IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】   作:与祢矢 慧

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三週間、更新できず、すみません。
書くことは決まってたのに、筆が、というかタイピングが進みませんでした。
それもこれも、授業からくるストレスのせいだ。

UA、お気に入りありがとうございます!


十一話 覚えのない再会:五

 

 

「………………いま、何時だ?」

 

 深く潜っていた意識が浮上してからの一言がそれだった。

 エアコンの音がしないのに、部屋が少し温もっている。少し記憶を遡るとカーテンも閉めずにベッドにダイブしたことを思い出した。つまり、この温もりは日光によるものだろう。

 部屋が暖まるほど日光が入っているなら、昼ぐらいか。

 左手で手探り(・ ・ ・ )に時計を探し、上部のスイッチを押すと聞き慣れた機械音が流れる。

 

「……正午過ぎ、かよ」

 

 いくら何でも寝過ぎだ。さっさと起きて食堂に行くか。

 そう決めて起き上がろうして……起きあがれなかった。左腕が、脚が、頭が、全身が重たい。いつもなら違和感のない右腕さえ、錘のように思えた。

 それでも無理やり体を起こし、立ち上がろうとした時……自分に起こっている異変に気付いた。

 

「…………いや、ちょっと待て」

 

 思わず早口になった言葉には俺の内心が、動揺が現れていた。

 それもそのはずだ。今、俺は未知の状況に立たされている。……否、かつて通った道に戻っていた。

 

 

 何もわからない。

 

 

 何も感じ取れない。

 

 

 情報は音とわずかな匂い、そして触感だけ。

 

 

 距離がわからない。場所がわからない。

 

 

 暗闇だけが支配する世界に、戻っていた。

 

「………………」

 

 声が出ない。

 徐々に息苦しくなっていく。

 落ち着け、と自分に言い聞かせても体は従おうとしない。

 何かあるはずだ。昔の俺はどうやってこの状態で過ごしていたんだ。必死に記憶を掘り起こすと、ある物を思い出す。

 

「…………杖」

 

 最近すっかり使わなくなってしまった。

 使わなくなった今はたしかベッド横に立てかけていたはずだ。恐る恐る探すと、左手に硬いものが当たった。迷わずそれを握りしめると、金属の冷たい感触が不思議な安心感を与えた。

 一分ほどその状態でいると、呼吸は落ち着き、思考も安定した。そうなったことで、自分がこの状況に陥った原因について考えることができた。

 

 考えれる原因、それは脳の酷使。

 感覚強化による気配察知の長時間使用。それも日常生活よりレベルを上げたもの。

 

 そして何より、戦闘時の極端に高まった集中力。

 敵の一挙一動全てが理解できた。それだけじゃなく、敵の狙い、弾丸の飛んでくる位置や順番までも解っていた。

 あの瞬間だけ、空間の現象すべてを理解していた、気がする。

 

 なら、どうして急にあんなことが起きたのか?

 思い当たる節は……一つだけ、ある。

 

「…………あの(きおく)

 

 俺には幼い頃の記憶がない。だからあの夢が、俺の記憶だと断言はできない。しかし間違いなく、夢に出てきた少年は俺だった。

 視覚を失った今でも、過去に見た映像は鮮明に思い出せる。しかし、俺はかつて自分が孤児院にいた時までしか思い出せない。

 その頃より昔、どこで生まれ、誰によって育てられ、なぜ孤児院にいたのか。

 夢で見た研究所はどこなのか、何をされていたのか、なぜあそこにいたのか。

 

「……俺自身のことなのに、俺が知らないのか……」

 

 正直、今まで昔のことなんて興味がなかった。

 あの《白騎士事件》で両親、両目と右腕を失って、その後にスコールさんに助けられた。復讐を決意して、亡国企業(ファントム・タスク)に入った。ここにはスコールさんがいて、オータムさんがいて、仲間がいる。義手ももらって、技術も教えてもらった。

 もし、復讐を果たせないようになってしまったとしても、俺には居場所がある。

 俺は現状に満足している。

 

 過去なんてどうでもよかった( ・ ・ ・ ・ )

 

「ほんと、なんだったんだ……あの夢は」

 

 喪失感に似た妙な感覚が胸のあたりでざわつく。

 視界を埋める炎。積み重なった死体。少女を腕に抱く少年。偶然とは思えない壁の崩落。

 ここまで思い出して、ハッとした。

 

 『マドカ』と名付けられたあの少女は誰なのか。

 

「……マドカ」

 

 名前を口に出した瞬間、また妙な感覚がざわついた。

 夢にも出ていた。

 

 彼女なら知っているかもしれない。

 

 

 気がつけば立ち上がっていた。

 

 そして右腕を下にして崩れ落ちた。

 機械を落としたようなガシャンッという音がしたが、壊れてはないようだ。

 

「いってぇ。……さすが開発部の傑作、異常一つない」

 

 杖を支えに上体だけ起こし、右腕を外した。ベッドの上に優しく置いて、もう一度立ち上がる。

 体の節々が小さい悲鳴をあげるが耐えて、足を動かす。

 ドアを開けようとした時、唐突にノックされた。

 少々驚きながらもドア越しに尋ねると、どうやらオータムさんが様子を見に来たらしい。

 ただ立っているのも変なので一旦廊下に出る。

 

