牙狼<GARO>~INFINITE SENKI~   作:龍気

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鋼牙の転入、そしてシャルには”あれ”を。


第肆話『学園』

ホラーの血を浴びし者・・・それを彼等はこう呼ぶ・・・「血に染まりし者」と。

 

それはホラーにとって最も極上で美味なる“餌”であり、常にホラーから狙われる存在となる。

 

しかし・・・その命は僅か100日しかない。

 

100日を超えるとその者は、気絶を許さぬほどの激痛の中、悪臭を放ちながら溶け崩れ、その魂も冥府へ行かん・・・。

 

その者を救う手段は二つ。

 

一つはその者を騎士の剣で殺す事。

 

もう一つは・・・・・・。

 

 

 

――――『学園』――――

 

 

 

Side・千冬

 

まったく何だと言うのだ・・・。

 

一夏のIS起動騒ぎから始まりIS学園の入学に、謎の無人ISの襲撃、そしてラウラの暴走事件。

 

そしてその日の内にその暴走を止めた“男”をIS学園に転入させるだと?

 

昨日の学園長室での会話が頭の中で幾度と再生される。

 

 

『お呼びですか学園長、私は今回の騒動でなるべく早く調べ物を・・・お前は!?』

 

『織斑先生、彼は冴島鋼牙君・・・この学園のスポンサーの1つであり、あの冴島財閥の社長よ』

 

『冴島鋼牙です・・・まさかブリュンヒルデ、第1回モンド・グロッソ優勝者の織斑千冬とこの様な場で会えるとは光栄です』

 

『冴島財閥の!?あの世界的大企業の・・・しかし見る限りかなり御若い様な・・・』

 

『今年で17になりました』

 

『17歳!?』

 

 

身長は私より高く、ひょっとしたら一夏よりも高いのかもしれないな。

 

それでいて放つ雰囲気が大人の雰囲気で、今時の若者にしても礼儀も正しく、堂々としている。

 

それと・・・学園長は目の前にいる人物を“彼”と呼んだ事からおそらくは男なのだろうが、その顔は中性的な顔立ちで、

見る物によっては女とも取れる様な顔だ。

 

 

『織斑先生、彼には明日からこの学園に通ってもらう事になりました』

 

『はっ!?』

 

『そしてあなたの担当の1年1組に入ってもらいます』

 

 

学園長の言葉に私は耳を疑った。

 

 

『ですが・・・彼は17で・・・入るとしたら2年生か3年生のクラスでは?』

 

『確かに・・・ですが彼はさっきも聞いた様に社長業についています。

ですがその為に真面な学園生活を送った事も無いと・・・それにこれは彼の既望でもあるの』

 

『御存知のとおり私が経営している会社はIS関係もシェアとして売り出していますが、私自身家の都合で小学校までしか通ってはおらず、

私が冴島財閥のトップである事は世間には伏せてはいますが、何時かは公表するつもりですが、

その時に学歴がこれでは世間体的にも良い印象を与えられない事から、3年間この学園に通う事を選びました』

 

『さらに彼は男にして、アナタの弟さん、織斑一夏君同様ISを起動させる事ができて、専用機をお持ちなの、

だとしたら政府やIS委員会からもこの学園に3年間通わせる様に通達が来ると思うわ』

 

 

それは分かっている、実際私もこの目で彼が金色のISを纏い戦っているところを見たのだから。

 

それにここなら3年間他の国や企業からは守られる。

 

一夏をこの学園に通わせるのも、一夏を守る為の要因が多い。

 

 

『成程・・・ですがよろしいのでしょうか?会社の経営等は?』

 

『それについては此方の方で対処します・・・多々ご迷惑をかけるかもしれませんが、明日から宜しくお願いします・・・織斑教員』

 

 

と・・・先日学園長室から伝えられ、今問題の社長・・・今は私の生徒だが、隣で本名を明かしたデュノアと何か話して・・・何!?

 

如何やらこの私の新しい生徒は一夏以上に問題を起こす様だ・・・何故私の担当するクラスばっかり・・・。

 

それにしても・・・若干羨ましいぞシャルロット・デュノア!!

