緋弾のアリア ―灰色の目の少年―   作:オリーブの枝

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二話目、です。
因みに前話の小題はどちらかというと「事件の発端」的な意味です
今回のは「いくつかの誤解」

それでは本編、どうぞ。


2. Degli Equivoci

 

 

体育倉庫に戻るとマットの上にアリアの姿はなく、なぜか彼女は再び跳び箱の中にいた。

しばらく今何が起こったのか頭の中で処理できていない様子だったアリアだが、こちらと目が合うとキッと睨みつけてきた。

何故だろうか、怒っているようだった。

 

「お、恩になんか着ないわよ!あんなオモチャくらい、あたし一人でなんとかできたんだから!」

 

跳び箱の中から強がるアリアは、なにかごそごそと動いている。

どうやら、服装の乱れを直そうとしているようだ。

しかし先ほどお姫様抱っこをしたときに気付いたのだが、アリアのスカートのホックは最初の爆風のせいか壊れてしまっていた。

きちんと服をただすのは難しいだろう。

 

「それに、いくら活躍したからって私に犯した罪は消せないわ!あれはれっきとした強制猥褻よ!」

 

俺はベルトを外し、跳び箱に投げ入れながら、

 

「アリア、それは悲しい誤解、不可抗力ってやつだよ…。」

「あ、あれが不可抗力ですって!?」

 

俺のベルトでスカートを止めたアリアは、そういって跳び箱から出てきた。

しかしよく見ると本当に小さい。145cm、無いんじゃないだろうか。

 

「ハ、ハッキリと、あたしが気絶しているすきに、ふ、服を、ぬぬ、脱がそうと、してたじゃない!!」

 

顔を真っ赤にしたアリアは言葉にするのも恥ずかしいのか、途中途中で言葉を詰まらせながら言ってくる。

 

「そ、それに、あ、あたしの、むむ、胸、胸見てたぁああっ!」

 

さらに顔を赤くしたアリアは、言葉を発するたびに床に足を打ち付けている。

 

「あんたいったい何しようとしてたのよ!こ、これは、強猥の現行犯!」

「アリア、冷静になるんだ。いいか、俺は高校生、中学生を脱がしたりするわけがないだろう?歳が離れすぎだ。だから安心していい。さっきのはれっきとした事故だ。」

 

アリアをなだめるように優しく言うが、彼女はさらに強く床を踏み抜きながら、

 

「あたしは中学生じゃない!」

 

まずい。落ち着かせようと思ったが、逆効果だったらしい。女というものは、年上にみられることを極端に嫌うみたいだから、それで怒ったのだろう。

このままだと、床が本当に抜けてしまう。

 

「悪かったよ、インターンで入ってきた小学生だったんだな。しかしすごいよ、アリアちゃんは本当に――」

 

 

 

 あ た し は 高 2 だ ! ( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   )

 

 

 

 

 

ガガガガンッガキンッ

 

 

銃を素早く取り出したアリアが、俺の腹部を狙って撃ってきた!

 

 

まだヒステリアモードが抜けていなくて、よかった。いつもの俺だったらいくら防弾制服でも消すことはできない着弾の衝撃で今頃床をのたうちまわっていたことだろう。内臓をいくつかやられていた可能性もある。

俺は彼女が銃を抜いた瞬間から咄嗟に動き出していた。

むしろ彼女に飛びかかり、両手でアリアの二丁拳銃を抑え込む。

銃声から考えて、もう弾切れだろう。

 

しかし、アリアは体をひねったかと思うと身長差をものともせず俺を投げ飛ばした。

この子、徒手格闘もできるのか…。

 

俺はその威力を使ってそのまま体育倉庫の外まで転がり出る。

 

「うぅぅ…。痛てて……。ひどいよキンジ……。何するんだよぅ。ボクの可愛いお顔が台無しじゃないか!」

 

俺たちが取っ組み合っていた音で目が覚めたらしい朔夜が文句を言ってくるが、こいつの相手をしている暇はない。

 

「逃がさないわよ!あたしは逃走する犯人を逃がしたことは!一度も!なぁい!――あ、あれ?」

 

