IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】 作:与祢矢 慧
受験に苦しみながらちまちま書いてたら貯まったので投稿します。
とか言いつつ、唐突にワートリが思い浮かんで設定とか作りまくってしまった。
おまけに一話分書いちゃった。ていうか今はワートリの方が書きやすく感じる。
でもまぁ、投稿するとしてもこの《Blind Revenger》が落ち着いてからですね。
お気に入りありがとうございます!
そしてUA30000到達! ありがとうございます!
評価9をくれた『Pluto』さん、『闇の囁き』さん、評価7をくれた『浪花猫』さん。
おかげでこの小説の評価バーに色がつき、しかも黄色です!
本当にありがとうございます!
第一作の《Strange Dramas》より少ない話数ということもあり、まさか評価バーに色がつくとは思ってもいませんでした。
なかなか感慨深いものがあります……。
では、長々と失礼いたしました。
冷たく、鋭い。
触れただけで敵を斬り裂く、孤高の刃。
左手でISにそっと触れ、一番にそう感じた。
正確に言えば、触っただけで感じたのではない。すでに自分の脳が読み込んだデータとの合致が、そうさせた。
四日前に読み込んだメモリの中身が、このISのデータだった。
そして倒れた原因はおそらく、いわゆる『処理落ち』だ。だが、思い返してみると、
今ここで思い悩んでも意味がないと、思考を切る。
「……室長、すぐに乗れますか?」
「残りの調整を終えればいけますよ。ちなみにIS用アリーナはすぐそこに」
なんでそんなものまで、こんなとこにあるのか。
その答えはやはり、彼が答えた。
「曲がりなりにも巨大組織ですから」
「……これぐらいの設備は当たり前だと?」
「ええ。表向きこそしがないIS企業ですが、実態は
そう言われると、急に背後にあるISが動いた。
いや、正確には機体の中央部が開いた。
「これから
「……了解だ」
「では、始めましょう。ISに身を預けるようにすれば、勝手に反応してくれるので」
ISに近づき言われた通りにして、開いた装甲に体をはめるようにする。そして脚、腕、腹、胸の順で装甲が閉じていく。
最後に頭部の装甲がゆっくりと降りてきて、ガシャッと閉じた。
『
どこからか意識に直接語りかけてくる声。
それを聞いた瞬間、意識がどこかへ吸い込まれた。
その奥で、誰かが微笑んでいたような気がした。
「………………」
………………紫と青。……いや、群青か。正直、色なんて大雑把にしか覚えていない。
けれど、いつから空は水色じゃなくなったんだろう。
視界に広がる空は、二色が混ざり混ざって、だけど混ざりきらずお互いに干渉していない。
いや、空だけじゃない。
今、こうして俺が横たわっている地面も、似たようなものだ。
無限に空と地は広がっている。霞むほど遠くになると、その境目さえなくなって、つながっているように見える。
「……見えてるんだよなぁ」
そう、見えている。失ったはずの両目が……確かに存在する。
右腕を空に向けて伸ばせば、届きそうだ。
だが、俺の目に映る右腕は……れっきとした人の腕だ。ギミックが搭載された青い義手じゃない。
つまり、ここは現実ではない。
「……なんて、解りきったことか」
無駄な分析をしていた自分に苦笑する。
こんなまだらな天地があるわけがない。
よっ、と軽く勢いをつけて起き上がった。そして、背後に向けて声をかけた。
「それで、いつまで黙り込んでるつもりだ?」
その存在には、初めから気づいていた。
この奇妙な風景だけの空間で、自分以外に人間のカタチをしている。さらには人間以上の存在感を堂々と放っている。
生きるためにそれを知る技術を持った俺が、気づけないわけがない。
特に気構えることもなく、ただ興味で振り返った。
「……ッ」
そして息をすることすら忘れ、思考が霧散した。
俺の視線の先にいる存在──少女。
淡く微笑んでいるその姿は、畏怖すら感じてしまうほど美しい。
「……ふふ」
一歩、一歩と歩み寄ってくる。ただそれだけの動作に万人を魅了するほどのナニかがある。
ゆらりと近づく彼女に対して、俺はブロンズ像になったようだ。
「……っ!」
たった一瞬、目が合った。その一瞬で俺は解ってしまった。
彼女はどこかが歪んでいる、と。
根拠も何もない。直感が、そう告げている。
「お前は……IS、だな」
そう告げると、さらに笑みが深まった。
けれど、全くその美しさは変わらない。
身にまとっているものは、和服だ。艶やかで魅惑的な紫色のそれは、昔に見たアメジストを思い出させた。
「……ふふふ」
また、微笑う。