 

私は何も填められていない左手薬指を気付かれない様眺めて、心の中で少し・・・本当に少しだぞ!・・・・・デュノアに嫉妬してしまった。

 

私だって女なんだ、いい歳なんだ・・・気にして悪いか!?

 

 

Side・シャル

 

 

何で鋼牙がIS学園に?

 

それに僕と同じ1年生のクラスに・・・入るにしても2年生か3年生のクラスの筈・・・。

 

 

「如何した?そんな呆けた顔をして?」

 

「いや・・・だって鋼牙は17歳だから、転入しても普通は2年生か3年生のクラスに入る筈」

 

「俺が1年生から通う様に頼んだんだ、こっちにも都合と言うものがあってな」

 

 

都合って何?

 

昨日の事もあってその都合が色々と気になる。

 

 

「しかしお前と同じクラスとはな・・・丁度よかった、お前に用事があったんだ」

 

 

そう言って鋼牙は僕の左手をとって・・・えっ!?

 

 

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

 

「何!?」

 

「まあっ!?」

 

 

クラスの皆・・・織斑先生に山田先生も驚いている。

 

それはそうだよ・・・だって・・・だって・・・鋼牙が僕の左手中指に銀色の指輪を填めたんだから。

 

 

「えっ!?なっ・・・何!?」

 

「お前にやるよ」

 

 

鋼牙は素っ気なくそう言うけど、僕はもう何が何だか・・・。

 

 

「ちょ・・・ちょっとこれ如何言う意味?」

 

「プレゼントだ」

 

「・・・って僕達そういう関係じゃ・・・」

 

「そういう関係ってどういう関係だ?」

 

 

えっ?

 

鋼牙は本当に知らないと言うか・・・指輪を渡す関係の意味を理解していない顔で聞いて来た。

 

 

「だから・・・あれ?外れない?」

 

 

指輪を渡す意味を伝えようと一旦指輪をはずそうとするけど・・・如何言う訳か外れない。

 

僕が指輪をはずそうと奮闘していると突然前の方から・・・。

 

 

「「「「「「「「「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」」」」

 

「うわっ!?」

 

「・・・・・・・うるさい」

 

 

突然クラスの皆(一夏や箒にセシリアは除く)が大音量で一斉に叫びだした。

 

 

「何!?何!?あれってプロポーズ!?」

 

「私生で見たの初めて!!」

 

「しかも転校早々!!出会ったばかりの少女にプロポーズなんて!!」

 

「あれ?でも婚約指輪や結婚指輪って薬指じゃ?」

 

「でも確か左中指はより良い人間関係を築く意味があるから・・・ある意味じゃ間違っていない気も・・・」

 

「次回の同性純愛ネタはこれで決まりよ!!」

 

「えっ!?でもあの人鋼牙って・・・男の子じゃ?」

 

「確かに・・・でも女の子にも見えるけど・・・」

 

 

うわ・・・クラス全体がさっきのプロポーズ疑惑と、鋼牙の男か女疑惑で大騒ぎになってる。

 

そりゃあ僕も最初は鋼牙を見て女の人と間違えたけど・・・それに、きっと僕の事もあって皆本当に分からなくなっているんだな。

 

 

「デュノア君・・・いや、デュノアさんみたいに男装しているとか・・・」

 

 

あぁ・・・やっぱり。

 

 

「まったく・・・お前達静かにしろ!冴島・・・お前も自己紹介の途中だろ?さっさと終わらせろ」

 

 

織斑先生の怒声で皆静まった。

 

 

「分かりました織斑教員」

 

「・・・教員ではあるが、シックリこん・・・織斑先生でいい」

 

「分かりました織斑先生・・・俺は17歳で皆よりは歳は上だが、家の都合で高校には通ってはいないので、

2年遅れで高校に通う事となった・・・だが気にはしないでくれ」

 

「あの・・・家の都合って・・・何ですの?」

 

 

セシリアが鋼牙の言った、家の都合が気になったのか質問して来た。

 

鋼牙の家って・・・冴島財閥・・・多分その関係だろうな。

 

一応僕もデュノア社の子だから分かるけど、むやみやたらにそんな事口に・・・。

 

 

「俺は冴島財閥の社長の息子で、そこのISのテストパイロットをしている」

 

