IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】   作:与祢矢 慧

13 / 18

はじめに

お気に入り登録200件突破!
ありがとうございます!( ´ ▽ ` )ノ
こんな亀更新で稚拙な文なのに、書き始めた頃は200件なんて想像してませんでした

UAも19000越え!もうすぐ20000!

ほんっとうにありがとうございます!


タイトルの日本語部分「ー光を奪われた彼は復讐者と成る」
これは消そうか、と迷うこの頃


十三話 邂逅:一

 

 

 トオルが部屋にこもって、二日が経とうとしていた。

 この間、気にかけたオータムが様子を見に行こうとするが、それはスコールによって止められていた。今はそっとしておくべきだ、とのことだ。

 トオルは一日に一回だけ、人が少ない時間帯に出てきて食事をとり、すぐに部屋にこもっているらしい。

 不思議にも、彼を見かけたものはいない。少ないとはいえ、人がいないわけではない。それでも、見たと言うものはいなかった。

 

 ここ二日ほどと同じような物足りなさを含んだ朝食を終えて、オータムはスコールの部屋に来ていた。

 一度トオルの部屋に押し入ろうとして彼女に止められてから、ちょくちょくと『面会』の許可をもらいに来ている。その全部が却下されたが。

 乱暴に備え付けのソファに身を沈めて、相手の名前を気だるげに呼んだ。

 

「……なぁ、スコール」

 

 返答はため息だった。このやりとりをこの二日間で何回見たかな、とスコールは愚痴るように思い返した。

 

「あのね、心配なのもわかるけど、この件は私たち部外者が手を出していいものじゃないの」

「でもよー、飯食った跡はあるのに見た奴がいねーとかおかしいだろ?」

 

 どういう仕組みだよ、と舌打ちを交えた。

 怒っているように見えるが、これがオータムの心配の仕方だ。スコールはまたため息をついた。

 その時に誰かが部屋のドアを開けた。

 

「私たちは常識の範囲外に存在している、と言っても過言じゃないです。貴女達が頭をいくらひねってもわかりませんよ」

 

 入ってきたのは、無表情を貼り付けたマドカだった。

 基本的に、トオルがいない時のマドカの表情は能面のようだ。『兄さん』と言って彼にひっついていた姿が嘘に見える。

 マドカはオータムの対面側にある椅子に腰掛けた。

 

「……同じ異能児なんだろ? なんかわかんねぇのかよ」

「あいにくと、自分を理解できるのは自分だけ。この言葉が最も適用されるのが異能児なんですよ」

「……なんだそれ」

 

 オータムはソファに寝転んで天井を仰いだ。

 マドカは支給された腕時計をちらちらと見ている。

 

「……はぁ」

 

 スコールは三度目のため息を吐いた。

 やはりこの二日間、目の前の二人はこんな調子だ。

 どうしてこうも仲が悪いのか、と辟易していた。

 オータムは彼と仲間であり、それ以上に信頼している。だから心配し、気にかける。

 しかしマドカは違う。『兄さん』と呼び、慕っているが、それ以上の感情を持っている。信頼というよりは盲信に近いだろう。

 同族嫌悪、ではなくマドカが一方的にオータムを敵視して、それにオータムがイラついているだけだろう。

 仲が悪いのは結構だが、任務の時に支障をきたさないでほしいと、スコールは切に願った。

 

「………………」

 

 マドカは何を気にしているのだろう、と彼女に視線を向けた。

 さっきから腕時計を見ては目を離し、また見るという行動を繰り返している。

 

「マドカ、何を気にしてるのかしら?」

 

 その様子に引っかかりを感じたスコールは尋ねるが、マドカはそっぽを向いた。

 尋ねたものの、実のところ見当はついていた。

 あのマドカがここまで気にすることなど、トオルに関係することしかない。

 少し考えて、基地の出入の記録(ログ)をチェックした。

 

「……なるほど」

 

 見つけた一つの欄には、『Thor(トール)』の名があった。出た時刻はちょうど七時。

 暖かくなってきているとはいえ、この辺りの朝晩は冷える。しかし、そのことを彼が知らないわけがない。

 大丈夫ね、と心の中でつぶやいて柔らかい椅子に深く座りなおした。

 

 チラリと時計を見ると、短針が『9』の文字にかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 足に力を込めると、ザクっという砂の音が耳に入る。いつ踏んでも、砂の感触は飽きない。

