大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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折角の正月なので、正月ネタを挟んでみました。

あと、九州の片田舎在住で冬コミに行けないのでメロ○で「IRON ATTA○K」様と「交響アクティブ○ーツ」様の新譜を購入しました。(通販)

はよ!!はよ!!!!!!


EX1.ルパン鎮守府のお正月

さて。

 

ルパンが鎮守府にやってきてから数週間も経った。

 

「というわけで~、大本営は最低限の人間を残して年末休暇に入るみたいね~。」

「気楽なもんだな…艦娘は出撃してんのに、軍人様は炬燵でお屠蘇かい。」

 

ルパンへの報告をたまたま居合わせた次元が鼻で笑って嫌味を言う。

 

いつものデスクに脚を上げるスタイルではなく、デスクに肘をついてコーヒーを手にしていた。

今日の執務室詰めに雷がいる。

普段なら脚をデスクに置いて椅子にもたれかかるのだが、何度も注意されてから雷の前ではやらなくなった。

さすがのガンマンも、小学生とも見える雷に「しょうがないダメな大人」といった様子で叱られ、世話を焼かれては耐えれなくなったらしい。

 

なお、次元の隣には明石印の空気清浄機が二つ置かれている。

完全に雷の仕業だった。

 

「まぁそう言うない。お役所仕事だから休暇も取らせないと大変なんじゃねぇの?」

「海軍も労基署が怖いってか?…怖いから、俺寝る。」

 

ルパンの苦笑交じりの言葉に次元は肩を竦めてブラックコーヒーを飲み干してから帽子を深く下ろす。

しかし、そんなことを彼女は許さなかった。

 

「ダメよ、次元さん!ちゃんと報告書書かなきゃダメじゃない!」

 

お盆を片手にやってきた雷だった。

素早く近づくと、帽子を取り上げようと手を伸ばし、それに気付いた次元が慌てて飛び起きる。

 

「なっ!?コイツはダメだ!」

「室内で帽子なんて良くないわ!私が綺麗にしてあげるから貸しなさい!!」

「止めろっ、ラベンダーの匂いはもうこりごりだっ!」

「煙草臭い帽子なんかかぶってたら、髪の毛まで煙草臭くなっちゃじゃない!私に任せていいのよ?」

 

先日寝ている隙に帽子を次元が奪われたことがあった。

日中に鳳翔にしごかれた空母達と飲み会を開いた際に、飲まされ過ぎてフラフラになった際に雷が盗んだのだ。

流石は昔の豪傑揃いの艦長達と生死を共にした艦娘たちである。

ウワバミ揃いだった。

 

そして翌朝、目を覚ました次元の枕元に帽子は返されていたのだが。

きっちりとアイロンがかけられ、洗剤の匂いなのか、それともコロンをふったのか。

次元の帽子からは爽やか、かつ、華やかなラベンダーの香りが漂うことになった。

 

それから匂いが落ちるまでの数日間、次元は銃を撃つとき以外は帽子は手に持つだけとなったのだった。

当然次元も雷の善意からの行動であることはわかっているので、消臭剤などをふるということは出来なかった。

 

「わかった!わかったから!仕事するから、帽子は許してくれっ!!」

「わかればいいのよ!」

 

椅子で身体を傾けて雷の手から逃れようとした次元は悲鳴を上げる。

それを見て、ふんすと鼻息を吐くようにドヤ顔で胸を張る雷。

どこからどう見てもダメな父親と娘の図に執務室詰めの艦娘達もルパンも笑いをこらえきれない。

 

空になったカップを下げて、雷が給湯室に行こうとしたルパンが呼びかける。

 

「次元ちゃん、尻に敷かれちゃってまぁ…。…あ、雷ちゃ~ん、俺にも」

「わかったわ~。」

 

先ほど報告を終えた龍田はルパンの隣のデスクに戻っていたが、ルパンが雷にコーヒーを頼む前に立ち上がっていた。

 