「言っちゃたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

「「「「「「「「「「うえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」

 

 

本日何度目かのソニック・ウェーブ(奇声音撃)に僕は一瞬倒れそうになった。

 

うぅ・・・耳が・・・。

 

 

Side・鋼牙

 

家の都合か・・・なるべく伏せておきたいところだが、シャルは知っているし、昨日のラウラとの交戦の最中、

シャルが織斑一夏と篠ノ之箒に俺が冴島財閥の人間だと言っていたからな・・・やはりあの時伏せておくべきだったか。

 

後で追及された時面倒だから・・・。

 

 

「俺は冴島財閥の社長の息子で、そこのISのテストパイロットをしている」

 

「言っちゃたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

「「「「「「「「「「うえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」

 

 

うるさいな・・・だが嘘は言ってない・・・。

 

前社長は俺の父だし、太牙を使って幾つかの実験などもしている。

 

嘘と言えば、太牙がISではなく「ソウル・ストラトス」・・・「SS」であるが、ISにも精通する箇所が多々あるから、

全部が嘘だと言う事ではない。

 

後は俺が現社長だと言う事だな・・・これさえ伏せておけば多分大丈夫だろう。

 

 

「冴島財閥って・・・あの大企業の!?」

 

「その息子って事は・・・次期社長!?」

 

「玉の輿!!」

 

「クールな美形で御曹子!!」

 

「しかも冴島財閥のテストパイロットって事は専用機持ち!?」

 

「・・・・そうなるな、俺が高校に通わなかった事に、それも関係している」

 

 

これも嘘ではない。

 

実際太牙が完成したのは2年程前だ、それからは主に太牙を扱う為の訓練やらに時間をつぎ込んだからな。

 

もっとも・・・それ以前は魔戒騎士としての訓練や、会社経営に大学までの勉学にISに関しる知識を8歳からやっているがな。

 

最低限義務教育の為小学校は卒業し、その後は飛び級が可能な海外の中学校に席を入れ速攻で卒業している・・・勿論実力でだがな。

 

 

「冴島・・・こっちに来い」

 

 

織斑きょ・・・先生が手招きで呼んでいるので呼ばれるままに近寄った。

 

 

「お前は何を考えている?」

 

「何がですか?」

 

 

他の皆に背を向け他人には聞こえない小声で俺に問うてきた。

 

 

「お前が冴島財閥の関係者と分かればこうなる事は分かっていた筈だぞ」

 

「俺が冴島財閥の人間だと言う事を知っているのはシャルロット・デュノアの他に、織斑一夏と篠ノ之箒が知っています」

 

「織斑と篠ノ之が?」

 

「昨日の戦闘の最中にシャルロット・デュノアが2人に俺が冴島財閥の人間だと話すのを聞きましたから間違いないでしょう」

 

「あの戦闘の最中に・・・と言うかよく聞き取れたな」

 

 

あれだけ大声で叫んでいれば嫌でも聞こえる。

 

 

『おい、なら俺の事も話してもいいんじゃないか?』

 

「・・・誰だ?今の声は?」

 

「・・・ザルバ・・・」

 

 

お喋りな相棒を持つと苦労する・・・確かにさっきの3人も知っている事だし、こいつの紹介でもするか。

 

 

「余計な事は言うなよ」

 

『分かっているって・・・初めまして織斑先生』

 

「指輪が喋った!!」

 

 

織斑先生の驚く声に、クラス全体が何事かと驚いた・・・と言うよりはこの織斑先生が驚いている事に驚いている感じだ。

 

 

「驚かせてすまない・・・こいつに驚いただけだ」

 

『初めましてお嬢さん方・・・っと、1人男が居たな、俺の名はザルバ、鋼牙のISのAIとでも思ってくれ』

 

「「「「「「「「「「指輪が喋った!!」」」」」」」」」」

 

 

本当にうるさいな・・・俺の周りでは普通なのにな・・・。

 

 

『お前の周りと一緒にするな』

 

「心を読むな」

 

「ISって・・・喋れたっけ?」

 

「聞いた事ありませんわ」

 

「・・・元々ISのコアの深層には独自の意識があると言われ、サポート面を強化する過程でこいつが出てきた・・・それだけの事だ」

 

 

