牙狼<GARO>~INFINITE SENKI~   作:龍気

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今日から牙狼の劇場版が公開されますので、それに合わせて投降しました。

公開当日に観に行けないのは・・・残念です。

予告を見る限り、実写版ジブリと言った感じで、とても面白そうです。


第参話『騎士』

Side・???

 

 

ふむ・・・まさかこんなにも早く魔戒騎士が現れるとはな。

 

しかもホラーは出現させる程の陰我と邪気は蔓延させる事はできたが、陰我集延期に至るまではいかなかった・・・。

 

それにあの魔戒騎士が持つ紅みを帯びた鞘・・・“あの時”の小僧か・・・やはりあの時始末しておけばよかったか・・・。

 

“この世界”でも邪魔をするか・・・黄金騎士!

 

もう此処に用は無い・・・下手に居座れば奴に感ずかれる恐れがある。

 

ここまでくれば後は外部からの陰我だけでも陰我集延期に陥る事も可能だろう。

 

さらばだIS学園・・・精々我の祈願の為陰我を広げ・・・絶望を集めてくれ・・・。

 

 

 

――――『騎士』――――

 

 

 

Side・シャル

 

 

何なの・・・あれは?

 

悪魔・・・でも・・・あの姿はあの絵本の怪物と似ている・・・鋼牙さんのISも・・・あの絵本の騎士と似ているし・・・一体如何なってるの?

 

 

「・・・ザルバ・・・」

 

「安心しろ鋼牙・・・ホラーは出現しちまったが、擬桜を破壊して嬢ちゃんを助けたおかげで陰我集延期には何とか陥ってない」

 

「・・・そうか・・・」

 

 

ホラー・・・あの怪物の事?

 

 

「あの・・・鋼牙さん」

 

「お前達・・・こいつを連れて、今度こそ早くここから逃げろ」

 

「鋼牙さんは?」

 

「奴は俺が倒す」

 

 

そう言って鋼牙さんはボーデヴィッヒさんを僕に託して、あの怪物に向かって歩を進めようとした。

 

 

「待て!!」

 

 

その時箒さんが歩き出そうとした鋼牙さんを呼び止めた。

 

 

「あれは何なんだ!?あんな・・・悪魔みたいな・・・生き物・・・は?」

 

『お嬢ちゃん・・・悪い事は言わない、さっさと逃げた方が身の為だぜ』

 

「しかしっ!!こんな・・・こんな非現実的な・・・・」

 

「お前達には関係無い事だ」

 

 

鋼牙さんの顔が先程のボーデヴィッヒさんとの時よりも真剣で、その瞳には氷の様な冷たいものを感じた。

 

 

『奴はお前達の常識で測れない存在だ、此処は鋼牙に任せときな』

 

「ふんっ!!」

 

ブンッ・・・・・・

 

ドガアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

「「「!?」」」

 

 

鋼牙さんは持っていた剣を横に思いっきり振るって、少ししたらビットの出入り口を塞いでいた瓦礫が吹き飛んだ。

 

あれってあの剣の力なのかな?

 

見えない斬撃を飛ばす・・・心なしかそうであってほしいと思った。

 

 

「これで出られるだろう・・・早く行け」

 

「は・・・はい・・・」

 

 

今更だけど・・・鋼牙さんの凄さを目の当たりにして、全身の力や意地と言うのかが全て抜けていった気がした・・・。

 

僕達は少し気の抜けた・・・と言うよりは呆然とした表情のままボーデヴィッヒさんを抱えてビットの方へと駆け足で向かった。

 

 

Side・ザルバ

 

 

やれやれ・・・やっと行ったか・・・。

 

ここから先は光に生きる表の人間の坊主や嬢ちゃんには刺激が強すぎるからな。

 

 

「ザルバ・・・奴は?」

 

 

鋼牙の問いに俺は現れたホラーの方に視線を移す。

 

 

バリバリ・・・ガシャガシャ・・・

 

 

ホラーは擬桜の残骸を貪っていた。

 

IS・・・いや、ゲートとなった兵器を喰らうホラーと言ったら奴位かな?

 

 

『鋼牙、奴は「ウェガル」・・・武器憑きのホラーだ』

 

「ウェガル・・・第二次世界大戦や宗教戦争等に頻繁に表れたホラーか?」

 

 

ウィガルは邪心や恨みを宿した武器をゲートとし、その武器を取り込み、手にした者と殺した者の命を喰らうホラーだ。

 

主に戦争の時代の戦場等によく出現し、奴が獲り付いた武器には兵士を魅了する力を宿し、その武器を手にした者は我を忘れ、

敵見方無く殺戮の限りをつくす・・・。

 

しかも奴は取り込んだ武器の特性を元に姿を変える。

 

奴が今回取り込んだのは現在最強の兵器IS・・・故に今の奴は今まで現れた中でも最強の力を得たウェガルと言う事だ。

 

そして奴には1つだけ欠点がある・・・奴“単体”で殺した相手の魂は食えないと言う事だ。

 

 

『鋼牙、奴は使い手の武器として扱われ、殺した相手の魂しか食えないホラーだ』

 

「故に使い手を求めると?」

 

『あぁ・・・此処で逃がしたら取り返しのつかない事になる』

 

「ならば速攻で斬り捨てる!!」

 

 

鋼牙は太牙の翼を開いてウェガルに一気に接近して陽狼剣で斬ろうとした。

 

この陽狼剣・・・そして太牙の装甲は、魔戒剣と同じソウルメタルで出来ている。

 

故にホラーを倒す事はできる・・・が。

 

 

ガキンッ!!

