正直魔戒騎士なら鎧召喚しなくてもこれ位の戦闘力はあるかな。
Side・鋼牙
「此処か?」
俺はザルバの案でアリーナの屋根の上に立っていた。
『あぁそうだ』
「しかし遮断シールドが張られているから入るのは困難だぞ」
何も無い様に見えてアリーナには包む様に遮断シールドが展開されている。
破壊して突入するにも骨が折れる・・・鎧を召喚しるわけにもいかん。
『おいおい鋼牙・・・俺が何なのか忘れたのか?』
「・・・・そうだな、お前は“普通”の魔導綸とは違ったな」
そう・・・ザルバは普通の魔導綸ではない・・・“あの時”俺がそうした。
『いいか鋼牙?遮断シールドは発生装置ってのか?それ等から放出されているシールドエネルギーが繋がって展開されている』
「つまり繋ぎ目があると?」
『あぁ、その繋ぎ目を正確に攻撃したら、今のお前でも破壊は可能だ』
「分かるか?」
『目を閉じろ・・・俺の見せる光の筋が繋ぎ目だ』
俺は静かに目を閉じる・・・懐かしいなこの感覚は、子供の頃の修行を思い出す。
しばし心を無にし、精神を研ぎ澄ます・・・そして。
「・・・・・・・・」
シャンッ・・・・・・・
「見えた!!」
バッ!!
ジャキン!
俺は光の筋が見えた方に飛び、魔戒剣を引き抜き・・・・。
「おおおおおおおおおおおっ!!」
ガキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!
繋ぎ目に合わせて魔戒剣を振り下して衝撃音が鳴り響いた後。
ガシャーーーーーーーーーーン!!
ガラスの割れる様な音と共に遮断シールドに穴が開き、同時に俺はアリーナ内部へと突入した。
「何だ!?」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ズガン!!
「ガアッ!!」
ドサッ・・・・
「ゲホッ・・・ゲホッ・・・・はあ・・・はあ・・・」
シャルロットを掴む腕に魔戒剣の一撃を当て、ラウラ・ボーデヴィッヒはシャルロットを落とし、
無事な事を確認すると俺はラウラ・ボーデヴィッヒの前に立ち構える。
「・・・一体・・・」
「逃げろ」
「え?」
「キサマは・・・一体何者だ!?」
「キサマの陰我・・・俺が断ち切る!!」
――――『鎧刃』――――
Side・シャル
如何して鋼牙さんが此処に?
それに・・・何所から、そしてどうやって此処に?
色々と謎だけど・・・取り敢えず助けてくれたの?
「シャルル・・・無事か?」
「一夏・・・箒さん!大丈夫!?」
「あぁ・・・私は無事だ・・・デュノアの方こそ・・・」
「うん・・・僕は大丈夫・・・」
「だが・・・あの“女性”は?」
「あぁ・・・離れて見ていたけど、あの“女の人”・・・空から降って来たぞ」
あはは・・・やっぱりそう見えるよね・・・鋼牙さんて、スタイルも良いし・・・何より顔が・・・。
「えっとね・・・あの人は冴島鋼牙さんって言って・・・今日のトーナメントを観覧しに来た・・・“男”の人だよ」
「「ふ~~ん・・・・へっ?」」
あっ・・・声がハモった、さすが幼馴染同士。
「「うえええええええええええええええええええええええ!?」」
Side・ザルバ
後ろが騒がしいな・・・鋼牙は逃げろって言わなかったか?
「ザルバ・・・如何だ?」
『あぁ・・・まだ大丈夫だ、奴はまだ“喰われて”いない・・・が、ゲートとなるのも時間の問題だな』
ラウラって嬢ちゃんはまだホラーに喰われてはいない・・・だが、その纏っているISが問題だな。
ホラーのゲートになるのは何も一般的なオブジェだけとは限らない。
恨み辛みが籠った武器等や日常品がゲートとなる事もある・・・嬢ちゃんのISも相当邪気が溜まってやがる。
いや・・・むしろ・・・。
『鋼牙、あのISを破壊しろ・・・あれが嬢ちゃんの邪心を膨れ上がらせている』
「何?」
『“コア”の周りに法術が仕組まれている・・・持ち手の闇を引き出す方式が・・・』
「では・・・奴の暴走は人的な物か?」
『あぁ・・・だが一体誰だ?このご時世にこんな物仕込んだのは?このままじゃ本当に陰我集延期に突入しかねないぞ』
「・・・詮索は後だ・・・一刻も早くあれを破壊する」
「破壊する?この私を?このシュヴァルツェア・レーゲンを?」
「あぁ・・・」
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!お前の様な者が私を倒せると思っているのか?不可能だ」
「何をもってそう思う?」
「それは・・・私が最強の力を手にしたからだ!!」
ブワッ!!
「あっ・・・危ない!!」
「止せラウラ!!相手は生身なんだぞ!!」
「鋼牙さん!!」
「・・・・・・・」
だからお前等逃げろって・・・。
確か・・・ワイヤーブレードって言ったか?10本のワイヤーブレードが、10の方向から鋼牙に襲い掛かって来た。
あのスピードと四方八方から攻められたら普通の人間なら一溜りも無いな・・・そう、“普通”の人間ならな・・・。
ズババババババババババババッ!!