本当は“こいつ”をISのコアに“融合”させただけなんだがな・・・。

 

だがISのコアに意識が有るのは以前から話題となっていて、それが女でしかISを扱えない要因とも考えられたほどだ。

 

 

「・・・まあ、色々聞きたい事もあるが、時間もおしい、授業を始める」

 

 

織斑先生の授業開始宣言に、クラスの全員は急いで授業の準備に取り掛かった。

 

 

「お前達も席につけ・・・デュノアは前と同じ席に、冴島の席はデュノアの隣だ」

 

「分かりました・・・お前の席は何所だ?」

 

「・・・後で色々聞かせてもらうからね。

昨日のあの答えだけじゃ全然納得いってないんだから」

 

「あれ以上の答えなど無いあれが全てだ」

 

「信じられないな」

 

「さっさと行け!!」

 

ガスッ!!ゴスッ!!

 

「ぴっ!?」

 

「・・・・・・?」

 

 

一瞬頭に衝撃が来たが・・・特に痛みは無い・・・が、横に居るシャルは頭を押さえ涙目で蹲っている。

 

後ろを見たら織斑先生が黒い四角形の帳簿・・・出席簿を振り下した形で固まっていた。

 

如何やら今の衝撃の正体はこれの様だ、しかし織斑先生はどこか驚愕している感じだ。

 

まあここで立っていては授業も始められんだろうな、俺は蹲っているシャルの手を取って立たせた。

 

 

「あっ!」

 

「・・・早く席に案内してくれ」

 

「うっ・・・うん・・・ところで・・・」

 

「何だ?」

 

「痛くないの?」

 

「何がだ?」

 

「・・・織斑先生の伝家の宝刀が・・・」

 

「?今のあれか?別に何ともないが」

 

ガーーーーーーン!!

 

「なっ!?」

 

「織斑先生の・・・」

 

「千冬姉の・・・」

 

「「「「「「「「「「出席簿アタックが効いてない!?」」」」」」」」」」

 

 

おそらく今日一番の大声量だろうな・・・一瞬地面が揺れたぞ。

 

 

『・・・鋼牙・・・俺は学校ってもんをよく知らないが、こんなにも喧しいものなのか?』

 

「違うと思うぞ・・・それと、授業中は喋るなよ、迷惑だからな」

 

『分かってるって』

 

 

まったく・・・これから如何なる事か・・・。

 

 

Side・三人称

 

鋼牙の目を疑う様な行動を交えた自己紹介の後、鋼牙のIS学園で初めて受ける授業が始まった。

 

この日の鋼牙のクラスの授業内容は、午前中はIS理論や技能の授業に数学の授業、午後からはISを使っての実習だった。

 

IS専門の学校とは言え、高等学校として登録されているので、普通の高校と同じく数学や国語に社会等の授業は勿論、

女子高でもあるので家庭科の授業もあるのだ。

 

そして今鋼牙は自分に与えられた席に座り、副担任である山田真耶のIS理論の授業を受けている。

 

教室の後ろの方では担任の千冬が腕を組みクラス全体を睨む様にして立っている。

 

彼女から発せられる無言のプレッシャーにより、クラスには真耶の声とノートを取る為ペンを走らせる音のみだった。

 

此処まではいつも通りの授業風景であった・・・たった1つを除いて・・・。

 

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

「え~~~、ですからアラスカ条約でもこの項目に関しては・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

((((((((((まっ・・・真ん中からもプレッシャーが・・・・))))))))))

 

 

鋼牙の席は丁度真ん中に位置しており、彼からも多大なプレッシャーが発せられていた。

 

千冬が放つプレッシャーは言わば鬼教師としてのプレッシャー、だが鋼牙の場合は授業を受ける者のプレッシャーである。

 

授業を受けている限り、教師の口から出る言葉を聞き、内容をノートに取り、理解し自分の知識とする、

それが授業を受けている者のやるべき事であり義務。

 

そして授業をしてくれている教師に対する礼儀でもある。

 

鋼牙はそれを理解し実行している、例え分かっているとしても教師の言葉を全て聞き、授業の内容で重要な箇所をノートに取る。

 

もしここで誰かが不真面目な態度をとったものなら・・・千冬並みの“何か”をされる・・・と、誰もが感じたのだ。

 

