

 

 

では、五右衛門は今はどうしているのか。

 

具体的には、朝潮型と五右衛門はどうなっているのか。

 

まず酒保任務からは解放された。

先日ルパンと浦賀が手配した元艦娘の店員を雇うことになったからだ。

ただ、着任と同時に解放されたわけではなく、朝潮型と五右衛門たちも数日の経験からいくつか教える必要があったため、数日の教育期間が必要だった。

 

そして、朝潮型6人が手を取り合って歓喜の日を迎えた。

 

「いよぉ、大変だったみたいだな。思ったより着任に時間かかっちまったせいで、お前らには苦労かけて悪ィな。」

「いえ、司令官のお役に立てて何よりです!」

 

朝一番で朝潮型が揃って、任務終了の報告をしたのを受けてルパンは苦笑して煙草を揉み消した。

ルパン一家のお約束の山となった灰皿は存在しない。

執務室詰めの艦娘たちが即掃除をするのである。

 

理由は『多すぎると消しそこないの煙が煙いから』。

喫煙者は肩身が狭い。

とはいえ、それで止めるようなルパンと次元でもないのだが。

 

そして明石の三つ目の特別任務は『空気清浄機』だった。

それはルパンと次元の執務机の隣に設置された。

 

明石曰く「ええ、私は『家電工作艦兼大工艦』ですよ、ええ。わかりました。」と死んだ目をしていたらしい。

大淀曰く。

「でもできるのは明石しかいなかったんだから仕方ねぇじゃねぇか、大淀ちゃん作ってくれる?」の一言で片付けられもしたが。

 

 

忠犬と名高い朝潮はくたびれたような顔色だったものの、ピッと背筋を伸ばして敬礼を返す。

他の妹たちも態度には差がありつつも敬礼をしていた。

 

「とはいえよ、お前さん方が貧乏くじ引かされたのも確かなわけよ。

んで、お詫びってわけじゃねぇけど、三日の休暇とちょっとした『支給品』を用意したから受け取ってくれ。

休暇が終わったらそれぞれ遠征とか出撃に従事してもらうけどよ。」

 

休暇と支給品と聞いて6人が顔を見合わせ、歓喜に顔を輝かせる。

 

「『支給品』は酒保の受付に言づけてるから、受け取ってくれ。

とはいえ、俺も年頃の娘さんが何が喜ぶなんてわかんねぇからよ。気に入ってもらえりゃいいんだけど。」

 

ニヒヒヒ、とニィと口を横に広げてルパンが笑う。

 

「あの……五右衛門さんは、どうなんでしょう?」

 

そっと、おずおずと挙手をして問いかけたのは霰だった。

霞や大潮も一歩後ろにいた五右衛門はどうなるのかと気になったらしく、ちらちらと見ている。

それを見て、ニヤァとルパンはさらに楽しそうに笑う。

 

「あらぁ、五右衛門ちゃんも隅に置けねぇなぁ!!」

「止めぃ。同じ釜の飯を食った、というだけだ。」

 

ルパンのからかいだとわかっている五右衛門はムッとした顔つきで切り捨てる。

 

「んなっはっはっ、五右衛門には特別手当と特別な晩飯を用意してるから楽しみにしてな。

あと、お前さんの気に入りそうな着物も、な。ああ、休暇も一緒だ。」

 

それを聞いてよかろうと小さく呟くように言って、ふぅと少し寄った眉を元に戻す。

 

「では、司令官。これにて失礼します。朝潮型6名、休暇に入ります!」

「おう、ゆーっくり骨休めするんだぜ~。」

 

朝潮の返事とともに気楽に手を振ってルパンが見送る。

 

 

 

「提督は軽いのよ!もっと、こうシャキッとしろってのよ!」

 

その態度が気に食わなかったのか、執務室から出て霞が唇を尖らせる。

 

「でも…ちゃんと休暇くれたり、酒保とか…皆のために働いてくれる。」

「それは…そうだけど、もっとあるでしょう!!」

「霞?それくらいにしときなさい。」

 

朝潮の諫めにわかっているのか、霞も口を閉ざす。

 

「…でも、どんなものが支給されるのかな?」

「うふふ…チョコクッキーだったら嬉しいわ~。」

 

先日五右衛門からもらったチョコクッキーが気に入ったのか、荒潮が目尻を垂らす。

 

