緋弾のアリア ―灰色の目の少年―   作:オリーブの枝

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初めましての方は初めまして。そうでない方はいません。
オリーブの枝と申します。
初投稿ですが、よろしくお願いいたします。

それでは、本編どうぞ。


Nero e Scarlatta
1. Il Prologo


 

 

 

 

 

…ピン、ポーン…

 

そんな慎ましやかなドアチャイムの音で、俺は夢の世界から引き戻される。

つっても、夢なんて見てないんだけどな。

 

枕元に転がっていた携帯電話で時間を確認すると現在時刻は朝の七時。

こんな朝っぱらから家に押しかけてくる人物の存在にうんざりしながらのっそりとベッドから起き上がる。

 

 

チャイムの押し方に嫌な予感を感じつつとりあえず適当に制服のズボンとワイシャツを着て、ドアの覗き穴から外を確認するとそこにあったのはやはり俺の幼馴染の姿だった。

「……う゛…。」

最初は居留守でも使ってやろうかと思っていたが、なぜか俺の部屋の扉の前でコンパクトを手に身だしなみを整えている白雪を放って置くのもかわいそうだ。ということで、今度は深呼吸を始めた白雪がこれ以上意味不明な行動を起こさないうちにドアを開けてやる。

 

「おい、白雪。」

「わっ!キンちゃん!あの、えっと…おはようございます!」

 

コンパクトをサッと隠した白雪は、途端に顔を明るくして俺に話しかける。

 

「昔のあだ名で呼ぶのはやめろって言ってるだろ」

「あっ…ごめんね。そうだよね…でも私、キンちゃんのことずっと考えてたから…あっ、また私キンちゃんって…ごめんね、キンちゃん…あっ。」

 

白雪はどんどん青ざめていき、あわてたように手を口にあてがっている。

こんなようじゃ文句を言う気も失せてしまう。

 

星伽白雪。俺の幼馴染は、カラスの濡れ羽のような前髪ぱっつんの黒髪、制服も正しく着こなし、そのブラウスにはシミ、シワひとつない。

まさに大和撫子といった感じで、実際こいつは代々続く星伽神社の巫女である。

 

そんな白雪がこんな男子寮なんぞにいていいものだろうか。

 

「でも私、昨日まで伊勢に行ってて何にもお世話できなかったから、せめて埋め合わせしようと思って…今日は、お弁当作ってきたの。」

 

そういって渡されたのは、上品な和風の布に包まれた重箱。

包みを解いて中を確認してみると、そこには色とりどりの料理の数々。

ふんわり焼かれた俺の好物の玉子焼きに、脂ののった焼き鮭、懐かしさすら感じる栗きんとん…。

 

「こんなに…作るの大変だっただろ。」

 

「ううん、キンちゃんのためなら…それにキンちゃん、春休みの間またコンビニ弁当ばっかり食べてないか心配になっちゃって。」

「いや、そうでもないぞ。飯は同室のやつが作ってくれるし。毎日パスタだけど。」

 

実際にはあいつが任務に行ってからは本当にコンビニ弁当しか食べてなかったけど。まぁ、それは言わぬが花だ。

 

 

 

任務…。俺達が通う東京武偵高は、武偵(年々凶悪化する犯罪に対抗して新設された、警察のように武装を許可され逮捕権を持った国家資格で、警察と違って金さえあれば武偵法の許す限り何でもやる便利屋のような存在だ)を育成する高校だ。だから在学中に依頼を受けることで、それに見合った単位がもらえる。

 

俺の同居人は春休みだというのに自分の気に入った任務を見つけて単位を稼いでいる。俺よりも優秀なくせして勤勉な奴め。

 

 

 

「あぁ…あの子…パスタなんかより、きちんとバランスのとれた和食のほうが日本人の味覚にもあってるし、健康的だよ?」

「あ、あぁ。そうだな。」

「ちょっと…キッチン見てもいい?」

「それはいいけど…」

 

あいつの話をすると、なぜか白雪はこうして少し攻撃的になる。

珍しく俺を過剰に気にすることなくキッチンへと入ってくいく白雪をぼーっと見ていると、キッチンから呼ばれた。

 

「ねえキンちゃん、冷蔵庫の中身、なんでこんなに食材が少ないの?」

「いや、それは…」

 