 

(ふむ・・・やはり1年生の授業だけあって、基礎の基礎を教えているな)

 

 

鋼牙は授業内容に関し心の内で呟いた。

 

 

(しかし何ヵ所かは俺が教えられたのと違う箇所がある、一応授業が終わった後に聞いてみるか)

 

 

何事にも真面目に取り組む、それが冴島鋼牙であった。

 

だが・・・“裏”に関する・・・彼にとってはそっちが本職であり、魔戒騎士としての務めを忘れてはいない。

 

 

(・・・・今のところは何も起きてない様だな)

 

 

鋼牙は隣の席で授業を受けているシャルに気付かれない様に視線をやった。

 

 

(ラウラのISに術を施した奴が“血に染まりし者”であるシャルに何かしかけるかと思ったが・・・今のところは何もないみたいだな)

 

 

鋼牙はラウラのISに邪心を増幅させる術を施し、IS学園を陰我集延期に陥れようとした者が、シャルに何かをするのではと予想していたが、

今のところは異常が無い事に少し安心する。

 

そして昨日の事を思い出す・・・IS学園をあとにし、東の番犬所での事を。

 

狼の顔をしたレリーフの口に魔戒剣を刺し、魔戒剣を引き抜き、魔戒剣の浄化を終えると、レリーフの口から手の平サイズの剣が出てくる。

 

この剣こそが今回鋼牙が倒したウェガルの封印された姿と言っていい。

 

それを東の番犬所に仕える黒子に渡すと、東の番犬所の神官、「オルト」に、今回の事を報告する。

 

 

『申し訳ありません・・・俺がもっと早く駆け付けていればホラーの出現を阻止できたものを・・・』

 

『いや、陰我集延期を阻止しただけでも十分だ・・・ご苦労だった』

 

『ありがとうございます』

 

『しかし・・・血に染まりし者を斬らなかったのは何故かな?』

 

『・・・・・・』

 

『『血に染まりし者は斬る』・・・それが掟・・・君がそれを知らぬはずはない』

 

 

鋼牙はオルトの問いに何も答えない。

 

 

『ホラーの返り血を浴びた者は僅か100日の命、その間もその匂いを嗅ぎつけ、その者をホラーが襲ってくる』

 

『分かっています・・・が、そこが狙い目です』

 

『餌にすると言うのかね?』

 

 

オルトの“餌”と言う単語に鋼牙は少し苦虫を噛んだ様な表情になるも、すぐに何時もの無愛想な表情に戻し応える、

 

 

『はい・・・あの女を生かしておけば、今後の狩りが楽になります』

 

『理には適ってはいるが・・・それこそ君らしくも無い・・・掟を守らぬよりも何よりも』

 

『・・・・・・・』

 

『分かりました・・・君に任せます』

 

『はい』

 

『しかし何れは殺さねばならぬ定め・・・ヴァランカスの実も、今となっては陰我集延期となった時の切り札・・・』

 

『はい・・・その時は・・・俺が斬ります』

 

 

それだけ言い残し、鋼牙は番犬所を出て行こうとするが、オルトに止められる。

 

 

『待ちなさい、君に一つ伝えなければならない事がある』

 

『何でしょうか?』

 

『君がIS学園で活動する間、君の抜けた穴を埋める為に、西の管轄から1人この東の管轄に呼ぶ事となった』

 

『西から?・・・まさか!』

 

 

思い当りがあるのか、鋼牙は若干嫌そうな顔をする。

 

 

『あぁ・・・君もよく知っている人物だ、その方が何かあった時君の援護に行けるだろう』

 

『・・・余計に心労が増えそうな気がします』

 

『だが腕は君と互角に近い』

 

『そうですが・・・分かりました・・・一応来た時は連絡を入れるよう伝えてください』

 

 

これまでが昨日の番犬所での事。

 

それを思い出し鋼牙は少し考え込む。

 

 

(奴の事はまあ仕方がない・・・しかし)

 

 

鋼牙は左胸のお守りをじっと見詰めた・・・約束と決意がこもったお守りを。

 

 

(確かにヴァランカスの実は陰我集延期に陥った時の切り札・・・しかし・・・)

 

 

昨日のオルトの言葉を理解しているし納得もしている鋼牙。

 

だが自身の心のどこかでそれに反発していた。

 

 

(俺は何をイラついている・・・一体何に?)

