IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】   作:与祢矢 慧

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すでに二月中旬ですが、とりあえず明けましておめでとうございます。

受験に苦しみながらちまちま書いてたら貯まったので投稿します。

とか言いつつ、唐突にワートリが思い浮かんで設定とか作りまくってしまった。
おまけに一話分書いちゃった。ていうか今はワートリの方が書きやすく感じる。
でもまぁ、投稿するとしてもこの《Blind Revenger》が落ち着いてからですね。

お気に入りありがとうございます!
そしてUA30000到達! ありがとうございます!
評価9をくれた『Pluto』さん、『闇の囁き』さん、評価7をくれた『浪花猫』さん。
おかげでこの小説の評価バーに色がつき、しかも黄色です! 
本当にありがとうございます!

第一作の《Strange Dramas》より少ない話数ということもあり、まさか評価バーに色がつくとは思ってもいませんでした。
なかなか感慨深いものがあります……。

では、長々と失礼いたしました。



十七話 交錯:三

 

 冷たく、鋭い。

 触れただけで敵を斬り裂く、孤高の刃。

 

 左手でISにそっと触れ、一番にそう感じた。

 正確に言えば、触っただけで感じたのではない。すでに自分の脳が読み込んだデータとの合致が、そうさせた。

 四日前に読み込んだメモリの中身が、このISのデータだった。

 そして倒れた原因はおそらく、いわゆる『処理落ち』だ。だが、思い返してみると、たった( ・ ・ ・ )これだけのデータ量で『処理落ち』が起きるのなら、今までも少なからず『処理落ち』していたのではないか。

 

 今ここで思い悩んでも意味がないと、思考を切る。

 

「……室長、すぐに乗れますか?」

「残りの調整を終えればいけますよ。ちなみにIS用アリーナはすぐそこに」

 

 なんでそんなものまで、こんなとこにあるのか。

 その答えはやはり、彼が答えた。

 

「曲がりなりにも巨大組織ですから」

「……これぐらいの設備は当たり前だと?」

「ええ。表向きこそしがないIS企業ですが、実態は亡国機業(ファントム・タスク)。しかも最大勢力の一つ『スコール一派』。そこらへんの企業とは格が違います。……では準備してください」

 

 そう言われると、急に背後にあるISが動いた。

 いや、正確には機体の中央部が開いた。

 

「これから最適化(パーソナライズ)を行います。すでにトール君の各種データは入れてあるから、そう時間もかかりません」

「……了解だ」

「では、始めましょう。ISに身を預けるようにすれば、勝手に反応してくれるので」

 

 ISに近づき言われた通りにして、開いた装甲に体をはめるようにする。そして脚、腕、腹、胸の順で装甲が閉じていく。

 最後に頭部の装甲がゆっくりと降りてきて、ガシャッと閉じた。

 

最適化(パーソナライズ)を開始します』

 

 どこからか意識に直接語りかけてくる声。

 それを聞いた瞬間、意識がどこかへ吸い込まれた。

 その奥で、誰かが微笑んでいたような気がした。

 

 

 

 

「………………」

 

 ………………紫と青。……いや、群青か。正直、色なんて大雑把にしか覚えていない。

 けれど、いつから空は水色じゃなくなったんだろう。

 視界に広がる空は、二色が混ざり混ざって、だけど混ざりきらずお互いに干渉していない。

 いや、空だけじゃない。

 今、こうして俺が横たわっている地面も、似たようなものだ。

 無限に空と地は広がっている。霞むほど遠くになると、その境目さえなくなって、つながっているように見える。

 

「……見えてるんだよなぁ」

 

 そう、見えている。失ったはずの両目が……確かに存在する。

 右腕を空に向けて伸ばせば、届きそうだ。

 だが、俺の目に映る右腕は……れっきとした人の腕だ。ギミックが搭載された青い義手じゃない。

 つまり、ここは現実ではない。

 

「……なんて、解りきったことか」

 

 無駄な分析をしていた自分に苦笑する。

 こんなまだらな天地があるわけがない。

 よっ、と軽く勢いをつけて起き上がった。そして、背後に向けて声をかけた。

 

「それで、いつまで黙り込んでるつもりだ?」

 

 その存在には、初めから気づいていた。

 この奇妙な風景だけの空間で、自分以外に人間のカタチをしている。さらには人間以上の存在感を堂々と放っている。

 生きるためにそれを知る技術を持った俺が、気づけないわけがない。

 特に気構えることもなく、ただ興味で振り返った。

 

「……ッ」

 

 そして息をすることすら忘れ、思考が霧散した。

 

 俺の視線の先にいる存在──少女。

 淡く微笑んでいるその姿は、畏怖すら感じてしまうほど美しい。

 

「……ふふ」

 

 一歩、一歩と歩み寄ってくる。ただそれだけの動作に万人を魅了するほどのナニかがある。

 ゆらりと近づく彼女に対して、俺はブロンズ像になったようだ。

 

「……っ!」

 

 たった一瞬、目が合った。その一瞬で俺は解ってしまった。

 彼女はどこかが歪んでいる、と。

 根拠も何もない。直感が、そう告げている。

 

「お前は……IS、だな」

 

 そう告げると、さらに笑みが深まった。

 けれど、全くその美しさは変わらない。

 身にまとっているものは、和服だ。艶やかで魅惑的な紫色のそれは、昔に見たアメジストを思い出させた。

 

「……ふふふ」

 

