IS《Blind Revenger》―光を奪われた彼は復讐者と成る―【未完】   作:与祢矢 慧

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まず、遅くなって申し訳ありません。
言い訳をしますと、学年末テストがあったり、その最中に風邪ひいたり、そしてテスト終わって直後に模試があったり。

お気に入り、UAありがとうございます!


九話 覚えのない再会:三

九話

 

 

夜の暗さに包まれた森が広がる空間、そのちょうど中央あたりにぽっかりと似つかわしくない人工物が建っている。

一見すると、遺跡。しかし所々におかしな点がある。各所に設置されている監視カメラ。センサー付き自動ドア。そして、周回する武装した兵士。

それらの存在は自ら「ここはただの遺跡ではありません」と語っている。

 

『……それほど警備は厳しくないようだ』

 

無線機から聞こえたの声は、近くの崖から狙撃銃(スナイパーライフル)で偵察しているマーク。

木の陰に隠れながらトオルは気配を感じ取る。

彼の言った通り、兵士の気配は六人ほど。

多すぎると怪しまれるからか、はたまたあまり警戒していないのか。この場にいない三人とマークには関係ないことだ。彼らにとって敵は少ないほど有利になる。

 

『嬉しいことに四隅に分散している。装備も大したことない。ハンドガンに警棒、ナイフぐらいだ。これなら一斉に片付けた方がいい』

『了解。いまから各自の襲撃ポイントを教えるわ。気づかれないように移動してね』

 

無線越しのリーダーの声に小さく了解と答える。

敵に気取られないよう気配と音を殺しながら告げられたポイントへ移動する。

あまり遠くなかったそこへ着くと、生い茂る草木の中で身を潜める。

(フィンガー、ブレード)

 

そう念じると、義手の指先から二センチほどの刃が突き出る。その切れ味は人間など軽く切り裂くほどのもの。

兵士は二人組が二つ、一人が二つでそれぞの隅に立っている。

マークとトオルは一人を、スコールとオータムは二人組を始末する手筈になっている。

 

『こちらマーク。狙撃ポイントに着いた』

『オータムだ。こっちもいいぞ』

「トオルです。いつでもいけます』

『オーケー。タイミングはこっちで決めるわ。迷わず無力化して』

 

トオルは『その時』を待って、しかしいつでも飛び出せるように身構える。

数十秒という短い時間が長いと感じ、焦れてきた時に、

 

ガサガサッ!

森の奥で大きな音が起こった。

兵士全員がそちらを見て銃を構える。

さらに数秒経ち、何もいないとわかると注意を緩めた。

その瞬間、無線機から鋭い指示が飛ばされた。

『いま!』

 

彼は気配に向かって、地を蹴った。弾丸のように飛び出した彼は、敵が気づき振り向く前に、その右腕で躊躇なく背中を突き刺した。

「グッ! ……て、敵が……ごふッ」

 

スピードを乗せたその一撃は骨を砕き、的確に心臓を貫いた。

傷口からは止めどなく血が流れ、義手が赤く染まっている。

心臓の鼓動が止まったことを確認すると、ズルリと腕を引き抜く。右腕を振って血を飛ばし、しゃがんで死んだ敵の服で拭う。

 

あっけない。

それが彼の、初めて人を殺した感想だった。

立ち上がって周囲の気配を探り、仲間のものだと認識した。

 

「こちらトオル、排除完了」

『確認したわ。私の所に集合して』

「了解です」

死体を森の中に移動させ、言われた通りの場所に向かう。

途中、監視カメラに注意しながら集合した所は研究所の裏口と思わしき所だった。すでにそこにはオータムもいた。

 

「ここから中に入る。中に人はいないと思うけど、警戒はしておいて」

「わかりました」

「マークは予定通り、外で警戒ね」

『りょーかい。気をつけろよ、トール』

「警備システムにも注意しろよ。バレたら面倒だ」

 

 

そう言うとオータムはドア横の装置に、先ほどの敵から聞いた暗証番号を打ち込む。ピピッという音が鳴り、ロックが解除される。

ゆっくりとドアを開き中に入るが、人の気配はない。

銃を抜き、トオルは耳を澄ませるが、静かすぎる空間にかえって不審感を覚える。

スコール、トオル、オータムの順で慎重に進んでいく。ある程度奥まで行った時、地下への階段を発見した。途中にエレベーターを見つけたが、万が一を考えて使用を避けた。

 

