IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】 作:与祢矢 慧
とうとうこの《Blind Revenger》、お気に入り百件超えました!
UAも八千超えました。前作よりすごいスピードです。
本当にありがとうございます。
テストという悪夢が近づきつつありますが、めげずに投稿頑張ります。
八話
スコールからの呼び出し。特に珍しいことでもない。だが、『司令室に来い』というのは初めてだった。
自室から司令室までの距離はそこそこ長い。早々に部屋を出て司令室に向かった。
初任務。
その言葉に、彼は良くも悪くも緊張していた。
司令室の前に着き、固い左手を開くと、冷気を感じた。ズボンで掌を拭う。
その手を持ち上げて、ドアをノックした。
「入って」
「……失礼します」
「よ、トール。早かったな」
ドアを開き、足を一歩踏み入れる。すると聞き慣れた声が彼の名を呼んだ。
頬が緩むのは自覚しながら、後手にドアを閉めた。
「初任務だから、少し浮かれてるんです」
「ミスしたくないなら、今だけにしとけよ。ほら、ここに座れ」
「了解です」
トオルが椅子に座ると、彼の前にコーヒーが入った紙コップが置かれた。
「よう、俺はマークってんだ。今回の任務に同行するってことで、ヨロシクな、トール」
マークと名乗った男は自分の紙コップに砂糖とミルクをぶち込んで一気に飲み干した。
トオルはそんな彼から並々ならぬ強さを感じ取った。
事実、マークは強靭な肉体を持ち、格闘、射撃などにおいてトップクラスの腕を持つ。
「こちらこそヨロシク。コーヒーありがとうございます」
一口飲むと、 口内に予想外な衝撃が充満する。
(なんだこれ?! 甘すぎ!)
今すぐにでも吐き出したいという衝動に駆られるが、それもろともコーヒーを飲み込んだ。
横から差し出さる紙コップの中身も確認せずに一気に飲む。今度は苦いコーヒーだった。
「げほ、ありがとう、ございます。オータムさん」
「あー、無理すんなよ。……マーク、トールはテメェみたいな甘党じゃねぇんだよ」
「なんだそうだったのか。それはすまんな。……また同士を見つけれなかった」
マークは右手を額に当ててわざとらしく天井を仰ぐが、全員から無視される。
空気が緩くなった時、スコールがパンパンと手を叩いた。
「お喋りもそこまで。ブリーフィング始めるわよ」
そう言ってテーブルに資料を並べていく。その周りに三人が集まってそれぞれが手に取る。トオルは補助器が移植された義手をかざし、
全員が読み終わった頃を見計らい、スコールが口を開いた。
「今回の任務は奥地にある、遺跡に偽装した研究所の捜索と破壊。現時点では周囲の警備の数しかわからない」
「質問いいっすか、姉御」
「許可する。簡潔にね、マーク」
「うす。破壊はいいんですけど、バックの勢力とか大丈夫なんですか?」
「まぁ、大丈夫じゃないでしょうね」
「じゃぁ、なんでこんなこと……」
ふと呟いたトオルに視線が集まるが、彼は気にしなかった。
彼に続くようにオータムが手を挙げる。
「途中で援軍が来る可能性もある。この任務を、この人数でやるにはリスクが高すぎるだろ」
「私もそう思うわ」
「ならなん」
「これ、『本部』からの指示なのよ」
本部。その単語が出ただけで、トオル以外のメンバーに緊張が走った。
今彼らがいる場所はスコールをトップとする『支部』。その他、世界各地に支部は存在する。そしてそれらをまとめ上げ、時に直接指示を下す。どこにあるのか、そもそも建物として存在するのかすらわからない『本部』。
組織の理念に背かない限り、自由を許されている。その代わりに本部の指示は絶対。
たとえどんな危険が潜んでいても遂行しなくてはならない。
その事実がよりいっそう彼らに疑問を抱かせた。
「……この研究所に、そこまで重要な、もしくは知られたくないような研究があるってことですか?」
「またはバックにいる何者かへの挑発」
トオルの発言に間髪入れずスコールが答えた。
なるほど、その考えがあったか。
彼は自分の視野の狭さに反省した。
「……この場で議論を重ねてもあまり意味がないわ。とりあえず今は準備しましょう」
「了解だ。出発は?」
「今夜、二十二時。ヘリで近くまで行って降下。そこから徒歩で移動。その地点はヘリで伝えるわ」
「うっす。じゃ、俺は先に」
マークは手に持った紙コップを捨て、それと入れ替えるようにガムシロップを掴んで退室した。
その行動に呆れたオータムはため息をつく。