 また、微笑う。

 思わず右足が下がった。恐怖心は全くないというのに。 

 その女性は俺の挙動を見て、首を傾げた。

 彼女の肩あたりで揃えられた髪がサラリと流れる。

 ゴクリと、喉が鳴った。

 

「……ねぇ」

「……どうしっ?!」

 

 話しかけられて俺の意識が逸れた一瞬。

 答えようとした時には既に、彼女の鮮やかな紅の目がそこ(・ ・ )にあった。

 ……美しすぎる。

 声を出すことも動くこともできない。

 対して彼女は同じ笑みを浮かべながら、俺の頬にソッと手を添えてきた。

 

「……トオル」

「っっ?!」

 

 どうして俺の名前を知っている、とは言えなかった。

 目や唇の形、いや彼女全体の容姿。

 十数年ぶりに見る(・ ・ )存在に、俺は囚われてしまった。

 

私も(・ ・ )、キミしか目に映らないんだよ」

 

 気づけばさらに密着して、両腕を彼女の背に回していた。

 着物越しでも伝わる、肢体の柔らかさ。不思議な香り。

 いつの間にか、彼女の全てが愛おしい。

 

「ふふっ、どうしたのトオル?」

 

 こうして、彼女を抱きしめていたい。

 その思いが溢れて止まらない。

 

「いいよ、もっと私を抱きしめて」

 

 そう言うと彼女も俺の背に手を回した。

 俺は蝶を包むように、宝石を抱くように抱きしめた。

 

 感情が満たされていく。

 今だけがまるで凍りついたようで、恒久の時間にいるようだった。

 

 

 

 

 どれほど抱きしめ合っていたのかはわからない。

 だけど、途中で彼女が離れたことで俺も落ちついた。

 今は並んで寝転び、俺は彼女に腕枕をしている。

 空は相変わらず、奇妙なままだ。

 

「……なぁ」

「うん、どうしたトオル?」

 

 頭を右に傾ければ、幸せそうな彼女が見える。

 そんな彼女に聞きたいことがあった。

 

「……名前」

「名前? キミの名前を知ってることかい?」

「まぁ、それもだけど……お前の名前だよ。なんて呼べばいい?」

 

 その問いに彼女は、うーんと唸った。

 もしや名前がないのだろうか。

 

「……名前ねぇ、いろいろ考えたんだけど、どれもしっくりしなかったんだよ」

「……考えた?」

「そうだよ。コアネットワークを通じて、世界中から情報収集した。けど、イマイチだった」

 

 何気なく彼女が使った、しっくり、イマイチ、という言葉。まるで人間みたいだ。

 そうか、と相槌を打って俺は視線を前に戻した。

 

「……俺が考えるか」

「うん、そうしよ」

「何がいいかなぁ」

 

 いろいろな単語を思い浮かべるが、どれもしっくりしない。

 腕枕を続けながら思案にふけっていると、急に空が揺らいだ。

 

「なんだ……?」

 

 俺の声につられて、彼女も空を見ると、露骨に顔をしかめた。

 

「あーあ、時間切れだね。最適化が終わったようだ」

「……そうか」

「ふふっ、すぐに会えるって」

 

 彼女が起き上がったので、俺も体を起こした。

 周囲を見渡すと、景色が白くなってきている。

 さて、スコールにこのことを話すかどうか。少し考えていると、彼女が声をかけてきた。

 

「そうそう、キミに言っておきたいこと」

「……?」

「向こうで視力が戻ったりしても、ゼッッタイに何も見ないでね!」

「お、おう」 

 

 ものすごい剣幕で迫られ、思わず頷いてしまった。

 既に足元まで白くなっている。

 

「……なんでだ?」

 

 お互いの姿も白くなり、意識が浮き上がっていく感じがする。

 けれど彼女ははっきりとわかるほどの笑顔を浮かべた。

 

「だって、キミの目に映るのは私だけがいいからだよ」

 

 声色は変わっていないが、彼女の目から光が消えていた。

 

 見間違いだろうと思いながら、俺の意識は現実に引き上げられた。

 

 

 

 

「トール君、終わりましたよ」

 

 室長の声とともに、装甲が開いた。

 いや、装甲が粒子化され一箇所に集まっていく。

 これが待機状態か、と知識と照合する。腰に重みが加わった。

 

「あぁ、言い忘れてましたけど」

 

 左手で触れると、細い剣のようだ。

 鞘に入っていて、腰の後ろに装着している。柄は右側にある。

 右手で握ると、義手の指と完璧にフィットした。

 そして、義手がさっきまでのものと違うことに気づいた。

 前のものより動かしやすい。

 馴染みすぎている。

 

「ソレの待機状態は日本刀がモデルだそうです。あと義手は『約束』だそうで」

 

 篠ノ之束は、あの約束とも言えないものを覚えていたのか。

 だが、これは嬉しい。まるで生身のように動かせる。

 そして彼女と戦えるという感覚が素晴らしい。

 

「それで、名称登録するんですけど、何かありますか?」

「そうだな……」

 

 ……名前か。

 そういえば、彼女の髪の色は綺麗だった。

 あの色は確か──────

 

「──アサギ。名前は……アサギだ」

 

 ──トオル、ありがと!

 

 アサギの声が聞こえたみたいで、自然と口角が上がった。

 

 

 

 

 アサギとなら、復讐を果たせる。

 その先へも、アサギとならどこへでも行ける気がした。

 

 




どうでしょうか?
ようやくヒロイン(IS)が出ました。

アドバイス、誤字、指摘等、そして感想、評価お願いします。
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