大泥棒一味が鎮守府に着任しました。   作:隠岐彼方

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というわけで、皆様お待ちかね。
龍田ちゃんの出番です。(メインとは言ってない


8.ルパンは大本営で出会うそうです。

今日も今日とて、執務室の窓の下にある竈には大鍋が大活躍をしている。

朝晩の演習が10回ずつ、それが朝晩あるため120人分の食事を賄うのである。

それも戦艦・空母といった巨艦の食事を賄うため、竈も大鍋も無駄になっていない。

 

違和感があるかもしれない。

そう、朝晩10回ずつ、である。

 

これが長門の提督が言った『特別扱い』の一つだった。

 

名目としては『放置され続け、練度の低い鎮守府であるため、早急に練度を上げてもらう必要があるため』である。

これは決して御題目だけではなく、本音でもある。

 

ご存知の通り横須賀鎮守府は古くからの鎮守府であるとともに、関東の防護を司る。

その練度は高くて高すぎることはない。

精兵が求められるため、現在足を引っ張っているといって差し支えないルパン鎮守府の練度向上は求められる。

 

この名目はいくらルパン鎮守府が煙たい提督たちでも拒否はできない。

「自分たちの出世の方が、日本の防備より大事」などとは言えない。

 

そのため、そういう提督たちからも黙認はされていたが、嫌がらせとして最高練度クラスの陣営を回されていたのだった。

実はこの辺りも浦賀中将、ルパンとしても願ったり叶ったりである。

 

ルパンは『練習の負け』など気にしない。

むしろ、相手の中心となる部隊から様々なノウハウを聞けたりするし、最高練度ということは古株の艦娘であったりすることも多いため、様々な情報が得れるという利点もある。

その結果、『あの生意気な若造を叩きのめしてやった』と相手はご機嫌になり。

ルパンはその裏で笑うのだった。

 

 

「ルパンよぉ、とり急いでやんなきゃなんねぇことはまとめといたがな。

…ざっくり言えば、遠征部隊用の第三・第四艦隊の解放、だな。」

 

「ありゃりゃ?…なるほどね、開発・建造のための資材集め、か。」

 

「それだけではありませんわ…。大規模作戦になると、連合艦隊を組む必要があります。

連合艦隊の出撃だけなら今でも組めますが、道中支援・決戦支援艦隊を出せないため万が一の時が…。」

 

次元とこの日の秘書艦の扶桑からの報告に、椅子を回して向き直る。

 

今日の秘書艦は扶桑だった。

扶桑は前の提督が面白半分なのか、一気に大量の資材を放り込んで建造祭りをした際に生まれた戦艦だった。

 

なお、自然回復値、と呼ばれる大本営からの補給資材ほとんどをぶち込んでできた大型艦(戦艦・空母)は扶桑だけだったというのだから、頭の痛い話である。

 

「それもあったっけ…。うーんっと、あとウチでいないのは川内?」

 

「はい…もう一つの条件の金剛型は南西諸島海域での遭遇報告が多々上がっています。」

 

扶桑の報告にルパンはギシリと音を立てて椅子に背を預ける。

煙草に火をつけて、一度煙を吐き出した後に頷く。

 

「なら、レベリング兼ねて、南西諸島防衛線(1-4)の周回させといてくれ。

あそこならある程度のレベルでも十分対応できんだろ。」

 

「ま、妥当な線だな。川内と遭遇出来たら、どうすんだ?」

 

ルパンの意見と同意見だったのか、満足そうに頷けばふと次元が問いかける。

 

「そりゃ出撃担当の判断に任せるわ。な、次元ちゃん。」

 

「ケッ、丸投げじゃねぇかよ。そん時ぁ、また考えるかね。」

 

次元は、悪意の感じ取れない悪態をつきながらデスクへ戻って、煙草に火をつける。

どうやら出撃メンバーの選出に戻ったらしい。

 

「あのね~提督。浦賀中将からで、どうも大本営への出向してほしいみたいよ~?」

 

隣の席からふと龍田がいつものおっとりとした口調で話しかける。

扶桑はルパンの前で立ったまま、目を軽く見開く。

 

「どうしたのでしょうか…。」

 

「ま、どうせ政治がらみじゃねぇの?ひっさびさにジョージのシケた顔でも拝みに行くかねぇ…。」

 