実はあいつが出ていくときに、どうせ俺が料理しないならと、腐りにくい食材以外をすべて使い切るようにしてくれたのだ。

 

「それにこのゴミ箱に入ったコンビニ弁当のパック…やっぱりちゃんと食べてなかったんだね。」

「う……。」

 

するどいな、さすが巫女さん。関係ないとは思うが。

 

「今日、もしキンちゃんが嫌じゃなければ…放課後一緒にお買いものに行かない?」

「いいけど、今日あたりにはあいつも帰ってくるんだぞ?」

「そうだとしても、食べるものは必要でしょう?もし、キンちゃんに何か用事があるならいいんだけど…」

 

女子と一緒にいるのは、俺の体質的にあまりよくないのだが、まあ買い物程度で何か起こったりはしないか。

 

「まぁ…わかった。じゃあまた連絡する。」

 

「キンちゃんから…キンちゃんから連絡してくれるって…!」

 

自分の世界に入りだした白雪を無視して部屋に行く。

 

防弾制服を着てリビングに戻ると、いつの間にか現世に帰ってきていたらしい白雪が俺の銃を用意して待っていた。

 

「始業式くらい帯銃しなくたっていいだろ。」

「駄目だよキンちゃん、校則なんだから。」

 

校則……『武偵校の生徒は、学内での拳銃と刀剣の携帯を義務づける』、か。

 

「最近は『武偵殺し』とか『(ネーロ)』とか、いろいろ物騒だし…」

「―『武偵殺し』?」

「ほら、年明けに学内メールが来てた連続殺人事件のこと。」

 

ああ、そういえば。武偵ばかりを狙った犯行で、車なんかに爆弾を取り付けて自由を奪い、短機関銃付きのラジコンで追い回して海に突き落とす…そんな奴だったかな。

でも確か、あれは逮捕されたはずじゃなかったか?

 

「うん、でも模倣犯とか出たら危ないし…私キンちゃんの身に何かあったら…グスッ……。」

「わかったよ……。ほら、これでいいだろ?」

 

俺は銃をホルスターとともに装備し、兄の形見のバタフライナイフを手ごろなポケットにしまう。

武装くらいはしてやろう。今にも泣きそうな白雪を放っておくのも胸糞悪いし、何より校則違反で内申が下がったら、俺の『普通の高校に転校する』という夢が遠ざかってしまう。

 

「やっぱりキンちゃん、かっこいい。やっぱり先祖代々の『正義の味方』って感じだよ」

「やめてくれよ…ほら、俺はメールチェックしてから出るから、お前は先に行ってろよ。」

「うん…じゃあ、連絡、してくれたらうれしいな…」

 

 

 

白雪を部屋から追い出し、だらだらとメールをチェックする。

 

 

あいつからメールが来てる。「今日には戻るから、サプライズでも用意して待っててね」だと。そんなこと俺がするわけないのをわかっていて、こいつはすぐに軽口をたたく。

面倒くさい奴だ。

 

 

 

 

 

そんな風にしていたら、とっくに時刻は7時55分になっていた。

バスの出発予定時刻は、7時58分。このバスはうちの高校の生徒が多く乗ることもあって、時間には正確だ。乗り遅れたな。

次のバスを待っていては、年度の初めから遅刻してしまう。

仕方なく俺は、自転車で向かうことにする。

 

バスに遅刻した時のことも考えて、ちゃんとチャリも用意してあるのだ。

これを用意周到と考えるか、遅刻魔の苦しい解決案とみるかは人それぞれだが。ちなみに俺は自分のことながら後者だ。

 

 

 

 

 

しばらく漕いでいると、われらが東京武偵高が見えてきた。

 

うちの高校では一般科目のほかに、特殊な武偵の活動に関わる専門科目を履修できる。

 

 

俺が転科してきた学科で、推理学や尾行術などにより捜査する探偵科(インケスタ)

現場の押収物から事件の証拠・手がかりを科学的に捜査する鑑識科(レピア)

 

俺が在籍していた、『明日なき学科』とも呼ばれる、武器を用いた近接戦により強襲・逮捕する強襲科(アサルト)

狙撃、観測といった遠隔からの戦闘支援を行う狙撃科(スナイプ)

 