「なっ!?」
「えっ!?」
「な・・・んだ・・・」
「・・・・・綺麗・・・・・」
おぉ・・・おぉ・・・驚いてる驚いてる・・・。
鋼牙は魔戒剣で襲い掛かってくるワイヤーブレードを全て斬り落とした。
まあ、鋼牙ならこれ位は目を瞑っていても出来るな・・・しかしシャルロットの嬢ちゃんは分かっているな。
鋼牙の剣技は力強く、それでいて美しさがある・・・剣技にとって美しさは鋭さと精確さを表している。
『鋼牙・・・俺は必要なさそうだな』
「だが何が起こるか分からん・・・警戒はしておけ」
『あいよ』
「キサマ・・・」
「それで終いか?ならば次はこっちから行かせてもらうぞ!!」
バッ!!
「チッ!!」
ドシュン!!ドシュン!!
嬢ちゃんに接近すると同時に、嬢ちゃんが両肩のレールカノンで鋼牙を撃ち始めたが。
さっきの攻撃を防がれたのが余程ショックだったんだろうな、狙いにブレがある。
キンッ!!
「ハアッ!!」
ガキンッ!!
「ぐあっ!?」
「フンッ!!」
ガキンッ!!
「がっ!!この!!」
ブウンッ!!
ガキン!!
「何っ!?」
「・・・・その程度か?」
嬢ちゃんが放った弾を魔戒剣で弾き飛ばして、そのまま嬢ちゃんのISを纏っている部分を
斬りつけ、
シールドバリアーを砕きアーマーに直接ダメージを与える。
「この・・・これでどうだ!!」
嬢ちゃんは右手を翳そうとした・・・あのAICとか言う慣性停止結界を張るつもりか?
確かに捕まっちまったら生身の鋼牙では成す術が無いかもしれないが・・・捕まらなければ良い話だ。
「何!?」
ガシュン!!
鋼牙は慣性停止結界を張られる前に嬢ちゃんの懐にまで急接近して、翳そうとした右手の掌を魔戒剣で突く。
如何やら掌に慣性停止結界を展開する機械があるようだ。
「ぐうっ!はあっ!」
「むん!」
ズシュン!!
「あぁ!!」
続けて翳そうとした左手の掌を突き、両掌からバチバチと火花が飛び散っている。
これでもう慣性停止結界を張れなくなったな。
「キサマの十八番はこれで封じたぞ」
「何を!AICが無くともキサマなどこいつで十分だ!!」
ブウン・・・・
「でやあああああああああああ!!」
「・・・・・・・」
ガキンッ!!
「ふんっ!」
どすっ!
「がはっ!?」
嬢ちゃんもプラズマ手刀で反撃するも、魔戒剣で防ぎ、その隙に嬢ちゃんの脇腹に蹴りを入れる。
流石にシールドバリアーは貫けなかったが、鋼牙の蹴りは強力だぞ・・・僅かにだが嬢ちゃんのシールドエネルギーを減らした。
その後も避けるならば避け、防ぐなら防ぎ、隙有らば斬るの攻防を繰り広げるが・・・鋼牙が一方的に有利な状態だ。
対して嬢ちゃんのISは至る所鋼牙によって付けられた斬り後で一杯だ。
時々蹴りや拳で攻撃するが・・・俺を嵌めている左手で攻撃するのは止めてくれ・・・シールドバリアーに当たって痛いんだよ。
「それはすまんな・・・今度からは気を付ける」
そうは言うが鋼牙・・・その言葉を言うのはこれが何回目だ?
「お前と契約してからだと今ので386回目だ」
数えているのかよ・・・つか、心を読むなよ。
後余裕だな鋼牙・・・油断して怪我するなよ。
「くっ・・・この!!」
ドシュン!!ドシュン!!
「!!」
おっと言わんこっちゃない・・・嬢ちゃんの奴、至近距離でレールカノンをぶっ放しやがった。
下手すると自分に間でダメージを負うぞ・・・まあ、その心配はないがな。
バッ!!
「なっ!?」
ガキンッ!!
「がああああああああああああああああっ!!」
至近距離と言っても相手の体勢が崩れてなかったらあまり意味が無いぞ。
鋼牙はレールカノンを飛んで避け、体を捻りながら嬢ちゃんの背中を斬りつけた。
「ぐうぅ・・・この!!」
「ふん!」
ガキン!!ジャキン!!
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
「うっがああああああああああああああああああ!!」
「無闇に振り向こうとするな・・・お前はまだ俺の距離の中に居る」
嬢ちゃんが振り向こうとした時、左肩のレールカノンの砲身が死角となり、鋼牙の攻撃をあっさりと受けちまった。
強い武器を手にするのは構わないが、それによるリスクってもんを理解しておきなよ。
両肩のレールカノンを破壊し、爆風に吹き飛ばされた嬢ちゃんに追い打ちをかけようと鋼牙は接近する。
「くぅ・・・何時までも調子に!!」
ジュイン!!
踏み止まった嬢ちゃんがプラズマ手刀で鋼牙を迎え撃つが・・・。
「遅い!」
「はや・・・!?」
バキンッ!!ベキッ!!
「なあ・・・・・」
「はっ!」
ドスッ!!
「ぐぶふおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
一瞬にして嬢ちゃんのプラズマ手刀を切り落とし、即座に鋼牙は魔戒剣を反転させ、
驚愕している嬢ちゃんの胸の中心を柄頭で鋭く突いた。
「がはっ!がはっ!ひぃ・・・・ひぃ・・・・」
今の一撃で肺の空気全てを吐いちまったようだな、嬢ちゃんは蹲って胸を手で押さえながら過呼吸をしている。
「如何した?お前の言う最強の力とはこの程度の物か?」
いや鋼牙・・・確かに今の嬢ちゃんは最強だ・・・最強クラスの力を持ったISに“纏った”だけのな。
覚えておきな、自分を見失い、武器の力に振り回されているようじゃ、鋼牙には・・・信念を持って戦う者達には勝てないって事をな。
Side・シャル
つ・・・強い、強すぎる・・・鋼牙さんってISを纏ってないのにあんなに強いなんて。
「しゃ・・・シャルル・・・あの人は一体何なんだ?」
「お前と一夏が2人掛りでも、IS学園の教師達ですら圧倒したボーデヴィッヒを・・・ISも使わずに・・・その身と剣一つで圧倒している・・・」
「ぼ・・・僕も今日初めて会ったからわからないよ・・・只、冴島財閥の人だって事しか」
「冴島財閥のだと!?」
「あの有名な大企業の!?」
「うん・・・それ位しか分からない・・・」
でも・・・鋼牙さんは僕に会った事有るような事言ってたし・・・一体何時?何処で?
「お前達!!逃げろと言った筈だ!!」
「で・・・でも・・・」
「いいから逃げろ!!」
「「「はっはいいいいいいいいいい!!」」」
うぅ・・・怖い・・・今の鋼牙さん、織斑先生並みに怖かったよ。
僕達は負傷した先生達を手分けして担いで、鋼牙さんとボーデヴィッヒさんから離れた。
だけど・・・僕の視線は、鋼牙さんとボーデヴィッヒさんの戦いに向けたままだった。
Side・鋼牙
試合開始前に見せられたシュヴァルツェア・レーゲンの簡単なデータと照らし合わせても、もうISを解除させるまでにはダメージを与えた筈。
だが一向にその様な傾向は見られない・・・となればISを纏ったまま破壊するしかないか・・・。
「がっ・・・・ハア・・・ハア・・・何故だ・・・何故ISを纏っていない只の人間に此処まで・・・」
「それはお前が本来の自分ではないからだ」
「な・・に・・・?」
「今のお前は本来の自分を見失っている」
「何を!!これが本来の私だ!!本当の私だ!!兵器として生まれ!!兵器として産み出された!!私本来の姿だ!!」
兵器としてか・・・以前噂で聞いた事がある。
ドイツ軍で、兵器の強化ではなく、使う者の強化・・・強い兵士を作る目的で、人工的に遺伝子を合成・調整し、
生まれ付いて最強の兵士を創りだそうとする研究をしていたと言う噂だ。
だが成功例の低さ、そしてISの登場により、その研究は廃止され、そこで産み出された成功例の子供は今でもドイツ軍に居ると聞いた。
そこしか生きる場所・・・居場所が無かったと言う事か。
戦場が居場所・・・俺と似ているな・・・だが!
「違う!!お前は生きる権利を天より与えられこの世に生を受けた!!例え生まれが如何であろうと、兵器として産み出されたのであろうと、
お前の生き方を決められるのはお前自身だ!!」
「!?」
「俺も今の俺の生き方に従いこの場に居る!!俺自身の思うままに!!この力もそうだ!!俺の信念と誓い・・・そして使命の為!!
俺の選んだ生き方に基づいて身につけていったものだ!!」
「・・・・・」
「お前の力は本当のお前自身が使って初めて本当の“力”となる!!内なる闇に呑まれ、本来の自分を見失ったお前の力など俺には通用しない!!」
「・・・・戯言を!!」
力は誰もが信念を持って培って行く・・・故に、本来の自分を見失った者がその力を振るっても本来の半分も発揮できない。
確かにこいつ、今のラウラ・ボーデヴィッヒのISの力は強力だ・・・しかし、力・・・攻撃力だけが強さではない。
今の奴は只力を振り回しているだけに過ぎない、もし本来のラウラ・ボーデヴィッヒならそれなりに面白い闘いが出来ただろうに。
「兵器にとっての敗北とは何か知っているか?」
「・・・・・」
「それは“敵を殺せない”事だ・・・兵器として産み出された私に、敗北は許されない・・・敵を・・・人間を殺せない様な・・・役立たずで!!
出来損ないな兵器は廃棄するしか・・・処分されるしかないんだ!!」
そうか・・・これがラウラ・ボーデヴィッヒの抱える“闇”か。
兵器として産み出され・・・相手を倒し蹂躪する為の術しか教えられず・・・廃棄され、処分されていった“兵器”を、
同じ境遇の仲間を見て生きてきた、ラウラ・ボーデヴィッヒの闇・・・死への恐怖。
誰しもが持つものだが、幼い頃から間近で死を教えられ、見て、体感して来た故に・・・。
ならば俺は・・・魔戒騎士として。
「俺はキサマの心に巣食い、迷わせる闇を払う!!」
「何を訳の分からない事を!!もっと力を・・・私に力を・・・より強い力を!!」
『―――願うか・・・・?汝、自らの変革を望むか?より強い力を欲するか・・・・?』
!?今のは・・・。
『鋼牙!奴のISの邪気が強まりやがった!!』
「何だと!?」
「言うまでもない!!力があるのなら・・・それを得られるのなら、私など・・・」
「止せ!!それ以上力を欲したら人間でなくなるぞ!!」
「構うものか・・・空っぽの私など、何から何までくれてやる!だから力を!比類無き最強を!!唯一無二の絶対を!」
バッ!