アリアは弾切れになった拳銃に再装填(リロード)するための弾倉(マガジン)を探しているのだろう、スカートのポケットなどあちこちをまさぐるが、そこにキミの探しているものはない。

 

「ごめんよ」

 

俺は先ほどの取っ組み合いのさなかにアリアからスリ取った彼女の予備弾倉(マガジン)を掲げ、そのままあさっての方向へと投げる。

 

「――ああ!!」

 

アリアは遠くの茂みに落ちていくそれを見ながら、弾もなく使い物にならなくなった拳銃を上下にぶんぶん振り回す。

うん。憤っているのが一目でわかる、とても分かりやすい動作だ。

 

――などと現実逃避している暇もなく、彼女は二丁のガバメントをホルスターに収めると、セ-ラー服の後ろからそこに隠していたらしい二振りの日本刀をジャキジャキッと取り出し、構えた。

銃や徒手だけでなく、刀もか――!

 

驚き、一瞬動きが止まった俺に、それを好機と見たアリアが飛びかかってくる。

 

「覚悟しなさ、い!?」

 

しかし、いつの間にか俺とアリアの間に立った朔夜がスカートの中から取り出した二振りの剣でアリアの刀をからめ捕る。

 

「誰よアンタ!」

「それはこっちのセリフだね。何があったのかわからないけど、僕のキンジに手を出すチビッ子は許さないよ!」

「俺はお前のものじゃない!だけど、助かった、朔夜。あとでお礼はする!」

「ちょっと!チビッ子って誰のことよ!」

 

今のうちに、まだヒステリアモードが切れていないうちにこの状況から抜け出さなければならない。

あんな大立ち回りをやってのけたアリアが相手ではいくら朔夜でも心配だが、あいつならうまくやってくれるだろう、それだけの信頼はしている。

 

「お、期待してるよ!!ぐふふ…。」

「ちょ、ちょっとアンタ待ちなさいよ、こんな女の子に任せて逃げるなんて!ひ、卑怯者!戻ってきなさいよ――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアと朔夜から逃げ切った俺だったが、始業式はとっくに終わっていた。

陰鬱とした気分で教務科に今朝の事件の報告を済ませた俺は、今年度の担任から告げられた新しいクラスに向かう。

 

(はぁ…、またやっちまったよ…)

 

――ヒステリア(Histeria)サヴァン(Savant)シンドローム(Syndrome)

俺はヒステリアモードと呼んでいるが、この特性を持つ人間は性的に興奮し脳内物質のβエンドルフィンが一定量以上分泌されると、論理的思考力、判断力、反射神経などの体の機能が飛躍的に向上する。

しかし元々、この能力は子孫を残そうとオスがメスを守るする本能が異常に発達したものであるので、このモードになった俺は女子を守ることが最優先になってしまい、さらに女子に対して気障な態度をとってしまう。

その欠点を利用され、俺は中学時代、散々な目にあっている。

女子にいいように使われて以来、俺は女子の前ではこのモードにならないと決めていたのだ。

 

そういう(・・・・)本やDVDは、まだいい。見なければいいだけだし、そもそも俺は興味がない。

しかし、生身の女子となると、そうはいかない。奴らはその服の下の至る所―ブラウスの下、スカートの中など―に、大量の爆弾を抱え込んでいるのだ――。

 

いろいろと考えながら歩いていたが、ショックでとぼとぼ歩いていたので割とギリギリの時間になってしまった。ちょうど俺の新しいクラス、2年A組の扉の前についたところだったので、俺は急いで休み時間で開けっ放しだった教室の後ろのドアから入っていった。

 

 

 

「ひどいよキンジぃ、ハプニングがあったならそう言ってくれれば誤解を解くのも早かったのに。」

「ああ、すまん。それにしてもいつお前着替えたんだ?」

 

クラスに入るなり話しかけてきたのはブラウスにスカートと、武偵高指定の女子制服を着た朔夜だった。

奥で女子と話していたのに態々話をやめてこっちに話しかけてくるなよ、こっちに注目が集まってやりづらくなるだろ。

 