種々の乗り物の操縦方法を学び、兵士や兵糧を運搬する車輛科(ロジ)

装備の開発、ひいては改造や調達までをこなし、武偵高中の装備を一手に引き受ける装備科(アムド)

 

スパイや忍者のように、敵地に潜入し諜報・工作・破壊活動を行う諜報科(レザド)

確保した犯罪容疑者から尋問によって情報を引き出す尋問科(ダギュラ)

 

膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、整理・活用する情報科(インフォルマ)

通信により他の武偵と連携・サポートし、時には盗聴まで行う通信科(コネクト)

 

武偵病院などでの活動も含め、武偵に対する治療を行う衛生科(メディカ)

衛生科と違い、前線での武偵に対する応急処置を行う救護科(アンビュラス)

 

白雪が所属する、超能力を使った捜査を行う()超能力調査研究科(Supernatural Searching Research)(SSR)、通称S研。

特殊状況下における捜査、いわゆる色仕掛け(ハニートラップ)を用いての捜査を行う特殊捜査研究科(Civetta Research)(CVR)、通称C研。

 

 

武偵高の生徒は、この中のどれかに所属しており、五限目からはその科ごとの教科を学習する。

また、本人の希望に応じてその他の科目を自由に履修することもできる。

俺なんかは装備科の拳銃・刀剣の手入れに関する科目を少しとっているくらいで、ほかには何も取っていないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えていると、

 

「その チャリ には 爆弾 が 仕掛けて ありやがります」

 

ボーカロイドで作られた人工音声の脅迫文が、聞こえてきた。

 

「チャリ を 降りやがったり 減速 しやがると 爆発 しやがります」

 

爆弾――いつの間にか俺のチャリに並走している、短機関銃(UZI)付きのセグウェイが発した音声は、確かにそういっていた。

自転車をあちこち触って確かめると、サドルの裏に妙な物体が仕掛けられていた。

 

「助け を 求めたり ケータイ を 使用 しやがっても 爆発 しやがります」

 

混乱する頭を落ち着かせながら、減速しかけた自転車のスピードを気にして、体勢を立て直す。

この感触はプラスチック爆弾―C4と呼ばれる爆弾のそれだ。しかも確認した量から考えると、少なくとも人一人と自転車くらいは…いや、自動車一台くらいは簡単に吹き飛ばせる。

 

これは…対象が自転車なので少しショボイと言わざるを得ないが、手口だけを見れば今朝白雪の言っていた『武偵殺し』による、チャリジャック、といったところか。

模倣犯だと思うが、今はそんなことを考えている余裕はない。

とにかく、とにかく人の少ない方角へ急がないと。

 

 

俺は普段人のいない武偵高の第二グラウンドへと向かう。

しかし……どうしたものか。人気のない場所に来たはいいが、この先俺には打てる手段がない。

 

 

どうする?このセグウェイと心中でもするか?

 

 

そんな非生産的なことを走馬灯のように夢想していると、空を見上げた視界の端に何かが映った。

 

 

グラウンドの近くの女子寮、七階建てのマンションの屋上に、人影。

武偵高指定の防弾セーラー服に、遠くからでも一目でわかるほど長いピンクのツインテール。

 

 

突如屋上から飛び降りた人影は、そのまま屋上で用意していたらしいパラグライダーを広げ、こちらに迫ってくる。

驚きの連続によって麻痺していた俺の頭が、そこでやっと動き出す。

そう、その影はこちらに向かって来ているのだ。

 

「おい、ばか!こっちに来るんじゃない!この自転車には爆弾が…」

「うるさい!さっさと頭を下げなさいよ!」

 

いつの間にか銃を抜いていたらしい少女の手には、銀と黒の…ガバメント。

 

 

バババババンッ

 

 

 

あんな不安定な体制から撃った彼女の弾は、全弾命中。俺を追ってきていたセグウェイは、なすすべなく倒されていった。

 

うまい。―こんな状況下でも、俺が感じたのはその単純な一言だった。

 

 

くるくるっと銃を回し、ホルスターに収めた彼女は、パラグライダーを翻し、再度こちらに向かってくる。

 

 

「おい!聞いてんのか!この自転車には爆弾が仕掛けられていて、減速すると爆発する!こっちに来たらお前も巻き込まれるぞ!」

「うるさいわね…。武偵憲章一条!『仲間を信じ、仲間を助けよ』。知ってるでしょ!行くわよ!」

 

 

俺を通り越した彼女のパラグライダーは、再度俺に向かってくる。どうする気だ?