「止せ!!」
俺は止めようと駆け寄ろうとするが・・・・間に合わなかった。
「私によこせ!!」
ラウラは左目の眼帯を外し、金色の瞳を露わにして天に向かって力を欲する様に叫んだ。
『Damage Level………D.
Mind Condition………Uplift.
Certification………Clear.
≪Valkyrie Trace System≫………boot.』
「うっ!うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
『おいおい如何なっていやがる!?奴のISの邪気が高まった途端ISがドロドロに溶けだしたぞ!?』
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」
「ちっ・・・違う・・・私は・・・私は・・・遺伝子強化試験体C-〇〇三七・・・戦う為の兵器・・・人間ではない!!」
ラウラは自身を人間ではなく兵器と呼んだ・・・そして力を望んだ・・・では何故・・・。
「お前はそんなに苦しそうな顔をする・・・」
そして・・・ドロドロに溶け、黒い泥の様に変わったシュヴァルツェア・レーゲンがラウラの全身を包み、
ある形へと変わっていった。
あれはもしや・・・「VTシステム」・・・Valkyrie Trase System(ヴァルキリー・トレース・システム)か。
Side・千冬
これは・・・私の所為でもあるな。
ボーデヴィッヒの叫びを聞いて・・・只そう思うしかできなかった。
たとえ短い間だったにしても、アイツの抱える本当の恐怖と・・・苦悩に気付いてやれなかった、
救ってやれなかった私の・・・。
「ボーデヴィッヒさんのISから途轍もないエネルギーの上昇を確認!このままではボーデヴィッヒさん自身も危険な状態に!!」
「織斑達は?」
「皆さん無事ですが・・・先程のボーデヴィッヒさんの砲撃でビットの入り口が破壊されて未だにアリーナ内です」
映像には何とかビットに入ろうと作業をしている一夏達の姿があるが、負傷しているのもあるが、
各自のISも真面に動かせない事もあり時間も掛かるだろう。
「山田先生、直ちに作業班を東側ビットに、救護班もだ」
「分かりました」
しかし・・・あのボーデヴィッヒのISの変貌は一体?
それにしても・・・あの女?いや・・・男か?あいつの構え・・・そして太刀筋はたしかあの時の・・・。
「織斑先生!ボーデヴィッヒさんが・・・」
なっ!?・・・これは・・・あの形は・・・あの武器・・・そしてあの姿は・・・。
「・・・“私”なのか?」
Side・一夏
くそ・・・ラウラの奴、ここまで滅茶苦茶にしやがって。
俺は壊されたビットの入り口の瓦礫を退かしながら、あの・・・鋼牙って人とラウラの戦いを見ていた。
「・・・凄い・・・」
本当にその一言だけで表現するに値する・・・いや、それ以外の言葉が思いつけない戦いだった。
「あの若さであれ程の剣術・・・ISが最強と謳われる今の時代に、あれ程の達人が存在していたとは・・・」
「あぁ・・・」
俺も箒も、剣術に触れている、触れた事のある者から見たら、あの鋼牙って人は本当に凄い。
ラウラを斬りつける時の力強さに大胆さ、それでいてラウラ自身を傷付けない様にISを纏っている部分だけを攻撃している。
千冬姉・・・最近千冬姉の本気の剣術を見てないから如何と言えないから判断できないけど、信じられないけど・・・信じたくないけど、
ひょっとしたら千冬姉以上の腕の持ち主かもしれない。
「如何やったらあそこまで強くなるんだ?」
「さあ・・・でも本当に興味あるよね・・・17歳であそこまで強いだなんて・・・」
そうか・・・俺達より2つ上か・・・2つ?
「「17歳!?」」
「あぁ・・・これまた同じリアクション、仲が良いね」
「べっ・・・別に私と一夏はそんな・・・」
「箒?何言ってんだ?」
「いや・・・何でも無い!!何でも無いぞ一夏!!」
おかしな奴だな・・・箒って本当に昔とちょっと変わったな。
おっと、早くこの瓦礫を退かさないと、怪我をしている先生もいるし早く真面な手当をしてもらわないと・・・。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「なっ!?」
「何だ・・・あれは?」
突然地を裂く様な叫び声が響いて、ラウラの方を見ると・・・ラウラのISがドロドロに溶けだしてラウラを呑み込もうとしていた。
「ラウラ!?」
「何だ・・・あれは?ISにはあんな機能があると言うのか?」
「いや・・・そんな話聞いた事ないけど・・・ひょっとしたらVTシステムかも・・・」
「VTシステム?」
「何だそれは?」
「過去のモンド・グロッソの戦闘方法をデータ化し、そのまま再現・実行するシステムの事だよ・・・でも、
IS条約で現在あらゆる企業・国家での研究・開発、そして使用の全てが禁止されている筈だけど・・・」
「何故禁止になったんだ?」
「乗り手への負荷が大きすぎる事・・・そしてVTシステムが起動している間は乗り手の意識が完全にVTシステムに乗っ取られてしまう事、
それによって最悪の場合死ぬか植物状態に陥ってしまう事から禁止されたって聞いた事がある」
「何だって!?」
「もしあれがVTシステムによる変化なら、ボーデヴィッヒさんは・・・」
何とかしないと・・・でも如何したら?