「フンッ、でも200ルパン程度じゃないの。」

「でも~今までそのたった200ルパンすら今までなかったのよ~?」

「うぐっ…ま、まぁ?もらえるものはもらっといてあげるけど!」

「満潮っ!まったく…霞といい…反抗期かしら。」

 

満潮も霞同様に突っかかっていく。

それを見て深い溜息を朝潮が漏らしながら頭を振る。

 

「あの~提督から支給品があるって聞いたんですけど~?」

 

話している間に離れの酒保へと着き、荒潮が係の元艦娘へと話しかける。

 

「あ、聞いてます!こちらになりますね。」

「…なに、これ?」

 

何やら一抱えもある箱が受付の後ろに並んでいる。

それを見て全員呆然とし、何とか霞が呟く。

 

「え?提督から指示された羽毛布団のセットですが?」

 

ふらふらとした足つきで朝潮が箱の蓋を開ければ、中の布団袋を手でそっと押す。

すると羽毛らしくふんわりと押し返してくる。

 

軍人である艦娘は、どんな布団や寝所だろうがすぐ寝付ける。

というか寝付けないと軍人なんかやってられない。

そのため、というわけではないだろうが支給品の布団は薄く硬い煎餅布団。

いつ打ち直したのかもわからないような綿布団だった。

 

それが羽毛布団である。

朝潮に至っては何故か天井を見つめて敬礼するわ、荒潮は「あらあら~」とずっとリピートする。

霰は全身で柔らかさを感じようと段ボール箱の中、しかも布団袋に頭から無言でダイブした始末。

 

間違いなく、この日一番の受付の元艦娘の大仕事は奇行に走った朝潮型をどう正気に戻す作業だった。

 

 

 

さて、では次元はどうしているのか。

 

正直、好き勝手やっていた。

とはいえ、仕事をしていないわけではない。

 

ルパンの指示した出撃・遠征部隊の世話を見ていたのである。

次元の専門は銃器と運転である。

 

潜水艦から装甲車まで運転すれば、対戦車ライフルやロケットランチャーまで取り扱う。

とはいえ、命を預ける相棒はコンバットマグナムだが。

 

艦娘も銃器、ではないが砲撃を専門とする。

その指導や管理を仕事とした。

 

そのついでではないが、実際の出撃や遠征の前後に顔を出す。

実際の出撃の際に気付いた点をいくつか聞いたりとした細かい仕事もやることにした。

 

その中で戦闘方法や砲撃のアドバイスもしたりもしていた。

一番本業に近いことをしていたのは次元であった。

 

「とはいえ、結構間が開くんだよな。いい機会だしな、相棒のご機嫌でも取っておくか、ね。」

 

出撃班をいつも通り見送ってから、ぶらりと鎮守府を散歩していた。

いつもは当てもなく煙草をくゆらせながら思案にくれたり、景色を眺めていたりとのどかな生活を送っていたが今日は違った。

 

今まで命を預けてきたコンバットマグナムの調子がイマイチだったのだ。

そこで龍田に相談したら、明石の工作室を紹介されたのだ。

 

「ちょっくらごめんよ…アンタが明石、だよな?」

「ええ、そうですよー。今度は何ですか?クーラーですかー?浄水器ですかー?」

「…なんだか、やさぐれてんなぁ…コイツの手入れと調整を頼みたくてな。

なぁに、道具さえ貸してもらえれば…」

 

椅子に力なく座って遠い目をしたピンク色の髪をした女性に話しかければ、薄い笑みを浮かべた。

何だか深入りしたらヤバいと思いつつも、手入れの専門道具が欲しかった次元は懐から使い古したコンバットマグナムを出した。

 

「ああ、銃の手入れですか……銃ッ!?」

「お、おう…コイツは長年の相棒で、ね。」

「貸してくださいッ!!」

 

手のひらに乗せて見せていた次元のマグナムを次元が反応できない間に奪い取る。

次元が目を見開き、慌てるが明石はマグナムを高く掲げたり角度を変えたりと返そうとしない。

 

「これ、塗装が剥げるまで使い込んでるっ!凄い!こんなになるまで大事に使われてる銃って見たことない!!」

「あ、ああ…長年の相棒だ…。」

 