見ると、彼女はサーカスのブランコのように、足をパラグライダーのハンドルにかけ、こちらのほうへと手を差し出してくる。

 

 

「ほらっ、アンタも位置合わせなさい!死ぬわよ!」

 

 

俺は必死で自転車のペダルを漕いで、彼女に近づいていく。

無我夢中で彼女に抱き着くと、フワッという一瞬の浮遊感。

数瞬の後に、

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

 

 

 

爆発音。

危機一髪だ。

 

 

爆風に煽られた俺達は、途中で引っかかった木にパラグライダーをもぎ取られながら体育倉庫に突っ込んでゆく――。

 

その衝撃で、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと俺は、跳び箱の中に押し込められていた。

身動きが取れないのは、一緒に跳び箱に入っている物体のせいでもあるようだ。

とにかく顔に乗っているナニカをどけないと、何も見えない。

 

そう思ってソレを動かすと、そこにあったのは思わず見とれてしまうほどかわいい、少女の顔だった。

これは先ほど俺を助けてくれたあの少女だ。

 

よくよく見まわしてみると、彼女の足は俺の脇腹へ、手は肩に乗っかっていて、全体的にみると俺と抱き合っているようだ。

俺の体は、彼女と密着していない部分は先ほどもずっと彼女の横で揺れていたツインテールに包まれており、少女の香りが、俺を襲ってくる。

 

ダメだ、ここでなってはいけない(・・・・・・・・)

そう自分に言い聞かせ、体の芯に集まる血流を何とかしようとする。

 

「おい」

だめだ、起きない。

意識を失った少女の体をこの狭い空間の中でどけるのは難しい。

何とか体勢を変えて抜け出そうとすると、俺の鼻に、彼女の名前―『神崎・H・アリア』―が書かれた名札があたる。

学年やクラスは書かれていないようだ。

まあ今日が始業式なので、クラスが書かれていないのは当然なのだが。

くすぐったいので上半身をのけぞらせるようにしてかわすと、彼女の全身がよく見えてしまう。

 

そう、めくれ上がった彼女のブラウスまでもが。

 

彼女の胸が少しでもあればアウトだっただろうが、幸い俺が『あのモード』になるほどは無いようだった。

そう思って安心してほっと溜息をつくと、

 

「こ……この……ヘンタイ!!!!」

 

今意識が戻ったらしいアリアは、俺に幼いアニメ声で叫びながら、ポカポカ殴りかかってきた。

絵面だけ見るとかわいい場面だが、彼女のパンチは、こう、力が入っていないはずなのに、痛い。

武術でもやっているのだろうか、結構な割合で急所にクリティカルヒットしてくる。

 

「おい、やめろやめろ!これは俺がやったんじゃ…」

 

ダダダダダダダダダダダダンッ

 

ブラウスを上げたのは、俺じゃない。そう弁明しようとすると、

まるで銃撃されているような音と衝撃が、俺を襲う。

 

「まだいたのね!」

「『いた』って、何のことだよ!」

 

跳び箱の外を睨み、ガバメントを取り出すアリアに、俺は問いかける。

 

「『武偵殺し』のおもちゃの、あの変なセグウェイよ!」

 

さっきのセグウェイ、あれで終わりじゃなかったのか。

と思うと同時に、跳び箱の中に落ちた不幸中の幸いに、感謝する。

体育の授業でも拳銃を使う武偵高は、跳び箱も防弾製だ。

 

「アンタも戦いなさいよ!武偵高の生徒でしょう!」

「無理だって!こんなのどうすりゃいいんだ!」

「このままじゃ火力差で押し切られる!向こうは24台いるわ!」

 

24台って…尋常な数じゃないぞ。それだけのUZIが、こちらに向けられてるってことだろ。

 

 

その時――

 

アリアが、射撃体勢に入ろうとして、前のめりになる。

彼女の胸が、俺の顔に押しつけられる。

 

予想違いだ。これは…ある。

さっきはブラの上から見えただけだったからセーフだったようだが、こうして触れてしまうと明確になってしまう。

 

小さくても、胸は胸なんだな…そう思いながら、俺は自分が『あのモード』に、『ヒステリアモード』になってしまっているのを感じていた。

 

 

 

 

ガガガガンッ、ガキンッ!