 

「冴島君?」

 

「っ!はい」

 

 

突如真耶に呼ばれ、何時もの様に返事をする。

 

 

「如何かしましたか?何か考え事をしているようでしたけど・・・」

 

「(少し顔に出ていたか・・・)いえ、ただ自分の認知しているのと違う箇所があったので、もし時間がよろしければ、

後で質問に行ってもよろしいでしょうか?」

 

「はい、構いませんよ、皆さんも分からないところが有ったら聞きに来てくださいね」

 

「では冴島・・・今山田先生が説明したのは何だ?」

 

「はい、コア・ネットワークによる「非限定情報共有(シェアリング)」を使っての、コア自身の自己進化に関してです」

 

「うん・・・ちゃんと聞いていた様だな」

 

『へえ・・・じゃあ俺も他のISとシェアリングってのをやると俺も進化するのかね?』

 

「知らん・・・試すか?」

 

『遠慮しとくよ・・・俺は今のままで十分だ』

 

「ならいい」

 

「因みに冴島を除いて理解できている者はいるか?」

 

 

千冬の質問に手を上げたのは僅か数人だった。

 

 

「はあ・・・真面目に授業を受けても理解できてなかったら意味が無いぞ・・・後で私か山田先生、

理解できている奴から聞け・・・分かったな」

 

「「「「「「「「「「はい・・・」」」」」」」」」」

 

 

生徒達の覇気の無い声が聞こえた後、授業は再開された。

 

 

Side・シャル

 

怪しい・・・。

 

最初の授業が終わって僕は鋼牙に昨日の事や、この指輪の事や色々問い詰めようとしたけど、出来なかった。

 

鋼牙は授業が終わるとすぐに山田先生の所に行ってしまうし。

 

僕の周りには・・・。

 

 

「デュノアさん!冴島さんとどんな関係なの!?」

 

「出会ってそうそう指輪をプレゼントされるなんて絶対普通の関係じゃないよ!!」

 

 

僕と鋼牙の関係が気になるのか沢山の女子(この学園の99%が女子だけど)が僕に詰め寄って来た。

 

昨日初めて会って、その・・・助けられて・・・殺されそうになって・・・それ位だけど、指輪を貰うような関係ではない。

 

 

「デュノアさんも冴島さんの家の事知っていたみたいだけど・・・ひょっとして親同士が決めた許嫁とか?」

 

「えぇ!?」

 

 

許嫁・・・確かに“あの人”ならやりかねないけど・・・そう言えば鋼牙は僕の事を知っていたようだった。

 

まさか本当に・・・いやいや・・・だったら僕にも何か言って来る筈。

 

でももしそうだとしたら・・・。

 

 

「デュノアさん?デュノアさん!!」

 

「はっ!?なっ・・・何!?」

 

「大丈夫?何だか顔が急に赤くなって黙り込んじゃって・・・」

 

 

如何やら僕は別世界にトリップしていたみたいだ・・・その・・・鋼牙と結婚したとしたらの世界に・・・。

 

 

「しゃるるん顔真っ赤っ赤!ひょっとして~~~えっちぃ事考えてたりして」

 

「ふえっ!?」

 

 

そんな中「布仏本音」・・・一部からはそののほほんとした雰囲気から、「のほほんさん」と呼ばれている彼女からとんでもない発言が飛んできた。

 

と言うか・・・しゃるるん?

 

 

「あぁ・・・そうかも・・・」

 

「冴島さんみたいなイケメンと結婚出来るんだもん・・・そんな事妄想してもおかしくないかも」

 

「ちょっと!!僕そんな事想像してないよ!!」

 

「じゃあ何考えてたの?」

 

「そっ・・・それは・・・」

 

 

うぅ・・・半分は合っていただけに応えづらいよ・・・。

 

 

「はいはい、そこまでですわよ、シャルル・・・いや、シャルロットさんが困っているじゃありませんか」

 

 

セシリア!!良かった・・・セシリアが見かねて助けに来てくれた。

 

 