 

「『!?』」

 

『グウウウウウ・・・』

 

 

ウェガルは素体の状態から、擬桜を取り込み姿を変え、腕に生えた刃で陽狼剣を受け止めやがった。

 

今のウェガルの姿は、擬桜の元であった、黒い雨・・・シュヴァルツェア・レーゲンの姿に酷似していた。

 

だが“機械”ではなく“生物”と言っても過言じゃない姿で・・・。

 

そして本来人が乗っている箇所には。

 

 

「あれは・・・ラウラ・ボーデヴィッヒか?」

 

『あぁ・・・ISの残った邪心を元に姿を変えたんだろうな、全く悪趣味な奴だぜ』

 

 

全身が黒くその肌に魔界の文字がびっしりと描かれ、血の様に紅い眼をしたラウラの嬢ちゃんに酷似した姿だった。

 

 

『キサマ・・・ヨクモワタシノジャマヲ!!』

 

「何?」

 

 

これは・・・まさか。

 

 

『鋼牙・・・奴はウェガルじゃない・・・擬桜に残っていた邪心がウェガルの意志を乗っ取りやがった』

 

「何だと!?」

 

『あの邪心は言わば人工物・・・だがホラーの意志を乗っ取る程強い邪心を施せるとしたら・・・鋼牙、

如何やら事は陰我集延期を抑えるだけでは済みそうにないぞ』

 

「あぁ・・・だが今は目の前の状況を打破するのが先決だ」

 

『モウスコシデ・・・モウスコシデココヲインガシュウエンキニオトシイレタモノヲ・・・』

 

「キサマは一体誰の差し金だ?そいつは何故陰我集延期を望む?」

 

『マカイキシ・・・キサマナドニワガアルジノジャマハサセヌゾ!!』

 

ドシュン!!ドシュン!!

 

「くっ!」

 

 

奴は両肩の砲身から紫色の邪気玉を放ってきた。

 

それを難無くかわし、鋼牙は奴に接近しようとする・・・が。

 

 

ドシュウウウウウンッ!!

 

「ぐあっ!?」

 

『何だと!?』

 

 

突然後ろから凄まじい衝撃が襲って来た。

 

何とかわした筈の邪気玉が軌道を変えて襲ってきやがった。

 

 

『シネ!マカイキシ!!』

 

ドシュン!!ドシュン!!ドシュン!!

 

 

奴の飛ばす邪気玉は真っ直ぐには飛ばず、旋回しながら奴の周りを浮遊し、それを一気に俺達に向けて飛ばした。

 

 

「くっ!」

 

ガンッ!!ギンッ!!バシュンッ!!

 

『ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

ガシッ!!

 

「ぐっ!?」

 

 

奴は邪気玉を防いでいる鋼牙に突進し、鋼牙の顔面を掴み、そのままアリーナの壁へと・・・。

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

「ぐあっ!」

 

 

轟音と共に壁を砕き内部へと入っていった。

 

 

Side・シャル

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

「なっ!?何!?」

 

 

ピッドに入った後僕達は、状況を知る為に管制室に向かった一夏と箒さんと別れ、僕は弱っていたボーデヴィッヒさんを抱え医務室に向かっている途中、

壁を突き破って何かが僕の前に現れた。

 

 

「ぐあっ!」

 

「鋼牙さん!?」

 

 

鋼牙さんは全身が黒い何かに捕まれて壁に押し当てられていた。

 

その黒い何かが僕の方を向いた時・・・その姿に驚愕した。

 

 

「ボーデヴィッヒ・・・さん?」

 

 

その黒い何かは、まるで生物と化したシュヴァルツェア・レーゲン・・・そしてその乗り手は、

黒い・・・裸のボーデヴィッヒさん・・・。

 

 

『オォ・・・ワガハンシン・・・ワガハンミ・・・ワガハンコンヨ・・・ソコニイタノカ・・・』

 

「なっ・・・何?」

 

 

黒いボーデヴィッヒさんの“様な人”が、歓喜に狂った様に目を見開いて、その紅い瞳が揺れ僕を・・・いや、

僕が抱えている“本物”のボーデヴィッヒさんを見ていた。

 

 

『ソイツハ・・・ワタシダ・・・ワタシト・・・ヒトツニ・・・』

 

「ひっ!!」

 

 

この時分かった・・・目の前のボーデヴィッヒさんと同じ姿の人は・・・人ではないと・・・。

 

 

『ソイツヲ・・・ヨコセエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!』

 

 

それは僕・・・ではなく、僕が抱えているボーデヴィッヒさんを奪おうと襲って来た。

 

僕は恐怖で足が竦んで・・・動く事が出来なかった。

 

そいつ・・・怪物は僕の目の前まで来て、その禍々しい手がボーデヴィッヒさんに触れそうになる・・・。

 

 

ガキンッ!!

 

『ガハッ!!』

 

 

でもそれは叶わなかった。

 

怪物の頬に金色の閃光がぶつかり、怪物を吹き飛ばし、金色の閃光は僕の前に背を見せて立った・・・。

 

 

「鋼牙さん・・・」

 

「早くそいつを連れて逃げろ・・・奴の狙いはそいつだ」

 

『奴は創られたとは言え、その嬢ちゃんを元に出来た邪心だ、嬢ちゃんを喰らい取り込む事で完全な存在となろうとしてやがる』

 

「喰らうって・・・ボーデヴィッヒさんを?」

 

「早く行け・・・死にたくなかったらな・・・」

 

『マカイキシ・・・ユルサン・・・オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

マカイキシ?鋼牙さんの事なのかな?

