大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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ランキングを見てみたら、デイリー7位・ルーキー1位。
なにこれ、怖い。





5.鳳翔は決意したようです。

「提督、お時間よろしいでしょうか?」

 

執務の合間にコーヒーを啜っていた執務室のルパンの下に鳳翔がやってきた。

何やら普段の穏やかな顔つきではなく、歴戦の航空母艦としての顔があった。

 

「あら~どったの、鳳翔ちゃん?そーんな怖い顔なんかしちゃってさ。」

「いえ、少々真剣なお話を。…艦娘ではありますが、前線を退かせていただきたくまいりました…。」

 

急と言えば急な鳳翔の言葉に執務室詰めの高雄型たちが目を見開く。

前鎮守府の時から一番に参戦した航空母艦であり、経歴もあって最高練度の一人である。

祥鳳・龍驤・飛鷹・隼鷹といった軽空母、そしてただ一人の正規空母赤城が追い付かんと日々の訓練を行っているところである。

 

「提督もご存知の通り、私の艦載機能力には限界があります。

機種は三種、加賀さんや赤城さんに比べれば半分程度しかありません。」

「そりゃそうだけんどね?だからといってそれだけじゃないでしょ。

次元が聞いたら撃った数じゃねぇって言っちゃうよ?」

 

少し渋い顔をしながらルパンが引き止めるが、鳳翔の意思は固いらしく静かに首を横に振った。

 

「かもしれません。しかし、決めたのです。」

 

その瞳を見たルパンは静かにため息をついた。

ルパンは鳳翔の澄んだ瞳の奥の決意を見た。

 

「そうかい…前の鎮守府の時からの功績を鑑みて、それ相応の退職金を準備するんで待ってくれや。」

「…いえ、ご心配は無用ですわ。完全に退役したい、というわけではないんです。

あくまで本格的な出撃メンバーから一歩退き、教導艦に準じた扱いにしていただきたいのです。」

 

それを聞いてホッとしたのか、ガクッとルパンが肩を下ろす。

ルパンとしてもいずれはその座を後進に譲るとはいえ、最高練度の一人がいなくなるのは辛いところだった。

 

「なんでぇ、ビックリさせねぇでくれよ、鳳翔ちゃん…。

じゃ、基本海域の出撃とかはナシで、普段は訓練を担当してもらう、ってことで。

それはそれで助かるわ、俺も次元も飛行機の運転は何とかなるけど、運用なんてのは専門外だからなぁ。」

「はい、大侵攻作戦などの時に手が足りないようでしたら、その時はお手伝いしますが…あくまで、いざという時、とお考えください。」

 

言外に鳳翔はその時もまだ自分の力が必要ならば、という意図が含まれていることはルパンもわかっていた。

頑なだねぇ、と苦笑しながら肩を竦めるが無理強いをするなどはルパンの美学に反するのでそのまま認めるようだ。

 

「退職金、と甘えるつもりはないのですが…。」

「ん~?」

 

 

 

 

「……大工艦じゃないんですけどねー。」

「そう言わないの、明石ちゃん。明石ちゃんの欲しがってたレンチセット買ったげるからさぁ。

ついでに俺のワルサーも弄っていいからさぁ。」

 

ルパンと鳳翔、明石、秘書艦として摩耶が妖精たちを引き連れて、鎮守府の傍に立っていた。

 

ルパン鎮守府の立地は波止場沿いの中心地に立っている。

その鎮守府には来客用の施設や執務室、ルパン達の部屋が入っている。

その隣には艦娘用の宿舎があり、その中に食堂などが詰まっている。

 

その宿舎の隣には元倉庫だった酒保、さらに隣には出撃用の発艦所(プレハブの待機場所含む)、装備用の倉庫とその中の明石の工作室。

 

その宿舎とは逆になる、鎮守府の隣に立っていた。

まだ空き地、ではない。

 

そこには間宮・伊良湖の『甘味処・間宮』が建っていた。

さらにその隣に全員で立っていた。

 

「それ、自分で手入れするのが面倒だからじゃないですかー?」

「そんなこたぁないよ~?なに、次元とは態度が違うじゃないのさ。」

 

唇を尖らせて明石を見るルパンだが、その目はやり取りを楽しんでるのは明白だった。

 

「…どーでもいいからちゃっちゃとやれよ。仕事は山積みなんだからよ…。」

 

摩耶の代名詞と言っても過言ではない悪態じみた激励も力ない。

噂に聞いた激務である執務室詰めでくたびれていた。

 