「遅かったのはキンジだよ!あの後すぐ誤解が解けて、彼女をなだめて、制服に着替えて、…そんな風にして遅くなったと思って教室に入ったらキンジがいなくてさらにがっかりしたのに座席表を見たらちゃんと『遠山キンジ』って書いてあるじゃん、不思議に思ってたんだよ!」

「あぁ、教務科で蘭豹に少しからまれてな。しかし、今年も同じクラスとは残念だな。」

「なんでよ!こんなに可愛いボクと一日中一緒にいられてうれしいでしょ?」

「いや、全く。」

 

恰好だけ見れば二つ結びの金髪美少女で、美女・美少女しか入れないCVRの授業を自由選択でとるほどの規格外でクラスメイトからの人気も高い朔夜だが、

中身は残念だし、そもそもお互いの秘密を知っているから全く嬉しくない。

しかし、こんな風にふざけあえる友人はなかなかいないので、そこだけは感謝している。友人というより悪友か。

 

 

 

「はーい、みなさん、ホームルームを始めますよ。席についてください。」

 

担任の高天原先生が教室に入ってきた。

 

「うふふ。じゃあまずは去年の三学期に転入してきたカワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよ!」

 

全員が着席したのを確認した先生は不穏なことを言う。

頼む、俺の悪い予感よ、どうか外れててくれ……。

 

そんな俺の願いむなしく、ちょうど俺の死角になっていた前のほうの席から立ち上がったのはピンクのツインテールが特徴的な、さっき俺が逃げ出したばかりの、アリアだった。

 

 

「神崎・H・アリアよ。よろしく。」

 

 

クラス全員に自己紹介をしているはずなのだが、彼女の双眸が捉えていたのはどうあがいても俺だった。

 

「ありがとうございました。じゃあ神崎さん、席に戻っていいですよ。」

 

先生が着席を促すが、当のアリアはそれを聞き流し爆弾を落とした。

 

 

「先生、アタシはあいつの隣に座りたい。」

 

 

 

 

どよめく教室内。

 

すでに通常モードに戻っている俺は銃撃を覚悟して震えていたのだが、『隣に座りたい』ときた。

何故だ…。あいつは俺のHHS(ヒステリアモード)を見抜いているわけでもないだろうし、隣の席からじっくり殺そうという算段なのだろうか。

 

「よかったな、キンジ!どうやらついにお前にも春が来たみたいだぜ!先生、オレ、席代わりますよ!」

 

こいつ…調子に乗りやがって。この190cm以上ある大男―武藤剛機は、俺が強襲科にいたころよく世話になってた車輛科の優等生だ。頭の方は残念だが、スクーターからロケットまで、乗り物と名のつくものなら何でも操縦できる。

俺の右隣に座っていた武藤の提案に先生は俺とアリアを交互に見、OKしてしまう。

 

「あらあら。尾田さんといい、最近の女子高生は積極的なのねぇ。じゃあ武藤君、代わってあげて。」

 

ぱちぱちぱちぱち。

なぜか起こる拍手喝采。

ちがう!こいつはさっきまで俺に銃をぶっ放してた凶暴女なんだ、あいつは俺のことは何も知らない――

 

 

そう抗議しようとする俺だが、アリアはさらに爆弾を落とす。

 

 

「キンジ、これ。さっきのベルト。」

 

 

そういってアリアはさっき俺が貸したベルトを投げ渡してきた。

よく見ればこいつもどこかから制服を調達して着替えたのだろう、着ている制服が新品になっている。

俺はベルトをキャッチするが――

 

 

「はい、はい!理子、わかっちゃった!―これ、フラグバッキバキに立ってるよ!」

 

 

絶対にわかってない。俺の左斜め後ろに座っていた峰理子が、勢いよく席から立ち上がり、言い放った。

 

「キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた!これ、謎でしょ謎でしょ?でも理子には推理できた!できちゃった!」

 

 