「あら~上官に対してそんな事言ったら大変よ~?」

 

驚きを隠せない扶桑に反して、ルパンは笑いながら煙草の煙を空気清浄機に向かって吐き出す。

女性だらけ、非喫煙者だらけで肩身が狭いのだ。

 

「人前じゃ言わねぇよ。んーなら、龍田ちゃん、メシ食ったら行くつもりだからアポ取っといて。」

 

「わかったわ~。なら、私も行く準備…」

 

ふとルパンが時計を見れば、昼前のいい時間だったため、昼食を取ってから行くと告げれば龍田もニコニコと微笑みながら頷く。

 

「いや、今回は扶桑ちゃんに一緒に来てもらうわ。」

 

「………どういう事かしら~?」

 

龍田は笑顔のままだった。

笑顔のままだったはずなのに、執務室の空気が凍った。

 

「え?…いや、ほら。龍田ちゃん、執務室詰めのトップじゃない?

俺がいないのに、そういう事務系トップの龍田ちゃんもいないって、問題じゃないかなーとか思ったりなんかしちゃったりするわけなんだけっどもさ…。」

 

ルパンは龍田の方を見ない、いや、見れない。

見たら多分、夢に出る。

 

隣の執務机の方からチャキッとか、ガチャッとか、何やら長刀っぽい金属の武器的な何かを取り出した音がするのも気のせいだ。

 

そう思いながら書類から顔を上げれば、目の前の扶桑は軽く顔を青ざめさせていた。

目が合った瞬間、扶桑はすっと目を逸らして窓の外の海を見ていた。

 

(我、救援求ム。)

 

ルパンはこの絶対的窮地を何とかしてほしいと目の前の扶桑にサインを送る。

だが、扶桑はそれを一瞥するとやはり海を見続けた。

すると簪のようなパゴダマストにするすると信号旗が掲げられた。

 

(我、停船中。貴軍ニ救援ハナイ。)

 

全力で不幸を回避にかかった模様であった。

 

「あら~?見つめあっちゃって、仲がいいのね~?」

 

「ちょーっと顔上げた位置にいただけだけどもね!?

…いや、やっぱりさ。執務室関連の業務って龍田ちゃんに取り仕切ってもらわないと困るって言うか?

ほら、一番頼りになるのは龍田ちゃんだからね?」

 

完全に浮気のバレた亭主の姿である。

ルパンの龍田を真っすぐ見据えての必死の説得の迫力が勝ったのか、それとも、本気ではなかったのか。

片手に持っていた長刀を収納して、龍田は自分の席へと戻った。

 

「そこまで言われちゃ仕方ないわね~?…お土産、一つで許してあげるわ~。」

 

何がよかったのかルパンにはわからないものの、背後から撃たれることはなくなったようだ。

 

 

 

 

「フッ、龍田は色々とキレ者揃いだからな。演技かもな?」

 

「笑い話じゃねぇよ、(タマ)ァ取られるかと思ったぜ。」

 

そんなこんなで大本営に行ったルパンと扶桑は、浦賀の執務室で向き合ってソファに座っていた。

浦賀は艦娘を指揮はしていないが、秘書艦らしい矢矧が浦賀の隣に座っていた。

 

「で、だ。大体の情報は集まったか?」

 

「ああ、態度見りゃどんな扱いしてんのか、わかったが…ひでぇもんだな。」

 

浦賀の単刀直入な意見にルパンは少し顔を歪めて言う。

恐らく目の前の男のことだ、そういうグレーな鎮守府から選出されてルパン鎮守府へ送られたのだろう。

 

「で、そんな進捗状況の確認で呼んだわけじゃねぇんだろ?」

 

「ああ、何とか妖精さん達の口を割ってな。お前がこの世界にやって来た経緯がわかったんだよ。

ま、別ルートからの情報もあって、だが。」

 

浦賀の言葉に矢矧と扶桑は少し首を傾げる。

しかし、上官の会話に口を挟むような無作法は二人ともしなかった。

 

「単刀直入に言おう。この世界の『ルパン三世』・『次元大介』・『石川五右衛門』は死亡している可能性が極めて高い。」

 

「…そーんな気もしてたが、ね。」

 

「ほぉ、驚かないのか?」

 

音を立てずにルパンはソファにもたれかかる。

 