「いやいや、毎回毎回龍田ちゃんにお願いするのも何だし、次元のついででいいんだよ?」

「ええ、だから私も飲みたくなったから、私のついでなのよ~?それとも私がわざわざ提督のために手間をかけると思った~?」

 

ルパンが少しひきつった笑みのまま龍田印のコーヒーを辞退しようとするが、それに小さく首をかしげつつもいい笑顔で言う。

そこまで言われたらルパンももう断れない。

 

「ア、ハイ…ヨロシクオネガイシマス。」

「しょうがないわね~私のついでだもんね~。」

 

そう言いつつも、少し弾んだ足取りで龍田も給湯室へと向かった。

 

とはいえ。

先日の執務室詰め専属(仮)宣言の後、室内を見渡せる一番奥の壁際のルパンの執務机のすぐ隣に並んで机を置いた龍田が。

毎回毎回ルパンがコーヒーを飲みたいと言おうとすると、『偶然』龍田も飲みたくなって。

さらには妖精さん印の本格的なエスプレッソマシンを給湯室に置いた。

 

もうバレバレである。

 

「ヘッ、ざまぁねぇな。お前も人の事言えねぇじゃねぇか。」

「うるへー。…ま、龍田ちゃんのコーヒー、美味いからいいんだけっどもな。」

 

次元の仕返しに唇を尖らせてルパンはまた書類へ視線を戻した。

 

 

そして。

ルパンの手には赤いマグカップに入ったカフェ・マキアート。

隣の席の龍田の手には『偶然』飲みたくなった、カフェ・モカが青いマグカップに入っていた。

 

ルパンのもともと使っていた無地のマグカップ(酒保で適当に購入した)と全く同型の色違いなのは『偶然』が重なった結果であり、他意はない。

重ねて言うが…他意はない、いいね?

 

「まぁ、お正月だしねぇ。ウチも完全休業にしちまうかね?」

「それはどうかしら~?一部の艦娘からは怒られちゃうわよ~?」

「相変わらず、仕事熱心だねぇ…。なら夕方で仕事切り上げちゃどうだ。

年末に向けて少しずつ仕事減らして、夜は完全休業ってので。」

 

ゆっくりとルパンはコーヒー、カフェ・マキアートを飲みながら頷く。

 

「妥当な線だな。じゃ、龍田ちゃん、お仕事大好きなメンバー優先でシフト組んじゃって?」

「は~い、了解~。…ついでに忘年会もやらない~?」

 

唐突な言葉にルパンは少し驚きつつ、龍田を見る。

 

「忘年会?」

「理由は何でもいいのよ~?ただ、提督はたまに食堂に行ったり、散歩程度にブラつくだけであまり艦娘たちと話したりしてないじゃない~?

それって、あまりいいことだと思わないのよ~。」

 

少し小首を傾げながら、龍田は軽く考える素振りを見せながら言葉を続ける。

 

「提督がトップだって、皆わかってるわ~。今の生活があるのは提督のおかげだってことも。

でも、殆ど話したことない人を信用するのは難しいわ~。」

「道理だな。そこで忘年会で色々な艦娘達と話す機会を作ろう、ってわけか。」

 

龍田の説明に納得して、次元が頷く。

 

「そういうこと~。…どうかしら~?」

「いいじゃねぇか、ルパン。実際出撃したがるメンバーは執務室詰めにはなりたがらねぇ。

だからそういう連中はお前がどんなヤツなのか知らねぇからな。」

「そうね~訓練とかで次元さんや五右エ門さんの方がそういう子たちは親しいものね~。」

 

渋い顔つきになったルパンが外を見れば、海に面した窓は晴れた海を映す。

その先には小さい点だが、出撃から帰ってきた艦隊が見えた。

 