思わず右足が下がった。恐怖心は全くないというのに。
その女性は俺の挙動を見て、首を傾げた。
彼女の肩あたりで揃えられた髪がサラリと流れる。
ゴクリと、喉が鳴った。
「……ねぇ」
「……どうしっ?!」
話しかけられて俺の意識が逸れた一瞬。
答えようとした時には既に、彼女の鮮やかな紅の目が
……美しすぎる。
声を出すことも動くこともできない。
対して彼女は同じ笑みを浮かべながら、俺の頬にソッと手を添えてきた。
「……トオル」
「っっ?!」
どうして俺の名前を知っている、とは言えなかった。
目や唇の形、いや彼女全体の容姿。
十数年ぶりに
「
気づけばさらに密着して、両腕を彼女の背に回していた。
着物越しでも伝わる、肢体の柔らかさ。不思議な香り。
いつの間にか、彼女の全てが愛おしい。
「ふふっ、どうしたのトオル?」
こうして、彼女を抱きしめていたい。
その思いが溢れて止まらない。
「いいよ、もっと私を抱きしめて」
そう言うと彼女も俺の背に手を回した。
俺は蝶を包むように、宝石を抱くように抱きしめた。
感情が満たされていく。
今だけがまるで凍りついたようで、恒久の時間にいるようだった。
どれほど抱きしめ合っていたのかはわからない。
だけど、途中で彼女が離れたことで俺も落ちついた。
今は並んで寝転び、俺は彼女に腕枕をしている。
空は相変わらず、奇妙なままだ。
「……なぁ」
「うん、どうしたトオル?」
頭を右に傾ければ、幸せそうな彼女が見える。
そんな彼女に聞きたいことがあった。
「……名前」
「名前? キミの名前を知ってることかい?」
「まぁ、それもだけど……お前の名前だよ。なんて呼べばいい?」
その問いに彼女は、うーんと唸った。
もしや名前がないのだろうか。
「……名前ねぇ、いろいろ考えたんだけど、どれもしっくりしなかったんだよ」
「……考えた?」
「そうだよ。コアネットワークを通じて、世界中から情報収集した。けど、イマイチだった」
何気なく彼女が使った、しっくり、イマイチ、という言葉。まるで人間みたいだ。
そうか、と相槌を打って俺は視線を前に戻した。
「……俺が考えるか」
「うん、そうしよ」
「何がいいかなぁ」
いろいろな単語を思い浮かべるが、どれもしっくりしない。
腕枕を続けながら思案にふけっていると、急に空が揺らいだ。
「なんだ……?」
俺の声につられて、彼女も空を見ると、露骨に顔をしかめた。
「あーあ、時間切れだね。最適化が終わったようだ」
「……そうか」
「ふふっ、すぐに会えるって」
彼女が起き上がったので、俺も体を起こした。
周囲を見渡すと、景色が白くなってきている。
さて、スコールにこのことを話すかどうか。少し考えていると、彼女が声をかけてきた。
「そうそう、キミに言っておきたいこと」
「……?」
「向こうで視力が戻ったりしても、ゼッッタイに何も見ないでね!」
「お、おう」
ものすごい剣幕で迫られ、思わず頷いてしまった。
既に足元まで白くなっている。
「……なんでだ?」
お互いの姿も白くなり、意識が浮き上がっていく感じがする。
けれど彼女ははっきりとわかるほどの笑顔を浮かべた。
「だって、キミの目に映るのは私だけがいいからだよ」
声色は変わっていないが、彼女の目から光が消えていた。
見間違いだろうと思いながら、俺の意識は現実に引き上げられた。
「トール君、終わりましたよ」
室長の声とともに、装甲が開いた。
いや、装甲が粒子化され一箇所に集まっていく。
これが待機状態か、と知識と照合する。腰に重みが加わった。
「あぁ、言い忘れてましたけど」
左手で触れると、細い剣のようだ。
鞘に入っていて、腰の後ろに装着している。柄は右側にある。
右手で握ると、義手の指と完璧にフィットした。
そして、義手がさっきまでのものと違うことに気づいた。
前のものより動かしやすい。
馴染みすぎている。
「ソレの待機状態は日本刀がモデルだそうです。あと義手は『約束』だそうで」
篠ノ之束は、あの約束とも言えないものを覚えていたのか。
だが、これは嬉しい。まるで生身のように動かせる。
そして彼女と戦えるという感覚が素晴らしい。
「それで、名称登録するんですけど、何かありますか?」
「そうだな……」
……名前か。
そういえば、彼女の髪の色は綺麗だった。
あの色は確か──────
「──アサギ。名前は……アサギだ」
──トオル、ありがと!
アサギの声が聞こえたみたいで、自然と口角が上がった。
アサギとなら、復讐を果たせる。
その先へも、アサギとならどこへでも行ける気がした。
どうでしょうか?
ようやくヒロイン(IS)が出ました。
アドバイス、誤字、指摘等、そして感想、評価お願いします。