IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】   作:与祢矢 慧

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UA20000越え、ありがとうございます!
お気に入りもありがとうございます。

今回はいつもより短めです。


十四話 邂逅:二

「………………義父(と う)さんを、知っているのか……?」

 

 トオルの呟きは穏やかな波の音にかき消されそうだったが、篠ノ之束の耳には届いたようだ。

 変わらずに感情のこもっていない貼り付けたような笑顔を浮かべているが、彼はそれを見れない。

 

「知ってるもなにも、私のインフィニット・ストラトスを最初に認めてくれたのが、彼だよ」

 

 懐かしむ口調で彼女は答えた。

 その返答は彼にとって信じられない、信じたくない事実だった。

 鼓動が早まる。間違いなく、初耳だった。

 

「ま、そんなことは置いといて。でさ、りゅうさんはどこにいるの? 教えてくれないと細胞レベルで分解するよ」

 

 当の篠ノ之束はイラついている。

 トオルはなかなか口を開けないままでいた。

 目の前にいる人間ともう一人が『白騎士事件』の主犯であることは、かつてスコールから聞いていた。

 だからこそ、混乱していた。

 

(義父さんを殺した本人が、なんで義父を探している?)

 

 いや、篠ノ之束はそのことを知らないのだろう。だからこうしてトオルに尋ねている。

 だが、篠ノ之束ともあろう人間がなぜわざわざ聞きに来るのか?

 『天災』とまで呼ばれる彼女が、たった一人の生死を知ることなんか造作もないはずだ。

 それができていないから、こうしてここに来ている。

 

(……まるで義父さんの死を誰かが隠蔽したような……)

 

 ここで彼は気づいた。

 

(……俺は、何も知っていない)

 

「あのさ、さっさと答えろよ。こっちだって暇じゃないんだよ」

 

 怒気を含ませた声で、篠ノ之束は催促する。

 トオルにとって彼女は『仇』だ。同時に義父を知っている情報源でもある。

 義父はお前に殺された、とはすぐ言えなかった。その代わりに口が勝手に動いていた。

 

「……義父さんは死んだ」

 

 その言葉に篠ノ之束は動きを止めた。

 

「あれは事故だった、避けようのない。義父さんは……俺をかばって死んだ」

 

 なぜこんなことを口走ったのか。自分でもわからなかった。

 篠ノ之束は数秒の間、黙っていた。そして、一つ頷くと彼との距離を少し縮めた。

 

「キミ、名前は?」

「……鳴神、透」

「トオル、じゃあとーくんね。……うん、覚えたよ」

 

 そう言うと彼女はどこからか、黒色の正八面体の物体を取り出した。

 それを持って考えるように見つめ、目を伏せる。

 少し間が空いて、彼女は顔を上げた。

 

「とーくん、手出して」

 

 言われがまま彼は右手を出した。

 すると彼女は少し驚いたように声を上げた。

 

「えっ、どうしたの右手?」

「……失ったのは父だけではないので」

 

 彼女はその言葉で察した。もっとも、その原因までは察せれなかったようだが。

 

「とーくんの義手、作ってあげよっか?」

「いや、これは結構気に入ってる」

「えー、ギミックいろいろくっつけてあげるよ?」

 

 ギミック、と言う単語に彼は少し心惹かれた。やはり彼も男なのだ。

 迷った挙句、よろしくと答えた。

 

「よろしい。じゃ、義手の前にこれあげるね」

 

 と言って彼の右手に、持っていた正八面体を乗せた。

 

「……これは?」

 

 と聞くと、彼女は笑って言った。

 

「いつか、君の役に立つものだよ。じゃぁね!」

 

 彼が止める間も無く、走って去っていった。

 彼の知覚範囲からいなくなった後、かすかにロケットのエンジン音が空から聞こえた。

 右手で優しくそれを握りしめ、静かにつぶやいた。

 

「俺の役に立つ……それがお前を殺すとしても、か?」

 

 ポケットにそれをねじ込み、体の向きを変えた。

 一度深呼吸して、足を進める。

 とりあえず今は、この後に待ち受けているであろう、オータムの説教をどう切り抜けるか。それを考えるばかりだ。

 

 彼の心境とは真逆に、波は変わらず穏やかだった。

 

 




最近、一気に暑くなりました。
熱中症など、気をつけてください。

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