「おい、ボーデヴィッヒのISが何か形作っているぞ」
箒の言葉に、ラウラの方を見ると、確かに何かの形へと変化して行っている。
あれは・・・人?
・・・・あっ・・・あれは・・・あの姿は!?
「・・・・ふざけんなよ・・・・」
「一夏?」
「ふざけるな!」
「如何したの一夏!?」
ラウラの変貌した姿を見た途端、俺は・・・思考が止まり、気付いたら近くに有った鉄の棒を手に、
一直線にラウラへと向かって走っていた。
「ふざけんなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
千冬姉を思わせる姿に変わったラウラへと・・・。
Side・ザルバ
こいつは・・・魔界の力とかそんな物じゃない、人間の技術で作られた力だ・・・こんな物まで創れるようになるまで来たのか人間は・・・。
だが決して褒められる様な事じゃないな。
『鋼牙・・・VTシステムってのは何だ?』
「本来は過去のモンド・グロッソの戦闘方法をデータ化し、動きをトレースし、学ばせる目的で作られたシステムだが、
思いもよらない程の力に兵器として方向を変えて研究されるも、あまりものリスクの為に、
研究・開発・使用の全てが禁止された禁断のシステムだ」
成程な・・・あの力は人間が扱っていい力じゃない・・・いや、扱える力じゃないってのがヒシヒシと伝わってくるぜ。
ん?変化が止まった様だな・・・しかしあれは何だ?
3mはある全身が黒く模様らしい模様も無い、ISを纏った能面の女?ってところか?
「あれは・・・「暮桜」?」
『暮桜?それって確か、第一世代型のISで、第一回モンド・グロッソ優勝者、織斑千冬が使っていたISじゃねえか?』
「確かに正確には判断しにくいが、大部分の装甲の形・・・そして・・・」
『あの武器か?』
鋼牙の視線は奴が持っている刀型の武器に向いていた。
成程な・・・あの武器を持つなら確かに・・・・。
「あぁ、刀剣型近接武器「雪片」・・・あれを使うISは今も昔も、織斑千冬が使ったIS暮桜だけだ」
これは厄介かもな・・・今目の前に居るのはラウラ・ボーデヴィッヒであってラウラ・ボーデヴィッヒじゃあねえ。
最強のIS乗り、織斑千冬の動きをする心を持たない戦闘機械だ・・・差し詰め暮桜擬きだから「擬桜(ぎざくら)」とでも呼んでおくか。
「ザルバ・・・あいつは無事なのか?」
『あぁ・・・邪気は上がっているが、ギリギリの所で踏み止まっている・・・嬢ちゃんの意志・・・“本心”がまだ残っているって事だ』
「ならまだ救える」
『だが時間との勝負だぞ・・・徐々にだが嬢ちゃんの意志が消えかかっている、そうなれば確実にゲートが開くだろう』
「ならば速攻で方を着ける!」
鋼牙はそう言い魔戒剣を構えるが・・・その横を一つの影が通り過ぎようとしていた。
「退けえええええええええええええええええええ!!」
「『!?』」
おいおい!織斑の坊主がISを纏っていない状態で、鉄の棒一本持って擬桜に向かっていきやがったぞ!?
「何をしているんだアイツは!?」
鋼牙は織斑の坊主を止めようと駆け寄って肩を掴み止めようとする。
「逃げろと言った筈だ!!」
「離せ!!」
「ISも纏っていないお前が行ってなんになる!!」
「それでも!!」
ブゥン・・・・・
「「!?」」
『UOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
吼えやがったぞアイツ!!
擬桜は雪片擬きを上段の構えから、俺達目掛け一気に振りおろしてきた。
「チッ!退け!!」
ドグッ!
「ぐぼっ!!」
ガキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!
「ぐっ!!」
鋼牙は織斑の坊主を殴り飛ばし、魔戒剣で雪片擬きを受け止めたが・・・何て衝撃だ!しかもこの太刀筋、
達人並みの太刀筋だぞ・・・さっきの嬢ちゃんとは完全に別物だ、本当に他人の動きをそのまま実行していやがる。
「一夏!!」
「一夏!!鋼牙さん!!」
おいおい・・・織斑の坊主だけじゃなく、シャルロットの嬢ちゃんに篠ノ之束の妹まできやがったぞ。
『I・CHI・KA・・・・O・RI・MU・RA・・・・KYO・U・KA・NN・・・・』
「何!?」
『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
ズガン!!
「ぐわっ!?」
『鋼牙!!』
擬桜は雪片擬きを横に振るい、鋼牙を吹き飛ばし、そのままシャルロットの嬢ちゃん達の方へと向かって行った。
『鋼牙!!』
「くっ・・・」
とっさに横に飛びながら魔戒剣で防いでいたので大した怪我は無いようだな。
鋼牙は直ぐに立ち上がると擬桜に向かった。
擬桜は今にも雪片擬きを振り下そうとしていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ズバッ!!
『!?』
「はあっ!!」
ドグッ!!
『!!』
ドシャアアアアアアアアアアアアア!!