「ったく、あいつは。……ん、どうしたトール?」
黙りこくっているトオルの様子を見かねた彼女は優しく彼の肩に手を乗せる。
トオルはその手に自分の手を重ねた。
「……せめて、足手まといにはならないように、頑張ります」
「そんな不安にならなくても大丈夫だ。私にスコール、マークもあんなだが頼れる奴だ。自分のできることをやればいい」
「そうよ。それにこの任務は貴方の力を見るためでもあるけど、目的は達成しなくちゃならない。そのことを念頭にね」
無言で頷き、立ち上がると彼は部屋を後にした。
その様子に思うところがあったのか、スコールは考える素振りを見せる。
オータムはテーブル上の資料をまとめる。それを終えると彼女も出ようとドアを開けた。
「んじゃ、私も準備に向かうとするよ。また後でな」
「わかったわ。………………まって、オータム」
急に呼び止めたことで閉じかけたドアがまた開いた。
「どうした?」
「トールのこと、手伝ってげてね」
「……言われなくてもそのつもりだよ」
オータムは右手でオレンジ色の前髪を掻き上げる。
その顔は誰かを想う表情だった。スコールはそんな彼女の様子を珍しいと感じた。いつもなら照れ隠しをするのに、と。
「あいつは……大切な弟みたいなもんだよ。私は喪いたくない。それにあいつ自身、もう誰も喪いたくないだろうよ」
そう言って、今度こそドアはしっかりと閉まった。
司令室に一人佇むスコールはポツリと呟いた。
「……弟、ねぇ」
ドアの向こう側で、オータムも呟いた。
「いまは、な」
彼女は足早にトールの部屋に向かった。
時刻、二十二時三十五分。
移動ヘリのなかで四人は最後の計画を練っていた。
主な内容は、降下後、研究所の近くまでは四人一緒に行動。到着後、周囲の警戒のためマークは外で待機。残りの三人が内部へ侵入。一通り情報収集を終えた後に各所へ爆弾を設置。脱出し、マークと合流してからヘリの元まで移動。十分に距離をとって起爆。そして帰投。
その他想定外の起こった場合、各自の判断で行動。ばらけた場合はヘリの元で合流。
さらに細かいところを詰めて、各自最終準備に取り掛かった。
スコール、オータム、マークは経験豊富であり一連の行動に無駄がない。
そしてトオルは予想外にも落ち着いていた。訓練の成果が出ているのか、銃器の確認にも淀みがない。少なくとも、三人にはそう見えていた。
『まもなく降下地点です』
パイロットの報告がインカムから流れる。
その時点で全員が準備を終えていた。
「こっちはいつでもオーケーよ」
『了解。……偵察班から入電。中型車両三台が研究所から出たそうです』
「白衣のお偉方はお帰りのようだな。少しは楽になる」
「油断すんなよ、甘党。戻らないとは限らないからな」
互いに軽口を叩き合い、緊張をほぐす。
トオルだけは黙ったままだった。
マークは肩を無理やり組んで、笑いかける。
「どうした? ここまで来てビビったか?」
「いや、そういうわけじゃ」
「いやいや、ビビるのは悪いことじゃない。誰でも未知ってのは怖いもんさ。適度に緊張。それがいい」
トオルの言葉に被せて、マークは言いたいことを言う。
トオルは少しは考えて、一つ頷いた。
「そうですね。ありがとうございます」
「礼は生きて帰ってから、だ」
「ならしっかりと言えるように生きて帰りますよ。………………こんなとこで死ぬわけにはいかない」
最後の一言だけ感情が違っていたが、マークはあえて指摘しなかった。壮絶な過去を持つものは多い。マークもその一人だ。
『到着しました!』
同時に左右のドアがスライドする。外気が流れ込んで新鮮な空気が肺を満たす。
スコールは振り向き、全員に向けて言い放った。
「任務開始よ!」
「了解だ」
「了解」
「了解です」
二人づつ同時に飛び降り、着地してすぐに身を隠す。
全員が降りるとヘリは上昇して、去っていった。
三人が暗視ゴーグルを装着しする。
その間、トオルは見えない目で先にある研究所を見つめていた。
まるで何かに導かれて、自分はいまここにいる。
その感覚が強まっていた。
あそこにその答えがある。
根拠のない確信が満ちていく。
その予感が正しいか、否か。
まもなく彼は知ることになる。
そして思い出す。
『鳴神透』という存在の出自と、まとわりつく悪夢を。
いまの「覚えのない再会」もあと三話ぐらいかな。
原作本編に入るまであと、今の終えてから二段階ぐらいの予定です。
早く本編やりたい。……でも問題点が……。
アドバイス、指摘、誤字報告、感想等あればよろしくお願いします。