IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】 作:与祢矢 慧
モチベがダダ下がりでして、そこにのしかかってくるテストと模試
気づけば一月、空いてました
久しぶりの更新で、文章めちゃくちゃです
これからも不定期になりますが、がんばります
じわじわ増えるお気に入り、UAありがとうございます!
ポワールさん、感想ありがとうございます!
『兄さん』という、予想外すぎる言葉によってその場は完全にフリーズしていた。
少し間をおいて現れたスコールによってトオル、オータム、マドカは医療室に移動していた。
「……で、『兄さん』っていうのはどういうことだ?」
ついさっき、この場に閲覧室室長も駆け付けた。
トオルはくっついているマドカを離して、質問を始める。
「私がそう呼びたいから、呼んでいるだけです」
その言い方に気づいた。
「……血は繋がってないのか」
「はい。まあでも、同じ存在なので、似た者同士です」
ここで新しい疑問が生まれた。
同じように考えたのかスコールが質問をした。
「同じ存在?」
「はい。私と兄さん以外にも数百人いました」
数百人……。ただの研究にしては規模がでかい。
『存在』とやらはそれほどまで重要な研究対象なのか。
「その、『存在』ってどういう意味だ?」
そう尋ねた時、マドカの表情に影が差した。
彼らが爆破した研究施設の内部も、オータムから聞けばろくな物じゃなかったらしい。
「簡単に言えば……作られた、異質なヒトです」
マドカの口から発せられた言葉が予想の遥か斜め上を行っていたせいで、彼はまともな反応ができなかった。
周りは黙ったままだ。
「……兄さん。順を追って話します」
まず彼女から語られた内容は、冒頭部分だった。
始まりはとある有能な、狂った研究者から。
人を超える人を作ろうと画策した。自らはリーダーとなり同志をかき集め、資金源となる強大な組織をスポンサーにつけた。
『土地』を手に入れ、地下に巨大な研究施設を造り上げた。
世界中から金で買える子供をそこへ閉じ込めた。
非合法の薬物投与は当たり前、脳の摘出やら眉唾物な実験などありとあらゆる研究が行われたらしい。
数週間経過して、異変があった。
被験体である子供達は幾つかの大部屋に分けられて生活していた。
その中で数人に、不可解な現象が起こった。
ある者は訳のわからない数式の羅列を口ずさむ。
ある者は両手をそれぞれ違う行動をし、さらにそれらと関係ないことを喋りだす。
その他も似たような様子を見せはじめた。
リーダーは狂喜した。
「成功だ」と。
さらに研究を続け、不可思議な子供を量産し続けた。
その子供達にランク付けし、『異能児』と名付けさらに研究を続けた。
そして、研究の第一段階が完了した。
「……第一段階? 量産が目的じゃないのか?」
ここで彼は口を挟んだ。今の流れから、以前読んだSF小説の『超能力兵士』みたいなことを思い出した。
それに対して、マドカは首を横に振った。
「量産することは目的ではなく、手段です。……第一段階とは異能児の作り方、設計図の確立でした」
より確実な異能児を作るための、設計図。
なぜ、異能児が必要なのか。兵士にでもするつもりだったのか。
マドカはわからないと言う。
「私が持っている情報は、私が生まれてから隙を見て集めたものです」
詳しいことはあまり知らない。
けど、と彼女は続ける。
「たぶん、兄さんの方がよく知ってると……」
その言葉にトオルはかぶりを振る。
「……昔の記憶がない。思い出せるのは名前と、孤児院にいた頃までだ」
気づいた時、彼はとある孤児院にいた。
それから数日して、死んだ義両親の養子となり、育てられた。
それまでの記憶が丸々抜け落ちている。
どこで生まれ、誰に育てられ、何を話していたか。
だが、ここにその過去を知るものがいる。
「……兄さんの記憶喪失の原因は、何となくわかります」
ガタッ、と椅子が鳴った。
その原因は何だ、と尋ねられる前に彼女は言った。
「それを説明する前に、さっきの続きとを話します」
異能児の設計図が完成すると、次にクローン人間を研究しだした。