鋼牙は飛びながら擬桜の背中を斬り、擬桜の背丈を超えたところで体を反転させ、そのまま擬桜の頭部に蹴りを入れて吹き飛ばした・・・が。
「何!?」
『・・・・・・』
蹴られた箇所は鋼牙の靴の形に凹んではいるが、擬桜はまったく効いてない様だ。
『如何なっている!?』
「まるでゴムの様な感触だった・・・打撃によるダメージは期待できそうにないな・・・それより」
鋼牙は後ろに居るシャルロットの嬢ちゃんの方を向いた。
何時も鋭い目つきを更に鋭くし、睨む様に見た。
「鋼牙さん・・・あの・・・」
「・・・シャルル・デュノア、篠ノ之箒、そして織斑一夏、俺は逃げろと言った筈だ」
「いや・・・その・・・」
「あいつを!!あの偽物を・・・千冬姉の偽物を俺にブッ飛ばさせてくれ!!」
「一夏!?お前何を言っている!?」
「頼む!!あいつは・・・あいつは千冬姉の・・・」
「・・・・1つ聞かせろ」
「えっ・・は・・・・はい」
「さっき奴が言った「キョウカン」とは、織斑千冬の事か?」
「・・・そうだ・・・あいつは千冬姉がドイツ軍のIS部隊の教官をしていた時の教え子だったんだ」
「・・・随分と憧れていた様だな」
「ラウラにとって千冬姉の強さに憧れていた・・・だから・・・だから!!」
「2年前の第2回モンド・グロッソの裏で起きた誘拐事件か」
「・・・そうだ」
「お前を助ける為に決勝戦を棄権し、2連覇を逃した事を・・・奴は許せなかったと言う事か」
『成程な・・・さっきのアイツの行動はそう言う事か・・・』
「えっ?今の声は・・・」
「鋼牙さんの方から聞こえた様な・・・」
やべっ!つい喋っちまった・・・。
「・・・ザルバ」
『スマン・・・ついな・・・』
「「「指輪が喋った!!」」」
「気にするな」
「いや気にしますよ!!」
それはそうだけどな・・・今はそんな事している暇なんてないぞ。
『鋼牙・・・早くアイツを何とかしないと、嬢ちゃんの命が危ないぞ』
「分かっている・・・お前達・・・」
鋼牙は3人を見て、「逃げろ」と言うのかと思ったが・・・出てきたのは意外な言葉だった。
「お前達・・・見ていたいならそこから動くな」
「え?」
「織斑一夏・・・奴は俺に任せろ」
「しかし!!」
「お前が許せない気持ちも分からなくはない・・・しかし、その怒りを優先させる程、ラウラ・ボーデヴィッヒの命は軽い物なのか?」
「!?」
「このままではラウラ・ボーデヴィッヒはラウラ・ボーデヴィッヒでは無くなるか・・・命を落とす」
「それは・・・さっきシャルルから聞きました・・・」
「ならば分かる筈だ・・・今優先させるべき事は何だ?」
「・・・ラウラを・・・助ける事です」
「今のお前にそんな力はあるか?他の2人も」
「「「・・・・・」」」
「無いならそこで大人しくしていろ」
黙る3人を残し、鋼牙はそう言い残して擬桜の方へと歩み寄る。
冷たい様だが、こいつは俺達“闇”に生きる者達の仕事だ・・・闇に潜む邪悪を狩る為に闇に生きる事を選んだ者達のな。
光を浴びて生きているお前達が関わらなくても良い事だ。
「ザルバ・・・行けるか?」
『お?俺の出番か?』
「奴を救うには奴の心に語りかけるしかない・・・その為には“アレ”を使う必要がある」
『あぁ・・・さっきの奴の行動は、あの嬢ちゃんの強い思いの内の1つが、させた行動だ・・・なら嬢ちゃんの心に直接語り、
本心を呼び起こせば救い出せるな・・・』
「それには奴に見せなくてはいけない・・・本当の力の意味を・・・」
『なら見せてやれ・・・願いを継ぎ、他者を守る為にお前が纏う“鎧”の力を』
Side・シャル
悔しいけど・・・鋼牙さんの言うとおり、今の僕等にはISを展開する程のエネルギーも残ってない。
仮に出来たとしても、今のボーデヴィッヒさんに勝てる可能性も僅か・・・。
あの強さを見てしまったからかもしれないけど・・・鋼牙さんならボーデヴィッヒさんを救い出してくれるって期待をしていた。
「鋼牙さん・・・お願い、ボーデヴィッヒさんを・・・」
鋼牙さんはボーデヴィッヒさんの前で立ち止まった。
「行くぞザルバ」
『おお、何時でも行けるぜ相棒』
鋼牙さんは指輪・・・ザルバ・・・だったかな?