「へいへい、じゃあココに建てちゃえばいいよ。使う予定ないし。

細かいことは明石ちゃんと相談しちゃって。」

「本当にありがとうございます。」

「俺ァ何もしねぇさ。上手い事やって、鎮守府の経済を回しちゃってちょうだいな。

経費は退職金の前借の範疇で落としてあげっからさ。」

 

鳳翔は先ほどまでの真剣な顔を綻ばせてルパンに頭を下げる。

それをひらひらと手を振って流す。

 

鳳翔のもう一つの願いというのは、『小料理屋』をやりたいということだった。

実際、ルパンの下には嘆願書が届いていたのもあって許可を出したのだった。

 

その嘆願書は二つのグループに分かれる。

一つは隼鷹や那智をはじめとした飲兵衛グループである。

 

酒保にて様々な酒を安く、気軽に手に入れることが出来るようになった。

しかし、あくまで各自で買うしかない上に、つまみなども市販のものしか買えなかった。

艦娘に限らず、人間の欲は際限ない。

 

そこで出た要望は『いろんな酒を手ごろに飲めて、つまみの美味い店が欲しい』だった。

少々我儘にも思えなくはないが、ルパンも飲兵衛である。

その気持ちは十分にわかったし、調べてみればそれほど多いわけではないが、鳳翔が居酒屋や料亭を鎮守府内でやっていることもわかった。

あくまで艦娘のため、というよりは提督のためという趣ではあったが。

 

 

そしてもう一つのグループは、天龍と次元をはじめとした若手グループ。

間宮・伊良湖の運営する食堂の食事は美味い。

が、限度がある。

 

それは、食材の類は『海軍の支給品』ででしかない。

そして、海軍の中では艦娘は『兵器』でなければ、『一兵卒』という扱いである。

 

力のある存在に対しての警戒からか、人類社会の中でも、海軍(大本営)の中でも相応の数で反艦娘派も存在するのである。

その程度は違いはあれど、どうしても多数派になっている。

 

現在浦賀をはじめとした艦娘擁護派は中立、もしくは程度の軽い反艦娘派の取り込みを様々な取り組みの中で図っている。

 

 

閑話休題。

 

天龍・次元グループの主張は『成長期の艦娘には足りねぇ』だった。

 

酒保での売れ行きナンバーワンは、カップラーメン。

『一兵卒』である艦娘への食事は最低限であり、ルパンが食堂をのぞいた時は小食なのか、と言う程度だった。

成長期が艦娘にあるかどうかはさておき、限られた食材・調味料の中で間宮と伊良湖は頑張っていたものの、限界があった。

 

当然、その嘆願を受けてその改善もルパンは図ったが、嘆願の意味もわからなくはない。

いくら家の食事が美味かろうが、たまには違うものが食べたくなる。

そして、ふと食べたくなるものもある。

 

それを『ルパン札』で食べれるようにしてほしい、というのが天龍・次元グループの願いだった。

 

 

正直、鳳翔の願いは渡りに船だったわけで、明石に任務という事でやらせることにした。

冗談めかしてルパンは言っているものの、まだ支給はしていないものの明石の給与査定は鎮守府最高になっていたりもする。

 

「明石ちゃん、応援はいるかい?」

「そうですね…妖精さん達もですが…うーん…。

夕張ちゃんと北上さんをお願いしてもいいですか?」

「北上!?…あぁ、そういえばアイツも工作艦経験あったっけ。」

 

摩耶がギョッとした様子で驚くものの、すぐに思い出したらしく納得した。

しかし、困った顔をするのはルパンだった。

 

「北上ちゃんはなぁ…悪いけど、北上ちゃんはダメだ。育成を優先したいからね。

…代わりに、五右衛門つけるわ。

アイツなら斬鉄剣でデヤァァーッ!って木材でも鉄でも斬ってくれるからさ。」

「建てた建物斬られたくないんですけど。」

「流石に斬らねぇだろ…。」

 

明石のあんまりな言葉にひきつった笑みを摩耶が浮かべる。

それを笑いながらルパンは鎮守府へと向かう。

 

「んじゃ、メンバーの選出と査定をよろしくなー。」

 

 

 

 

 

 

 

「何故、拙者がかような事を…。」

 

数日後、五右衛門が現場で木材を抱えていた。

それに続くのは第六駆逐隊の4人。

 

「お仕事なのです。仕方ないのです。」

「…無常だ…。」

 