こちらはノウハウがある程度確立されていた分、完成は早かったらしい。
これを第二段階成功として、彼らは最後の段階に入った。
それは完全な異能児を作り上げること。
既存の異能児は全て後付けによって成り立っている。そのためか、ランクが一定以上に上がらない。
なら、生まれる以前から異能児として作り上げれば、より強力な個体ができる。
さらに、クローンの素体となる人間が、優れているものを選べば飛躍的に強くなるのではないか。
仮説は次々へと浮き上がった。
しかし、タイムリミットはすぐそこまで来ていた。
スポンサーとの間で決められた期日。そして、リーダーの寿命だった。
研究を開始した時点で彼はすでに半生を終えていた。
異能児の研究が完成した時には七十歳近かった。
ただ自分の夢を叶えるという執念が、彼を突き動かしていた。
幸運にも、素体はスポンサー側から提供された、と記録があったらしい。
ヒトとして機能が全て優れていた人間、男女一人ずつ。
異能クローンは十体ほど作られ、その中で最もランクが高かった二体が残された。
「……その二体の識別名は、『トール』と『マドカ』。……私と兄さんです」
話し終わってマドカは緊張がとけたからか、深い息を吐く。
少し間をおいて、再び話しだした。
「生まれたばかりの頃の私たちは未熟だったため、長い間『調整』されていました。さらに成長を抑制する薬物の投与で普通の数倍の期間でした。……実は、今も薬の影響で外見は実年齢より幼いです」
マドカはトオルより頭一つ分ほど背が低い。捕まっていた研究施設でも同じ薬が使われたいたかららしい。
そういえば、トオルも少し前まで小柄だったな、とオータムは思い返した。
その薬物はある程度投与されないと、効果が抜けていくということだ。今のトオルの身長は年相応に高い。
「……私たちの調整が終わり次第、スポンサーの元へ運ばれる予定でした。けど、そこで兄さんが脱出を図ったんです」
調整が終わった直後、トオルは異能を十分に把握していた。
マドカと二人で協力し合い、監視の目を掻い潜り、捕らえられていた『部屋』からは脱出した。
しかし、そのすぐ後に彼らの脱走はバレてしまった。
武器を持って追ってくる警備から必死で逃げていた。
マドカを先に逃がし、トオルは異能を以って撃退する。
だが、もとから多勢に無勢。異能クローンとはいえ子供二人。敵が多すぎた。
体力の限界、異能の行使による精神の消耗、銃撃による怪我が相まって、二人は次第に追い込まれていった。
行き着いた先、施設の機関室らしきところで二人は完全に追い詰められた。
「その時、兄さんが異能を使って敵を倒しました。何をしたのかは理解できなかったです。……ただ、敵が吹き飛んだのと同時に、敵に向けた右手が弾けたのは覚えています」
影響を受けたのは敵だけではなかった。近くにあった機関部も弾け飛んだ。
異能を把握していても、制御しきれなかった。
そこから爆発が連鎖していった。
その余波でマドカは気を失ってしまった。
気づいた時には、そばにトオルは居らず、どことも知れない砂浜だった。
「……呆然としていた私のところに来たのは、研究者たちでした。そして、私がいた施設に連れて行かれたんです」
誰もが黙っている中、スコールが口を開いた。
「貴女が気を失って、砂浜にいた、というのはどういうこと? まるでワープじゃない」
「それは私もよくわからないんです。……でも、考えられるのは兄さんの異能だと思います」
異能を一番理解しているのは本人だけだから、推測ですけど。と付け加える。
その本人であるトオルは左手で顔を押さえながら、頭の奥から湧き出る痛みに耐えていた。
「……トール、大丈夫か?」
心配に思ったオータムが彼の肩に手を添えるが、彼は反応しない。
急に立ち上がり、無言のままを出て行った。
「………………」
それに追従するように室長も出て行く。
残された三人は黙って見ていることしかできなかった。
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追記)十月二十日に最後の部分を消しました。