 

弾切れの音を派手にあげたアリアは、身をかがめ弾倉をとりかえる(リロードする)

 

「―――どうだ。やったか。」

「二台はね。あとは射程圏外に追い払っただけよ。すぐにまた来るわ。」

「強い子だ。それだけでも十分だよ。」

「は?」

 

突然口調を変えた俺に、アリアは怪訝な顔をする。

流れるような動作でアリアをお姫様抱っこした俺は、跳び箱のふちに足をかけ一足で倉庫の端まで跳ぶ。

やっとあの跳び箱から抜け出せた。

 

「な、なな、なに…!?」

 

積みあがったマットの一番上にアリアを座らせる。少し、気が動転してしまっているようだね。

 

「姫はその特等席でごゆっくり。戦うのは男一人でいいだろう?」

「アンタ、どうしちゃったのよ!」

 

ガガガガガンッ

 

彼女の声にかぶせるように、奴らは体育倉庫の防弾壁に銃弾を浴びせてくる。

苦笑しながら倉庫の入り口に向かうと、アリアが声をかけてきた。

 

「危ない、撃たれるわ!」

「アリアが撃たれるよりはいいさ」

「だ、だから、なに急にキャラかえちゃってんのよ!アンタ一人でどうしようっていうの!?」

 

「アリアを、守る。」

俺はさっきから赤面しっぱなしのアリアにウインクし、ドアの外へと躍り出た。

 

 

 

 

俺を狙ってくるセグウェイの数は、22台。アリアの言葉通り、二台はその辺で壊れて転がっている。

明らかにアリアから狙える位置にないものは、他の奴セグウェイがが動かしたのだろう。

 

UZIは俺の頭を正確に狙って撃ってくるが、短機関銃の弾ごとき、今の俺には(・・・・・)止まっているようにしか見えない。

 

この後、どうしようか。UZIの一斉射撃を避けながら、俺は思案する。

俺の使っているベレッタの装弾数は薬室の一発を入れても16発。一発で一台倒せるとしても、8発足りない。

そんな風にして考えていると、

 

 

 

「呼ばれて!飛び出て!じゃじゃじゃじゃーん!愛の魔法少女、ミラクル☆キラリン、さんじょーう!」

 

 

 

上から魔法少女が落ちてきた。

なにを言ってるかわからないと思うが、この状況を簡潔に表現する言葉が思いつかなかったんだ。

 

 

「朔夜、いいところに来た。こいつらをたおすのを、手伝ってくれないか?弾が足りないんだ。あと、その口上は長い。もう少し短くしたほうがいいと思うよ。」

「いつもだったら無視してるところだけど、キンジ、今日はサプライズのお願い聞いてくれたみたいだし、手伝っちゃうよ!」

 

 

そう、こいつが俺の同室の、尾田朔夜。

任務から帰ってくるときになぜ魔法少女のコスプレで上空から降って来、体育倉庫の屋根に降り立つのかは、残念ながらわからない。わかろうともしないけれど。

 

 

「ありがとう。俺のお願いも聞いてくれるなら、少し黙っててくれないか。」

「私、黙ったら死んじゃう病にかかってるの!」

 

二人でそんな風に軽口をたたきながら、

 

 

ガガガガガンッ

ガガガガンッ

 

 

俺は腕を横に薙ぎながら、14丁のUZIの銃口にフルオートで弾丸を撃ち込み、内部から破壊する。

その間に体育倉庫の屋上にいた朔夜が、銃口を上に向けることができないらしい残りの8台のセグウェイを、上から蹂躙する。せこいな。

 

 

俺たちはもう伏兵がいないか、倒れたセグウェイがもう一度動き出さないかをよく確認し、銃をホルスターにしまう。

 

 

朔夜が屋根からこちらに向かって手を突き出して飛び降りてくる。

ハイタッチでもしようとしてるのかもしれないが、その高度からでは殺人的だ。

 

 

 

それを躱し(後ろで着地に失敗したらしくうめく声が聞こえるが、無視する。)、俺はアリアを迎えに、体育倉庫に入っていった――

 

 

 

 




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