ザルバに声を掛けたら、前に翳して持っていた剣を銜えさせて横にスライドさせた。
シャーーーーーーンッ・・・・・・
辺りに刃が砥がれ、凛とした研ぎ澄まされた音が響き・・・その間だけ時間が止まったようだった。
すると左手のザルバが輝きだして・・・そのあまりにも眩い光に僕だけでなく一夏達も目を瞑ってしまった。
そして目を開けた時・・・鋼牙さんは・・・。
「なっ!?」
「まさか・・・あれって・・・」
「黄金の・・・IS?」
全身が黄金に輝き、至る所に緑色のラインが刻まれ、胸にはザルバが埋め込まれ、腰のバックル部分には紅い三角形の紋章、
背中には上下が金色で真ん中が緑色で黒いラインの入った六つの鋭いけどマントの様に垂れているウィングユニット、
腕や肩に踵等に刃が付いていて、騎士と獣を足して割ったイメージの、全身装甲(フルスキン)に限りなく近いISを纏っていた。
一夏達は勿論驚いているけど・・・僕が最も驚いたのはその頭部。
バイザーが付いた顔の殆どを覆う頭部ユニット、狼の顔を思わせる形だけど・・・僕にはもう一つ別の物が頭に浮かんだ。
「何で?何であの絵本の騎士の兜と似ているの?」
大好きな・・・お母さんとの思い出の絵本に出てきた騎士と酷似していたから・・・でも、
よく見たらあの絵本の騎士と酷似している箇所が多々あった。
「行くぞ・・・『太牙(たいが)』」
そしてISを纏った鋼牙さんはボーデヴィッヒさんに、向かって歩き出した。
鋼牙さん・・・アナタは本当に・・・何者なんですか?
Side・鋼牙
俺は奴・・・ザルバが擬桜と呼んでいたな。
今互いの攻撃が当たる距離に立っていた。
『UUU・・・』
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!聞こえるか!」
俺は擬桜に取り込まれているラウラに問いかける。
「キサマはそのままでいいのか?兵器を扱う者が、その兵器に呑み込まれたままでいいのか!?」
『・・・・・』
「キサマの鍛え上げてきた力!その為に費やした時間!そして心は!そんな兵器に負けてしまうほど弱く軽い物だったのか!?」
『UU・・・』
「その力は何の為に培った!?お前は一体何を願ってその力をつけてきた!!」
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
擬桜は雪片擬きを振り下してきた・・・が。
ガキンッ!!
『!?』
俺は太牙を纏った左腕でそれを防ぎ、すかさず右手で擬桜を殴り飛ばした。
ドガンッ!!
『GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?』
「こい・・『陽狼剣(ようろうけん)』」
シュイイイイイン・・・・
太牙専用の両刃の大剣、『陽狼剣』を呼び出した俺は、胸に収められているザルバに声を掛けた。
「ザルバ!」
『おう・・・嬢ちゃんは奴の胸の部分に居る・・・その背後にコアもある』
「分かった!」
バシュン!!
俺は太牙の翼、『陽翼』を展開し、ブースターを使って擬桜に接近し始める。
『GUUUU・・・・』
ボコボコ・・・
ジャキンッ!!
バガッ!!
「!?」
『おいおい・・・あれは本当にISなのか?あれじゃまるでホラーだぜ』
擬桜の両肩部ユニットが突如変形し、シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンに変わり、
背中からは10本のワイヤーブレードがウネウネと生えだした。
『GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
ドシュン!!ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!!ドシュン!!
ズワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
擬桜は接近する俺に向かってレールカノンを乱発し、10本のワイヤーブレードが襲い掛かる。
だが・・・・。
キンッ!!ガキンッ!!ズバッ!!バシッ!!
『!?』
ガキッ!!ジャキンッ!!
ボガボガアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
『OOOOOOOOOOO!?』
陽狼剣を使い全てのワイヤーブレードを切り落とし、レールカノンの弾を弾き返し擬桜に当て、レールカノンを破壊した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
『!?』
こちらが攻撃できる距離まで詰めた俺は、飛び上がり奴を斬ろうと陽狼剣を振り上げる、そして奴は雪片擬きで防ごうと構えるが・・・。
ズバッ!!
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
俺はそれごと陽狼剣で擬桜の胸部を切り裂いた。
そして切り裂いた胸部からは眠った様に目を瞑るラウラの姿と、禍々しい邪気を放つコアがあった。
その邪気はラウラの体をも覆っており、俺はラウラの体を抱える様にしてコアから引き離そうとするが離れない。
『鋼牙!こっちの準備は完了だ、何時でもいいぜ!!』
「おう!はああああああああああ!!」
ガシュンッ!!
ザルバのその言葉を待っていた俺は、擬桜のコアを力を込めて殴った。
Side・ラウラ
私は・・・誰だ?
ラウラ・ボーデヴィッヒ?それとも遺伝子強化試験体C-〇〇三七?それとも・・・私には最初から名など無かったのか?
『名など無い・・・いや、必要ないだろう?兵器であるお前には』
だ・・・誰だ?
『私はお前だ・・・お前は私だ・・・お前に宿る憎悪の塊を言ってもいい・・・』
私の・・・憎悪?
『お前は兵器として産み出され、自分の望み通りの生き方を許されず、相手を殺し、蹂躪する為の術を教え込まれ、
そしてその為の処置を施されたが・・・与えられたのは「出来損ない」の烙印』
うぅ・・・。
『そして現れた希望・・・織斑千冬、奴の指導でお前はトップに立つ事が出来たが、同時に憧れた、
織斑千冬の“力”に!』
そうだ・・・私は教官に憧れ・・・それでいて・・・。
『だが奴はお前の知らない顔を持っていた・・・弟の織斑一夏を思う、弱い人間の顔を』
私は・・・教官にあんな顔をさせる織斑一夏が許せなかった・・・。
教官は・・・強く・・・凛々しく・・・堂々としてなくてはならない・・・それが織斑千冬なのだと!!
