軽快なステップとリズミカルな小唄を呟きながら吹雪は門の前へと急ぐ。
今日は晴天。雲一つなくこれから雨が降る気配もない。快晴だ。
「とっどけ~♪とっどけ~♪想いよ届け~♪」
少女特有の青い歌声が響く。
今日は大本営から新しい提督が来るとつい先程、秘書艦担当の加賀から伝えられていた。
吹雪はお迎えを頼まれていた体だ。
正直、提督というものに好感を抱けなかった艦娘は多く居ると他の鎮守府の艦娘から聞く。
しかし、いざ提督を迎えるとなると吹雪の心は踊らない訳にもいかなかったのだ。
何を隠そう、艦娘学校では男の艦娘(この場合では艦男と呼ぶべきか)は疎か男の教官さえ居なかったのだ。
その理由としては勿論のこと、艦娘には女の子しかなれないのだ。
つまりは男の教官が居ると…と、ここまでは説明しなくとも分かろう。
「おい、長門。プロローグにしては快調な滑り出しだったのに今ので台無しだぞ。そういうよけ…プライバシーに関する事は言わんでよろしい」
「何を言うのだ
「今言っちゃったよね!?ねえ!?」
「空耳だ」
「そんな露骨な空耳あるか!!」
「失敬。噛みまくりました」
「八〇寺!?」
「噛みま死ね」
「戦場〇原さん!?てか冒頭からネタパクりすぎだろ!?後半持たないよね!!ねえ!!」
「そう言うな、馨よ。吹雪が顔面蒼白で本当に吹雪になってるぞ」
「上手くねえよ!!」
そう言いつつも吹雪を見る青年。黒いスーツの上から白い軍服の上着だけを羽織っている。
時代錯誤な青年、提督は吹雪に向かって軽く敬礼をするとなるべく配慮した物言いで自己紹介した。ちなみに自己紹介は英語で言うところのイントロデュースだ。
「その脚注要らないよな…。それと長門、腕を絡めるのはやめてくれ。歩きにくい」
少なからずクールダウンしたであろう提督にねちっこく腕を絡める私こそ長門だ。
大日本帝国海軍を初期から支え、大東亜戦争では数多の旗艦を努め、「ビッグセブン」と呼ばれたりもした。まあ、今はなにを隠そうしがない艦娘とやらをやっている節だ。
「おい長門、結構な部分を省略した自己紹介ありがとう、と言いたいどころだがそろそろ腕を離してくれ、野郎ばっかの兵学校を出た俺にはあまりにも耐性が無い。無さ過ぎるといっても過言じゃない」
「その割には馨の7.7み…主砲は勃っておらんぞ??」
「やめて!!明瞭な数字出してこないで!!それと女の子がそんな下ネタ言わないで!!全国の提督の夢をぶち壊さないで!!」
「その幻想をぶち殺す!!」
「もうヤメテ!!」
ちなみにこのシュチュエーションで言うのも何ですが蚊帳の外な女の子兼、艦娘こと私は吹雪と言います。
完全に空気ですが正直なところを言いますとあんな絡める長門先輩が羨ましいです。
羨望の眼で見ちゃいます。
あ、提督の手が長門先輩の胸に…。
「吹雪、活字で状況が解りにくいのを悪用してありもしないデタラメを述べるのはやめてくれないか」
「あっ、すいません。つい、何時もの癖が出ちゃって」
「何時もの癖!?人のプロフィールを勝手に想像することやありもしないデタラメを考えること!?君は普段どんな生活してるの!?」
「え?それは秋雲さんから譲り受けたびーえるぼんと言うものから」
「秋雲ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ちなみにプロローグからほぼ全て私の妄想です」
「長門ぉぉぉぉぉ!!お前完全に痴女になってるぞぉぉぉぉぉ!!」
長門はあたかも無垢な少女の様に振り向くと言った。
ちなみにこの語りは俺な。
「おっぱい」
「もう手遅れでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こうして俺こと、上谷馨の提督業が始まったのである。
嫌な予感しかしないいですがそれは…。