IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】   作:与祢矢 慧

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あけましておめでとうございますm(__)m
本当は元旦に投稿するつもりだったんですが、予想以上にのんびりしてしまいました。

感想、お気に入り登録共にありがとうございます!
相変わらずの低クオリティで短い文章ですが、今年もよろしくお願いします。

今話は前話から時間が経っているという設定です。


三話

 

 

 突き抜けるような青空、心地良い風が吹く。

 

 小高い丘に登って、胸いっぱいに空気を吸い込む。

 

 後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

 「いま行くよ」と元気よく答える。

 

 丘を駆け下りると、そこにはシートを広げて弁当を用意した両親が笑顔で座っていた。

 

 母の作る食事はどんな店よりも美味しい。

 

 家事はからっきしな父だが、いつも楽しく遊んでくれる。

 

 そんな両親が、少年は何よりも好きだ。

 

 「なにかおもしろいことでも見つけたか?」と父が尋ねた。

 

 頭を撫でてくれる父の手は大きくて硬いが、安心できる温もりがある。

 

 母が差し出したお茶を飲みながら、少年は微笑った。

 

 

「さっきね、空に紫色の剣が浮かんでたんだ!」

 

 

 そこを指さし、空を探すが見つからない。

 

 立ち上がって探すが、やはりどこにもない。

 

 「本当にあったんだよ」と振り向いて両親に言った。

 

 だが、そこに両親はいなかった。

 

 言いようのない不安に駆られ、名前を呼びながら周囲を見渡す。

 

 ふと見上げると、突然青空が消え、白い光が現れる

 

 

「……白い、騎士」

 

 

 呟いた瞬間、世界が燃え上がった。

 

 地面は消え、空は紅く堕ちる。

 

 右腕に炎がまとわり付き、燃やし尽くした。

 

 激痛に少年は吼えた。

 

 

「コロスッッ!」

 

 

 ジリジリと炎は迫り、少年の視界を染めようとする。

 

 紅の先に佇む騎士に、必死に左手を伸ばす。

 

 騎士は少年を一瞥し、その身を翻し空の彼方へと消えていく。

 

 届かないと解っていても、ただひたすら腕を伸ばす。

 

 聞こえないと知っていても、吼える。

 

 

 その両方に、殺意を込めて。

 

 

 

 

 視界が真っ赤に染まりきる………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

 ガバっとタオルケットを払い飛ばして、少年は起き上がった。

 浅い呼吸を繰り返し、左手で右腕があったところを押さえる。

 

(……傷が、熱いっ)

 

 物理的ではなく、彼の精神が幻の熱を生み出している。

 立ち上がり、壁伝いにシャワールームへと入り手探りでレバーを回す。

 ノズルから勢い良く水が飛び出し、シャツを着たままの彼の体を冷やした。

 この行動自体に意味はなく、気休め程度にしかならないと知っていても、彼は必ず行う。あの悪夢を少しでも現実から引き離すために。

 あの夢は今日に限ったことではない。あの日、スコールによって助けられ、亡国機業に加入した日から続いている。

 五分ほどシャワーを浴びていると、シャワールームのドアが開かれた。

 

「呻き声が聞こえると聞いて来てみれば……やっぱりか、トール」

 

 呆れの混ざった声がシャワールームに響いた。

 

「……オータムさん」

 

 水の音越し聞こえた声から少年はその人物を特定した。

 オータムと呼ばれたオレンジ色の髪の女性は軽くため息を吐くと、手慣れた様子でタオルを取り出し、シャワーを止めて少年のびしょ濡れになったシャツを脱がした。

 脱衣所の椅子に座らせ、オータムは鼻歌交じりに丁寧に少年を吹いていく。

 

「……いつもすいません」

「気にすんなって。私達は仲間だし、お前はまだまだガキなんだから。いまは甘えとけ」

 

 そう言われても少年はどこか納得しない表情を浮かべるが、彼女は手を止めない。

 

「ほら、上は拭いたから後は自分で拭けよ」

 

 タオルを彼の左手に持たせ、彼女は部屋のクローゼットに向かう。その中から彼に似合いそうな服を選び、一度それを置いて乱れたベッドを整えた。

 少年が体を拭き終わり、ズボンを身につけたのを見計らって脱衣所に入る。

 服を受け取ろうとした彼の手を優しく押さえて、順に着させる。

 諦めたかのように大人しくなった彼はされるがままになった。

 最後に少年の髪を整えると、サングラスを取り出して彼にかける。

 

「……よし、これで完了。飯まだだろ? 一緒に行こうぜ」

「わかりました。少し待っててください」

 

 そう言って彼は部屋の隅まで歩き、小さい引き戸を開ける。

 そこには写真――彼の両親が写っている、唯一あの爆発で残っていた写真が飾ってあった。

 手を合わせることができない彼は左手を顔の前で立てて、もう見ることができない目で過去を思い出す。

 その様子をオータムは寂しげな表情で見ていた。

 

「……よし、行きましょう」

 

 彼の浮かべる儚い笑顔が、彼女にとってどう映ったのか。

 

 彼にはそれを知る方法がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、杖持ってやるから」

「いや、でもまだ難しいですよ、杖なしは」

「……たく、こうすりゃいいんだよ」

「えっ?! あ、あのさすがに腕組むのは、恥ずかしいというか、なんというか」

「ほーら、早く行くぞ。飯の時間が終わっちまうぞー。……あ、思い出したけどスコールから呼び出しな」

「それ先に言ってくださいよっ!」

 

 赤くなった顔を見られないなら、と思ったオータムの大胆な行動は、周囲にいた組織の仲間から温かい目で見られていた。

 

 

 





オータムは主人公の四歳ほど年上、という設定で。
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