「あっ!せっしーだ!」

 

「・・・誰がせっしーですか・・・」

 

「皆も気になるとは思うけど・・・シャルロットも困っているし」

 

「布仏さん・・・次の授業の準備をしなくていいのか?今日の日直はあなたの筈だが?」

 

「あっ!そうだった!!」

 

「次も千冬姉の授業だから・・・急いだ方が良いぞ」

 

「うん!!急ぐね!!」

 

 

そう言って教室を出て行く布仏さん・・・でも普段がのほほんとしているだけあってその動きにキレが無く、

おたおたしていた・・・。

 

 

「何だか心配ね・・・」

 

「私達も手伝って来る」

 

 

他の2人ものほほんさんを追いかけて行った・・・良かったこれで解放され・・・。

 

 

「さて・・・聞かせてもらいますわよシャルロットさん・・・」

 

「あの冴島鋼牙との関係を・・・」

 

「聞かせてもらうわよ」

 

 

なかった・・・しかも鈴まで加わってる・・・。

 

 

「隣の私のクラスまで聞こえたのよ・・・さあ聞かせてもらうわよシャルロット」

 

「そんな事言ったて・・・僕も昨日会ったばかりで・・・」

 

「それ確か昨日も言っていたな・・・」

 

「あぁ・・・しかもかなり強い・・・」

 

「私達も管制室から見ていましたけど・・・」

 

「いまだに信じられないわね・・・一夏の他に男でISを起動させるだけでなく・・・」

 

「うん・・・あの暴走したラウラに生身で圧倒していた」

 

 

あの光景は今でも信じられない。

 

生身で軍の訓練を受けたラウラを圧倒する鋼牙の戦闘力に・・・。

 

だけど・・・それよりも気になるのがやっぱり鋼牙が纏った黄金のISに黄金の鎧。

 

この二つがお母さんの書いた絵本に出てくる騎士と酷似している・・・もしかしてお母さんと何か関係が?

 

 

「一体どんな鍛錬を積めばあのような強さを手に出来るんだ・・・」

 

「箒は気になるの?鋼牙の強さが」

 

「当然だ!力があれば・・・あの時にも力があれば私もボーデヴィッヒを止められていた筈だ・・・私にも・・・」

 

 

その時の箒の顔は悔しそうだった・・・力が無い事に対してなのか・・・それとも別の事になのかは僕にはわからなかった。

 

 

「力のみを望んでも何も手にはできないぞ」

 

「えっ!?」

 

 

突然の声に僕達は声がした方に顔を向けると、そこには鋼牙が立っていた。

 

 

「闇雲に力を求めるのであれば、それはあの時のラウラと同じだ」

 

「何だと?」

 

 

鋼牙は何時もの無愛想な顔で箒に語る。

 

しかしその無愛想な表情で話すので喧嘩腰で話されていると見られ、箒も少し怒った様子だ。

 

 

「力を求めて何がいけない!あの時私に力があればボーデヴィッヒに盾にされる事も無く!共に・・・共に止められていた筈だ・・・」

 

「ラウラの暴走・・・それは今のお前と同じ力を求めるアイツの心を突かれて利用されたのが原因だ、

力のみを求めた者の末路があの時のラウラの姿だ」

 

「ぐう・・・私は・・・私は・・・」

 

「お前が何故力を求めるかは知らん・・・だが、力のみを求めて本当に大切な事を見失うな」

 

「・・・・・」

 

「鋼牙・・・昨日の事について色々聞きたいんだけど」

 

「話す事は無いと言った筈だ」

 

「じゃあ・・・この指輪は何?」

 

 

僕はそう言って左手中指の指輪を鋼牙につき付ける。

 

 

「いくら引っ張っても全然抜けないんだよ!これ如何なってるの?」

 

「どれどれ?うっ・・・・・・・本当だ全然抜けない」

 

「ちょっと貸しなさいよ・・・ふんっ!!」

 

「痛たたたたたたたたたたた!!鈴!!痛い痛い痛い!!指が抜ける!!」

 

「はあ・・・はあ・・・これ如何なってるの?」

 

「シャルロットさんの指が太い訳でも無いですわね・・・引っ掛かっている様子ではないですし・・・」

 

 

