工廠へと急いだ俺はそこで初めてある違和感に戸惑いを感じた。冒頭からいきなりだけど本当に戸惑ったよ。
「ッッーーーー!!!!」
果たしてこれまでの絶景もとい修羅場を目撃したことがあるだろうか。
はだけた服装。主張が激しい二つの胸。流れるその銀髪は雪原を想起させる。目鼻立ちはまるで西洋人の様に綺麗で睫毛までも銀色だ。脚や腕は見事なまでのプロポーションに恥じない細さだ。
彼女の身体は差し込む光によってより際立っていた。理性よ、持ってくれ!!三倍だ!!速くなっちゃ困るけど!!
俺は警戒心を保ちながら突如として現れたであろうガン〇ムこと艦娘(確かではないけど)に近づいた。
工廠はまだ改装から一週間だというのに不眠不休だったのであろう。壁には年季を思わせる煤と潤滑油。床はその潤滑油と海水と混ざり乳化と分離を繰り返している。天井には鉄骨が微妙ながら視認できる。ここまで汚れているとは正直思わなかったなぁ。てか俺の革靴が完全にゴ〇ブリみたいに黒光りしちゃってるんだけど。どこの星のテラ〇ォーマだよ。真っ黒〇助でモザイクかけんぞ。
糸を引きながら歩み寄っていくとさらに違和感を感じた。それは彼女の服装だ。
基本といっていいのだろうか、艦娘は常時軍服か制服を着ている。(軍規違反になっちゃうからね)しかしあろう事かこの娘はチャー〇マンもビックリな近代チックでゴスロリに通ずる雰囲気のしかし彼女にとっては至ってお似合いな銀色をベースとした服装だったのだ。まあ所謂パワードスーツみたいな。
しかし一番目を引いたのはそこじゃなかった。一番は彼女の
本来。
工廠とは先程述べたように着工や進水式を行うに当たって必要不可欠な場所だ。それらを行うために整備班を始め、緊急対策班、開発班、試行班などの人が常にいる。要は人の目は常にあるのだ。そして彼らの技術を欲する艦艇が在る。その中で、まるでその艦と共に生まれたかのように、まるで最初から居たかの様に彼女は居たのだ。いや彼女は
「んんっ」
彼女は寝起きのように欠伸をすると焦点の合わない目を俺の方に向けただ淡々と言った。
四肢は艦艇に接合されていたができる限りの伸びをしながら。
「大和型戦艦の強化艦、超大和型戦艦のその壱番艦、紀伊だ」
時同じくして広場。
相変わらず賑わっているその場は提督がいない事に気づき始め違うざわつきを覚え始めていた。
大和は右手に持っている鉄傘を重そうに左手に持ち替えた。その隣では武蔵がジョッキを片手にうたた寝していた。
「武蔵。寝ながら飲んでいると零すよ。お姉ちゃん注意したからね」
大和が武蔵の表情を横目で見ながら静かに言う。
武蔵は特に動揺することもなく応える。
「なあ大和よ。私達はもう互いに仲良く遊ぶ仲ではないのだ」
大和の表情が曇る。それに気付いたのかふりか、武蔵は相変わらずの調子で、でも大和を気遣う様にジョッキを口に運ぶ。
「大和。今のは他意はないぞ。ただお前も一緒に酒を飲んだらどうだ?」
「お姉ちゃん、意地悪ばかり言う妹何て知りません」
大和が露骨に頬を膨らます。武蔵は豪快に笑うと優しく大和を撫でた。
大和は変わらず仏頂面をする。しかし満更でもない表情を浮かべるあたり、やはり妹には優しいお姉ちゃんの様だ。
「皆さん!!落ち着いてください!!提督はトイレです!!それかネ〇フ本部にて汎用人型決戦兵器の出撃命令を出しています!!」
霧島は司会進行を頼まれたせいもあり場をなだめるのに必死だ。それが愛おしくも滑稽に感じるだろう、あの提督は。と武蔵は勝手な偏見で考える。
あの男は少なからず私達よりも地獄を見てきたくちだろう。明るく振舞おうとする反面、時たまその顔に海より深い色を感じる。それまでは多分マトモな指揮を下せんだろう。まあ、私達にはそれが死活問題になるだろうが。生殺与奪はお前にかかっているのだぞ。
ズドォォォォン!!突如として鳴り響く轟音。伴って唸る地面は艦娘達の平衡感覚を奪った。鼓膜を震わすその音は鳴り止むどころか一層凄みを増し艦娘達を襲ってくる。
流石に艦娘達も危機を意識し始めた。まるで津波の様に押し寄せる衝撃波に思わず身を屈める。しかし時既に遅く大半の艦娘は逃げるどころか足が地に着いていない。
「一体何が起きているんですっ!?」
大和が反射的に霧島に聞く。
だが霧島はおろかこの場全員が今、何が起きているかを把握する事はできなかった。
駆逐艦の潮が衝撃波に飛ばされた。
駆逐艦特有と呼ぼうか彼女の軽い身体は抵抗も虚しくなす術なく飛ばされていく。
「きゃああああああああ!!!!!!!!!」
そんな悲痛な叫びさえも押し寄せる衝撃波の前では無意味だった。潮はただ流されるまま吹き飛ぶ。
だがそれに反して柔らかく潮をキャッチすた武蔵は困惑の色を隠さず大和に怒鳴った。
「大和ぉぉっ!!聞こえるかっ!!」
大和も負けじと声を張り上げる。
「はいっ!!聞こえてます!!」
「この
「私もそう感じましたっ!!」
「
「つまり…」
「提督が危ないぞ!!」
大和と武蔵は同時に走り出していた。