明石の剣幕に次元も強く出られずにたじたじとなってしまう。

明石の先ほどまでのどんよりした雰囲気は一掃され、あからさまに目が輝いていた。

 

「で、で?どうしたんです?」

「シリンダーの回り具合とハンマーが若干重い。あと、弾を作りてぇんだよ。」

 

次元はマグナムを奪われながらも、明石の態度からして悪い事にはなるまいと素直に答えることにした。

銃好きに悪いヤツはいねぇ、などと言うつもりはないが、明石の雰囲気からして大丈夫だろうと思い、真面目な相談をしてみることにすると、明石は弾が入っていないことを確認したうえでハンマーを起こしてみた。

 

「…?そうですか?むしろこれくらいじゃないですかね?」

「いや、僅かに軋むような抵抗を感じるんだ。大よその推測はできてるけどな。」

 

次元のはっきりとした言葉に首を傾げるものの、信じることにしたのか何度も撃鉄を起こしては戻す。

 

「…んー、やっぱりよくわかりませんね…。でも、こういう撃鉄を起こす動作のいらないオートマチックの方がいいんじゃないですか?」

「ヘッ、俺はあんな下品な銃は嫌いでね。」

 

わかってねぇな、といつもの軽い猫背とともに帽子を軽く下ろす。

そのまま近くにあった椅子を引き寄せるとギシッと音を立てて座る。

 

「命のかかった瞬間にジャムったらどうする?それにな…長年連れ添った相手が一番だ。」

「あらら、ロマンチストですねー。」

「うるせぇ。そンで、できんのかい?できねぇってんなら自分でやるぜ。」

「んー一応解体掃除と、計測してみますね。歪みとか、なのかなぁ?」

 

まだわからないのか、明石は首を傾げながらも頷き返す。

次元も仮の答えが気に入ったのか、そのままさらに帽子を深くかぶって鼻先につばがつきそうなほど下ろす。

 

「終わったら起こしてくれや…あと、弾の製造の準備もしてな。」

「はーい。明石にお任せ下さい!」

 

そう言って、明石は作業台らしき机に向かった。

ちらりと帽子のつばの隙間からその背中を見送ると、そっと目を閉じた。

 

 

 

「…元さん!次元さん!起きてください!!」

「…んぉ…おう、できたかい?」

 

それなりに深く寝てしまったのか、揺り起こされてやっと次元が目を覚ましてあくびをする。

明石は依然として目を輝かせて次元を見つめていた。

 

「凄いですね!コンマミリ単位の削れによる歪みですよ!?」

「あん?…あぁ、やっぱり歪んでたか。」

 

大きく口をあけてあくびをしながらマグナムを受け取れば、ハンマーを起こして動作を確認する。

しかし、懐にしまった後にガンアクションを数度繰り返す。

 

「…グリップ、弄ったか?」

「気づきました?…少し削れ過ぎてるようだったのでグリップのパーツを新造した上で、癖の形になるように調整しておいたんですが…。」

 

怒られると思ったのか、少し首を竦めて恐る恐る上目遣いで次元を見る。

それを見て、次元は鍔を上げて目をのぞかせながらニヤリと笑った。

 

「…ほんの少し違和感が、な。しっくりきすぎて、よ。

…いい腕してんじゃねぇか。」

 

空いた左手で明石の髪をグシャグシャッと掻き回す。

髪が乱れたのも気にせず、明石は顔を綻ばせた。

 

「ほ、ほんとですか!?」

「おう、俺は銃を裏切らない。だから銃も裏切らねぇんだ。

銃に関して嘘なんかつくかよ…また相談しに来るぜ。」

 

ふと次元が腕時計を見てから、再度懐にマグナムを仕舞う。

 

「特殊弾を作りたかったが、タイムオーバーだ。今度来る時には準備は頼むぜ。」

「はいっ!徹甲弾ですね!準備しておきます!!」

 

喜色満面といった様子で力いっぱい言ってくる明石に片手を上げるだけで答えて工作室を後にした。

 

「ヘッ、変な女だ。…だが、腕は確かみてぇだな。」

 

通い慣れてきた発艦所へと歩きながら、懐に手を入れて数度グリップを握ってニヤリと次元は笑うのだった。




次元と明石の話をするつもりが、気が付いたら半分ほど五右衛門と朝潮型とルパンに盗まれた件。

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