何だか怖くなってきた・・・呪いの指輪的な感じがしてきて・・・。

 

 

「お守りみたいな物だ、気にするな」

 

「お守り?」

 

 

それにしてはデザインが・・・少し禍々しいと言うか・・・。

 

 

「あぁそうだ・・・今後はできるだけ俺の傍に居ろ」

 

「えっ?」

 

「なっ?」

 

「いっ?」

 

「・・・はあ!?」

 

 

上から箒、セシリア、鈴、そして僕と・・・鋼牙の言葉に耳を疑った。

 

他の皆も・・・声には出してないけど・・・こっちを見て固まっている。

 

 

「安易に動き回れると迷惑だからな」

 

「なっ・・・ななな!?」

 

「?如何した?」

 

「そっ・・・そそそそれってどういう事?」

 

「言葉通りの意味だ、それ以外に何がある?」

 

「///////////////!!」

 

「なあ箒・・・」

 

「何だ一夏?」

 

「今の如何言う意味なんだ?」

 

ズゴオオオオオオオオッ!!

 

「「?」」

 

 

さっ・・・さすが一夏・・・唐変木にして鈍感の一夏、あの鋼牙の言葉の意味を理解できないとは・・・。

 

そりゃあ鈴の、「毎日酢豚を食べてくれる」って意味を違った意味でとるほどだもんね・・・クラスに居る全員がズッコケたよ・・・。

 

 

「本当に騒がしいなこのクラスは」

 

「いっ・・・今のは一夏の所為だけど・・・」

 

「俺?」

 

「「「はあ・・・・」」」

 

 

本当に箒達の苦労が伝わるよ・・・同じ女として・・・。

 

 

「もとはと言えば鋼牙の所為なんだからね!!」

 

「俺が何をしたと言うんだ?」

 

「あのね・・・皆の前で指輪を渡すし!今の言葉にだって、言われた私は迷惑してるの!!」

 

「迷惑とはなんだ?」

 

 

鋼牙は少しカチンと来たのか僕に詰め寄って来た。

 

 

「俺はお前の為を思って言ってんだ」

 

 

僕の為?

 

よく分からないけど・・・今ここで弱腰になったらずっとペースを握られる・・・。

 

 

「あのね!人に指輪を贈ったり、一緒に居ろって言ったり、僕はあなたと結婚するつもりなんかありませんから!!」

 

 

そう言って僕は教室から出て行こうと背を向けた・・・これ以上鋼牙の顔なんて見たくなかったから。

 

 

「こいつ何の話をしてるんだ?」

 

ドガラッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

「?」

 

「「「「「「「「「「お前もか!!」」」」」」」」」」

 

 

鋼牙ってひょっとして一夏以上?

 

 

「何なんだ一体?」

 

『鋼牙・・・人間じゃない俺でも分かる・・・お前はそう言うところが本当に駄目だな』

 

「一体何の事だ?」

 

『いや・・・嬢ちゃん、鋼牙はそう言った意味で言ったんじゃないから気にするな』

 

「じゃあどういう意味?」

 

「そんな事より」

 

「そんな事って・・・僕からしたら重要な事なんですけど!」

 

「ほお・・・では私の授業は重要ではないと言う事か?」

 

「え?」

 

ガスンッ!!

 

「ひぐっ!!」

 

「とっくにチャイムは鳴っているぞ!さっさと席に着け!凰!お前もさっさと自分のクラスに戻れ!」

 

「はっはいいいいい!!」

 

 

うぅ・・・今日2回目の織斑先生の出席簿アッタク・・・頭凹んでないかな?

 

 

「早く席に着けデュノア・・・本当に凹むかもしれんぞ?」

 

「はっはい!!今座ります!!」

 

 

うぅ・・・これも鋼牙の所為・・・鋼牙の所為。

 

因みに鋼牙はと・・・ちゃっかり席について次の授業の準備を終えていた。

 

 

牙狼~INFINITE SENKI~

 




次回予告
音には心に色々な影響を与える力がある。
気持ちを高ぶらせたり、悲しませたりと・・・。
鋼牙・・・お前が奏でる音は一旦どんな音なんだ?
次回『笛音』
因みに俺は歌で人を熱くさせられるぜ。

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