「こっちの世界の俺が、ルパン三世を名乗るヤツを放置するとは思えねぇ。

俺だったら、とっちめに行くぜ?」

 

「なるほど、な。どうも、妖精の仕様らしくな…『本来死んだはずの人間』を甦らせて、『提督』にすることがあるそうだ。

全ての提督がそうかはわからんが…要は、『命を救う代わりに艦娘を指揮する』という契約を結ぶようだ。」

 

「へぇ…それなら、俺はなんで死んだんだろうな。」

 

あまりの突拍子のない会話に矢矧も扶桑も身体を硬直させる。

そのとんでもない内容は今まで聞いたことがない。

 

「ま、すべての提督がそうなのかどうかまではわからん。そこまで教えてくれなかった。

ただ死因だけは偶然、わかったがね。」

 

「へぇ…海外との連絡はほとんどとれないんじゃなかったか?」

 

「あぁ、海外には船便メインだから時間が必要かと思ったんだがな…それについては本人に聞いた方がいいだろう。

矢矧、すまないが彼を呼んできてくれ。」

 

「了解しました。」

 

若干ほっそりした顔つきと、目つきの悪い浦賀が矢矧を一瞥して指示を出す。

その人好きされにくそうな、神経質に見える様子を見てルパンは苦笑する。

 

「相変わらず愛想が無いねぇ、初めて会った時から変わんねぇや。」

 

「フッ、ある意味天狗、ガキだったんだな。大学に行ってもしばらくはつまらなかった。

周りがバカに見えて、付き合っても疲れるだけだったからな。」

 

浦賀もリラックスしているのか、ソファに背を預けながら薄く笑う。

 

「お前、態度悪かったもんなぁ。鼻にかけてる感じしてたぜぇ?」

 

「そう言うなよ。昔の話じゃないか。」

 

ルパンは新任ということもあって、中尉の海軍の役職を与えられている。

それが大佐である浦賀をイジっているのは隣にいる扶桑にとって居心地が悪い。

 

「あの…ルパン提督?いくら旧友とはいえ、大佐である浦賀閣下にその態度は…。」

 

「ああ、構わんよ。ココは機密を扱う関係で防音は完璧だよ。

それにな、閣下閣下と呼ぶ連中こそ腹の中で若造と罵ってるものさ。」

 

むしろこっちの方がいいと笑う。

 

 

さて。初めての浦賀とルパンの会話でもあったが、『鎮守府階級』というものを触れねばならない。

 

『鎮守府階級』とは、『提督の貢献度』を階級で示したものである。

これは『軍人としての階級』とは別物である。

あくまでも『鎮守府階級』は参考程度、という扱いを受ける。

 

が、同等の軍人の階級の提督同士なら、『鎮守府階級』がものを言うということである。

 

そのため、浦賀は軍人としての階級は『浦賀大佐』であり、鎮守府階級では『浦賀中将』という扱いになる。

 

提督同士の会話では基本的に『鎮守府階級』が使われる。

やはり、階級が高い方が提督の自尊心をくすぐるのだろう、と浦賀は笑った。

 

「ま、せっかく拾った命さ。せいぜい面白おかしく過ごさせてもらうけどな。」

 

「それでいい。お前が暴れりゃ、世の中の小悪党はその分居心地が悪くなるだろうしな。」

 

クックックと喉の奥で低く笑って浦賀はコーヒー飲む。

 

「さぁて、な。そう手のひらで踊ると思うなよ?」

 

「そんなつもりはないさ。俺はお前の踊る舞台を整えるだけ、お前が好きに演じればいいさ。」

 

浦賀は長い付き合いからかルパンの嫌味に肩を竦めれば、ルパンは上等と満足のいく回答にニヤリと笑った。

その場には『怪盗』と『協力者』の姿があった。

 

(何なの、この二人……底知れない…。

艦娘をバケモノと言う人間は多いけど…よっぽどこっちの二人の方がバケモノじゃない。)

 

扶桑の背中に冷たいものが走る。

普段は陽気な男といったルパンの顔がただの仮面と知り、恐怖ともつかない何かが心をよぎる。

 

(でも…これくらいじゃなきゃ生きていけないのかしら…。

よく龍田は付き合えるわ…。)

 

しかし、味方であることはわかっているため忌避するどころか頼もしいとも感じるのだった。

その辺りは陸軍・海軍の魔物とやりあっていた様々な提督や政治を見た船時代の経験からだろうか。

 