アリアと同じくらい背の低い理子は、スイート・ロリータとかいうファッションに制服を魔改造して着ている。

推理力など縁もない理子の推理だが、同じようにバカな武偵高の生徒たちにはウケているようだ。

ちなみに、キーくんというのは俺のこと……らしい。こいつはすぐ人に珍妙なあだ名をつける。確か朔夜のことはさーやとか呼んでいたな。

当の『さーや』は俺の左隣の席で腹を抱えて笑っている。全く…。俺の親友を自称するならこういう時に助けてくれてもいいんじゃないだろうか。

 

 

「キーくんは彼女の前でベルトを取るような何らかの行為をした!そして彼女の部屋にベルトを忘れてきた!つまり二人は――熱い熱い、恋愛の真っ最中なんだよ!」

 

ツーサイドアップのゆるふわ天然パーマの髪をぴょんぴょんさせながら、理子は突拍子もないおバカ推理を投下する。

恋って…。お前。

 

 

しかし頭が理子と同じレベルのクラスメイトどもは「根暗なキンジがいつの間にこんなかわいい子と!?」「女子どころか他人には興味なさそうなのに!」「星伽さんや朔夜ちゃんだけじゃなかったのか」などと、大いに盛り上がってしまう。

武偵高の生徒はこの一般教科でのクラス分けとは別に、それぞれの専門分野で組や学年を超えて学ぶ。

そのせいで生徒同士割と仲がいいほうなのだが…それにしても息が合いすぎだろう。

 

俺がため息をつき、頭を抱えた丁度その時―

 

ガンッ、ガン!

 

鳴り響く二発の銃声が、クラス中を凍りつかせた。

顔を上げると、真っ赤になったアリアが、拳銃をこちらに向けて立っていた。

先ほどの銃声はアリアの二丁拳銃から発せられたものか。

 

「恋愛だなんて…。くっだらない!」

 

 

……武偵高では射撃場以外での銃の発砲は『必要以上にしてはいけない』。つまり、してもいい。

まあ此処の生徒は将来銃撃戦が日常茶飯事の職業に就こうというのだから、今のうちにそれに慣れさせておくためなのだろうが…新学期の自己紹介でいきなり発砲したのはこいつが一人目だろう。

 

 

「全員覚えておきなさい!そういうバカなことをいうやつには……風穴開けるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みになり、質問攻めを予想していた俺は四限の授業が終わるとすぐにクラスメイトに見つからないようにこっそりと教室を抜け出す。

大体アリアのことなんて何も知らないのだ。俺に聞かれても困る。

 

武偵高の中でも、人気の少ないほうへと歩く。全く人がいないということはないが、同じように静けさを求めてやってくるので、お互いに不干渉だ。だが、そのくらいの空気が心地いい。

そんな場所の中、誰からも見られない穴場スポット、茂みに隠れた木の根元に寝っころがってぼーっと空を見上げる。

 

 

 

そんな風に時間を過ごしていると、何人かの生徒が話しながら俺のすぐ脇を通り過ぎていく。

声からして、うちのクラスメイト、しかも強襲科の女子のようだ。

 

「さっき教務科から来てた周知メール、二年生の男子が自転車を爆破されたって書いてあったけど、キンジのことじゃない?」

「思った。始業式、出てなかったもんね。」

「うわ、チャリ爆破されて、しかも次にアリア?今日のキンジってば超不幸じゃん。」

 

盗み聞きをしているわけではないが、すぐそばで話しているのだ。否が応でも聞こえてきてしまう。

さらに魔の悪いことに、女子たちは俺のいるすぐ近くで立ち止まって話し始めてしまった。

これじゃあ、出ていくにもいけないぞ…。

結果、俺はここで微動だにしないまま彼女らの話を聞いているしかなくなってしまう。

 

 

彼女たちが話すには、アリアは男子の間ではファンクラブができるほどだが、女子たちにはあまり受け入れられていないらしい。

友達もいなく、昼も一人で教室の隅で食べていた、らしい。

他人に興味のない俺は全く知らずにいたが、どうやらアリアは変人揃いのうちの武偵高でも浮くほど目立つキャラらしい。

 

 

 

 

 

「キンジぃ、おきろー。もうすぐ昼休み終わっちゃうぞー。」

 

