IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】 作:与祢矢 慧
本当は元旦に投稿するつもりだったんですが、予想以上にのんびりしてしまいました。
感想、お気に入り登録共にありがとうございます!
相変わらずの低クオリティで短い文章ですが、今年もよろしくお願いします。
今話は前話から時間が経っているという設定です。
突き抜けるような青空、心地良い風が吹く。
小高い丘に登って、胸いっぱいに空気を吸い込む。
後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。
「いま行くよ」と元気よく答える。
丘を駆け下りると、そこにはシートを広げて弁当を用意した両親が笑顔で座っていた。
母の作る食事はどんな店よりも美味しい。
家事はからっきしな父だが、いつも楽しく遊んでくれる。
そんな両親が、少年は何よりも好きだ。
「なにかおもしろいことでも見つけたか?」と父が尋ねた。
頭を撫でてくれる父の手は大きくて硬いが、安心できる温もりがある。
母が差し出したお茶を飲みながら、少年は微笑った。
「さっきね、空に紫色の剣が浮かんでたんだ!」
そこを指さし、空を探すが見つからない。
立ち上がって探すが、やはりどこにもない。
「本当にあったんだよ」と振り向いて両親に言った。
だが、そこに両親はいなかった。
言いようのない不安に駆られ、名前を呼びながら周囲を見渡す。
ふと見上げると、突然青空が消え、白い光が現れる
「……白い、騎士」
呟いた瞬間、世界が燃え上がった。
地面は消え、空は紅く堕ちる。
右腕に炎がまとわり付き、燃やし尽くした。
激痛に少年は吼えた。
「コロスッッ!」
ジリジリと炎は迫り、少年の視界を染めようとする。
紅の先に佇む騎士に、必死に左手を伸ばす。
騎士は少年を一瞥し、その身を翻し空の彼方へと消えていく。
届かないと解っていても、ただひたすら腕を伸ばす。
聞こえないと知っていても、吼える。
その両方に、殺意を込めて。
視界が真っ赤に染まりきる………………
「……ッ!」
ガバっとタオルケットを払い飛ばして、少年は起き上がった。
浅い呼吸を繰り返し、左手で右腕があったところを押さえる。
(……傷が、熱いっ)
物理的ではなく、彼の精神が幻の熱を生み出している。
立ち上がり、壁伝いにシャワールームへと入り手探りでレバーを回す。
ノズルから勢い良く水が飛び出し、シャツを着たままの彼の体を冷やした。
この行動自体に意味はなく、気休め程度にしかならないと知っていても、彼は必ず行う。あの悪夢を少しでも現実から引き離すために。
あの夢は今日に限ったことではない。あの日、スコールによって助けられ、亡国機業に加入した日から続いている。
五分ほどシャワーを浴びていると、シャワールームのドアが開かれた。
「呻き声が聞こえると聞いて来てみれば……やっぱりか、トール」
呆れの混ざった声がシャワールームに響いた。
「……オータムさん」
水の音越し聞こえた声から少年はその人物を特定した。
オータムと呼ばれたオレンジ色の髪の女性は軽くため息を吐くと、手慣れた様子でタオルを取り出し、シャワーを止めて少年のびしょ濡れになったシャツを脱がした。
脱衣所の椅子に座らせ、オータムは鼻歌交じりに丁寧に少年を吹いていく。
「……いつもすいません」
「気にすんなって。私達は仲間だし、お前はまだまだガキなんだから。いまは甘えとけ」
そう言われても少年はどこか納得しない表情を浮かべるが、彼女は手を止めない。
「ほら、上は拭いたから後は自分で拭けよ」
タオルを彼の左手に持たせ、彼女は部屋のクローゼットに向かう。その中から彼に似合いそうな服を選び、一度それを置いて乱れたベッドを整えた。
少年が体を拭き終わり、ズボンを身につけたのを見計らって脱衣所に入る。
服を受け取ろうとした彼の手を優しく押さえて、順に着させる。
諦めたかのように大人しくなった彼はされるがままになった。
最後に少年の髪を整えると、サングラスを取り出して彼にかける。
「……よし、これで完了。飯まだだろ? 一緒に行こうぜ」
「わかりました。少し待っててください」
そう言って彼は部屋の隅まで歩き、小さい引き戸を開ける。
そこには写真――彼の両親が写っている、唯一あの爆発で残っていた写真が飾ってあった。
手を合わせることができない彼は左手を顔の前で立てて、もう見ることができない目で過去を思い出す。
その様子をオータムは寂しげな表情で見ていた。
「……よし、行きましょう」
彼の浮かべる儚い笑顔が、彼女にとってどう映ったのか。
彼にはそれを知る方法がない。
「ほら、杖持ってやるから」
「いや、でもまだ難しいですよ、杖なしは」
「……たく、こうすりゃいいんだよ」
「えっ?! あ、あのさすがに腕組むのは、恥ずかしいというか、なんというか」
「ほーら、早く行くぞ。飯の時間が終わっちまうぞー。……あ、思い出したけどスコールから呼び出しな」
「それ先に言ってくださいよっ!」
赤くなった顔を見られないなら、と思ったオータムの大胆な行動は、周囲にいた組織の仲間から温かい目で見られていた。
オータムは主人公の四歳ほど年上、という設定で。
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