 

 

しばらくどこかうすら寒い会話を繰り広げている内に、浦賀の執務室にノックの音が響く。

 

「浦賀閣下、お連れしました。」

 

「ああ、入ってくれたまえ。」

 

浦賀が促すと先に先ほどの矢矧が入るとともに後ろから身長180cm強の偉丈夫が現れた。

 

「お待たせして申しわけございません!ICPO出向、銭形幸一特別大尉、ただいま……お、おめぇ…ル、ルパン…か!?」

 

「ウゲッ!?と、とっつぁん!?」

 

ソファに完全に油断して座り込んでいたルパンが入って来た男を見て、目を見開くとともに飛び跳ねる。

入って来た男は『銭形幸一』、ルパン一味を捕らえるために世界各国を飛び回るICPOの特別捜査官だった。

 

「お、おめぇ…生きて、生きてたんだな…。よくも、よくも…ッ!!」

 

急なことでルパンにも対応できず、飛び跳ねたはいいものの逃げることもできずに扶桑の後ろに隠れるしかなかった。

が、ブルブルと肩を震わせていた銭形が二人の方へ飛び出す。

 

「ル、ル、ル、ルパァァァァンッ!!よく、よく生きててくれた!!(オラ)ァ、てっきりお前ェが死んじまったとばっかり…うおおぉぉぉぉっ!!るぱああああぁぁぁん!!」

 

ルパンの十八番のルパンダイブにも勝るとも劣らない勢いで二人の方へ飛びかかると縋るように腰のあたりにしがみつくとともに、銭形は男泣きに泣いた。

しかし、ルパンは扶桑を銭形の盾にしようとしていたのである。

それなのに銭形は飛びついた結果…ひざまずくようにして扶桑ごとルパンを抱きしめ。

二人の腹の辺りに頭を埋めて泣いたのであった。

 

「なっ、なっ、なっ……いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

扶桑の悲鳴とともに振りかぶられた平手は、銭形の顔に真っ赤な紅葉を咲かすのであった。

 

 

 

 

「ってか、俺の消息を知ってそうなのは、そりゃ銭形のとっつぁんだな…どったの、いつもなら『逮捕だー!』ってとこなのに。」

 

「なにぃ?お()ェ、覚えてねぇのか?」

 

感極まっての行為だということは扶桑にも雰囲気からわかったのか、思いっきりひっぱたいて気が済んだのか。

あの後、銭形の必死の謝罪の後、三人で向き合うことになった。

 

「…いやな、数か月前まで記憶が飛んじまってなぁ…何があったのかよく覚えてねぇんだわ、コレが。」

 

ルパンの言葉に訝し気に眉を銭形はひそめつつも、そこまで疑うこともなく、深く頷いた。

 

「1年ばかり前か。まだワシはルパン専門捜査官としてフランスを訪れた際に、お前を見つけた。

その時はもうお前は怪盗としては半ば脚を洗っていたようでな…。

悪党どもの私財を奪ったりはしてたようだが、表ざたに出来ないような場所からばかりだったようで、被害届も出てない状況だった。

そこでワシはお前が何を企んでいるのか、とお前の隠れ家に突入した。」

 

「そだっけ?」

 

「あぁ、そこでお前は日本に比べて数少ない艦娘を率いて深海棲艦へゲリラ戦を仕掛けていた。

お前曰く『ご先祖様の愛したフランスを見捨てておけねぇ。だが、飼い犬にはなれねぇ。』とな。」

 

銭形の語る言葉に困惑するルパン。

もしも、そうなったらと考えれば納得できる行動でもあるが、もちろんそのような記憶がないためピンとくるわけはない。

 

「そう、だったっけ?」

 

「あぁ、ワシはそんなお前を逮捕することは出来なかった。

お前を逮捕しちまったら、その軍属でない艦娘はもちろん、パリの街はどうなるのかと。

その足でワシはICPOに連絡を取り、もともと消息を絶っていたお前の専門捜査官の座を降りたんだ。」

 

「…じゃ、その後は?」

 

「ワシは、警視庁に戻ろうとしたところ、過去の経歴を買われてな。

そこの浦賀大佐殿に誘われて、ブラック鎮守府の検挙をやっておる。

しかし、お前ェ、どうしたってんだ?自分の事だってのにまるで他人事じゃねぇか。」

 