心地よい木漏れ日の中じっとしていた所為か、寝てしまっていたようだ。

朔夜が起こしに来てくれた。こいつにだけはこの場所がばれている。

とりあえず今は、授業のことを考えよう。そう気持ちを切り替え、立ち上がって探偵科棟に向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校も終わり、白雪と約束していた通りに買い物に行ってきた。

終始嬉しそうに顔を赤らめていた白雪だったが、朔夜がもう帰ってきていることを思い出したので男子寮まで来ようとするのを阻止して帰らせる。

 

「うぃ、キンジおかえりーぃ。」

 

部屋に帰ると朔夜は金髪ツインテールのウィッグを外し黒髪のショートヘアに戻っていた。

服装も部屋着で、もう出かける気もないことをアピールしているようだ。

というか、それならウィッグなんて着けていかなければいいのに。

 

 

 

「おお、食材の買い出し、行ってきたぞ。」

「珍しいね、キンジが自分から買い出しに行くなんて……あぁ、白雪ちゃんと一緒だったんだね?彼女がいつも使っている清めのお香のにおいがする。」

「相変わらずすごい観察力だな。」

「このくらいできなきゃAランク武偵なんてやってられませんよーぅ。」

 

他の奴が言えば嫌味だが、こいつは本気で言っているのだろう。

 

「パソコンもほどほどにしろよ」

「現代の武偵は情報を駆使して有利に事を進めるものなのですにゃ」

 

偉そうなことを言っているが、こいつが普段見ているのは海外のゴシップサイトだ。

何十か国語もしゃべれる朔夜は、いろいろな国の噂話を集めているらしい。

 

居間のど真ん中で寝っころがってパソコンをやっている朔夜の上を踏まないように通り抜け、自室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

この部屋は本来四人部屋なのだが、おれが転科したことと、たまたま相部屋になる探偵科の男子生徒がいなかったことから、俺が一人で使っていた。

そこに、イタリアから日本に帰ってきた帰国子女の朔夜が、同じく相部屋になる生徒がいなかったために、空いていた俺の部屋に転がり込んできた、というわけだ。

その時もひと悶着あったのだが、今となってはそれもいい思い出…とまでは言わないが、笑い話くらいにはなるだろう。

 

朔夜はウィッグをつけたり変装しているときはあんな感じだが、部屋に帰って自然体で過ごしているときは無理に干渉してこない。

武偵高の変人どもに邪魔されないこの空間で、気ままに、平穏に過ごすってのは気分がいい。

 

 

夕焼けを窓に望み過ごすこの時間は静かで、今朝のチャリジャックが嘘みたいだ。

結局あの件に関しては、セグウェイの残骸を鑑識科が回収し、探偵科も調査を始めている。

ただ、切った張ったが日常茶飯事のこの東京武偵高では、殺人未遂程度は流されてしまう。

強襲科で慣れてしまったのと、アリアに一日振り回されていた所為で、被害者の俺ですらスルー気味にしてしまっている。

 

 

 

 

しかしあれはいったいなんだったんだろう。

いたずらにしては悪質すぎる。

あの『武偵殺し』の模倣犯は、爆弾魔だ。

爆弾魔はこの世で最も卑劣な犯罪者の一種で、たいていはターゲットを選ばず無差別に爆発を起こし人々の注目を集めてから世間に自分の要求をぶつける、というのが一般的だ。

 

 

――ピンポーン。

 

 

と、なると、あれはたまたま運悪く俺のチャリに仕掛けられていただけだったのだろうか。

 

 

――ピンポンピンポーン。

 

 

それとも俺個人を狙ったものだったのだろうか。だとしたら、いったい何の恨みで?

 

 

――ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン………

 

 

 

 

 

 

ああぁぁ!!もう、うっせえなぁ!

誰かがさっきから俺の部屋のチャイムを連打している。

朔夜が出てくれないかと思ったが、あいつも居留守を使ったか、ヘッドフォンで音楽でも聞きながら作業しているんだろう。

渋々俺がドアを開けると、

 

 

 

両手を腰に当て、赤紫(カメリア)色の目でこちらを睨んだ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、神崎!?」

 

 

 

 

―制服姿の、神崎・H・アリアがいた。

 

 

 

 

 




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