「……どうやら地下がメインになってるみたいね」

「遺跡に見せかけた上部はハリボテ、ですか」

「もしかすると下には敵がいるかもしれないわ。気を抜かずに行きましょ」

 

非常灯のみが光る階段を降りていく。

音と気配だけを頼りに一歩ずつ足を下ろし、淡々と階段を下る間も集中を途切れることはない。

ただ下に進むことおよそ五分。オータムが疑問を呟いた。

 

「……もう二階分以上は降りたよな? この階段、どこまで続くんだ?」

「あと、一階分……くらいですね」

「トール、敵はいると思う?」

「……気配がしません。いえ、あるにはあるんですが………………」

 

トオルは少し言い淀んだ。

いま感知しているの気配。それがあまりにも弱々しいものだった。そしてそれ以外に感じない。

まるで何者かに導かれたような、定められた運命のレールの上にいるような不安に駆られる。

 

「……とりあえず行きましょ。敵なら排除するだけよ」

「わかってます」

 

口では言いつつも、足が少し重たく感じた。本能が忌避している。

しかし、それが何なのかはわからない。今は進むことしかできない。

さらに下に降りると、ようやく階段の終わり、フロアがあった。

そこはアクリルのような透明な板で区切られた小部屋がフロアの左右に整然と並んでいる。部屋の中には多種多様な機械が設置されている。

だがスコールとオータムの目を引いたのは、フロアのほぼ中央にある『檻』だった。正確には、檻の中の人影だ。

トオルは気配の正体だと判断し、三人は少しずつ近づいていく。

「……こいつは?」

 

オータムが驚きの混じった疑問を思わず口にした。だがスコールも内心は同じ思いだった。

人影は少女だった。まだ幼さが残る面立ちをして、髪は無造作に伸びている。ぼろ切れのような服とは言えない布を体に纏い、折れそうなほど細い手足には傷が目立っていた。

しかし、二人が驚いた点はそこではない。その少女の『顔』だった。

 

「オリムラ、チフユ……?」

 

織斑千冬(オリムラチフユ)

ISの世界大会、『モンド・グロッソ』の第一回において優勝した日本人。彼女は愛機『暮桜』を駆り、剣一本で優勝を勝ち取った。

目の前で横たわっている少女は、その織斑千冬とそっくりなのだ。

もちろん、背丈や細かいところは違う。それでもかなり似ている。

 

「あの、スコールさん」

「……っ、どうしたの?」

「ここにネームプレートがありました」

 

そう言って彼が指さした所に、確かにネームプレートはあった。

書いてあることは簡単だった。

義手をかざし、それを読み込んで頭に浮かぶ文字を読み上げる。

 

「《Sランク……被験体名…………まど、か》?」

 

最後の三文字を読み上げた瞬間、ひどい頭痛がトオルを襲った。立ち眩みする彼をとっさにオータムが支える。

「おい、トール? どうした?」

 

オータムは声をかけるが、彼は返事をしない。いや、できない状態にあった。

(なんだ、この風景は……?)

 

いま彼の頭には『覚えのない』映像が流れている。

白い壁。広い部屋に集まる同じ服を着せられた子供達。それぞれの服には番号が貼り付けられている。

上階からガラス越しに見下ろす白衣の大人達。無感情な視線。

子供が入っていく数々の部屋。ひしめく数多の機械。

部屋の外に漏れ出す悲鳴。生気を失った子供はダストシュートに放り込まれる。

映像の場面が変わる度に子供の数が減っていく。

時には一人、また時には四人も減る。

 

そして、最後に残ったのは二人。

少女と少年。

少女の顔はついさっき見たばかりの顔だった。

少年の姿には靄がかかってなぜか見えない。

 

場面が切り替わる。

そこは燃えていた。紅く染まっていた。

白い壁は煤で黒くなり、白衣の大人達は自らの血で身を濡らしていた。

けたたましく鳴り響くだけのサイレン。すでにその建物内の生存者は二人しかいなかった。

燃え盛る廊下を彼は少女を横抱きにして、足を引きずりながら進んでいく。

血塗れの彼はうわごとのように何かを呟き続ける。

ふと横を見ると、大きなガラス窓があった。

 

そこに映る少年は………………

 

「………………昔の俺?」

 

映る姿には両目があり、右腕もある。

間違いなく、過去の鳴神透(自分)だった。

 

 

 





どうにも、書きづらいですね。
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