 

怪物は鋼牙さんに向かって刃の生えた腕を振り下した。

 

鋼牙さんは持っていた剣でその刃を防ぐと、即座に腹部にキックを繰り出した。

 

怪物は苦悶の表情を浮かべるも、すぐさま反撃をするも鋼牙さんは避ける、そして斬りつける。

 

怪物は肩の砲身の様な部分から紫色のエネルギーを鋼牙さんに向けて放つ。

 

そのエネルギーは驚いた事に軌道を変え、壁を壊しながらも鋼牙さんに向かって襲い掛かる。

 

しかし鋼牙さんは剣でそれを弾き、たまに斬り落としながら怪物に斬りかかった。

 

このアリーナの廊下は、ISのパーツ等を運ぶ事が多々あるから、多少は広い構造なっているけど、

ISを装着した状態では狭すぎる・・・そんな場所にも拘らず、鋼牙さんは難なく動き回り、怪物と戦っている。

 

少なくとも僕にはこんな場所で真面に戦う事なんてできない・・・ボーデヴィッヒさんとの戦いを見ても思ったけど、

鋼牙さんの実力は各国の代表候補生どころか、各国代表以上の実力者・・・そして、織斑先生以上もしくは同等の・・・。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

ガキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!

 

 

そして・・・今、鋼牙さんと怪物の戦いを見て気付いた事・・・怪物は兎も角、鋼牙さんの戦い方は、

世間一般のスポーツ試合じゃない・・・“殺し合い”の戦い方だと・・・。

 

でも・・・僕はそんな戦いに・・・見惚れていて、気付くとボーデヴィッヒさんを横に寝かせ、何かに惹かれる様に、

自らの足で鋼牙さんの戦いが見え場所へと歩んでいた。

 

 

バシュウゥン・・・

 

 

えっ!?鋼牙さんISを解いちゃって如何したの?

 

 

シャアァァァン・・・・

 

 

鋼牙さんは剣で左手の甲をなぞったのかな?

 

 

すっ・・・・

 

 

そして剣を天に翳して・・・。

 

 

バシュンッ!!

 

 

頭上で円を描く様に剣を振るうと、鋼牙さんの頭上に光の輪が出来上がり、中心の空間が割れそこから白い光が漏れ鋼牙さんを包む、

まるで神話に出てくる祝福の光みたいな・・・。

 

そして次の瞬間・・・

 

 

ガシュンッ!!

 

 

鋼牙さんは眩い金色の光に包まれた・・・どこか暖かくて・・・神々しいまでの、どんな闇をも照らす黄金の光に・・・。

 

そして光が止むとそこに立っていたのは・・・。

 

 

「黄金の・・・騎士」

 

 

それは夢に出てきた黄金の騎士だった。

 

 

Side・鋼牙

 

 

このままでは拙いな・・・やはり太牙では素体ホラーと遣り合えても、陰我を取り込み姿を得たホラー相手では分が悪い。

 

ならば・・・。

 

 

『鋼牙・・・如何だ?』

 

「見切った!」

 

バシュウゥン・・・

 

 

俺が太牙を解くと、胸に有ったザルバが左手の中指に戻った。

 

 

シャアァァァン・・・・

 

 

魔戒剣をザルバに噛ませ、そのまま引き・・・魔戒剣とザルバの歯が擦れ辺りに音が鳴り響き。

 

すっ・・・・

 

バシュンッ!!

 

 

魔戒剣を天に翳して円を描く。

 

頭上に光の輪ができ、円の中心の空間が割れ光が漏れ俺を包む。

 

そして俺は・・・。

 

 

ガシュンッ!!

 

 

鎧を纏った・・・希望と言う名の鎧を・・・『牙狼(ガロ)の鎧』を・・・。

 

 

グルル・・・

 

 

Side・三人称

 

 

光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人々は希望の光を得たのだ。

 

冴島鋼牙は纏った。

 

旧魔界語で「希望」を表す言葉を名に持つ鎧・・・汚れ無き、僅かな曇り無き、ホラーを倒したとされる、

伝説の黄金の狼を象った黄金の鎧を纏い、冴島鋼牙は『黄金騎士・牙狼(ガロ)』となった。

 

 

『キサマ!!オウゴンキシ!!』

 

「創られた邪心により生まれたキサマの陰我・・・俺が断ち切る!!」

 

 

牙狼は魔戒剣・・・いや、幅広・両刃で大型、束頭と刀身に紋様のついた牙狼剣を手に構えた。

 

 

『キエロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!! ドシュン!!ドシュン!!

 

 

ウェガルは牙狼に向け何発も邪気玉を放ち、さらにシュヴァルツェア・レーゲンのワイヤーブレードの先端を生物化した様な物を飛ばした。

 

辺りはまるで戦場の様に爆音が響き渡り、粉塵と黒煙が巻き上がる様に変わっていた・・・しかし、

その中を牙狼は真っ直ぐ歩、一歩一歩ウェガルへと近づいて行った。

 

 

キンッ!!カキンッ!!

 

「・・・・・・」

 

『クッ!!』

 

 

時折牙狼の鎧にウェガルの攻撃が当たるも、その鎧には傷1つ付く事は無く、衝撃で後退する事無く前に進む牙狼。

 

その姿まさに威風堂堂・孤軍奮闘・・・彼の歩みを止める事叶わず。

 

牙狼が近づくにつれ焦り出すウェガル。

 

そしてある程度まで近づくと牙狼は足に力を籠め、一直線でウェガルに接近し、懐に入った瞬間牙狼剣で・・・。

 

 

ザシュンッ!!