何度も繰り返されるルパンの気のない合いの手に疑いの目を向ける。

それに肩を竦めながら、煙草に火をつける。

 

「それがよぉ?俺にもわかんねぇんだ、記憶喪失なのか、何なのか。

とりあえず俺も次元も五右衛門も、気が付いたら日本にいた、っていう感じでな。」

 

「ふーむ…これはワシが確認したわけではないが、フランスの知人曰く、パリはほぼ壊滅に近い被害を受けたそうだ。

その際に民間組織やマフィア、軍部などが協力し合って抵抗をしたらしいが…大損害を被った、と聞いた。

もしかすると、その時に何かあったのかもしれんな。」

 

銭形も唸るが、お互い推測しかできないし、異次元から来たというのも推測に過ぎない。

そのため、銭形も懐から愛飲するハイライトを取り出して煙を深く吐き出す。

 

「…最近色々風変わりな提案をしている新人提督、とはお前のことか。」

 

「まぁな、ジョージとは古い付き合いだし、やることもねぇしな。」

 

ギシリと音を立てて銭形が前屈みになってルパンを睨む。

その眼光は鋭く、ルパンとやりあっていた頃と大差ない。

それをニヤリと笑ってルパンは肩を竦める。

 

「ワシもな、今の兆候は気に食わん。女子供を前線に送り出して石を投げるようなマネをしてやがる。

だからワシは浦賀大佐の誘いに乗ったのだ…まぁ、警視庁も人材が溢れていた、というのもあるがな。」

 

「なんでぇ、とっつぁん。リストラか?」

 

「うっせぇ、そんなんじゃねぇや。ただ、お前ェもいなくなっちまった、そんな中で警察を続ける気もしなくてな。」

 

ルパンのからかいに不快そうに眉を寄せるが、否定はしない。

その言葉に何とも言えなくなったのか、ルパンは灰皿に煙草を置いて珈琲を飲む。

 

二人の様子を静かに眺めていた浦賀がふっと笑う。

 

「過去はさておこう。他にも協力者はいるが、主力は銭形さんとルパンの二人だ。

表の銭形さん、刑事のカンや伝手で追い込む。

それでも尻尾を出さないヤツらには、裏のルパンだ。

裏ルートでの捜査、あぶり出し…やり方はそれぞれに任せる。」

 

ルパンは浦賀の言葉に苦笑して肩を竦める。

銭形はルパンの『裏ルート』という言葉に眉をしかめるが、あえて何も言わない。

 

「まさか、またとっつぁんと手を組むとはな。」

 

「フン、盗人の手伝いはせん…が、今はお互い立場が違う。」

 

笑いながら手を出すルパンを見て少し苛立たしそうに言うが、お互いの現状を思ったのか嫌そうながらもその手を握る。

 

「上等。それに俺の調べからすりゃ、盗人はあっちだしなぁ。ケチな税金泥棒、横領犯ってな。」

 

「わかっておるわ。しかし、それは艦娘達の血と涙の上に築かれたものだ。」

 

グッとお互い手を握れば、共闘を誓う。

 

「ま、気に食わないのはお互いさま、だ。とはいえ、俺たちも鎮守府の運営をしなきゃいけねぇから、どこまで協力できるかはわかんねぇけどな。」

 

「…おい、一応言っておくが、艦娘へのセクハラは憲兵事案だからな?」

 

銭形のツッコミにガクッと肩を落とす。

その様子を見て、扶桑がクスクスと笑う。

 

「ふふ、大丈夫ですよ。それどころかむしろ、お父さんみたいな感じですから。」

 

「ならいいけどな…お嬢さんも何かあったらワシに言えよ?」

 

「…そのお嬢さんの腰に抱き着いてたオッサンが何言ってんだか。」

 

色々と女関係にだらしのないルパンをよく知ってるが故の銭形の言葉に、知らない扶桑はそれはないと笑う。

しかし、その言われように眉をしかめたルパンが先ほどの失態を取り上げて鼻で笑う。

 

「なにおぅ!?それもこれもお前が消息不明になってたのが悪いんだっ!!」

 

「ぐええっ!?とっつぁん、ギブギブギブッ!!!」

 

ルパンの胸倉を掴んで締め上げ、それから解放されようとルパンは銭形をタップする。

その銭形の目尻にはうっすらと光るものが浮かんでいた。

 