 少し強めの海風がヒュウと音を立てて吹いてくる。上着を持ってきて正解だった。

 波が立てるザザァンという音が耳の中で反響する。左手で触ると、冷たかった。

 

 トオルは砂浜で風を浴び続けて、もう二時間になるだろう。

 彼はこっそりと基地から出て、裏手にある海岸に来ていた。

 風は冷たさを帯びて強く吹き、波の音は大きい。この時期に限らず、ここを訪れるような人間はいない、と彼は知っていた。

 彼はよく、気分転換などでここを来る。その時はいつも一人だ。

 

 落ちていた石を左手で拾い、感触を確かめるように握る。

 グッと力を込めると……石に亀裂が走り、砕けた。

 

「……ハッ」

 

 破片で傷付いた掌。流れる血の温度を感じながら、彼は笑った。

 今までこんなことはできなかった、と思いながら。

 

 あの日、マドカから過去を聞いた時、彼はひどい頭痛に苛まれていた。

 部屋に戻り、寝ようとしても寝れない。落ち着こうとしてもできない。

 彼は事実を否定していた。

 そのことが、彼を苦しめていた。

 不眠の二日が続き、その間彼は亡国企業(こ こ)に来てからのことを思い返した。

 成長速度の速さ、気配察知の適応、そしてマドカを救出時にあった空間の全てを把握したような感覚。

 

 自分が人間じゃないと自覚した。受け入れた。

 

 そうなれば、苦しかった頭痛が嘘のように消えた。

 そして、変化が起こった。

 自分が異能者であると自覚すれば、体がその認識に適応しようと変わり始めた。

 自覚することが、今まで『思い込みの作用』で無意識にかかっていたリミッターが解除された。

 その結果が、左手で握り潰した石だ。

 

 しばらく、そのバラバラの石を眺めていたが、海に向かって投げた。滴る血が軌跡を作る。

 目が見えずとも、その軌跡をはっきりと感じていた。

 

 変わったのは身体能力だけではなく、知覚の精度と範囲も向上していた。

 

 今、この瞬間にその知覚が近づいている存在を認識した。

 

「……誰だ?」

 

 後ろを振り向かず、しかし自分の背後にいると確信があった。予想通り、彼が声をかけた時に初めて砂を踏む音がした。

 彼の頭に送られる『情報』から彼は、その存在が強い、と感じた。

 義手である右手を握りしめ、戦闘準備をして素早く振り向いたが……。

 

「あちゃ〜、ばれちゃったか。残念残念」

 

 そんな心構えがバカらしくなるような気の抜けた声を聞いて、若干力が抜けてしまった。

 彼の様子を気にかけていないのか、その存在は喋り出した。

 

「でも君すごいね! この私が気配を消したら『ちーちゃん』ぐらいしか気づかないのに、君は気付いたんだから!」

 

 ちーちゃんって誰だ。

 彼は心の中でツッコミを入れていると、その存在、声からして女性は急に近づいた。

 

「見た感じ失明してるね。ん〜、だからかなぁ、ほかの感覚が鋭くなってるのかも。いやでも、それだけじゃ納得できないなぁ」

「……もう一度聞く、誰だ?」

 

 すでに敵意がないことはわかっていたが、彼は念のため少し距離を取った。

 対して女性は変わらず陽気な口調で言った。

 

「そっか、顔わかんないから知らないよね! この私こそが、ISを作った篠ノ之束だよっ!」

 

 

 

 その瞬間、彼の心に潜む殺意が目覚めた。

 

 

 篠ノ之束。

 ISの開発者であり……白騎士事件の黒幕。

 トオルの両親を殺した、元凶。

 

 ……ああ、こいつがそうなのか。

 こいつが世界をぶっ壊したのか。

 

 気づけば義手のブレードが発動していた。

 立っている場所、重心、身長、心臓の位置。知りたい情報は全て頭に入ってくる。

 

 

 ……殺す。

 

 

 トオルは無意識に、周囲に濃密な殺意を垂れ流していた。

 しかし、その殺意を感じていないのか、篠ノ之束は涼しげに言い放った。

 

 

「君さ、『鳴神龍介』って人、どこにいるか知ってるよね?」

 

 

 それは彼の思考と行動を止めるには、十分すぎる言葉だった。

 

 

 

 

「………………義父(と う)さんを、知っているのか……?」

 

 







アドバイス、誤字、指摘等、そして感想、評価お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。