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

ウェガルのラウラの姿となっている箇所を振り上げる様に斬り裂いた。

 

斬り裂かれた箇所からは噴水の様に赤ではなく、濁った黒に近い色の血が噴き出した。

 

 

『グウウウウウウウッ・・・』

 

 

斬られた箇所を押さえながら唸り牙狼を睨むウェガル・・・追い詰められたウェガルがとった行動は・・・。

 

 

バシュンッ!!

 

『ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

シュヴァルツェア・レーゲンに酷似した姿を捨て、素体ホラーの姿に戻り、奇襲する戦法をとった。

 

 

カキイイイィィィィン・・・・

 

 

だが牙狼はすぐさま牙狼剣を振りかざし、足に力を籠めると牙狼の立っていた地面が少し陥没し罅が入り、

自分に向かって飛翔するウェガルに向かって飛び、体を反転しながら牙狼剣でウェガルの胴体を・・・。

 

 

斬!!

 

 

真っ二つに切り裂いた。

 

ウェガルの体は火花を上げながら断末魔の声を上げる事無く爆ぜ、その血肉を辺りに撒き散らした。

 

しかしその飛び散ったウェガルの血肉の一部が・・・。

 

 

バシャッ・・・・

 

「きゃ!?」

 

「『!?』」

 

 

隠れてその戦いを見ていたシャルル・・・いや、シャルロットにかかってしまった。

 

 

Side・シャル

 

 

今のは一体?

 

鋼牙さんがあの怪物を斬ったら、あの怪物は爆発する様に消えて・・・その黒く濁った血が僕にかかると、

まるで最初から無かったかのように消えていた。

 

 

「・・・・・・」

 

ガシャン・・・ガシャン・・・

 

 

鋼牙さんが鎧を纏ったまま僕に向かって歩いて来た。

 

そして僕の前で立ち止まると、その緑色の瞳で僕を見据えている。

 

 

「・・・鋼牙さん・・・アナタは一体・・・」

 

スチャ・・・・

 

「!?」

 

 

鋼牙さんは突然持っていた剣の切っ先を僕の喉元へと向けた・・・突然の事に出そうと思った言葉を飲み込み、

黙り込み硬直してしまった。

 

 

「何故逃げなかった?」

 

「そ・・・それは・・・」

 

「ホラーの返り血を浴びた者は斬る・・・それが掟だ・・・」

 

 

鋼牙さんはそう言って剣を振り上げて僕を斬ろうとした・・・その殺気は本物で、僕はその殺気に当てられて・・・意識を手放した・・・。

 

 

Side・鋼牙

 

 

「ホラーの返り血を浴びた者は斬る・・・それが掟だ・・・」

 

 

そう・・・これは揺るぎなき事、ホラーの血を浴びた者は斬らねばならない・・・例え相手が何であろうと・・・。

 

俺は牙狼剣でシャルを斬ろうと牙狼剣を振り上げ、振り下そうとした・・・だが・・・。

 

 

(守りし者となれ・・・そして、強くなれ)

 

(僅かでも可能性があるなら・・・必ず助ける・・・それが魔戒騎士だ)

 

ビタッ!!

 

 

俺の脳裏に・・・この2つの言葉がよぎった。

 

俺の目標であり、最も尊敬した魔戒騎士である父と、魔戒騎士とは何たるかを教えてくれた師の言葉が・・・。

 

その瞬間俺は振り下そうとした剣を止めていた。

 

シャルは気を失ったのかその場に倒れている。

 

 

バシュンッ・・・・

 

「・・・・・・・」

 

 

俺は鎧を解除し、倒れているシャルを抱きかかえてその場を離れた。

 

 

『何をためらっている?』

 

「こいつが浴びたホラーの血の匂いを嗅ぎつけ、ホラーが次々とこいつを目当てに現れる、つまりこいつを今後生かせておけば今後の狩りが楽になる」

 

『餌として使うと言う事か・・・確かに今のご時世、何時ホラーが出てもおかしくは無い、的を絞らせればある程度は楽になるが・・・』

 

「・・・如何した?」

 

『お前の本心は何だ?とてもじゃないが鋼牙、普段のお前なら例えそうでも掟を優先させている筈だ』

 

「・・・・・・・」

 

『言いたくないか・・・まあいいさ、お前の好きな様にやれ、だが・・・それで後悔だけはするなよ』

 

「わかっている・・・すまない・・・ザルバ」

 

 

正確には・・・俺にもよく分からない・・・確かに脳裏をよぎったあの言葉もあるが・・・それだけではない気が、

それを表現する言葉が俺には思い浮かばなかった。

 

 

(俺が守る!)

 

 

“あれ”か?

 

確かに俺はあの時そう言った・・・だが、それだけでは・・・。

 

途中床に寝かされているラウラ・ボーデヴィッヒを見つけ、シャル共々担いで医務室へと向かった。

 

来る時に見かけたので迷わずに行けた。

 

俺は2人をベッドに寝かせ、ザルバをラウラの方に翳した。

 

 

「如何だザルバ?ホラーには憑依されてはいなかったが、影響が無いとは言い切れん」

 

『大丈夫だ鋼牙、このお嬢ちゃんに魔界に力に関する物は欠片ほども無い、只気を失っているだけだ』

 

「・・・そうか・・・」

 

「うっ・・・ここは?」

 

「気が付いたか」

 

 

そうこうしている内にラウラは目を覚まし、俺の方を見た。

 

 

「さえじま・・・こうが・・・」

 