「普通の鎮守府じゃ旗艦が報告に提督の下に報告する事が多いけど、分業で次元さんがやってるものね~。」

「とはいえ、あれもこれも俺がやるのもなぁ…。」

 

言い訳じみた言葉に苦笑を龍田がする。

実際ルパンの処理をする仕事を間近で見続けているからこそわかるが、その量も質も尋常ではないのが確かだ。

 

だからこそ、次元も五右エ門も渋々ながら手伝っている。

 

「ま、いいや。それじゃ、間宮ちゃん達と、鳳翔ちゃんに相談して、晩飯と合わせてやる感じでいいかねぇ。」

「あ、ちょっと待ってくれ、提督!せっかくだから、鍋やろうぜ、鍋!」

 

そこに意見を挟んだのが、摩耶だった。

どちらかというと出撃が好きな方の艦娘ではあるが、執務室詰めも嫌がらない。

 

いや、口では嫌がるものの、何だかんだで「仕方ねぇなぁ!!アタシ達が手伝ってやんなきゃ、いつまでも仕事終わらねぇだろ!」と。

急な提案に三人で摩耶を見る。

 

「な、なんだよ…。ほら、やっぱ皆で同じものを鍋から取って食べりゃ、仲間って感じがするじゃねぇか。

だから、食堂で何個も鍋を並べて、いろんな味とか準備してさ。」

「摩耶ちゃんナーイスアイデア。だが、それだけじゃ面白くねぇなぁ。」

 

三人だけでなく、他の執務室詰めの艦娘からも注目を集めた摩耶が気恥ずかしそうに話すのを聞いて全員が納得するが、ルパンはニヤリと笑うのであった。

 

 

 

年の瀬も迫った翌日の昼。

 

「すまねぇな、アタシのせいで…。」

「…これもまた、修行……なのか?」

「さぁ?でもこういう自分たちで作るって楽しいわよ~?」

 

摩耶が木の板を腹の前に抱えてすまなそうに言う。

その板の上には煉瓦が積まれていた。

並んで歩いている五右エ門、愛宕の手の上にも煉瓦の乗った板があった。

 

その近くには龍驤や非番の艦娘達が量の差異はあっても煉瓦を運んでいた。

全員の顔には笑顔があった。

 

それだけでは面白くない、と提案したのがルパン。

 

「どうせやるなら、でっかくいこうじゃねぇの!」

 

そして龍田を通じて、妖精さんに依頼したのが…。

『耐熱煉瓦』と鎮守府の鋼材を使っての『大鍋』だった。

 

とはいえ、鎮守府で扱う鋼材の1にも満たない。

元々数千tの船の修理に使うための鋼材である。

1とはいえ、相当の量になるのである。

 

その鍋を3つほど、駆逐艦の姉妹たちが数人がかりで運ぶサイズである。

高さは成人の腰より少し上くらい、駆逐艦の艦娘が中で正座すればちょうどいい風呂になるくらいである。

重さはそうでもないが、大きさの関係で数人で運んでいた。

 

完全にどこぞの村や島の風景である。

具体的には某5人組が出てきておかしくない。

 

 

そして運んだ先には夕張・明石がヘルメットをかぶって指示していた。

鎮守府裏手の空き地と、小料理屋・鳳翔の裏手である。

 

どうせやるなら大鍋で、一回だけではもったいないので竈も作っちゃおう!というノリである。

それを聞いた鳳翔・間宮・伊良湖がそれぞれの店のために窯が欲しい!と凄まじい熱意で言ってきたのだ。

 

その熱意に圧されたルパンが承諾。

 

間宮と鳳翔の漏らした「本格的な窯があれば、本格的なピッツァにも挑戦できるんですが…」という言葉に負けたわけではない、断じて。

 

そこで言い出しっぺの法則で摩耶が指揮を取らされた。

しかし、作る窯は二つ、竈は三つ。

 