「で、どうだ調子は?」

「お世辞にも、良いとは言えませんね」

 

 わざとらしく肩をすくめた俺に、オータムさんはだよなぁとため息をついた。

 すると急に俺の杖を取り、腕を組んできた。感触とか香りとか色々あるが、全てシャットアウトした。

 ……以前、同じようなことをされた気がする。

 

「なら飯食いに行こーぜ。ずっと寝てたから腹減ってるだろ?」

「そういえば、そうですけど。……あ、聞きたいことあるんですけど」

「あとだ、あと。今は食堂に行くぞ」

 

 聞く耳を持たない様子を察し、俺は質問を諦めた。

 半ば引きずられるように歩いている間、オータムさんは終始鼻歌を歌うほどの上機嫌だった。

 

 

 

 

 食堂についた俺はオータムさんに強制的に椅子に座らされていた。

 食事を持ってきてくれるらしく、待っているだけでいいとのこと。その待っている間、絶え間なく支部の仲間たちが声をかけてきた。どうやら俺がぶっ倒れていたことは周知のようだ。ついでに任務成功も。

 バシバシと背中とか肩を叩かれたり、乱暴に頭を撫でられたり、握手をしたり。やっぱりそこには仲間との温かみが感じられる。

 周りのみんなと話していると、オータムさんが戻ってきた。それと同時に集まっていた仲間は散っていった。

 

「ほら、飯持ってきたぞ」

「ありがとうございます」

「礼はいいって。それより食わせてやろうか? 感覚、戻ってないんだろ?」

「……やっぱりわかりますか。でも食べるぐらいはできますよ」

 

 あらかじめ手探りで見つけていたスプーンを手に取る。

 さて、食べるか。……と意気込んですぐにスプーンを持つ手が止まる。

 どこに何があるのか、わからない。

 見かねたのかオータムさんが苦笑する声が聞こえた。

 

「くくっ、どうした? 手が止まってるぞ?」

「……からかわないでくださいよ」

「そういうお前も意地はるなって。私らは仲間だろ。些細なことでも周りを頼れ。ほらそれ貸せ」

 

 ひょいっとスプーンが手から離れていく。

 

「ほら、口開けろ」

 

 言われた通りにすると、スプーンが口に入りスープが口に流れる。

 うん、うまい。しかし一つ、気なることがあった。

 

「……味付けって、変わりましたか?」

 

 俺の記憶にある食堂の味付けはもう少し濃かった。それでも美味しいのだが、俺は薄めの方が好みだ。

 つまり、今の味が俺の好みにぴったしだった。

 

「あ〜、いや、その……味付けは変わってないぞ」

 

 どこかためらうような口調に疑問を持ったが、なんとなくその理由がわかった。

 要するに、この料理は……。

 

「オータムさんが作ったんですね」

「ふぁっ?! なななんでそんなことっ! ていうか私が作ったなんて!」

「落ち着いてください」

「あうっ」

 

 軽くオータムさんにチョップすると、暴走が止まった。

 こんな風に褒めると、たまに暴走が始まる。有る事無い事口走ったり、墓穴を掘ってさらに暴走したり。

 思い出しながら苦笑していると、食堂の入り口側からざわつきが聞こえた。

 どうかしたのか、と思っているとスコールさんから連絡が入った。

 

「はい、トオルです」

『今どこにいるの?』

「えと、食堂ですけど。……どうしました?」

『こっちは移動中だから手短に言うわよ。彼女が脱走したわ』

「は? え? 脱走?」

 

 入り口の方に意識を向けると、ざわつきがさらに大きくなっていた。

 騒いでる、というよりは話し合っているという感じだ。

 立ち上がって、そっちにゆっくりと歩く。

 

『彼女は眼を覚ますと貴方の名前を呼んだわ。だから貴方のところに行くはず』

「っていうか、彼女って誰ですか?」

 

 さらに近づくと、仲間たちの声に聞き馴れない声が混じっているのがわかった。

 女性、というよりは少女の高い声。しきりに何かを呼んでいる。

 よく耳をすませる。

 

「……トオルっていう人、いませんか?!」

 

 トオル、俺の名前だ。つまり『彼女』なのか?

 集まっている仲間たちの間をかき分けながら前に進み出る。

 

「トオルなら、俺だけど……うぉっ!」

 

 と、申し出た瞬間に、俺は腹部にかなりの衝撃を食らって背中から床に倒れてしまった。

 痛みに耐えながら、俺は今誰かに抱きつかれているのだ、とわかった。

 

「……えっと、君は?」

 

 そう聞くと元気良く声が返ってきた。

 

「マドカです!」

「えっ?!」

 

 ということは、脱走したのがこの、今抱きついているマドカ。確か連れて帰ってきた時は治療室に運ばれたのだったか。

 そういえば、マドカはなぜ俺の名前を呼んでいたのだろうか?

 

 質問をしようとした直前、彼女からとんでもない発言がされた。

 

 

 

「久しぶりです、兄さん!」

 

 

 

 

 感覚が鈍っている俺でも、空気が凍る音がはっきりと聞こえた。

 

 





高校三年ということもあり、更新速度が落ちると思いますが、頑張ります。

SAOの方の続編も書かないとな〜、と思って自分のを読み返すと、あまり成長が見られなかった……。

アドバイス、誤字、指摘等、そして感想、評価お願いします。
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