「そうだ・・・あまり無理をするな、VTシステムの所為でお前の肉体にはかなりの負担がかかっていた筈だからな」

 

「この程度・・・ぐうっ!」

 

『だから無理するなって』

 

「なっ!?指輪が喋った!?」

 

 

そう言えばこいつは知らなかったな・・・取り敢えずザルバについてはISのAIだと説明して、本題に入るか。

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、お前のIS・・・シュヴァルツェア・レーゲンにはVTシステムが搭載されていた、

これについてお前は知っていたか?」

 

「いや・・・私は何も・・・」

 

「そうか」

 

 

嘘ではないな・・・。

 

 

「では最近お前意外にシュヴァルツェア・レーゲンに触れた者はいるか?」

 

「いや・・・シュヴァルツェア・レーゲンは我が国と軍の機密保持の為に本国の者以外には・・・いや、

そう言えば先日・・・不正や不備が無いか確認の為で、今日のトーナメント参加規定と言い、

私と立ち会ってシュヴァルツェア・レーゲンを見た物が居た」

 

『そいつはどんな奴だ?』

 

「分からん・・・見た感じは日本人で、服装からしてIS学園のスタッフである事は・・・分かるのだが・・・」

 

「見たら分かりそうか?」

 

「あぁ・・・只不気味な“男”だった・・・最初は私も機密保持の為に断ったのだが・・・情けない事にそいつの声を聞いた瞬間・・・」

 

『如何した?』

 

「そいつの・・・声は柔らかい口調であったが・・・何処か・・・人間の本能、特に恐怖に関して過剰に突き刺さるような声で・・・」

 

「・・・そうか」

 

『おそらくそいつが今回の元凶だろうな』

 

「アイツが私のシュヴァルツェア・レーゲンにVTシステムを?」

 

「いや、おそらくそいつはお前のISにVTシステムが組み込まれていた事を知っていたんだろう。

あのシステムは組み込むにしてもかなり時間とそれなりの設備が必要となる・・・それこそ軍隊に有る様な」

 

「では・・・VTシステムは・・・やはり我が軍が・・・」

 

「あぁ・・・おそらく今回の事でお前が所属していた軍や部隊には調査が入るだろう・・・」

 

 

そうなればおそらくドイツ軍の一部、特にいつの部隊に関わっていた研究チーム等は解隊されるだろうな。

 

VTシステムはその危険性から軍からも嫌悪されている。

 

只でさえ数に限りあるISと、一部隊の隊長を任せる様な者を犠牲にしてまで搭載し様とは上層部も思わない筈。

 

おそらく一部のある種の強硬派かマッド・サイエンティスト、こいつの部隊を快く思っていない者の仕業だろうな。

 

それ程VTシステムもそうだが、こいつの・・・ラウラの出生に関する研究も危険な物なのだ。

 

 

「それともう一つ・・・すまない」

 

「え?」

 

「お前のISはコア諸共破壊した」

 

「なっ!?」

 

『破壊したって言っても、壊したのはお前じゃないだろう?奴にコア諸共喰われたんじゃ破壊するしかない』

 

「くっ・・・喰われた!?」

 

「ザルバ・・・それ関係に関しては省いて話そうとしていたんだが?」

 

『おっとすまん・・・だがこの嬢ちゃんには話しておいた方が良いと思うぜ』

 

「何なのだ!?喰われたって!?」

 

 

仕方ない・・・こうなっては平行線を辿るだけだ・・・俺はホラーについて話し始めた。

 

そしてこいつ自身が如何して暴走したかを。

 

 

「そんな物が・・・この世界に・・・」

 

「残念ながら真実だ、そしてお前は何者かに利用され、このIS学園を中心に陰我集延期にしようとしたのだろう」

 

「くっ・・・軍人として情けない・・・」

 

『で?これから如何するんだ?』

 

「お前が望むならホラーに関する記憶だけ消す事が出来るが」

 

「・・・・・・」

 

 

ラウラは少し悩む様に黙り込むと、直ぐに顔を上げて俺の目を真っ直ぐ見て口を開いた。

 

 

「私はこの現実を覚えていたい、口外はしないと約束しよう」

 

「・・・・・そうか、ありがとう」

 

「それに・・・」

 

「ん?」

 

「家族とは秘密を作らないものではないのか?」

 

 

そう言えばラウラを救い出す時にそんな事を言ったな・・・その場限りの言葉ではなく、本当に救うために。

 

 

「そうだな・・・お前が望むなら、俺でよければ家族になってやれる」

 

「ありがとう・・・今回の事で、おそらく私は軍には居られなくなる・・・ISをも失ってしまったのなら尚更だ。

私は・・・本当に居場所がなくなってしまった」

 

 

ラウラは落ち込んだように下の方へ視線を落とした。

 

その姿は一人ぼっちの幼い子供の様に見えた。

 

 

「ならば来い・・・そして外の世界でお前が選び進む道を見つけろ、お前にはそれだけの権利がある・・・」

 

「・・・ありがとう・・・鋼牙・・・姉さま・・・」

 

ビキンッ!!

