此処は何所とも取れない空間に存在する場所。
魔戒騎士や魔戒法師と言った、特定の数名しか立ち入る事の出来ない場所・・・その名は『番犬所』。
そこに1人まるで神話の世界の登場人物の様な恰好をした者、この番犬所の管理者である神官が佇んでいた。
「・・・世界がこの様になって早10年・・・世界の陰我が強くなった、特に一か所・・・この東の管轄内にある『IS学園』、
この場所には様々な理由から世界中から陰我が向けられ特に強い・・・このままでは半世紀近く振り・・・第二次世界大戦以来の、
『陰我集延期』に突入しかねん・・・」
『陰我集延期』とは彼等魔界に関係する者達が呼ぶ地獄の事だ。
『陰我』とは古代有数、森羅万象に宿る“闇”の部分、それが宿るオブジェをゲートにして奴等『魔物(ホラー)』はこの世に現れ、
人に取り付き人を魂ごと喰らう。
だがホラーにも活動、出現する時間がある・・・それは夜。
しかしこの陰我集延期の間、ホラーの出現は頻繁化するだけでなく、朝昼関係無く現れ活動する。
過去に幾度とこの陰我集延期が訪れた、第二次世界大戦等の世界規模の大戦争、貴族主義時代による民衆の嘆き、
この陰我集延期は自然発生ではなく、時代の流れの中で多くの人の陰我が発生する時に起きる。
「故に君にはこのIS学園に行って・・・いや、入学して貰う」
神官が後ろに立っていた白いロングコートを着た、凛々しく整っていて男とも女とも取れる中性的な顔立ちに、
左手の中指に髑髏の様な指輪を付けた男が立っていた。
「俺は別に構わないが・・・何故入学する必要があるのです?」
「その方が都合が良いと判断したのだ、内部から陰我の発生を抑えるのにな・・・それに君の目標の為にも都合が良いだろう?」
「・・・俺の目標・・・」
『良いんじゃないのか?お前には“アレ”がある事だし・・・もしかしたらこっちじゃ掴めない情報が手に入るかもしれないしな』
突如男の左手に嵌めている指輪が男に向かって喋りだした。
指輪の名は『ザルバ』、魔導輪である生きた指輪だ。
「・・・・良いだろう、俺もその方がホラーを狩りやすい」
「指令はこっちで常時送る・・・それと大丈夫だとは思うが間違っても・・・」
「分かっている・・・魔戒騎士としての務めを優先にする・・・それが俺の使命だからだ」
「うむ・・・入学の手筈は君なら簡単だろう、頼むぞ・・・冴島鋼牙」
男・・・『冴島鋼牙』は神官に頭を下げ、番犬所から出て行った。
「IS学園に入学・・・いや、今の時期からなら転入か・・・」
『学校か・・・一旦どんな所なんだろうな』
「さあな・・・俺は小学校までしか通わなかったからな・・・それ以降の勉学は独学と周りの者から学んだから今更行く必要も無いがな」
『それにISに関してもそこら辺の学生・・・いや、大人よりも知っているしな』
「取り敢えず今からIS学園に向かう」
『何だ?学校に通える事が待ちきれないのか?』
「違う・・・何となくだが嫌な予感がする・・・」
『珍しいな・・・お前が「何となく」と言った曖昧な感覚で行動しようとするなんてな』
ザルバは今回の鋼牙の行動動機が珍しい所為か、声のトーンが少しだけ上がった。
「・・・俺も人間だ・・・そんな時もある・・・それに、今日はIS学園が学年別トーナメントと言う学年別で生徒達の技量を測る行事があるそうだ、
俺も一応それに観客として招待されている」
『お前に?』
「と言っても、『冴島財閥』に充てた招待だがな」
『そりゃそうだ・・・一般的に冴島財閥のトップがお前自身とは知らされていない』
『冴島財閥』とは世界有数の大企業で、生活用品から飲食店や、医療用品やレスキュー用品の開発等では世界屈指の成功を収めていたが、
9年程前からIS関係のパーツやパッケージ開発にも手を加え、IS業界にも進出し、そこでも着実に実績を上げている大企業であり、
そのトップとなり、冴島財閥の全てを担っているのが若干17歳の少年である彼、冴島鋼牙なのだ。
『お前が冴島財閥のトップと知っているのは財閥でも数少なく・・・他の企業でもほんの一握り、
例えIS学園と言えお前がトップである事は知りもしないだろう』
「本来なら開発部の者を行かせようと思ったが・・・ついでだ」
『何だかあまり行きたい感じじゃないな』
「当然だ元々この学年別トーナメントは各国の政府や企業に研究者達への観覧が目的でもあるからな、
子供を見世物にする行事等、聞いただけでも虫唾が走る」
学年別トーナメントでは1年生は原石の発掘、2年生は1年からの成長具合、3年生はスカウトと多目的な意味があり、
当然IS業界に加わっている冴島財閥も招待されていた。
最初鋼牙はこの招待を断ろうとも思ったが、今日突然のIS学園入学の指令が来た事により、IS学園転入の手続きついでに行く事とした。
「だが・・・嫌な予感・・・不吉な事があの学園に起きる気がするのは本当だ」
そう言い鋼牙はIS学園に向かって歩を進めた。
(しかし何だ・・・この言い様の無い不安は・・・IS学園・・・一体何が待ち受けている)
この一歩が・・・彼を真の魔戒騎士へと・・・『守りし者』へと成長させる戦いと出会い・・・いや、“再会”への始まりであった。
続けてIS編のプロローグをどうぞ。