 

 

「んじゃ、俺ら買い物して帰るからよ。」

 

「なんでぇ…もう帰っちまうのか。」

 

大本営を青スーツの男と、くたびれたトレンチコートの男が肩を並べて出てきたのを見て守衛は訝し気にするが、扶桑もいることで納得したのか何も言わなかった。

入るときはお互い身分証の提示などで面倒だったが。

 

三人で大本営の門の前で別れを惜しむ。

むしろ、惜しんでいるのは銭形一人だったが。

 

「俺も鎮守府があるんだよ、あまり留守にするわけにもいかねぇしな。」

 

「…お前も真面目になったなぁ…(オラ)ァ、感無量だぞ…。」

 

涙もろい銭形はまた涙ぐむが、それを見てルパンは苦笑する。

 

「おいおい、俺は昔から仕事熱心で真面目だったじゃねぇか。」

 

「うるへー!あんな仕事で真面目って言えるか、バカヤロー!」

 

ルパンの軽口に突っかかるが、どことなく嬉しそうに見える。

そのまま扶桑に銭形が向き合う。

 

「…扶桑さんだったな、コイツはこんないい加減で人をこけにするロクでもない男だ。

だが、決して悪人ではない。」

 

「は、はい。」

 

「だから、お前さん方が真っすぐ生きてるなら、コイツと一緒に歩け。

真っすぐ生きる人間をコイツは裏切らん。」

 

扶桑を真っすぐ見据えながらの言葉に気圧されて、ただ頷くことしかできなかった。

その様子にルパンは苦笑して、二人に背を向ける。

 

「よせやい、とっつぁん。そんな上等な人間じゃねぇよ、アンタの言うただの盗人さ。

…扶桑、行くぜ。」

 

「あ、はい!それでは…失礼します。」

 

付き合っていられないとばかりにルパンが街に向かって歩き出したのを見て、扶桑が慌てて追いかける。

その背中を銭形が敬礼して見送るのだった。

 

「おう、とっつぁん。何だったらウチの鎮守府に時間があったら顔出せよ。

ウチでメシくらい食ってきなよ。」

 

「フン、気が向いたらな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で。扶桑ちゃん、皆のお土産どうしよっか?」

 

「……お菓子、でしょうか。人数が人数ですし。」

 

銭形と別れて向かった先は、駅ビルの中の土産物コーナーだった。

 

「……龍田ちゃんに、何買えばいいと思う?ケーキとか?」

 

「刺されてもいいなら……なんで私、こんな相談をうけているのかしら…不幸だわ…。」

 

下手なものを選べば龍田の手によってハイクを読まされることになりかねない。

よって、全力で回避行動に出る扶桑だった。

 

 

なお、全員には銘菓として名高い餡菓桜(あんかろう)

龍田には、それ以外にガラスの猫の置物。

 

それを受け取った時の反応を知るものは少ない。




というわけでとっつぁん回でした。

まぁ、ある意味舞台設定の説明回とも言えますが。


というわけで浦賀の下でともに働く同士(ただしやり口は真逆)というスタンスになります。
イメージとしてはカリオストロで偽札作りを見つけた時の状況ですね。

さて、これからルパン達はどう動くのか。
次回をお楽しみに。



<補足>
浦賀 丈二

・元ネタ:イタリア編の浦賀コウの『浦賀』とライダーマ○の丈二を取った。
・大学時代の同級生で、ルパンほどじゃないが天才の部類に入る男。
ただ、自分と同等の人間がいなかったため、人間嫌いというか見限っていたが、自分の圧倒的に上を行くルパンを見てばかばかしくなってマシに。
それ以来ルパンとつるむ。
・深海棲艦との戦いや兵器開発、艦娘運用システムなどに携わり、国防に対する貢献で大佐という地位についた若き俊英。
・天才科学者でもあるが、あくまで『現実』で言う天才より少し上、クラス。
(例えるなら 現実の天才科学者をIQ150とするなら、浦賀はIQ190とか200程度)

・自分が図抜けた存在であるためか、艦娘に対する偏見を嫌い、艦娘擁護派の実力者の一人。
・擁護の運動では主導しているが、あくまで海軍の擁護派の中では実力者程度。
直接は動いていないものの、浦賀より年配かつ高位の軍人の中にも擁護派はいる。



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