 

「・・・・・」

 

『あぁ・・・』

 

「?」

 

 

ここでもか・・・よもやこの様な場面で・・・。

 

 

『・・・お嬢ちゃん・・・』

 

「私をお嬢ちゃんなどと呼ぶな!!」

 

『それは悪かったな・・・なら鋼牙を呼ぶなら“姉”じゃなくて“兄”だって事を覚えておきな』

 

「・・・何?」

 

『だから・・・“姉”じゃなくて“兄”、こいつはこんな顔をしているが“男”だ』

 

「こんな顔は余計だ」

 

 

ラウラは信じられないと言った顔で俺の顔を凝視した。

 

 

「す・・・すまな・・・いや・・・御免なさい・・・鋼牙ねっ!・・・兄さま・・・」

 

「・・・気にするな・・・何時もの事だ」

 

(そんな表情ではない・・・日本では女でも男っぽい名を・・・男でも女っぽい名を付ける事がよくあると、

クラリッサが言っていたが、あれは間違いだったのか!?

ねぇ・・・兄さまの顔はどちらかと言ったら女性・・・駄目だ・・・あの顔を見ながらだとつい姉と呼んでしまいそうだ)

 

『これだけは覚えておきな・・・鋼牙の女顔を弄るのはご法度だとな・・・まあそれで弄るのが面白いんだがな』

 

「ザルバ!」

 

「ハハハ・・・」

 

 

まったくこいつは何時も何時も・・・しかし、俺を兄と呼ぶか・・・なら俺はそれに応えよう。

 

居場所と家族を得たこの小さな少女の為に・・・。

 

 

「うぅ・・・」

 

 

シャルの方も目を覚ましたか・・・ラウラには話してはいるが、“あれ”に関しては如何するか・・・。

 

 

「・・・夢?」

 

「いや・・・残念ながら全て現実だ」

 

「!?」

 

「安心しろ、殺しはしない」

 

 

先程理由は如何あれ自分を殺そうとした相手が目の前に居るんだ、シャルは少し脅えた様子でこっちを凝視している。

 

 

「何で・・・って言うか私何でここに?それにあの時僕を殺そうとしたのに!!」

 

「助けてやった上に、気を失ったお前をここまで運んでやったのに、大層な言いぐさだな」

 

 

仕方ないと言えば仕方ないがな。

 

 

「鋼牙さんが?」

 

「あぁ・・・意外と重くてまいったよ」

 

「ちょっと!!」

 

 

さっきとうって変わって、ベッドの上に立って俺を見下ろして吼える。

 

行儀が悪いぞ。

 

 

「その元気があれば大丈夫だな・・・じゃあな」

 

 

俺は立ち上がり1つの紙切れをラウラに渡した。

 

 

「もう少し落ち着いたら此処に連絡しろ」

 

「分かりました兄さま」

 

「兄さま!?」

 

 

ラウラの返事に驚いているシャルだが、俺は気にも留めず医務室から出て行こうとした・・・だが、

俺の歩みを止めんとばかりにシャルが俺に大声で呼び止めた。

 

 

「待ってください!!」

 

「・・・・・」

 

「アナタは一体何者なんですか?あの怪物は!?それにどうして私を?」

 

「シャルル・デュノア!!兄さまに対し「ラウラ、いい・・・」ですが・・・」

 

「俺は冴島鋼牙・・・それ以上でもそれ以下でもない、そして奴は太古の昔から存在する魔獣・ホラーだ」

 

「魔獣?」

 

「お前を斬るのを止めたのは、俺のミスから起きた事故に、報告する必要がある・・・その結果無では斬れなかっただけだ」

 

 

嘘だがな・・・本当は問答無用で斬らなければならない。

 

 

「掟って言いましたけど・・・それって・・・」

 

「お前が知る必要の無い事だ・・・特に自分を偽って傀儡の様に生きている人間にはな」

 

「!?」

 

「お前の質問には全て答えたぞ・・・俺はこれで失礼する」

 

ピシャッ・・・

 

「何だよ・・・最初は厳しそうだけど良い人だって思っていたのに・・・無神経でデリカシーの無い男じゃないか、

鋼牙さんの・・・うぅん・・・鋼牙の・・・バカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「みっ・・・耳が・・・」

 

 

何だか後ろが騒がしいな・・・医務室に誰か来る気配があったから早々に立ち去るか・・・面倒な事になる前に。

 

ん?あいつは・・・。

 

 

「冴島鋼牙さん!!」

 

「ドニ・デュノア」

 

 

デュノア社の開発部の常務取締役でシャルの叔父。

 

 

「何でしょうか?」

 

「いやぁ・・・ご無事で何より、あの騒ぎから姿を見かけないので心配しましたよ」

 

「・・・そうですか」

 

 

違うな・・・こいつはまた別の事に心配・・・いや、不安があって俺を探していたな。

 

大方シャルの事だろうがな・・・。

 

 

「それで・・・ですね、あの・・・シャル・・・シャルル君の事ですが・・・」

 

 

やはりな・・・あえて“シャルル”の名で聞いて来るとはな・・・だが、此処で一度はっきりさせておくか。

 

 

「口外はしない・・・安心しろ」

 

「そっ・・・そうですか!!ありがとうございます!!」

 

 

目に見えて浮かれている・・・少しは反対したと言う言葉が嘘に思えて来たな。

 

 

「ただし条件がある」

 

「えっ?」

 

「お前達があの娘に何かをしようものなら、俺はお前達のした事をIS委員会や全てのメディア、そしてフランス政府に口外する」

 

「なっ!?」

 

「たとえお前達トップがあの娘の親だとしても、あの娘の人生を弄んで良い訳が無い!!」

 

「うっ!!」

 

『鋼牙・・・殺気と怒気がダダ漏れているぞ』

 

 

ザルバがドニには聞こえない程の小声で俺に声を掛ける。

 

ドニの顔は俺の怒気と殺気を真正面から受け、蒼白となっていた。

 

俺は心を落ち着かせ、ドニに背を向けた。

 

 

