IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】 作:与祢矢 慧
三週間、更新できず、すみません。
書くことは決まってたのに、筆が、というかタイピングが進みませんでした。
それもこれも、授業からくるストレスのせいだ。
UA、お気に入りありがとうございます!
「………………いま、何時だ?」
深く潜っていた意識が浮上してからの一言がそれだった。
エアコンの音がしないのに、部屋が少し温もっている。少し記憶を遡るとカーテンも閉めずにベッドにダイブしたことを思い出した。つまり、この温もりは日光によるものだろう。
部屋が暖まるほど日光が入っているなら、昼ぐらいか。
左手で
「……正午過ぎ、かよ」
いくら何でも寝過ぎだ。さっさと起きて食堂に行くか。
そう決めて起き上がろうして……起きあがれなかった。左腕が、脚が、頭が、全身が重たい。いつもなら違和感のない右腕さえ、錘のように思えた。
それでも無理やり体を起こし、立ち上がろうとした時……自分に起こっている異変に気付いた。
「…………いや、ちょっと待て」
思わず早口になった言葉には俺の内心が、動揺が現れていた。
それもそのはずだ。今、俺は未知の状況に立たされている。……否、かつて通った道に戻っていた。
何もわからない。
何も感じ取れない。
情報は音とわずかな匂い、そして触感だけ。
距離がわからない。場所がわからない。
暗闇だけが支配する世界に、戻っていた。
「………………」
声が出ない。
徐々に息苦しくなっていく。
落ち着け、と自分に言い聞かせても体は従おうとしない。
何かあるはずだ。昔の俺はどうやってこの状態で過ごしていたんだ。必死に記憶を掘り起こすと、ある物を思い出す。
「…………杖」
最近すっかり使わなくなってしまった。
使わなくなった今はたしかベッド横に立てかけていたはずだ。恐る恐る探すと、左手に硬いものが当たった。迷わずそれを握りしめると、金属の冷たい感触が不思議な安心感を与えた。
一分ほどその状態でいると、呼吸は落ち着き、思考も安定した。そうなったことで、自分がこの状況に陥った原因について考えることができた。
考えれる原因、それは脳の酷使。
感覚強化による気配察知の長時間使用。それも日常生活よりレベルを上げたもの。
そして何より、戦闘時の極端に高まった集中力。
敵の一挙一動全てが理解できた。それだけじゃなく、敵の狙い、弾丸の飛んでくる位置や順番までも解っていた。
あの瞬間だけ、空間の現象すべてを理解していた、気がする。
なら、どうして急にあんなことが起きたのか?
思い当たる節は……一つだけ、ある。
「…………あの
俺には幼い頃の記憶がない。だからあの夢が、俺の記憶だと断言はできない。しかし間違いなく、夢に出てきた少年は俺だった。
視覚を失った今でも、過去に見た映像は鮮明に思い出せる。しかし、俺はかつて自分が孤児院にいた時までしか思い出せない。
その頃より昔、どこで生まれ、誰によって育てられ、なぜ孤児院にいたのか。
夢で見た研究所はどこなのか、何をされていたのか、なぜあそこにいたのか。
「……俺自身のことなのに、俺が知らないのか……」
正直、今まで昔のことなんて興味がなかった。
あの《白騎士事件》で両親、両目と右腕を失って、その後にスコールさんに助けられた。復讐を決意して、
もし、復讐を果たせないようになってしまったとしても、俺には居場所がある。
俺は現状に満足している。
過去なんてどうでも
「ほんと、なんだったんだ……あの夢は」
喪失感に似た妙な感覚が胸のあたりでざわつく。
視界を埋める炎。積み重なった死体。少女を腕に抱く少年。偶然とは思えない壁の崩落。
ここまで思い出して、ハッとした。
『マドカ』と名付けられたあの少女は誰なのか。
「……マドカ」
名前を口に出した瞬間、また妙な感覚がざわついた。
夢にも出ていた。
彼女なら知っているかもしれない。
気がつけば立ち上がっていた。
そして右腕を下にして崩れ落ちた。
機械を落としたようなガシャンッという音がしたが、壊れてはないようだ。
「いってぇ。……さすが開発部の傑作、異常一つない」
杖を支えに上体だけ起こし、右腕を外した。ベッドの上に優しく置いて、もう一度立ち上がる。
体の節々が小さい悲鳴をあげるが耐えて、足を動かす。
ドアを開けようとした時、唐突にノックされた。
少々驚きながらもドア越しに尋ねると、どうやらオータムさんが様子を見に来たらしい。
ただ立っているのも変なので一旦廊下に出る。
「で、どうだ調子は?」
「お世辞にも、良いとは言えませんね」
わざとらしく肩をすくめた俺に、オータムさんはだよなぁとため息をついた。