五右衛門が抱えた柱とも言える木材と同じ大きさの木材を第六駆逐隊の全員が抱えていた。

先日電の言っていた艦娘の力は確かだった。

 

ルパンの手配した建材と鋼材、そして調理器具を五右衛門と第六駆逐隊が現場に運んでいた。

 

 

「この木材で、最後だ。これで全てだな?」

 

数多くの木材や鉄鋼を建築予定の現場に山のように積む。

 

「ええ、ありがとうございます。ひとまずご休憩を。」

「む、かたじけない。」

「鳳翔さんありがとう!」

 

冬とはいえ、重い木材などを運んだ五右衛門たちは汗をかいていた。

そこに鳳翔がお礼とほどよい熱さのお茶を水筒から注ぐとともに、竹皮に包まれたおにぎりを差し出した。

 

「で、これからどうするのだ?まだ土台すらない状態では野ざらしにするしかあるまい。」

「ええ、そこは妖精さんのお仕事ですよ。」

 

明石は五右衛門の疑問に楽しそうに笑って、足元の妖精さんたちを指さす。

その先頭には鉢巻きに法被、さらに手にはドリルらしきものを持った妖精さんが立っていた。

 

「本来はダメコン、轟沈防止装備の妖精さんなんですけどね。見ての通り、大工仕事も得意な妖精さんなんですよ。」

「…得意、とはいっても…。」

 

鳳翔のおにぎりに一口かじりついた五右衛門が応急修理女神を見下ろす。

応急修理女神は『任せろ』と言わんばかりに腕組みをしたまま頷き返す。

頷かれても五右衛門には信用が出来そうにない。

 

どう見ても体長10~20cm程度しかない身体であり、自分が運んだ木材を担ぐことも出来そうにない。

どうやって建てるのだと困惑しきりで見ていると、応急修理女神が建築予定現場へと向く。

 

『…jjgakeiuhanhaijxaij!』

 

応急修理女神の口が開くと、何語ともつかない音を放つ。

すると、現場と建材が輝きだし、数十秒経てばそこには立派な小料理屋が建っていた。

 

「な、なんと…!!」

「ハラショー。流石女神様だ。」

 

五右衛門の隣でおにぎりを食べながらそれを眺めていた響がさほど動揺せずにそうとだけ呟くのを見て、当たり前のことなのかと困惑する。

そして、片手に持っていたおにぎりの残りを口に運び、噛みしめる。

 

ほんの少し塩味が強いが、汗をかいた身にはありがたかった。

そしてその中にほんのり甘い昆布の佃煮。

 

「まことに、美味。鳳翔殿、営業を開始した暁には寄らせていただく。」

「あら、ありがとうございます。」

 

五右衛門の言葉ににこやかに会釈で返す鳳翔。

それに反応したのが暁だった。

 

「五右衛門さん、なぁに?……ッ!ほら、ぼんやりしてないで最後の仕事よ!」

 

会話の合間の暁という単語に反応してしまったが、勘違いとわかると顔を真っ赤にして促す。

その手には残った運び込む予定だった調理器具の入った箱があった。

 

それを見て五右衛門は業務用の大型のコンロの入った箱を手に持つのだった。

 

 

 

あくまでも妖精が作れるのは建物が限界だったようで、夕張と明石は入ってからガスや電気の開通作業に入った。

それに応じて第六駆逐隊と五右衛門が機材を運び込んだりして、朝から始まった作業は夕方になってやっと完了した。

 

そしてその夜は明石・夕張・五右衛門・第六駆逐隊の7人で豪勢な食事と舌鼓を打ったのだった。

全員の顔には満足そうな笑顔。

 

「ふん、ルパンもたまにはマシな仕事を回すものだ。」

 

鳳翔の出汁巻き卵を肴に、日本酒を口に運びながらの五右衛門の呟きを紡いだ口の端はわずかに吊り上がっていた。

それを見て、鳳翔はクスクス笑いながら新しい熱燗をテーブルに置くのだった。

 

「あらあら、男同士の友情っていいものですね。」

「フン…ただの腐れ縁でござる。」

 

それを見た面々は笑いながら食事と酒に興ずるのであった。




「トワイライト・ジェミニ」最高です。

「月と太陽のめぐり」は久川綾だけあって、めっちゃ沁みる。
あと、最後の「ベイビーって呼んでくれよ。」が何とも言えないですね。


というわけで、皆様よいお年を。
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