「一度そっちの社長とは直接会って話をする・・・そちらの都合がつく時で構わないと、冴島財閥社長、冴島鋼牙が言っていたと伝えておいてくれ」

 

「さっ!!冴島財閥社長!?」

 

「この事は口外しない様に・・・なるべく小規模で事を終えたいのでな・・・もし破った場合は・・・」

 

「わっ・・・分かりました・・・・・守ります!!そして社長に・・・兄に伝えます!!」

 

「・・・・・」

 

 

俺は返答を聞き、そのまま歩きだし、IS学園から出て・・・行こうとしなかった。

 

 

『如何した鋼牙?もう此処に用は無いんじゃないのか?』

 

「急用が出来た・・・少し寄って行く場所がある」

 

『・・・あぁ・・・そう言う事か・・・これは明日から忙しくなるぞ』

 

 

俺はある一室の前で止まった・・・「学園長室」と書かれた札のある部屋の前で。

 

 

(そうだ・・・これから・・・特に今日から100日までの間が勝負だ・・・あいつの・・・シャルの命が“尽きる”までが・・・)

 

 

Side・シャル

 

 

鋼牙さん・・・うぅん、あんな失礼な奴鋼牙でいいや。

 

鋼牙が出て行った後、一夏や織斑先生達が僕達を探しに医務室にやって来た。

 

取り敢えず無事を伝えたらみんな安心した様に溜息をついたけど、鋼牙について聞かれたら出て行ったと伝え、

織斑先生は出て行った。

 

一夏達もその後も少し医務室に居たけど、“僕”の体調を気遣って出て行った。

 

本当は僕だけじゃなくてボーデヴィッヒさんの事も気遣ってなんだけど・・・皆が来てから・・・特に織斑先生に対して、

ボーデヴィッヒさんは気まずそうにしていた。

 

織斑先生も、ボーデヴィッヒさんに如何声を掛けるべきか珍しく悩む様子だった。

 

本当なら僕も出て行った方が良いのかもしれないけど、思っていたより体にダメージ・・・特に右手が思う様に動かなく、

今になって痛み出した・・・診てもらったら骨にヒビが入っているみたいで、泣く泣く医務室で横になるように言われた。

 

 

「・・・シャルル・デュノア・・・」

 

「えっ何?」

 

 

突然ボーデヴィッヒさんに声を掛けられて思わず声が裏返ちゃった。

 

 

「その・・・すまない・・・私の所為でお前達に迷惑を・・・」

 

「でも・・・それってVTシステムの・・・」

 

「違う・・・私が・・・私の心が弱かったから・・・あの様な・・・ホラーを呼ぶ様な事に・・・」

 

 

ボーデヴィッヒさんは本当に申し訳なさそうに・・・それでいて泣きそうな表情だった。

 

 

「・・・ねえ・・・少し・・・聞いていいかな?」

 

「何だ?」

 

「あの人・・・鋼牙に何か言われた?」

 

「兄さまに?」

 

 

あの人・・・無神経にボーデヴィッヒさんを傷付ける様な事を言ったかもしれないし、もしそうだったら本当に許せない。

 

 

「あの人は・・・私に・・・居場所を失って、家族を求めた私に、居場所をくれて、家族になると言ってくれた」

 

「え?」

 

「私は今回の事でおそらく軍にはいられなくなる・・・シュヴァルツェア・レーゲンを失い、

軍の不祥事を浮き彫りになる様な始末・・・軍によって生み出され・・・そこしか居場所が無い私に、

兄さまは家族になってくれると言ってくれたのだ・・・これほど嬉しい事は無い」

 

「・・・・・」

 

「そんなあの人に・・・私は“兄”と言うものを見た気がした・・・だから私はあの人を兄と呼ぶ事にした」

 

 

ボーデヴィッヒさんの表情は先程とは違い本当に嬉しそうに、軍人としてではなく年相応の少女の笑みを浮かべていた。

 

 

「兄さまに対して・・・良い感情を持っていないかもしれないが、あの最後の言葉は、お前の事を思って言ったものではないのか?」

 

「え?」

 

 

『自分を偽って傀儡の様に生きている人間』それは確かに僕の事だけど・・・それだけで僕の事を思ってとは・・・。

 

 

「あの時の兄さまの言葉・・・私に家族になってくれると言ってくれた時と同じ・・・優しさやそれ以外のものを感じた」

 

「優しさ?」

 

「お前が何を抱えて生きているかは私には分からん・・・だが、上辺だけであの人を決めつけないでほしい・・・あの人は私と同じで、

きっと・・・こういう事に対して不器用なんだと思う・・・」

 

「・・・・・」

 

「シャルル・デュノア、もしお前が自分を偽っているのなら、それは・・・本当に悲しい事だ、私も・・・少し違うがそうであったから」

 

「ボーデヴィッヒさん?」

 

「すぐにとは言わない・・・もし私が力になれるのなら力になる・・・せめてもの罪滅ぼしにでも・・・」

 

「・・・ありがとう・・・頑張ってみるよ・・・約束する」

 

「そうか・・・それと・・・」

 

「?」

 

「経験が無いから何と言えばいいかの、切っ掛け的な物がこんな事でいいのか分からないが・・・取り敢えず、

兄さまに助けられた“女”同士、仲良くしてくれないだろうか?」

 

「・・・うん・・・良いよボーデヴィッヒさん」

 

「ありがとう・・・私の事はラウラで構わない」

 

「うん・・・分かったよラウラ、僕の事も(可愛いなラウラ・・・助けられた女同士か・・・“女”同士?)・・・・・・」

 

 

あれ~~~さっきラウラ女同士って言わなかった?