すると急に俺の杖を取り、腕を組んできた。感触とか香りとか色々あるが、全てシャットアウトした。
……以前、同じようなことをされた気がする。
「なら飯食いに行こーぜ。ずっと寝てたから腹減ってるだろ?」
「そういえば、そうですけど。……あ、聞きたいことあるんですけど」
「あとだ、あと。今は食堂に行くぞ」
聞く耳を持たない様子を察し、俺は質問を諦めた。
半ば引きずられるように歩いている間、オータムさんは終始鼻歌を歌うほどの上機嫌だった。
食堂についた俺はオータムさんに強制的に椅子に座らされていた。
食事を持ってきてくれるらしく、待っているだけでいいとのこと。その待っている間、絶え間なく支部の仲間たちが声をかけてきた。どうやら俺がぶっ倒れていたことは周知のようだ。ついでに任務成功も。
バシバシと背中とか肩を叩かれたり、乱暴に頭を撫でられたり、握手をしたり。やっぱりそこには仲間との温かみが感じられる。
周りのみんなと話していると、オータムさんが戻ってきた。それと同時に集まっていた仲間は散っていった。
「ほら、飯持ってきたぞ」
「ありがとうございます」
「礼はいいって。それより食わせてやろうか? 感覚、戻ってないんだろ?」
「……やっぱりわかりますか。でも食べるぐらいはできますよ」
あらかじめ手探りで見つけていたスプーンを手に取る。
さて、食べるか。……と意気込んですぐにスプーンを持つ手が止まる。
どこに何があるのか、わからない。
見かねたのかオータムさんが苦笑する声が聞こえた。
「くくっ、どうした? 手が止まってるぞ?」
「……からかわないでくださいよ」
「そういうお前も意地はるなって。私らは仲間だろ。些細なことでも周りを頼れ。ほらそれ貸せ」
ひょいっとスプーンが手から離れていく。
「ほら、口開けろ」
言われた通りにすると、スプーンが口に入りスープが口に流れる。
うん、うまい。しかし一つ、気なることがあった。
「……味付けって、変わりましたか?」
俺の記憶にある食堂の味付けはもう少し濃かった。それでも美味しいのだが、俺は薄めの方が好みだ。
つまり、今の味が俺の好みにぴったしだった。
「あ〜、いや、その……味付けは変わってないぞ」
どこかためらうような口調に疑問を持ったが、なんとなくその理由がわかった。
要するに、この料理は……。
「オータムさんが作ったんですね」
「ふぁっ?! なななんでそんなことっ! ていうか私が作ったなんて!」
「落ち着いてください」
「あうっ」
軽くオータムさんにチョップすると、暴走が止まった。
こんな風に褒めると、たまに暴走が始まる。有る事無い事口走ったり、墓穴を掘ってさらに暴走したり。
思い出しながら苦笑していると、食堂の入り口側からざわつきが聞こえた。
どうかしたのか、と思っているとスコールさんから連絡が入った。
「はい、トオルです」
『今どこにいるの?』
「えと、食堂ですけど。……どうしました?」
『こっちは移動中だから手短に言うわよ。彼女が脱走したわ』
「は? え? 脱走?」
入り口の方に意識を向けると、ざわつきがさらに大きくなっていた。
騒いでる、というよりは話し合っているという感じだ。
立ち上がって、そっちにゆっくりと歩く。
『彼女は眼を覚ますと貴方の名前を呼んだわ。だから貴方のところに行くはず』
「っていうか、彼女って誰ですか?」
さらに近づくと、仲間たちの声に聞き馴れない声が混じっているのがわかった。
女性、というよりは少女の高い声。しきりに何かを呼んでいる。
よく耳をすませる。
「……トオルっていう人、いませんか?!」
トオル、俺の名前だ。つまり『彼女』なのか?
集まっている仲間たちの間をかき分けながら前に進み出る。
「トオルなら、俺だけど……うぉっ!」
と、申し出た瞬間に、俺は腹部にかなりの衝撃を食らって背中から床に倒れてしまった。
痛みに耐えながら、俺は今誰かに抱きつかれているのだ、とわかった。
「……えっと、君は?」
そう聞くと元気良く声が返ってきた。
「マドカです!」
「えっ?!」
ということは、脱走したのがこの、今抱きついているマドカ。確か連れて帰ってきた時は治療室に運ばれたのだったか。
そういえば、マドカはなぜ俺の名前を呼んでいたのだろうか?
質問をしようとした直前、彼女からとんでもない発言がされた。
「久しぶりです、兄さん!」
感覚が鈍っている俺でも、空気が凍る音がはっきりと聞こえた。
高校三年ということもあり、更新速度が落ちると思いますが、頑張ります。
SAOの方の続編も書かないとな〜、と思って自分のを読み返すと、あまり成長が見られなかった……。
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