だが・・・教官は・・・。
『お前達を捨てて日本に戻った・・・弟の為にだ』
違う!!元々そう言う契約の下で教官は我がドイツ軍に教官として・・・。
『だがお前は心では思った・・・奴は自分達を・・・自分を捨てたと』
違う・・・。
『だから憎んだ!織斑一夏も・・・織斑千冬も!!』
違う違う違う・・・。
『だから力を得てあのような事をしたのだろう?』
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!
『憧れた人間を罵倒し!!銃口を向けるなど、憎い相手にする事ではないのか?』
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!
私はっ!!
私は・・・教官を・・・。
『織斑千冬に憧れいていた・・・そうだろう?ラウラ・ボーデヴィッヒ』
!?
『だがお前は彼女の全てを知っている訳ではなかった・・・だからお前が知らない彼女を知っている織斑一夏に、
嫉妬した・・・そうだろう?』
私は・・・嫉妬していたのか?織斑一夏に?
『お前は織斑千冬に・・・姉に近いものを見ていたのではないのか?』
私は・・・教官を・・・。
『お前が求めたのは・・・本当に求めたのは・・・家族ではないのか?』
家族・・・私は・・・。
そうだ、私は家族を欲していた。
だが軍人である私は・・・鉄の子宮から生まれた私には・・・そんな物を求めてはならないと・・・。
だから・・・何時からか・・・。
『手に入らないならば壊そうと・・・思ったか?』
・・・そうだ。
『・・・1つ聞きたい』
何だ?
『お前は人間か?それとも兵器か?』
私は・・・兵器だ・・・。
『そうか・・・だが俺はお前が兵器ではなく、人間の・・・泣いているだけの年相応の女に見える』
何だと?
『お前は今後悔をしている・・・自分の闇に負け、尊敬する者とその家族、多くの人を傷付けた事を、
そんなお前を・・・俺は兵器とは思えない』
私は・・・人間なのか?
『なら何故涙を流す?』
私は・・・泣いている?
悲しくも・・・何処も痛くも無いのに・・・何故?心が・・・温かく感じるのに・・・涙が・・・。
『人間は本当に嬉しい時、喜びを感じた時、温かな涙を流す・・・それがお前を人間だと証明している』
私は・・・人間として生きていいのか?家族を求めても・・・いいのか?
『生きなくていい人間等いない・・・家族を求めるなら・・・俺がなろう』
お前が?
『それでお前を闇から救えるのなら・・・』
お前は・・・誰だ?
『・・・冴島鋼牙・・・』
冴島・・・鋼牙・・・。
『おのれ・・・キサマ!!よくも!!』
『こいつの心から去れ!!創られた偽物の邪心よ!!』
ジャキンッ!!
『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
Side・三人称
擬桜のコアに罅が入って邪気が消え、ラウラの体を取り巻く邪気も失せ、鋼牙はラウラを抱えて擬桜から離れた。
「うぅ・・・ここは?」
「大丈夫か?」
「あっ・・・」
ラウラは聞き覚えのある声のする方を見た。
そこにはバイザー越しにだが、自分を闇から救おうと家族になると言ってくれた鋼牙の顔があった。
「さえじま・・・こう・・が?」
鋼牙はゆっくりとシャガミ、何所からかアンティークなジッポライターを取出し、緑色の炎を・・・『魔導火』出すと、
それをラウラの目に翳す。
魔導火を弱った眼差しで見つめるラウラ、その瞳には何も映らなかった。
「如何やら大丈夫の様だな」
『U・・・GAGA・・・』
『鋼牙!!』
「・・・・・・」
鋼牙の背後に、乗り手を失い、損傷したコアをチカチカと光らせながらも起動している擬桜が迫り、
腕を鋼牙に振り落とそうとしていた。
『UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
ガキンッ!!
だが・・・振り落された腕を陽狼剣で受け。
「・・・・消えろ」
ズバッ!!ザシュッ!!
「U・・・UGOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
そのまま十字に擬桜を切り裂くと、断末魔の声を上げて擬桜は爆発した。
「・・・何とか間に合ったか」
『あぁ・・・ギリギリセーフで・・・ギリギリアウトだ』
「何!?」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「何?あれ?」
「一体何が・・・ラウラは無事なようだけど・・・」
「あの光は何だ?気味が・・・いや・・・気持ちが悪い・・・」
擬桜の爆発した後から禍々しい光が溢れだしていた。
古より人々が恐れ慄き、その光を見た物に待つのは“死”を意味する・・・魔界の光。
そこから・・・異界の住人が這いずり上がって来た。
「あっ・・・あれってまさか・・・」
それはISの様な機械ではなかった・・・。
「そんな・・・信じられん・・・」
それは生物の様であり・・・その実自分達と同じ生物と思いたくない存在・・・。
「あっ・・・あぁ・・・」
それは御伽話や神話の中で恐れられた存在と同等の姿をしていた・・・。
「悪魔?」
シャルロットの呟いた「悪魔」・・・まさしくそれに酷似する姿の・・・
『ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
漆黒の悪魔と同じ・・・いやそれ以上に醜悪な存在、魔獣・ホラーが現れた。
牙狼~INFINITE SENKI~
次回予告
騎士とは古より己の誓いの下に民衆・・・そして主君を守る為に剣を振るって来た者だ。
だが今の鋼牙に守るべき主君・・・それとも全てを捨ててでも守ると誓った、たった1人ってのはいるのかね?
次回『騎士』
古より続く戦いが今始まる!!