 

 

「如何した?」

 

「ラウラ・・・さっき“何”同士って言ったの?」

 

「?“女”同士と言ったがそうれが如何かしたか?」

 

「うええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」

 

「またっ!!耳が!!」

 

 

どどど・・・如何して!?

 

如何して僕が女だって分かったの!?

 

 

「最初は男装趣味の女と思っていて特に気にも留めなかったんだが・・・違ったか?」

 

「ええっ!?じゃあ初めて会った時から!?」

 

「あぁ・・・顔は・・・さっきの兄さまの件もあるから如何とも言えないが・・・。」

 

 

あっ・・・ラウラも鋼牙を女と間違えたんだ。

 

 

「お前の体の構造は幾らなんでも男としておかしい・・・個人差と言ってもおかしいところは多々あったしな」

 

 

うわぁ・・・隠す以前の問題だよ。

 

 

「あの・・・ラウラ・・・この事は黙っててくれないかな?その・・・さっきの約束通り本当の僕として自分を偽らないで生きるように頑張るから・・・」

 

「・・・そうか、それなら黙っていよう・・・だが自分に戻る時は言ってくれ」

 

「うん・・・」

 

 

僕が・・・うぅん・・・私が私に戻るか・・・。

 

その後、山田先生から学年別トーナメントは中止、だけど全生徒の個人データを取る為に、全ての一回戦だけは行うと報告を受けた。

 

僕とラウラ、それに一夏と箒さんの4人は、試合結果は如何あれ関係無いけどね。

 

その翌日・・・僕は早朝から職員室に行って織斑先生と山田先生の元を訪ねた。

 

何時もの男子生徒用の制服ではなく、本来の僕が着るべき女子生徒用の制服を着て。

 

あの後も悩んだけど・・・あの時の鋼牙の言葉、『自分を偽って傀儡の様に生きている人間』って言葉がどうも悔しく思えてきて、

気付いたら女子生徒用の制服を着て職員室の前に居た。

 

その事をラウラに話したら・・・。

 

 

『まさか次の日に実行するとは思わなかったぞ、しかもその動機が悔しさからって・・・シャルル・・・いや・・・シャルロット』

 

 

と・・・呆れ交じりに言われた。

 

 

「シャルロット・デュノアです・・・皆さん、改めて宜しくお願いします」

 

 

僕は転入の形で再度皆に自己紹介して、自分が女である事を打ち明けた。

 

 

「え?デュノア君って女・・・?」

 

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね」

 

「って・・・織斑君、同室だから知らないって事は・・・」

 

 

皆驚いているな・・・そりゃあそうだろうけど・・・色んな被害が僕と同室だった一夏の方に集中していて、

今とんでもない事になっている・・・主に彼に好意を持つ3人・・・箒さんとオルコットさん、

それと隣のクラスの筈の凰さんによって・・・ゴメン一夏。

 

 

「うぅ・・・また寮の部屋割りを組み立て直す作業が始まります・・・」

 

 

こっちにも被害が・・・山田先生ごめんなさい。

 

 

「只でさえ昨日新しく転校生が来ると急に決まったと言うのに・・・」

 

 

えっ?僕・・・正確には違うけど・・・他に転校生が?

 

そう言えば織斑先生が居ない・・・その転校生を向かいに行ったのかな?

 

 

ガラッ・・・

 

「落ち着け馬鹿共!」

 

 

織斑先生が教室の扉を開けるやいなや怒声を飛ばして入って来た。

 

その声に騒いでいた生徒は静まり返った、さすがブリュンヒルデ・・・。

 

凰さんは驚きのあまりこけて蹲っているところを織斑先生に見つかってその場に立たされた。

 

 

「諸君・・・今日はシャルル・デュノア改めシャルロット・デュノアに続いて転校生がもう1人いる」

 

ざわざわざわざわ・・・・

 

「静かに!!では入って来い」

 

(転校生か・・・一体どんな人だろう?)

 

 

等と転校生の事を考えていたら教室の扉が開かれた。

 

 

ガラッ・・・・

 

「えっ!?」

 

「あっ!!」

 

「あの人は!?」

 

 

その転校生を見た時・・・僕は・・・いや、あの時アリーナに僕と一緒に居た一夏と箒さんも驚愕していた。

 

その転校生は左手中指に見た事のある髑髏とも思えるシルバーの指輪、左胸にはお守りの様なアクセサリー、

そして織斑先生にも負けない鋭い目付き・・・あの人は・・・。

 

 

「転校生・・・自己紹介を」

 

「はい・・・冴島鋼牙だ、本日より皆と勉学を共にする・・・よろしくたのむ」

 

「えっ・・・ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」

 

「・・・耳が痛いぞシャルロット・デュノア」

 

 

如何して鋼牙がIS学園に!?

 

それに僕のクラスメイトって・・・えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?

 

 

「そう言う事だ・・・これからよろしくたのむ」

 

 

思い出の絵本に描かれていた黄金騎士が私の目の前に現れた・・・でもそれは、これから始まる新たな騎士伝説の、ほんの幕開けに過ぎなかった。

 

 

残り・・・99日

 

牙狼~INFINITE SENKI~

 




次回予告
勉学・友情・愛情・青春。
鋼牙・・・お前はこの学びの園で何を学び何を手にするんだ?
だが気を付けな・・・こう言う場所に居る奴程厄介な陰我を放つもんだぜ。
次回『学園』。
だが学ぶだけでなく、お前自身が誰かに何かを教与えるのかもな。
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