どう考えても大晦日のタイムリミットには間に合いそうにない。

頭を抱えていたところに助けの手を差し伸べたのが愛宕たち姉妹。

 

しかし、作業を始めたところ、それを見つけたのは夕立だった。

 

「なんだか楽しそうな事やってるっぽい!!」

 

これでどんどん手の空いている艦娘たちが参加し始めたのだ。

 

それを受けて、本当は妖精に作ってもらうはずが、全員で作り上げることにした。

 

皆で煉瓦を運び、夕張・明石で地面を均し。

煉瓦を詰み、セメントを塗る。

 

皆、汗で濡れ、顔や手をセメントで汚しても笑っていた。

 

 

「…こういうものも、いいものだな。」

「そうでござるな。」

 

それを眺めて男たち三人が並んで眺めていた。

 

「あの子たちはある程度成長して生まれてくるらしいけどよ…ホント言えば学校とかでこんな風に笑ってバカやっていいんじゃねぇかな。」

 

口には煙草が咥えられ、手はポケットに突っ込まれている。

 

「ま、そりゃそうだ。俺らはこの年になってバカやってるけどな。」

「拙者ばかり、肉体労働なのは何故だ…。」

「だって、お前事務仕事、得意?」

「お前、砲撃得意?」

 

同じく煙草を咥えた次元がポケットに手を突っ込んだまま軽く唇を歪ませて笑う。

しかし、不満そうなのは五右エ門だったが、それに対して二人が笑いながらツッコミを入れれば、五右衛門も黙るしかない。

 

「こらー!このクソ提督!!煙草のポイ捨て禁止だって言ってんでしょうがー!」

「次元さんも!ちゃんと灰皿の所で吸いなさーい!!」

 

それを見つけた曙が怒ってますと言わんばかりに両手を握れば、万歳のように両手を上げて三人の方へ走ってくる。

それに気付いたのか、電も同じように手を挙げて走ってくる。

 

「「ちゃ、ちゃんと持ってまーす!!」」

 

慌ててポケットから二人が手を出せば、手には金属の携帯灰皿が握られていた。

 

「フン、何という様だ。」

 

その絞られてるのを見てニヤリと五右エ門が笑うが、そこに満潮が走ってきた。

 

「五右エ門さんもサボってないで手伝って下さい!!」

 

 

 

 

 

 

 

大晦日、日も暮れた夜。

 

「ま、一か月程度だったけど、皆お疲れさん。

今日は食い放題飲み放題なんで、好きに楽しんでくれ。」

 

そう長机とストーブが並ぶテントに向かってルパンがグラスを掲げる。

その長机にはジュースのペットボトルが並んでいた。

 

その背後には皆で作った窯があり、そこに据えられた鍋は鳳翔や間宮、そして様々な艦娘が手伝った鍋だ。

中の具材は艦娘が網を引いて取った魚もつみれなどで使われていた。

 

「来年もよろしくな。飲み過ぎ、食い過ぎねぇ程度に楽しむこった!

じゃ、乾杯!!」

「「「「「「「かんぱーーーーい!!!」」」」」」」

 

こうしてこの年最後の宴が始まった。

 

ルパンも次元も五右衛門も、様々な艦娘がやって来ては話していった。

この一か月の礼もあれば、今後の運営に対する質問もあった。

まぁ、酔っぱらいの絡み酒もあったが。

 

いずれにせよルパン達への期待は窺い知れたし、様々な話もできた。

これはルパン達にも貴重な時間だったし、艦娘達もルパンをはじめとした三人の人となりを知ることが出来た。

 

 

鎮守府の一年はこうして終わり、新しい一年が始まったのだった。




女神ア○ゲスは絶対に許さない。(何

宴会開始からが指が止まりました。
多人数のシーン、書きづらいなぁ…。


UA数・お気に入り数に固執するつもりはありませんが、感想・評価は参考にしつつも楽しませていただいております。
これからもより良い作品にする励みにさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

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